神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
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製作途中のものを誤って投稿してしまい申し訳ありませんでした。

さて、なんだかんだで三十話目になりましたこの作品。これからも頑張って続けていきますのでよろしくお願いします。


第三十話

 

 

 

 

 

 

 うぉえ、酔った。

 初めてヘリを使って帰還したんだけど、連戦の疲れに加えヘリの揺れに慣れていないこともあり胃の中のものがリバースしてしまいそう。

 フラフラとした足取りで何とか極東支部のエントランスにまでたどり着く。もう、今日はこのまま寝てしまいたい。

 竹田さんと事後処理について軽く話し合った後、自室へと行くためにエレベータに向かう。

 覚束ない足取りで進んでゾンビのように進んでいるため、俺の周りにいる人たちが引いているがそれを気にせずに歩みを進める。

 そんなだえ下が近づきたくないと思い実際に近づかない状態の俺の前に、いかにも一仕事終えましたといった表情のリッカさんが現れる。嫌な予感しかしない。彼女に失礼だと思いつつ、視線を合わせないように横を通り抜けようとするが、

 

 

 「どこに行くのかな?」

 

 

 ガッと肩を掴まれ、その場を立ち去ることはかなわなかった。

 魔王からは逃げられない!

 疲労で崩れそうになる体に鞭をうち、リッカさんに向き直る。俺が彼女に向ける視線が若干冷たいのは勘弁してほしい。

 

 

 「何か用でしょうか?ぶっちゃけすごい疲れているんですが……」

 

 主に連戦やらヘリコプター酔いやらで。今自室にあるベットに潜ったら一瞬で夢の中に行ける自信があるね。

 

 

 「そう露骨に嫌そうな顔しないでよ。さすがに傷つくよ」

 

 

 ぶぅと頬を膨らませて不機嫌アピールを始めたリッカさん。あざとい。だが悲しいかな、疲労でドボドボな俺はそんなのより休養なのである。

 

 

 「おぉう。表情を見るに割とマジにやばそうだね。だったら簡単に話を済ませちゃおうか。まずはリンクサポートデバイスの臨床試験ありがとうね、おかげでいいデータが取れたよ。神機のほうは順調で明日の朝には確実に仕上がっているからね」

 

 

 「分かりました。ありがとうございます」

 

 

 最低限の言葉だけを残し、エレベータへと乗り込む。背後からリッカさんの声が聞こえるが完全にスルー。

 ブラッドの部屋が割り振られている区に到着すると、一直線に自室へと向かい直でベッドへダイブ。わずか数秒後に俺の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

            ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 復活ッ!復活ッ!!

 

 

 ゾンビのように自室に戻り、泥のように寝た日の翌朝。ベッドから這い出た俺は片手を天井に向かってあげながらそんな事を叫んでいた。はたから見れば完全に不審者である。

 しかし、前日アレだけの疲労を感じていたにも関わらず一晩ぐっすり眠るだけで体調が全快するというのは便利だな。某ハンターを思い出す。その代わりに何事もなく毎日アラガミ討伐に繰り出されるのだが。それなんて社蓄?

 

 

 神機使いの社蓄性能の高さはともかく最低限の身だしなみを整えた俺は神機の整備、保管を行う部屋を訪れていた。目的はもちろん改良された刀身の回収である。やっぱり自分に一番合った刀身を装備していたいのだ。

 

 

 「お、来たね。刀身の改良は昨日言った通り終わってるよ。もう装備する?」

 

 

 部屋の奥からひょっこり顔を出して訪ねるリッカさん。どのくらい早くここに来ているのだろうかと疑問に思いながら彼女の言葉に頷くと、出していた顔を引っ込めて改良が済んだ刀身を探しこっちに持ってきた。

 

 

 「どうよ」

 

 

 「刀身単体で持ってこられても困るんですけど……」

 

 

 渾身のドヤ顔を披露しながら改良された刀身を見せ付ける。しかし、そこにあるのは本当に刀身だけで神機本体に繋がっていない。振り心地、使い心地が分からない上に外見は改良前の物と変わりがないためなんていっていいのやら分からない。

 

 

 「あはは、そうだよね。ならさ、これから訓練場を借りてこれの使い心地を確かめてみたらどうだい?私も君の戦闘データとヴァリアントサイズのデータを取れるから一石二鳥だよ!」

 

 

