神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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ヒバリさんの口調がなんか違うかもしれない。



第二十八話

 

 

 

 

 「いやー、良くこんな装備で生きてこれたねー。さすが血の怪物(bloody freaks)と呼ばれ、早くも極東の神機使いから恐れられている仁慈君。私たちにできないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるゥ!」

 

 

「何それ聞いてない」

 

 

 一体誰だ。俺にそんな痛々しい二つ名もどきをつけたやつは。ちょっとかっこいいと思っちゃったじゃねーか。病気再発したらどうするつもりだ。

 顔も名も知らない誰かさんに心中で文句を呟いていると、やることがすんだのかリッカさんがまばゆい光を放っているかと錯覚しそうな笑顔でこっちに来た。

 

 

 「いいね、この神機!ところどころ傷がついてるのは少し思うところがあるけど、この傷つき方は今まで見たことがないや。一体全体どんな扱い方をしているんだろうね?」

 

 

 「どんなって……普通ですよ普通」

 

 

 「アッハッハ……まさか」

 

 

 おう、急に真顔になるのやめーや。

 ついさっきまで明るい笑顔だった分ギャップがすごいんです。怖いんです。

 

 

 「というか、どうして普通じゃないなんて言えるんですか?」

 

 

 この極東に来たのはつい昨日。任務は未だ一回しか受けておらず、その唯一受けた任務では特に変な神機の扱いをした覚えはなかった。神機じゃないなら、飛び乗ったり蹴落としたりしたけど。それは神機関係ないから(震え声)

 

 

 「だって、同じブラッドの子達が君の武勇伝を言って回ってるよ」

 

 

 「…………」

 

 

 こ、心当たりが多すぎる!というか、ギルさんを除くブラッド全員が容疑者足りうるぞ。

 

 

 「あー……この話はやめようか」

 

 

 「そうですね」

 

 

 身から出た錆と己に言い聞かせ、気分を一転させる。そして、俺はここに来た本来の目的を達成するために口を開く。

 

 

 「それで、これらの装備……どうにかなりませんか?」

 

 

 中二病真っ盛りの二つ名とか極東支部中に広まる武勇伝とかの所為で忘れていたが、俺がここに来た目的は神機のパーツ強化である。

 いやね、さすがにザイゴートもさっくり切れない武器は俺でもちょっと遠慮したいんですよね。

 ほら、俺基本的に生物共通の弱点である首を狙うんだよ。妖怪首おいてけなんですよ。アラガミが生物の枠に入るか微妙だけど。

 で、首切りを狙うということは当然アラガミとの距離はゼロ距離なわけで……神機がはじかれたりすると致命的な致命傷を負って病院で栄養食を食べるはめになる。

 

 

 「うーん、このクロガネ装備も改良の余地はあるんだけど……具体的な方針なんかがないと改良できないし。素材もあるか分からない……仮に改良しようとしても、その期間君が使ってる刀身であるヴァリアントサイズの代えがね……」

 

 

 誰も使わないからないんですね分かります。

 

 

 「困りましたねぇ」

 

 

 「一応ヴァリアントサイズ以外の刀身はあるけど……使える?」

 

 

 「一通り使えますけど……」

 

 

 人並みに使いこなせる自信は一応ある。ヴァリアントサイズの使用を制限されたときに一通り使ってみたし、ダミーアラガミも相手に戦ってみたりもした。

 けれど、訓練と実践はわけが違う。特に俺は想定外のアラガミが良く乱入してきたりするのだ。ヴァリアントサイズ以外での実践はそういった想定外の事態の対応に不安が残る。しかし、今の状態のヴァリアントサイズを使ってもそれは同じこと。状況としてはほぼ詰んでる。いや、スタングレネードとか使えばワンチャンあるか?うーん、実際に遭遇してみないと分からないかな。

 

 

 「リッカさん。とりあえず改良して欲しいところを言ってもいいですか?もしかしたら素材があるかもしれないし」

 

 

 「そうだね。じゃあ言ってみて!」

 

 

 「切れ味と軽さが欲しいですね」

 

 

 「日本刀でも握ってれば?」

 

 

 「それだとアラガミ倒せませんよ」

 

 

 「冗談だよ冗談……んー、その要望だと……ギリギリ足りないな」

 

 

 「足りないんだ」

 

 

 現実は非常であった。こういうのはギリギリ足りて、新たなる力を手に入れるフラグでしょうがぁ。

 

 

 「何が足りないんですか?」

 

 

 「このクロガネを形成している鋼鉄かな」

 

 

 「……俺のシールドをばらして改良に使うというのは?」

 

 

 「………その発想はなかった」

 

 

