神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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ジュリウス無双。
何となくそんな感じの二十一話です。


第二十一話

 

 

 

「仁慈さん先程は私を拝んでいたようですが………どうかしたんですか?」

 

 

「そのことはできるだけ触れないでください……」

 

 

ジュリウス隊長の話を聞いて、お礼を言おうと話しかけた結果がこれである。見事に追い打ちをかけられることとなった。

いや、元々は本人を前に拝むという愚行を犯した俺が悪いんですけどね?

 

 

「今回のことで結構……いや、かなりお世話になったのでそのお礼を言いに来たんですよ。ありがとうございます、フランさん」

 

 

ゴホンと一度仕切りなおしてからお礼を言う。

それを聞いたフランさんは一瞬だけ目を見開くが、先程までジュリウス隊長と話しているところを見ていたのかすぐに納得したような表情を浮かべ、最後に溜息を吐いた。

なして?

 

 

「はぁ……別にお礼を言われるためにやったわけではないのですが………しかし感謝してくれているならそのお礼、受け取らせていただきます。どういたしまして」

 

 

そういってにっこりと笑うフランさん。

それに対して少しだけ固まってしまう俺。

……こういう彼女の表情はなかなか見ないので見惚れて固まっていたというのは内緒だ。

なんか気まずくなってきた俺は、無理矢理話題を転換した。

 

 

「そ、そういえばフランさん。なんか任務入ってたりしますか?」

 

 

「はい。初の大型アラガミ、ヴァジュラの討伐任務がジュリウス隊長、仁慈さん、シエルさんに出ています」

 

 

一週間小型アラガミすら狩っていない俺に大型ぶつけるとか俺に死ねと言っているのだろうか?

……でもよくよく思い返してみたら大体の任務がこんな感じだった気もするな。情報にないアラガミがしょっちゅう乱入してくるし。

 

 

「このヴァジュラと言うアラガミは、新人の間では鬼門として扱われています。ちなみに普通の支部では必ず四人以上で討伐するヴァジュラですが、私たちが向かう極東ではヴァジュラを一人で倒せて一人前扱いらしいですよ」

 

 

頭おかしいんじゃねえの、極東。

思わずそう思った俺をいったい誰が責められようか。

 

 

単純に考えて、最低限極東の神機使い一人はほかの神機使いの四人分の戦闘力を保持している。

そして、何故か極東のアラガミはほかの場所に出現するより数段強いアラガミが生まれる。その力はもはや別物と言っても過言ではない。

 

 

それを一人で仕留められる極東の神機使いの実力は……もはや言うまでもないだろう。

ロミオ先輩とは別の意味で極東に行きたくなくなってきたぜ。アラガミより神機使いの方が化物じみているってどういうことなの……。

 

 

「まぁ、リハビリの相手には少々厄介そうだけどジュリウス隊長が居れば平気かな?」

 

 

「おそらくは大丈夫だと思われます。ジュリウス隊長も仁慈さんに負けないくらいにオカシイですから」

 

 

「フランさんも俺のことそう思っているんですね……」

 

 

最近慣れてもきたし、諦めもついたけどさぁ。

傷つかないわけではないんですよ?

 

 

「……もうそれについてツッコムのはやめにします。で、俺はその任務を受注すればいいんですよね」

 

 

「はい。しかし、その前にラケル博士からメディカルチェックの結果が出たそうなので研究室の方に来るようにと言われております」

 

 

「了解です」

 

 

「おや?珍しいですね。仁慈さんはラケル博士を苦手としていて、こういう事は決まって渋るものだと思っていたのですが?」

 

 

「今回は素直に行きますよ………シエルのことで言いたいこともあるし」

 

 

いい加減、あの純粋な子をあらぬ道に陥れようとする電波博士とも決着をつけなければなるまいよ。シエルの健全な未来と俺の平穏の為にも。

アラガミと戦う時以上に覚悟を決めて、俺はラケル博士の研究室へ向かう。

 

 

「ラケル博士!いい加減シエルに変なこと教えるのやめてください!」

 

 

「ノックもなしに入ってきた第一声がそれなの?」

 

 

気合を入れてラケル博士に文句を言おうとした結果がこれである。

緊張のあまり、ラケル博士に呆れられるという屈辱を体験することとなった。一生の不覚……。

 

 

「そこまで思われているとさすがにショックなのだけれど……」

 

 

「普段の振る舞いを思い返してから言ってください。そのセリフ」

 

 

この前ハンプティ局長に注意されたばかりじゃないですか!俺は懲罰房にぶち込まれたが。

……あれ?普段の振る舞いうんぬんは俺も言われたことあるし……もしかしたら俺とラケル博士って案外似たもの同士……。

いや、考えるのをやめよう。まだ俺には良識が残っている。常識は死にかけてるけど。

 

 

「それより、シエルに変なこと教えるにやめてくださいよ!ただでさえ最近前とは別の意味でずれ始めてきたのに」

 

 

「それは貴方の所為ではないのですか?……しかし、話は分かりました。私もあの子の親として、しっかりとした知識を教えることを約束しましょう」

 

 

「ちゃんとしっかりとした常識を教えて下さいよ。世間一般で広く認知されているものですよ?あなたの中の常識とか教えないでくださいよ?」

 

 

「……………」

 

 

「何で黙ってんだコラ」

 

 

もしかして図星だったか?