 「確かに。朝も早いし誰も使っていないでしょうし、行きましょうか」

 

 

 というわけで使い心地を確認するために訓練場へと向かった。……最近訓練場に入り浸っている気がするなぁ。

 

 

 ささっと訓練場にたどり着いた俺は新しい刀身が装備してある神機を担いで訓練場の中へ、リッカさんは訓練場に出てくるダミーアラガミの制御を担う部屋にて俺が相手をすることになるアラガミの設定をしている。

 

 

 『今回のダミーアラガミは私がお遊びでtゲフンゲフン……私とサカキ博士が共同で製作したダミーアラガミの相手をしてもらうよ。』

 

 

 「今お遊びって言いかけましたね」

 

 

 言いかけるというかガッツリ口に出てたけどね。

 

 

 『気にしない気にしない。それでね、そのダミーアラガミの強さなんだけどかつてこの極東に居たもっとも強い神機使いたちがクリアできるくらいの強さだね。後は隊長をやっている人達かな』

 

 

 「それ以下の実力の神機使いはどうしたんですか?」

 

 

 『実はつい最近出てきた新種のアラガミのダミーでね。強さはさっき言ったとおりだから油断しないようにね』

 

 

 「聞いてよ」

 

 

 どうしてこの世界の人達はこうやって人の話を聞かないのか……。ここ極東でしょ?名称こそは違うものの日本でしょ?事なかれの日和見主義で自分を表に出すことが苦手な日本人はアラガミの出現と共に絶滅したというのだろうか。

 しかも極東でもほんの一部、上位の強さを持った人達しかクリアできないものをぶつけてくるとか……リッカさんが俺に抱いている印象が良く分かるな。

 

 

 『それじゃ始めるよ』

 

 

 スピーカーを通して聞こえるリッカさんの声が途絶えた瞬間、ダミーアラガミが地面から精製される。難易度が高いのでこちらも瞬時に戦闘用の意識に切り替え、神機を構える。

 地面から精製されたダミーアラガミは珍しく人型であった。

 しかし、頭上では天使の輪のようなものが光輝きながら浮いていており、その体を構成しているものも機械に使われるコードに似たようなもので構成されていた。

 

 

 「これが……アラガミ?」

 

 

 あまりにも異質。もともとアラガミは異質なものだが、このアラガミはその中でも群を抜いて異質に思えた。

 

 

 『そう。これがここ数年で現れたアラガミ。ツクヨミだよ。本物に比べて大分劣化してるけどそこらの神機使いじゃ苦戦間違いなしの相手だからね』

 

 

 サスケェ……。いや、違うなアレはイザナミだったか。

 しかし、あのツクヨミというダミーアラガミは一向にこちらを攻撃する気配がない。くだらない想像をしているときなんて絶好の隙であったにも関わらず、精製された場所から微動だにしなかった。

 それが逆に不気味すぎる。いつものごとく一気に近付いてもいいのだが、初見の相手で強さも折り紙つきとなれば話は別だ。ここは自分の武器の性能を存分に使うとしよう。

 俺はヴァリアントサイズを咬刃展開状態へと変え、攻撃が届くギリギリの距離で神機を振る。え?戦法がセコイ?馬鹿め、勝てばよかろうなのだ。

 

 

 俺が振るった神機はしっかりとツクヨミというダミー……面倒だな、纏めてダミーツクヨミに当たった。もう腕と思わしき部分に食い込んでいるくらいは当たった。しかし、未だにダミーツクヨミは動かない。

 なにこれ?壊れてんじゃないの?

 

 

 「リッカさんこれ壊れてるんじゃないですか?」

 

 

 『ちゃんと正常に起動してるよ。これはもともとそういう仕様なの。多分そろそろ動き出すと思うから、油断しないようにね』

 

 

 彼女がそう言い終わるのと同時にダミーツクヨミの頭上に浮いていた天使の輪のようなものが光りだし、下を向いたままだと思われた頭部が動き、こちらを捕捉したような動作を行った。頭部の中心にある丸い円もなんか光ってるし、間違ってないと思う。

 ダミーツクヨミが戦闘態勢に入ったことを確信した俺は今まで以上に気を引き締める。

 ダミーツクヨミは右腕のようなものを伸ばし俺の頭を貫かんとする。さっき気を引き締めて警戒していたがノーモーションから繰り出されたその攻撃にはさすがに反応が遅れ、とっさに神機をふるって右腕を弾く。あ、右腕が半分くらい切れた。

 思った以上の脆さに動揺するが、切られた本人であるダミーツクヨミはブラブラ揺れている右腕には何のリアクションを取らず、頭上にある天使の輪のようなものからマシンガンのごとく光弾を打ち出した。

 その量は、俺の視界を光弾で埋め尽くすくらいの密度であった。

 

 

 「撃ち過ぎだろ!?」

 

 

 弾幕ゲーでももう少し隙間あるぞ!?

