神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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どうも、試験が近いにも関わらず書き上げてしまいました。なにやってんでしょうね。

ま、それは置いといて久しぶりで忘れているかもしれませんがどうぞ。



終末捕食

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも何時も思うんだけどさ。色々展開が速いよね………。

 そう考えつつ視界に収めるはついさっきまでアルマ・マータだったもの。

 余裕を見せるアルマ・マータの顔面に神機振るってやったらこの有様だよ。普通はそのまま倒して終末捕食を阻止!ハッピーエンド!第三部完!ってなりませんかねぇ……。ならない?左様ですか。

フランさんのいうプランBの内容を聞いた俺は心の中でそう呟いた。

 

 

 「プランBの内容については理解した。しかし、そんな簡単に特異点となれるものなのか?」

 

 

 ジュリウス隊長が当然の疑問を発する。終末捕食を生み出す中核……言わば世界崩壊の鍵といっても過言ではない。そんな存在をそうぽこじゃがと生み出せるものなのだろうか。

 というか、あの終末捕食っぽい樹液触手がしなりながらこちらに向かってきているんですが……。

 俺達を捕食しようと迫り来る終末捕食(予想)を神機で退けながら、ジュリウス隊長の疑問に答えるサカキ支部長とラケル博士の声に耳を傾ける。

 

 

 『本来ならば、到底不可能なことだろう。しかし、君達二人の場合は話が変わってくるんだ』

 

 

 『特異点とは、世界の全てを捕食しリセットするために発生する終末捕食の核となるものです。なので特異点になるモノの絶対的な条件は全てを喰らい尽くす力……すなわち“ありとあらゆる偏食因子を取り込むことが出来るか”という一点になります』

 

 

 『ラケル博士の話だと、ジュリウス君には既にその素質があることは分かってる。仁慈君のほうに関してもオラクル細胞で自らの肢体を修復し、自身の神機も手なずけている。可能性としては十分だ』

 

 

 「なら、ジュリウス隊長でいいんじゃないんですかね?」

 

 

 彼らの説明を聞き終え、俺は迫り来る終末捕食を両断しながらそう言った。当然理由はある。それは数日前にラケル博士が言ったあの言葉だ。

 

 

 ―――――ブラッドはジュリウスを特異点とするための部隊

 

 

 彼女は自身の事情を説明する際にブラッドのことをそう言った。つまり、彼女にはジュリウス隊長を特異点とする手段があったのだ。だからこそ、俺は確実に特異点になれるであろうジュリウス隊長を指名したのである。決して、決して!俺が面倒くさいからとかじゃナイヨ?

 

 

 「俺か?まぁ、元々ラケルの話では俺が特異点となる予定だったらしいからな。特異点になるための方法も考えているのだろう。当然の判断だな」

 

 

 『先生取られた……呼び捨てにされた……』

 

 

 ジュリウス隊長の口から唐突に発せられた一言がラケル博士の心を抉った。何故そう言ったし。

 サカキ支部長はサカキ支部長でラケル博士の反応にはまったく触れることなく俺達の考えを否定した。

 

 

 『いや残念ながら、ラケル博士が当初考えていた方法は使えなくなった。だから、君達のどちらかが特異点になるとしても確実な方法はない』

 

 

 崖っぷちじゃないですかーやだー。

 

 

 『私としてはね、仁慈君。君に特異点となって欲しいと思っている』

 

 

 「Why?」

 

 どちらも同じ条件であるならばわざわざ俺を指名する必要はないだろう。まさか俺が死んでもいいと思われているから選ばれた訳じゃあるまいし………え、ないよね?

 化け物擬きの俺と正真正銘の化け物に纏めて死んでもらうために指定したわけじゃないよね?その辺はサカキ支部長を信頼してますよ?

