神様死すべし慈悲はない   作:トメィト
<< 前の話 次の話 >>

44 / 96
今回は難産でした。
というか、無理矢理ひねり出した内容なので色々と違和感があるかも知れませんが多めに見てください。


第四十四話

 

 

 

 

 

 

 シックザールさんの言っていた言葉が頭から離れない。いや、言っている内容自体はあまり理解できなかったんだが、あの時の彼の表情と声音がなにやらただ事ではないような雰囲気だった。

 なんか胸やけをしたときのような不快感を感じ眉を顰める。そして、あの場でシックザールさんとなにやら通じ合っていたラケル博士に何か分かることはないかと、サカキ支部長に新しい感応種のことについて報告したあと、彼女に聞こうと思ったのだが。

 

 

 「………空中合体………」

 

 

 「…ブレード……とっつき……コジマ……ソルディオス・オービット……」

 

 

 何あの二人。本当に神機兵についての話し合いなんだよね?経済戦争で狂った世界の兵器とか、宇宙をまたにかけて戦うロボットとか作ろうとしてないよね?……正直あの二人なら本当にやりそうで怖いんだけど。

 ……変態に技術を与えると取り返しがつかないって本当なんだなぁ。

 ラケル博士に聞きたいことはあったのだが、これ以上この二人と同じ空間に居るのは俺の精神上良くない為、聞こえていないと思いつつも失礼しましたと告げて部屋を出た。コジマは……まずい…。

 

 

 

 

 

               ――――――――――――――

 

 

 

 さて、不穏なことを呟き話し合っているマッドサイエンティストの巣窟から見事に脱出した俺は現在第一部隊……というか極東神機使いたちの癒し兼一番の常識人であるフォーゲルヴァイデさんに捕まっていた。内心戦々恐々としている。

 

 

 いや、だってさ。ぶっちゃけ俺はフォーゲルヴァイデさんによく思われていないということを分かっている。初めて会った時からこっちを睨むというにふさわしいほどの眼光を向けてきていたし、一緒に任務をしてからはお前もかという視線と共に私に関わるなオーラを出していた。

 そんな彼女が少々不機嫌そうな顔をしつつも俺に話しかけてきたのだ。怖がらないわけがない。

 たとえアラガミを虐殺できても怒っている女の子は怖いんだよ。

 

 

 「ねぇ………私に戦い方を教えてくれない?」

 

 

 「はい?」

 

 

 フォーゲルヴァイデさんの口から出た言葉が予想外だったので反射的に間の抜けた言葉で返してしまった。

 確かフォーゲルヴァイデさんの刀身はチャージスピアだったはずだ。それなら心情的にも教わりにくい俺ではなくギルさんに教えを乞うべきだろう。俺自身も神機使いになってから彼女とそう変わりないので、人に教える技能はお世辞にも優れているとはいえないし。

 なんてことを考えているのが表にでも出ていたのか俺がそのことに関して尋ねる前にフォーゲルヴァイデさんの口が開いた。

 

 

 「実は前々から基礎は教えてもらっていたんだけど……一通り基礎が終わった瞬間に『光の速さで私の後に続け』って言いながらアラガミに突撃していって……」

 

 

 何やってんですかギルさん!

 死んだ魚のような目で天井を見上げるフォーゲルヴァイデさんを見て俺はそう心の中で叫ばずにはられなかった。日を増すごとにどんどん壊れて行く彼を止める人は現れるのだろうか……。

 

 

 「さすがにそんな事できるわけがないでしょ?だからギルバートさんに直接そう言ったの。そうしたら『ここから先は仁慈に教えてもらった方がいいぞ』って言われて……サブだとしてもチャージスピアを扱うことができる貴方に戦い方を教えてもらおうと思ったの」

 

 

 さらっと俺に押し付けやがったぞあの人……ッ!

 

 

 「……私も、都合がいいというのはわかってる。今まで邪険に扱ってきたのにこんなことを頼むなんてね」

 

 

 「別にそんなこと思ってませんよ」

 

 

 ギルさんに対する文句というか憎しみというか、そんな感じの感情がまたまた表に出ていたようで勘違いをしたフォーゲルヴァイデさんがどこか自嘲しているような表情を浮かべる。

 大丈夫ですよ、俺が考えているのはあの擬似決闘者をどうしてやろうかということだけですから。

 

 

 「え?ならもしかして……?」

 

 

 「正直自分も神機使いになってからフォーゲルヴァイデさんとそう変わらないんですけど、できる限りのことはやってみますよ」

 

 

 俺の言葉を聞いた瞬間に、後ろのほうで小さくガッツポーズを決めながらもそれを表に出さずにありがとうといっているフォーゲルヴァイデさん。

 俺はこれが日々頭のおかしい極東人の相手をしている彼女の気分転換となりますようにと思いつつ、自分の神機の刀身の変更を行うために神機の整備室へと向かった。

 

 

 え?お前も彼女に苦労をかけているうちの一人だろって?