 あまりにも予想外な光景に思わず叫びながらも、神機をプロペラのように回して自分に当たるであろう光弾をすべて弾く。神機が何やら赤いエフェクトが走っている気もするが、気のせいだと思うことにする。自分に降り注ぐ無数の光弾をすべて防ぎ切り、回していた神機を再び構えると、足の筋肉をばねのように使い一気にダミーツクヨミとの距離を縮める。

 一方ダミーツクヨミはブラブラしている両腕を上にあげるとゆっくりとその高度を上げていく。切れかかっている腕がだらーんとしているのがとってもシュール。一体何事だと思い浮かんでいくダミーツクヨミを目で追うと、俺の頭上から光の柱が降ってきた。

 

 

 「ウェイ!?」

 

 

 慌ててバックステップを踏むが避けきるには反応が遅すぎたため、直撃こそ回避できたものの服の端は焦げ、光の柱の衝撃波により無様に地面を転がることとなった。

 ダミーツクヨミ強すぎワロタ。体は脆いものの、攻撃一つ一つが確実に命を刈り取りにかかってきている。ダミーでこれほどの強さを持っているんだったら、本家はどのくらい強いんだろうね。

 まだ見ぬ本家に戦慄しつつ、体を起こした俺は再びダミーツクヨミに切りかかった。

 

 

――――――ちなみにこの後手持ちの道具全てを使い、自分の持てる全てを出し切って何とか俺は勝利をもぎ取った。

 

 

 

 

 

             ――――――――――――――

 

 

 

 

 新たな刀身の性能と命の危機を充分に堪能した俺は、軽くシャワーを浴びた後、リッカさんと合流し、エントランスへと向かっている。

 

 

 「アレは新武装の実験なんてものではなかった……」

 

 

 そこいらの大型アラガミを相手にするときよりもよっぽど危険だよ。

 

 

 「ふふん、私とサカキ博士が合同で作り上げた傑作だからね!」

 

 

 「褒めてねぇよ」

 

 

 訓練用ダミーアラガミとはなんだったのか……。いや、アレは強い人向けの奴だからいいのかな?少なくとも武装実験の相手としてふさわしくはないな。

 えっへんと胸を張るリッカさんを尻目に溜息を吐く。結構露骨に吐いたつもりだったが、自分が望んでいたデータを取れて、ご満悦なリッカさんには効果がないようだ。

 

 

 「そういえば、今日は私が作った試作品のリンクサポートデバイスの実験に付き合ってね」

 

 

 「ここ数日ゴッドイーターしてないなー」

 

 

 アラガミは倒しているけど、純粋にアラガミを討伐するというのはこの数日していない気がする。

 

 

 「気にしない気にしない。神機使いだってどこか何でも屋に近いところあるし」

 

 

 そういうこと言うのやめようよ。

 

 

 「それはともかく。具体的にやって欲しいことだけど、試作品がしっかり起動するかというのはもちろんとして、他にはデータの摘出や必要な素材の確保とかもやって欲しいな」

 

 

 「もうこの際俺で実験することに対しては何も言いませんけど……昨日リンクサポートデバイスの臨床試験をやったばかりですよ?」

 

 

 「それはね、今回試すリンクサポートデバイスがまったく新しいタイプのものだからだよ」

 

 

 へぇ、そんな物まで作ってたのかこの人。やっぱり極東の人は優秀な人が多いな。内面はともかく。

 

 

 「いま運用されているリンクサポートデバイスは、神機の機能とは排他関係にあるから、戦闘か、支援かのどっちかしかできないんだ。でも、仁慈君に渡す試作品は、普通の神機としての機能を殺さずにリンクサポートデバイスの機能を発揮してくれる!……理論上は」

 

 

 「それはすごいですね。でも、もし試作品がうまくいっていない場合はどうなるんですか?」

 

 

 「リンクサポートデバイスの効果が発動しないよ」

 