 素材がないなら作ればいいじゃない。

 神機使いになってからシールドを使った回数は片手で足りる。それに足りないのはヴァリアントサイズだけなので、俺が装備しているバックラーの変わりはさすがにあるだろ。

 

 

 「いけそうですか?」

 

 

 「素材としては充分だね。けど、大丈夫?次に任務行ったときポックリ逝ったりしない?」

 

 

 「大丈夫だ、問題ない」

 

 

 「どうしよう。さらに不安になったんだけど……」

 

 

 「まぁ冗談はこれまでにして、本当に大丈夫ですよ」

 

 

 想定外のアラガミが乱入し、そいつが明らかに手に負えないやつであればスタングレネードぶん投げて全力で逃げれば大丈夫だろう。

 

 

 「それで刀身の改良ですが……どのくらいかかります?」

 

 

 「フフン、私をなめてもらっては困るよ。刀身の改良なんて私にかかれば一日で終わるね!」

 

 

 「リッカさんすげぇ!」

 

 

 極東の常識はずれな神機使いをサポートする彼女もまた常識はずれだった。装備の改造とか普通、一日じゃあ終わんないだろ……。

 

 

 「ま、今回は特別。普通はもっとかかるんだけどね。君には戦闘データを取らせてもらうっていう約束をしてたからその代金だと思ってくれていいよ」

 

 

 「ありがとうございます」

 

 

 「いいっていいって。さてと、私は早速改良に行ってくるね。明日、楽しみにしといてよ!」

 

 

 リッカさんはそういった後、俺の刀身とバックラーを持って部屋の奥に消えていった。取り敢えず俺も、神機にクロガネのチャージスピアと適当なバックラーを取り付け整備室を後にした。

 

 

 

 刀身強化の件がとりあえず落ち着いた俺は、現代に居たら通報待ったなしと思えるくらい怪しいおっさんのところに居る。この人、この身形で万屋らしく結構便利なものが売っているとは藤木さんの弁。

 俺がここに来たのは当然想定外の事態に備えるためである。毒とか、今まで神機振ってその風圧で防いだりしたけど、チャージスピアだときついかもしれないからな。解毒効果のあるやつと、回復錠、後はスタングレネードの素材かな。

 

 

 「というわけで、今言ったものある?」

 

 

 「あるよ」

 

 

 おぉ、さすがだ。藤木さんが推すだけの事はある。ちょっとばかり高いが命と比べれば安いもんだろ。パッパと買ったものを受け取っていくが、その途中で気になるものを見つけた。

 

 

 「武器?……おっさん、このカタログ……なに?」

 

 

 「見ての通り、神機のパーツのカタログだ」

 

 

 神機のパーツって売ってるものなんだ……。ぱらぱらとカタログを流し読みしてみる。パーツの特徴や実際の写真などが付属されていてとても見やすい。

 

 

 「ん?」

 

 

 そんな中で気になる名称のパーツがあった。クロガネである。これ普通に売ってんのかよ。精鋭部隊にのみ配備(笑)される鋼鉄の武器(爆笑)

 しかもお値段なんと500fcこれは(笑)付けられても文句は言えませんわ……。

 待てよ。ということは俺は今まで合計1500fcで戦っていたのか……よく生きてたな。質問に答えてくれたおっさんにお礼を言ってその場を去る。そして次にすぐ近くにあるカウンターへ向かう。仕事の有無を確認しないと今日一日どうやって過ごそうか決められないし。

 

 

 「というわけで、今日は任務ありますか?」

 

 

 「どういうわけかは分かりませんが、任務はありますよ?新しく開発された、リンクサポートデバイスの臨床試験らしいです。詳しいことはダミアンさんから伺ってください」

 

 

 

 チラリと竹田さんの視線が俺から外れる。彼女の視線の先を追ってみればそこには額に青筋を立てて、手まねきをするダミアンさんの姿が。

 おぉう、これは激おこですね(確信)

 やっぱり無視がいけなかったか。数秒行こうか行くまいか葛藤するが自業自得ということでおとなしくいくことにした。

 

 

 「サンダースプリットアタック!」

 

 

 「ぐぼぁ!?」

 

 

 おとなしく近付いた結果がこれだよ!