 ……これでだまして悪いが系だったら俺人類の天敵になる自信があるわ。

 

 

 『特異点になるには、多くの偏食因子を取り込む必要がある。これは先程話したね。では、特異点となっただけでアルマ・マータをを核とした終末捕食を相殺できるか……。答えは残念ながら否と言わせてもらうよ。コアそのものを捕食したアルマ・マータとは比べ、血の力で偏食因子のみを収集した特異点とではどうしても数段劣ってしまうんだ。私たちが行おうとしているのは最低限のことだけだからね。しかし、特異点となるのが君だと話は違ってくるんだ。君の血の力と尤もアラガミに近い身体……この二つを併せ持って初めて―――――』

 「サカキ支部長!話、長いっす!」

 

 

 個人への通信ではなかったためか、今までの会話が聞こえていたのであろうロミオ先輩がこちらに向かってそう叫ぶ。

 どうやら終末捕食の処理に大分手間取っているようだった。まぁ、俺とジュリウス隊長も一応、処理しているもののサカキ支部長の話を聞いて意味を飲み込みながらやってたからそろそろ限界なのであろう。

 

 

 『おっと、すまない。要するにこのままだと特異点になっても撃ち負けてしまう可能性があるから、自身の力を限界まで出せて尚且つ人間では到底たどり着けないようなポテンシャルを秘めた仁慈君に特異点となって欲しい……と、言う訳さ』

 

 

 「OK、把握」

 

 

 サカキ支部長の説明でおおよその見立てが出来たため、近くに居たジュリウス隊長とお互いに頷き合う。そして、俺は右側と正面から向かってくる終末捕食の内右側から向かってくる物を切裂いて後ろに大きく後退、それと入れ替わるようにしてジュリウス隊長が正面から来た終末捕食を切裂きつつ前に出た。

 終末捕食の範囲外に飛び出した俺は再びサカキ支部長に指示を仰ぐ。特異点になるのは決めたけどどうなるかは聞いてなかったし。

 

 

 「それでサカキ支部長。偏食因子を集めるといっても、具体的にどうすればいいんですかね」

 

 

 『今からナナ君の誘引の力を使ってもらい、極東の神機使い達の偏食因子を仁慈君に集めてもらう。シエル君はそのサポートだ』

 

 

 「と、いうわけで!」「よろしくお願いします」

 

 

 「うわっ!?」

 

 

 唐突に下から現れた二人に驚く。

 この二人、さっきまで終末捕食を必死に切り払っていたはずなんだけどな……。見間違いだったか?

 

 

 「あっちは、ほら……ジュリウス隊長が本腰を入れてきちゃったから……」

 

 

 「なるほど」

 

 

 あの人がやる気になったんなら仕方ないな。

 

 

 「ところでサカキ支部長。ナナの血の力で先程言ったことが本当に可能なんですか?」

 

 

 ナナとシエルの奇天烈な登場で忘れていたが、さっきの話の中で疑問に思ったことを素直に聞いてみる。

 

 

 『いいかい?仁慈君。出来るできないじゃなくて、やるんだよ(キリッ』

 

 

 「うわぁい、超不安」

 

 

 ちっくしょう。結局行き当たりばったりの出たとこ勝負かよ……。

 

 

 「今更気にしなーい、気にしなーい。ようは何時も通りってことでしょ?」

 

 

 「せやな」

 

 

 よくよく考えてみればその通りだったわ。

 ナナの言葉で冷静(?)になった俺は目をゆっくりと閉じて、一度深く深呼吸をして心を落ち着かせる。特異点になったらどうなるかまったくわからないからな。

 あまり時間もないので三十秒ほどそうした後にナナに声をかけた。

 

 

 「よし、覚悟完了」

 

 

 「なんかここ最近の仁慈弱気だねー。仁慈はもっと、こう……理不尽が服を着て歩いているような感じなのに」

 

 

 「だまらっしゃい」

 

 

 「はーい」

 

 

 普段と変わらないかのようなやり取りをしつつ、ナナは自身の持つ血の力を解放する。力が発現するときに発生する血の様な赤い波動が今まで見たことがないほどの範囲にまで広がっていく。というか終わりが見えない。その範囲の広さに驚いていると、俺の頭上に同じく赤い波動が集まり小さな球体を作り出していた。

 

 

 「今までの力とは規模が違いすぎる。どれだけ広範囲に展開してるんだ……?」

 

 

 「極東を含めた東アジア全域」

 

 

 「ファッ!?」

 

 

 東アジア!?東アジアナンデ!?