 

 「俺の神機が止まる可能性は?」

 

 

 「……………仁慈君なら、神機がなくてもアラガミと戦えるよね」

 

 

 「おい」

 

 

 ちょっと、この人無茶苦茶過ぎるんですけど?本気で言っているのだとしたら今後どのように付き合っていくべきか真剣に考えるレベル。

 

 

 「さすがにしないよ、そんな事。もし、神機が動かなくなった場合はすぐに帰ってきて。今回の目的はあくまでも実験。アラガミ討伐は二の次だよ」

 

 

 「それは安心した。リッカさんにもまだ人の心が残っていたんんだな……」

 

 

 「どういう意味かな?」

 

 

 しまった、声に出てたか。

 俺は先の発言についてひたすら問い詰めてくるリッカさんを今朝の仕返しもかねてスルーし、極東が誇るシェフ(?)のムツミちゃんの料理に舌鼓を打ち、その後リンクサポートデバイスの実験のためにフェンリル印の車に乗り込んだ。

 最後のほうにリッカさんが微妙に涙目になっていて可愛かったです(小並感)

 

 

 

           ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 現場に着いた俺は早速、神機にリンクサポートデバイスを接続する。そしてその状態で神機の形態変更を行った。これは神機がしっかりと機能しているかどうかの確認である。神機はしっかりと銃形態に変化したので少なくとも神機は正常に動いているらしい。

 神機の状態の確認が終わると同時に、今回の実験をモニターしているリッカさんの声が通信機越しに耳に届く。少しだけ泣きが混ざっているのはスルーで。

 

 

 『……うん。神機、リンクサポートデバイス共に正常に機能してるね。この場合、仁慈君には普段よりも強い力を発揮できる効果が現れるはずだよ。』

 

 

 確かに言われてみれば、いつもより神機が軽く感じるし体にも力がわいてくるような感覚がある。

 

 

 『ためしに近くに居るアラガミを相手してみて。面白いデータが取れると思うから』

 

 

 「了解」

 

 

 プツンと通信を切断し、高台から地面に生えているコクーンメイデン三兄弟を見下ろす。それでは早速やってみましょうか。

 乗っていた高台からいつものごとくジャンプして降りると地面に着地すると同時に蹴って加速する。何時もこればっかりでごめんね!でもこんなことしかできないんだ!

 

 

 誰に言っているのかもわからない言い訳をこぼしつつ、三兄弟に肉薄する。そして咬刃展開状態にして纏めて薙ぎ払った。

 リッカさんの言っていたリンクサポートデバイスの効果なのか三体纏めて薙ぎ払ったのにまったく手ごたえがなかった。その後も、その場にひょっこりと現れたシユウさんもついでに狩ってリンクサポートデバイスの性能を確かめ終え俺は極東へと帰還した。

 

 

          

 

               ――――――――――――――

 

 

 

 帰還した俺はリッカさんからあの試作品の話を聞いて驚いた。実はアレ、今まで他の人でも試してみたらしいのだが一度も起動した例がなかったらしい。

 では何故俺が動かせたのかといえば、俺の謎多き力である喚起が何らかの触媒となった可能性が高いとの事らしい。

 まぁ、俺だけが使える要因といえばそれぐらいだもんな。

 

 

 「だから今後は君を通してリンクサポートデバイスの改良を行っていきたいんだけど……協力してくれる?」

 

 

 今までにない、真剣な声音でリッカさんが俺に問いかける。

 急に真面目になられるとこちらも困るのだが……誠意には誠意で返さなければなるまいよ。

 

 

 「いいですよ。ただ、また神機のことで何かあったら少しばかり優先的に取り組んでくれませんか?」

 

 

 「ばれない程度にならね」

 

 

 「充分です」

 

 

 「よっし、契約成立だね!改めてこれからよろしく!」

 

 

 「はい」

 

 

 さて、綺麗に纏まった所で俺は部屋に帰ろうかな。今日はなぜかアラガミの出現率が低く俺に仕事は入っていなかったはずだし。

 

 

 

 「あ、仁慈さん。あなた宛に任務が届いていますよ。三つほど」

 

 

 

 ――――俺の視界から仕事の内容を記した書類が逆流する……!うわぁぁぁぁああああ!

 

 

 

 

 

 結局その日は合計四つの任務を終わらせた。

 

 

 

 




UAが30000越えました。ありがとうございます。







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