そうだとしたら俺は俺のことを全力で褒めてやりたいね。これでスルーしてたら大変なことになっていた。シエルとその周りが特に。

 

 

「……今日貴方をここに呼んだのは、聞いているかもしれませんが貴方のメディカルチェックの結果を知らせることです」

 

 

ラケル博士が露骨に話題をすり替える。

内心で勝った!俺は自分の恐怖を克服し、見事勝利をもぎ取った!と自分でも後々思い返してみれば頭おかしいんじゃねえのという感想を持つこと間違いないことを考えながらラケル博士の言葉に耳を傾ける。

 

 

「メディカルチェックの結果から、神機兵に乗った弊害などは見られませんでした。しかし、もっと別の重要なことが分かりました。貴方の血の力の事です」

 

 

「あー……そういえば詳しくは知りませんでしたね。俺の血の力について」

 

 

ブラッドアーツの事なら色々試したり、実戦で使ったりしたので割とわかることは多いのだが血の力のことについては何一つとして知らなかった。

つーかぶっちゃけ思いっきり忘れていた。

 

 

「貴方の血の力は『喚起』。心を通わせた者の真の力を呼び醒ます……ブラッドの皆の血の力を目覚めさせることのできる能力を持っています。実際、シエルが貴方の様子を見に行ったあと血の力に目覚めました」

 

 

「シエルって血の力に目覚めたんだ……」

 

 

初耳なんですけど……シエルもあの時言ってくれればよかったのに……。いやまぁ、それはそれとして、いまいちパッとしない能力だな。

ブラッドとしては両手を上げて喜ぶくらいの能力ってのはわかるんだが……俺本人としてはちょっと……。

 

 

「今はまだ実感がないのかもしれませんが、この『喚起』の力でみんなの目覚めを助けてあげてくださいね」

 

 

「アッハイ」

 

 

本心を知られるわけにもいかないのでとりあえず返事を返しておく。そのせいで若干変な感じになったがラケル博士は気づいていないらしい。

ラケル博士が車いすを反転させるのを見て会話が終わったことを悟った俺はいつも通り失礼しましたと言って研究室を後にした。

 

 

 

 

 

  ――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

さて、ラケル博士の研究室を後にした俺は再びロビーに戻り、サクサクと任務の受注を済ませた。

現在は輸送班の車の中で、贖罪の街に向かっている最中である。

ここで俺は自分の能力である喚起に何か引っかかりを覚えていた。心を通わせた者の真の力を呼び醒ますらしいが……これは他人だけに作用するのだろうか?

 

 

もしもの話、真の力の覚醒がジュリウス隊長の血の力のように偏食因子もしくはオラクル細胞に作用して血の力を発現させると仮定すれば基本的に性能を抑えてある神機の真の力を発揮できたり、ブラッドアーツを新たに発現させたりできるのではないか?

 

 

……うーん、今の段階では何とも言えないかなぁ。

この任務が終わったら訓練場にでも行って、色々試して見るかな。

 

 

「どうした仁慈、着いたぞ」

 

 

「あぁ、はい。すぐに行きます」

 

 

どうやら考察している間に贖罪の街についていたらしい。考えるのは後だな。

俺は頭を切り替え、輸送班の車に乗せていた自分の神機を担ぐ。そうして、ジュリウス隊長の方に近づくとシエルがどこか遠くの方を真剣に見ていた。

 

 

「ジュリウス隊長。シエルは何をしているんですか?」

 

 

「ん?あぁ……シエルは目覚めた血の力である『直覚』で遠くにいるアラガミの位置と状態を確認することができるんだ」

 

 

「何それ超便利」

 

 

位置も分かって状態もわかるなんて利点しかない。

俺もそういうのが良かったなぁ。

 

 

「わかりました。ここから200メートル先にあるビルの穴にいるようです」

 

 

すげぇ。本当にわかるんだ……。

 

 

「よし、なら今からそこに向かおう」

 

 

ジュリウス隊長の言葉に俺とシエルが頷き、行動を開始する。シエルが言った場所に行ってみれば向こうもこちらに気が付いたのかビルの穴から虎(?)のような風貌のアラガミが跳び出して来て咆哮を放つ。