 サンダースプリットアタックとは名ばかりの唯のアッパーカットだったが、むしろこっちのほうがつらい。脳が揺さぶられ、体を動かすのが困難だったが何とか気合で命令を出し空中で体勢を立て直し地面に着地する。

 

 

 「この、アッパーカットで人体を吹っ飛ばすとかどれだけ力入れたんだよダイアーさん」

 

 

 「ダミアンな。これは俺を無視してくれた仕返しだ」

 

 

 「まさか全力のアッパーカットが飛んでくるとは予想外だった」

 

 

 脳が揺れたことによる弊害もなくなったのでよいしょと立ち上がり、再びダミアンに接近。

 

 

 「今回はおとなしく食らったが、調子に乗って二発目とかやったらカウンターぶち込むから」

 

 

 「やんねーよ」

 

 

 「ならいいや。それで?リンクサポートデバイスって言うのは一体何なんだ?」

 

 

 「リンクサポートデバイスは、フィールドに設置した機材に神機を連結し、偏食場パルスによる支援効果を発生させる装置だな。元々は余った神機の活用法として考案されたもので各個体の特性次第で、違った効果を発揮するシロモノだ。わかったか?」

 

 

 「すまねぇ、専門用語はさっぱりなんだ」

 

 

 「聴く気あんのかてめぇ。……ま、簡単に言っちまえば攻撃力上がったり早く動けるようになったり敵の動きを止められるといった効果を発揮できるんだよ。今回はそれが本当に起動するかの実験だ」

 

 

 「ま た じ っ け ん か」

 

 

 「そう悲観するなよ。みんながお前を信頼している証拠じゃないか。そう簡単にくたばるとは思われてないんだよ」

 

 

 「だからって危ない橋渡らしていい訳じゃないでしょうよ……」

 

 

 一方通行の信頼ほど厄介なものはないと思いました。

 

 

 「神機使い(俺達)は基本的に仕事を選べない、あきらめろ」

 

 

 「はいはい、それではお仕事に行ってきますよー」

 

 

 やる気のそがれることを言うダミアンに適当な言葉を返し、俺は彼から受け取った任務の標的や周囲のアラガミの状況などを読みながら、神機をとりにむかった。

 

 

 

 

 

 

            ―――――――――――――――

 

 

 

 

 「へぇ、これがリンクサポートデバイスの効果か」

 

 

 

 今俺の目の前にはホールド状態になり、動くことができない無数のアラガミが居る。

ダミアンが持ってきた任務の現場に向かい、さぁアラガミ狩りだ!と意気込んだ瞬間にこれである。どういうことだと首を傾げていると付けている通信機から竹田さんが俺の疑問について答えてくれた。リンクサポートデバイスの効果ですと。

 

 

 「ホールドは便利でいいね」

 

 

 フッと一息吐き出すと共に持っている神機でアラガミを突き刺す。続けて同じ動作を近くで固まっているアラガミにも行い、その息の根を止めていく。

 

 

 「よーし、この辺の奴は一掃できたな」

 

 

 いつものごとくコアをモグモグさせて次のアラガミを探しに行く。見つけたら神機で突き刺す。またアラガミを探す。突き刺す。探す。突き刺す。探す。突き刺す。

 

 

 「ちょっと竹田さん?アラガミ多すぎじゃありませんこと?」

 

 

 たった今、倒したグボロ・グボロの死体をグシャリと踏みつけながら通信機を通してオペレーターである竹田さんに尋ねる。

 

 

 『なぜか周囲のアラガミたちが仁慈さんのほうに向かっていますのでそう感じるのも無理はないですね』

 

 

 「なん……だと……」

 

 

 あまりの衝撃に思わずどこかにイェン・ツィーが居ないか探してしまった。居なかったけど。

 

 

 

 『さらに仁慈さん。残念なお知らせがあります』

 

 

 「すいません。いいお知らせしか聴きたくありません」

 

 

 『なら言い換えます。とても素敵なお知らせです。仁慈さんお仕事追加だそうです』

 

 

 「どこが素敵なのさ……」

 

 

 唯の残業報告じゃないですかーやだー。

 こういうのは本人通してから承諾して欲しいよね。連戦って思っている以上に疲れるんですよ?

 

 

 「はぁ……それで、その任務の内容は?」

 

 

 最近ため息ばっかり付いている気がする。もしかしてこれの所為で幸せが逃げてこうなっていたりするのだろうか。

 

 

 『内容はボルグ・カムランの討伐。目標の到達予想時間は―――』

 

 

 ガシャン!

 

 

 何か大きく金属めいたものが地面に落ちたような音がする。

 

 

 「■ ■ ■ ■ ■----ッ!」

 

 

 人間では決してでないような音が空気を震わせながら俺の耳に届く。

 ステイステイ、これは俺の幻聴だろう。いくらなんでも早すぎる。まだ到達予想時間すら聞いてないぞ?

 ゆっくりと、音の発生源へと視線を向ける。それと同時に通信機から竹田さんの声が聞こえてきた。

 

 

 

 『――――――今です』

 

 

 彼女が言い終わるのと同時に俺の視界には、蠍が騎士の格好をしているような風貌をしたアラガミが俺の目の前に現れた。ふぁっく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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