 

 

 「いやー、ほら。私の血の力ってさ……みんなのと違って使い勝手悪いでしょ?アラガミを誘導するといっても基本的に私の居る場所限定だし、使いどころを間違えると全滅必死だし。私自身、誘き寄せたアラガミによっては勝てないもん。だから、必死に使い方を考えて練習してたんだよ」

 

 

 「私もナナさんの能力に対応できるよう、直覚の範囲を広げました。360度どんな遠くも透視しつつ確認することが出来ます」

 

 

 「それなんて白眼ですか……」

 

 

 にっこりと柔らかく微笑むナナとドヤ顔で胸を張るシエル。お前最近ドヤ顔しかしてないな。

 まぁ、それは置いといて。回復錠という名の毒物を作成したり、ブラッドバレッドという名のアラガミ絶対殺す弾を作っている傍らでそんな事もしていたのか……。

 

 

 「……その結果がこれか。ナナもシエルも立派な人外の仲間入りだな」

 

 

 今更な気もするけど。

 

 

 「これでおそろいでだね!まぁ、まだ仁慈やジュリウスには敵わないだろうけどねぇ」

 

 

 「そうですね。君とジュリウスは別格ですから。英語で言うとフリークス」

 

 

 「やめろぉ!」

 

 

 俺は自称したことないんだぞ!その呼び名!

 世界の存亡がかかっているこの場面でまったく似つかわしくない雰囲気で話す俺とナナ、シエル。数分話していると俺の頭上に出来た球体がかなりの大きさになっていた。どっかで見たことあるなぁ、この光景。

 

 

 「ちなみにだけど、この血の力を作るときに何か参考にしたものとかない?」

 

 

 「元気〇」

 

 

 「把握」

 

 

 オラに偏食因子を分けてくれー!ってことか。どっちかと言えば俺自身は元気〇をもらってべジー〇に投げつけるクリ〇ンみたいな感じだけど。

 

 

 『では、仁慈君。君が無事に帰ってくることを祈っているよ』

 

 

 実は俺たちの会話を聞いていたらしいサカキ支部長から激励の言葉を送られる。そして、それと同時に俺の頭上を陣取っていた偏食因子の塊が身体へと流れ込んできた。

 体内に大量の何かが入り込み、身体を一気に書き換えられていく感覚を覚える。……あまりいい気分ではないな。胸焼けをしているような、なんかスッキリしないモヤモヤしている。

 少しの間顔を顰めていたが、しばらくするとそれは完全に納まっていた。もう大丈夫かなと考えた俺は、軽く腕を振るって回してみたり、神機を振ってみたりする。

 

 

 「うん。運動能力は大して変化なしか」

 

 

 下手に悪化しなくて良かったと思わなくもないが、こういう場合って高確率でインフレとも呼べる高い戦闘力を得ることになると思うんだけど……現実はそこまで甘いものではなかったらしい。ま、特異点は終末捕食の核になるだけだから戦闘力が上がらないのかもしれないけど。

 

 

 割とどうでもいいことを考えつつ、ナナとシエルのほうを向く。するとそこには目をぱちくりとさせてお互いに見合っている二人の姿があった。何事よ。

 

 

 「えーっと……仁慈……だよ、ね?」

 

 

 「一体それ以外の何に見えるんですかねぇ……」

 

 

 特異点になって外見が変わったとか?HAHAHAそんな事あるわけないジャマイカ。

 

 

 「だって……仁慈の髪の色が真っ赤になってるんだもん……」

 

 

 「清々しいくらいに赤いですね。目が痛いです」

 

 

 「oh………」

 

 

 おぃ……マジかよ……。

 

 

 

 

            ――――――――――――――――

 

 

 

 

 「ちっくしょう!うねうねうねうねうねうね、うざいったらないな!」

 

 

 何度切りつけても性懲りもなくこちらを捕食しようとする終末捕食に罵倒を浴びせつつ、肩に担いでいた神機を怒りの感情も交えて地面に叩きつける。

 地面に叩き付けた神機は下の地面にクレーターを作りながら俺に向かってきた終末捕食を粉砕した。そして、ラッキーなことに近くにあった別の奴も纏めて粉砕することが出来た。やったぜ。

 

 

 「仁慈のやつ……まだなのかよ。俺たち神機使いだって無限に戦い続けられるわけじゃないんだぞ。ターミネ〇ターじゃあるまいし」

 

 

 心のうちにわいてきた不満を溜息と共に溢す。仁慈だって頑張っているのは分かる。特異点のとして終末捕食を起こすなんてとても怖いだろう。しかも、あいつ俺たちの仲で最年少だし。あれ?そう考えると俺、愚痴なんてこぼしている場合じゃないんじゃないか?こう、形式上先輩と呼ばれている身としては。

 ……自分で形式上って言っちゃったよ。

 

 

 「っと、それはどうでもいいか。他にはいないかなー。……ここまで着たら10体も100体も変わらないだろ」

 

