あと評価を付けてくださった方、本当にありがとうございます。これからも失踪しないように頑張っていきたいと思います。
ゾクリ。
背筋に寒気が走る。そう感じると同時に俺の体は無意識に後ろへと下がっていた。どうやら咄嗟に生存本能が働いたようだ。その証拠に、数秒前に俺が居た場所にはボルグ・カムランが持っている鋭く巨大な尻尾(?)が突き刺さっていたからだ。
あのまま居たら串焼きみたいになってたな。
地面に深く突き刺さった己の尻尾(?)を引き抜こうと必死に頑張っているボルグ・カムランには悪いが、この隙を逃すのはさすがにない。
突き刺さっている尻尾(?)に跳び乗り、その上を走り抜ける。そしてある程度上ったところで跳び下り、落下の勢いも上乗せして神機をボルグ・カムランに突き刺した。
「■ ■ ■ ■――――――――――ッ!?」
肉を切ったときのような感覚が神機を通して伝わる。ボルグ・カムランも苦しんでいるようで効果はあったようだ。しかし、
「チッ、外した……!」
俺が狙ってたのはアラガミを形成するコアだ。苦しんではいるもののまだまだ元気いっぱいな様子を見る限り、狙いはそれたっぽい。
まずいな。苦労はしなかったもののそれなりに体力は消費している。長期戦になれば間違いなく俺がやられる。
たった今ブチ空けた傷をえぐる様に蹴りながらボルグ・カムランから距離をとる。狙うとするなら今攻撃したようなところかな。他はいかにも頑丈そうだし。
痛みがある程度収まったのか、尻尾をこちらに突き出し、威嚇するような行動をとるボルグ・カムランに対して神機を構える。そして、すぐに地面を蹴り上げチャージスピアの特性であるチャージグライドを使ってボルグ・カムランに肉薄する。狙うは口の部分。神機ぶち込んで体内でプレデターフォームにして喰らい尽くしてくれる。
しかし懐に入れてやるかといわんばかりにボルグ・カムランは両腕をあわせ、盾にして前に出す。カキンと甲高い音を立てて、突進をはじき返される。盾硬すぎワロタ。まぁ柔らかかったら意味ないだろうけどさ。
さって、どう攻めようか。盾があるとするなら正面突破はまず無理だ。武器によっては奴の盾ごと攻撃できるかも知れないが、チャージスピアじゃあ相性が悪い。となるとさっきみたいに上から攻撃するのが一番効果的か。
「いよっと」
自分がとる行動を決め、ボルグ・カムランに向かって跳躍。いつでもチャージグライドが使えるようにエネルギーをためておきながら奴の上をとる。しかし、さっきの攻撃が効いているのかボルグ・カムランも俺と同じく跳躍してきた。
その細い足で跳べんのかよ……!
このまま行ったら当然正面衝突。俺の何倍も大きいボルグ・カムランとぶつかり、踏み潰されたりしたらもちろんのこと唯ではすまない。チャージが完了した神機を後ろに向けてためていたエネルギーを放出させ、後方に飛んだ。
「あっぶねぇ」
念のため 溜めてて良かった エネルギー。
ボルグ・カムランと俺がほぼ同時に着地する。だが、ボルグ・カムランは着地すると体を捻り己の尻尾を振り回した。ボルグ・カムラン!アイアンテールだ!
おっと、こんなくだらないこと考えている場合じゃない。
咄嗟に地面に伏せることでアイアンテールを回避。相手が大きくて助かったわ。ちょっと髪の毛もっていかれたけど体吹っ飛ばされるよりはマシだろ。
腕立て伏せをするかのように両腕で地面を押し、体を起こす。そして再びエネルギーのチャージを開始する。色々使えるし、溜めてたほうが先程のように予想外の事態が起きた時に対応できる。
「そろそろ決着付けないと……」
先程までの雑魚戦と現在のボルグ・カムランで大体一時間くらいぶっ続けで戦っているのに加え、ボルグ・カムランは初見でいきなりソロだ。体力、精神力共に消費がマッハなのである。
次々と繰り出される尻尾を使った刺突を回避したり、神機を横からぶつけて軌道を逸らしたりしつつ隙を伺う。伺っているんだけど……
――――攻撃を緩める気配が一切ない!
ボルグ・カムランはこれでもかといわんばかりにひたすら尻尾による刺突を繰り返していた。仕方ない。隙ができないなら別の方法に変更だ。プランBだ。
頭、鳩尾、肺、心臓、股間といった喰らえば色々と致命傷なこと間違いなしの所を必要以上に狙ってくる攻撃を回避し、再び頭に向けられた攻撃に対してこちらも今まで溜めていたエネルギーを上乗せした攻撃を真正面からぶつける。唐突にぶつけられた攻撃にボルグ・カムランの体勢が一瞬崩れる。その隙を縫って後方に大きくバックステップしつつこの短期間でおなじみとなったエネルギーチャージを行った。すぐにチャージが終了したことを確認すると俺はチャージスピアのエネルギーを放出させながら軽く前方に神機を投げる。
軽く投げた神機は、放出されるエネルギーによって加速しながらボルグ・カムランへと一直線に向かっていく。自分のほうへと向かってくる神機に対して先程俺の突進を防いだ両腕の盾を構えることで応戦するらしく、ボルグ・カムランは両腕をあわせ攻撃に備えている。
しかし残念。それは悪手だ。
俺は神機を前方に投げると同時に駆け出し、ボルグ・カムランが正面に盾を構えたときにはすでにボルグ・カムランの体を支える足の一本にいち早く接近するために付けていた勢いをプラスした回し蹴りを叩き込む。すると、ボルグ・カムランを支える足の一本が不意に地面を離れたことにより、バランスを保てなくなったボルグ・カムランは構えていた盾を崩しながら自分も地面に倒れこんだ。
さらにそんな無防備な姿をさらしたボルグ・カムランの口と思われる箇所に先程投げた神機が突き刺さる。
俺は、刺さっている神機をすぐにつかんでさらにねじ込むように奥へと押しやる。ボルグ・カムランが苦しむように甲高い声を上げているが、化け物に慈悲はないので無視して続行。俺の任務を連戦にしてくれた恨みをたっぷりと込めつつ刀身が全てボルグ・カムランの体内に入るくらい突き刺す。とどめにその状態で神機をプレデターフォームへと変化させる。
四方八方がオラクル細胞という経験がないのか、心なしか神機が歓喜に震えているように感じる。実際神機がひとりでにがたがたいっているのだ。そんなに早く喰いたいか。
「喰らい尽くせ」
お望み(思い込み)通りに許可を出すとボルグ・カムランの体内からとてつもなく生々しい肉を咀嚼する音が響き渡る。結構精神的にクるものがある。少なくとも今日は肉を食えそうにないわ……。
しばらく、苦しみもがいていたボルグ・カムランだったが、コアを捕食したかダメージが一定を超えたかですぐに動かなくなった。それと同時に耳に付けている通信機からも竹田さんのオペレートが聞こえる。
『目標の討伐を確認。急に入った任務をこなすとは、さすがですね』
「今度からはきちんと本人通してからお願いしますよ」
ホント頼むね。マジで死ぬから。
未だボルグ・カムランの形状が残っている部分をむしゃむしゃしている神機を引っこ抜いておとなしくさせてから、帰りのヘリが待っている場所へと向かった。