 

 

 お、俺は彼女とそんなに関わってなかったからセーフだし(震え声)。

 

 

 

 

 

 

              ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 「はい。今のがチャージスピアのエネルギーを小分けして使った擬似空中戦です」

 

 

 「やっぱり教わる相手を間違えたかもしれない」

 

 

 目の前で私が受注した任務のターゲットであるサリエル堕天種と一度も地面に足を着くことなく戦って勝利したブラッド隊副隊長、樫原仁慈の姿を見て私は常々そう感じた。

 一通りの動きを見てもらい特に問題がないことを確認し、何か新しい技能を教えてくださいとお願いした結果がこれである。そう思っても誰も私を責められない責めさせない。

 なんなんだあの変態的機動は。ギルバートさんみたいにブラッドアーツを使用した技術でないところが余計に質が悪い。何故なら理論上は誰でも可能なのだ、あの技能。だからできないのであればその神機使いの実力不足となる。

 

 

 「無理そうですか?」

 

 

 「……とりあえず、やるだけやってみます」

 

 

 だからと言って一方的に「できるか」と文句をつけるのは教わる身としていかがなものかと思うので、ちょうど戦闘音を聞きつけてやってきたヤクシャに向かって今しがた彼がやっていたことを真似てみる。

 

 

 えーっと……チャージを小出しにしつつ、敵を攻撃……あっ、できた。

 

 

 「おーできましたね。さすが極東人。筋が違う」

 

 

 私が彼のやっていたように空中でヤクシャを蹂躙している様子を見て感心したように声を上げるブラッドの副隊長。いや、私自身もできるとは思ってなかった。

 だって彼がやったことといえば、見本を見せた後、簡単に口頭で説明しただけである。それも「グッてやってパッ」みたいに擬音オンリーで。

 

 

 「やった……!できた……ッ!」

 

 

 自分でも無理だと思っていた技ができてしまったために、私はヤクシャを倒したあと、その場で嬉しさをかみ締めた。これであの人も私のことを認めてくれる。そう思って。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――そして、ソレが油断につながった。

 

 

 

 

 

 「グゥアアアアアアアアア!!」

 

 

 「――――えっ?」

 

 

 声のした方向に顔を向けてみれば、そこに居たのは大口を開けたオウガテイル。距離は目と鼻の先であり、神機で防ごうにも装甲の展開が苦手な私は咄嗟に神機を構えることができなかった。

 回避?……不可能、突然の事態に身体が硬直して動かない。もし動けたとしても、回避する前に頭をバクリといかれてしまう。

 

 

 オウガテイルの口が徐々に徐々に私の頭に近付いてくる。段々としかし、着実に死が近付いてくるのがわかった。

 あぁ、お兄ちゃんも死ぬときはこんな感じだったのかなとど心のどこかで考えたところで、

 

 

 「ちぇすとー!」

 

 

 耳に届いた男の人の声と共に目の前まで来ていたオウガテイルが突如視界から消えうせた。

 

 

 「……へ?」

 

 

 「おぉう、油断した。付近にヤクシャ以外のアラガミの気配はなかったと思うんだが、最近調子に乗ってたからなぁ……。やっぱ慢心はよくないな、うん」

 

 

 ポンポンと神機で肩を叩きつつ、ブッ飛ばしたオウガテイルのほうを向いていたブラッドの副隊長がそう呟いた。

 

 

 「大丈夫ですか?」

 

 

 「へ、平気よ」

 

 

 心配そうな声音にそう返すも、腰が抜けてしまってその場にしりもちをつく。

 顔から火が出そうなくらいに恥ずかしかった。しかし、ブラッドの副隊長はそれに笑うことなどせず先程と同じく真剣な表情だった。

 

 

 「大丈夫ですか?」

 

 

 「………手、貸して」

 

 

 おずおずと伸ばした手をしっかりと掴まれて引き上げられる。何とか立とうとするも、そう簡単に立てるはずもなく体が崩れそうになった。

 その様子を見て彼はしばらく考えると、耳につけてある通信機でヒバリさんに連絡をとる。

 

 

 『仁慈さん。何か問題でも発生しましたか?』

 

 

 「似たようなものです。実は少々負傷してしまいましてね。今俺がいるポイントにヘリを向かわせてくれませんか?」

 

 

 『え?仁慈さんって怪我するんですか!?』

 

 

 「どういう意味です?」

 

 

 そんな掛け合いをしつつも連絡するべきことと要請が終わったのか耳に当てていた手を離した。

 

 

 「すぐに迎えが来ると思うのでそれまで我慢してくださいね」

 

 

 「………」

 

 

 別にそこまでしなくてもよかったのではと思いはするものの、せっかくの好意なので素直に甘えることにする。

 そのまま何も話さずに私たちは、迎えのヘリに乗って極東支部へと帰還した。

 ……ただ、ヘリに乗り込む寸前にプロペラの音とはまた違う機械音が聞こえたのは気のせいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 危なかった。

 あの時少しでも反応が遅れてたら、フォーゲルヴァイデさんがマミったかも知れなかった。我ながらいい反応だったな。うん。

 

 

 ……やめろ。お前が気をつけていればそもそもこういうことにはなってないとか言ってはいけない。俺だって人間だもの。油断も慢心もする。

 

 

 「今日はありがとうね。付き合ってくれて」

 

 

 あんな目に遭ったのにそんな事が言えるなんて、いい子だなー。最初のほうとか怖がっててマジすいませんでした。

 

 

 「いえ。また何かあれば言ってください。できるだけ力になりますよ」

 

 

 今回のお詫びもかねてね。

 

 

 「んー……なら、今ひとつだけいい?」

 

 

 「実現可能な範囲でお願いします」

 

 

 あと、お金貸してという類のものもできればなしの方向で。

 

 

 「敬語とって」

 

 

 「……それでいいんですか?」

 

 

 「私のほうが年下なのに敬語って違和感があるんだ」

 

 

 「ソレでいいならそうするけど……」

 

 

 要望どおりにタメ口に変えるとフォーゲルヴァイデさんは満足そうに頷く。

 

 

 「そっちのほうが気が楽でいいね。……また、今日みたいなお願いするかもしれないからそのときはよろしくね」

 

 

 抜けた腰は治ったらしく手を振りながら去っていくフォーゲルヴァイデさんの背中をこちらも手を振りながら見送る。

 見送りながら、つい最近まで敵意をぶつけていた人と同一人物とは思えないねと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。