 

 

「あれがヴァジュラか……虎?でも鬣っぽいものがるし……ライオンか?」

 

 

「そんなことはどうでもいいでしょう。まったく……君は大型アラガミの前だろうと変わりませんね」

 

 

「普段通りなのはいいことだ。緊張しすぎては逆に体が固くなってしまうからな。さて、向こうもやる気のようだし、行くぞ!」

 

 

「「了解」」

 

 

ジュリウス隊長の声と共に俺とシエルはそれぞれの配置に着く。

それじゃ、お仕事始めましょうかね。

 

 

 

       ―――――――――――――――――――――

 

 

 

「チッ、あのエレキボール(仮)地味なホーミング性能がうぜえな……!」

 

 

自分を中心にして電撃放つし、ピカチ〇ウかよ。

どうも、格好つけて切りかかってみたはいいものの、刃の通りが悪く尚且つ敵の攻撃が広範囲なため結構苦戦を強いられている俺です。

シエルのスナイパーの方が怯む回数が多くてそっちで攻撃すればよかったと軽く後悔しています。

 

 

「ジュリウス隊長。あのエレキボール(仮)どうすればいいですか?」

 

 

あまりにうざいので隣りで余裕の表情を浮かべるジュリウス隊長に問い掛ける。

 

 

「エレキボール……?あぁ、あの電気の球の事か。アレの対処は簡単だ、切り捨てればいい」

 

 

「できるか」

 

 

思わず敬語も使わずにそう返した俺をいったい誰が責められようか。

しかし、ジュリウス隊長は首を捻った後、何か納得したようにポンと手を叩く。

 

 

「なるほど、やり方がわからないと……」

 

 

「違う、そうじゃない」

 

 

何をどう解釈すればそうなるんだ……!

俺が頭を抱えていると丁度ヴァジュラがエレキボールモドキを発射した。それを見本を見せるためのいい機会だと考えたのか、ジュリウス隊長がわざわざエレキボール(仮)の射線上に入り、

 

 

「せや!」

 

 

左下から右上にかけての切り上げで見事にエレキボール(仮)を両断して見せた。

 

 

「こうするんだ」

 

 

「いや、そういわれても……」

 

 

どうもこうもないでしょう。ンなことでできるのはジュリウス隊長くらいですって。

やっぱり、この人が一番化物なんじゃなかろーか。

 

 

「グゥアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

向こうでヴァジュラが咆える。その咆哮はどこか怒気を含んでいるように感じられた。

多分間違ってない。ヴァジュラもジュリウス隊長の理不尽さに怒ってるいるに違いない。

ヴァジュラは一瞬だけ態勢を低くすると、そのまま突撃しようと地面を蹴りあげる。

しかし、地面を蹴り加速しようとしたところで一発の弾丸が後ろ脚を貫き、

ヴァジュラは態勢を崩した。

 

 

「命中確認」

 

 

「お見事」

 

 

俺たちの背後でスナイパーを構えているシエルに軽い称賛を送り、ジュリウス隊長と共に切りかかる。狙うは刃が比較的に通りやすいしっぽだ。

ジュリウス隊長?あの人なら多少効きづらくても行けるらしく、前足と顔面を目にもとまらぬ速さで切りつけまくっていた。

もうあの人だけでいいんじゃないかな。

あ、コア見っけた。

 

 

しっぽを結合崩壊させ、後ろ脚に狙いを変えて切りつけているとアラガミを形作る物であるコアが出てきたので、速攻で捕食する。

すると、伏せたままもがいていたヴァジュラが動きを止めて、その体がグズグズと崩れ始めた。

 

 

『目標の討伐を確認しました。早い……全く、サポートのしがいがないですね』

 

 

「ジュリウス隊長が居ましたからね」

 

 

居なかったらもっと時間がかかっていただろうよ。

やっぱり、最近感応種を倒して調子に乗っていたのかもしれないな。

1週間のブランクがあるとはいえ、話にならん。

 

 

「任務完了ですね」

 

 

「お疲れ、シエル」

 

 

神機を持って近づいてきたシエルにいたわりの言葉をかける。すると、彼女は嬉しそうに微笑みながらお疲れさまと返してくれた。癒される。

 

 

「フッ、まるでピクニックだな」

 

 

「こんな物騒なピクニックがあってたまるかってんですよ」

 

 

パンパンと服の埃を叩きながらそう言うジュリウス隊長にツッコミを入れる。

……さて、任務は完了したしジュリウス隊長のおかげで時間も余った。フライアに帰ったら車の中での考察の件も含めて、訓練場に篭るか。

 

 

 

 

 

 








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