 

 若干、投げやりになっているがそれはしょうがないことだと割り切り、他にも終末捕食が向かって来ていないか探してみる。すると、まったく終末捕食抹消の手を衰えさせないジュリウスとギルの姿が見えた。

 あの二人、俺より広範囲をフォローしいてるし、無駄に終末捕食を攻撃するものだから体力の消耗もそれに比例するくらい激しいはずなんだけどな……。

 

 

 「あいつらはターミ〇ーターかもしれない……」

 

 

 むしろそうであってくれ。アレを俺たちと同じ神機使いとは思いたくない。

 

 

 「――――――ッ!?」

 

 

 ジュリウスたちの戦いっぷりに呆れていた俺は背後から唐突に感じた血の力に戦く。感覚はそのまんま血の力と同じものだったにも関わらず、力の濃度というかなんというか、その辺りが規格外な感じだったからだ。漠然としてて分かりにくいかもしれないけど俺もうまく言葉が見つからなかった。そしてその発生源と思わしきところに視線を向けてみると、シエルと同じ美しい銀髪を真っ赤な色に染めた仁慈がたっていた。

 

 

 「イメチェンか?」

 

 

 「んなわけないだろ!」

 

 

 わざわざ俺の隣にまで来てボケをかますジュリウスにツッコミを入れる。この隊長、初期の貫禄を完全にどこかにおいてきているようだ。

 

 

 「それにしてもアレが特異点になった仁慈か……思ってたのと違うな」

 

 

 「お前は何を期待していたんだ……」

 

 

 普段色々アレになってしまったギルも呆れている。言っておくけど、ギルもそっち側だからね?

 

 

 「…………」

 

 

 そんな俺たちを他所に仁慈は静かに神機を構える。その構えは何時も通りにも関わらずなんだろう、どこか嫌な予感がした。

 これは自身の死亡フラグを感じ取り、仁慈に血の力を覚醒させてくれと頼んだとき以来のものである。隣にいるアレコンビもそれを感じ取ったのかすぐさま仁慈と距離をとった。それと同時に、

 

 

 『皆さん、今すぐ仁慈さんから離れてください!彼を中心にして超強力な偏食場が形成されています!おそらく終末捕食です!』

 

 

 フランさんの大声が耳を貫いた。その音量に少し耳を押さえつつ、仁慈の様子を見る。

 すると、仁慈を中心により一層血の力と同質な赤い波動が渦巻き仁慈の神機の中に凝縮されていく。ブラッド(俺たち)という防波堤が居なくなったことで、アルマ・マータを基点とした終末捕食は仁慈に殺到する。

 自身の視界を埋め尽くすほどの勢いで迫る終末捕食(絶対的な死)を目の前にしても仁慈はうろたえることなく、構えていた神機を左斜め上へと切り上げる。

 

 

 その直後、辺りにすさまじい轟音が響き渡る。

 それと同時に、仁慈の神機から凝縮されていた赤が、彼に迫っていた終末捕食を喰らい尽くす。

 

 

 そのままアルマ・マータを基点とする終末捕食を全て喰らい尽くすかと思われたが、向こうも向こうでこのままだと危ういと思ったらしい。

 仁慈の居る方向以外にも向けていたエネルギーを全て仁慈が放つ終末捕食に向けてきた。すると、先程まで押していた仁慈の終末捕食はあっさりと押し返されてしまい仁慈の目の前まで再び迫ってきていた。

 

 

 「帰ってくるの早いなおい……っ!」

 

 

 何とか押し返そうともう一度神機を振るうも押し返すことは出来ず、それすらも飲み込まれる。

 俺たちだって唯見ているだけではない。それぞれがそれぞれの血の力を使って仁慈をサポートしたりアルマ・マータのほうの妨害を行ったりもした。しかし、それも虚しく無意味に終わった。

 

 

 そして、

 

 

 

 「ふん!はぁ!せぃあ!………ことごとく飲み込まれている……なにこれどうすればいいんだよ」

 

 

 仁慈は

 

 

 「こうなったらブラッドアーツだ!食らえッ!」

 

 

 俺たちの目の前で

 

 

 「あ、やばっ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終末捕食に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




仁慈「終末捕食から、光が逆流する……!▂▅▇█▓▒░('ω')░▒▓█▇▅▂うわああああああああ!!」


大体こんな感じ。

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