神様死すべし慈悲はない   作:トメィト

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キングクリムゾン!


アーク計画、始動。ついでに第一部隊も始動。

 

 

 

 

 

いや、まずい。これは思ったよりまずいな。

 

仁慈君にフェンリル本部へと行ってもらい、ヨハンの動きを見ようと計画していた私たち。

その目論見は見事に成功した。仁慈君がいなくなったことにより心なしか表情に余裕が出てきたヨハンは自分が秘密裏に行っていた計画、アーク計画を極東支部の全員に話したのである。

これにより、今のフェンリル本部は誰も彼もが特異点を見つけ出すことに精を出していた。

 

いや、それだけならどれほどよかったか。さらに深刻な問題が1つある。それは、コウタ君がヨハン側についてしまったことだ。シオのことを報告していない件を見るに完全に向こう側についてはいないようだが、それも時間の問題といえる。

だから言って私たちが彼を責めることはできない。研究さえあれば何もいらない私とヨハンを敵視しているソーマ、天涯孤独というユウ君と仁慈君さえいれば他はなにもいらないととんでもなく極まったことを曰うアリサ君、リンドウ君を陥れたヨハンに恨みを抱いているサクヤ君とは違い、コウタ君には守るべき家族がいる。ヨハンのいう、アラガミが完全に消滅した大地を踏みしめることができるチケットを貰えば、自分の守りたい家族を安全な世界へと連れて行ってあげたいと思うのは当然のことだ。

 

さて、この状況……どうすることが最善かね。

現在われわれの状況はほぼ詰みと同義だ。最近、エイジスから何らかの装置(おそらく特異点をおびき寄せるものだと推測される)が起動していることも確認できている。この前、ソーマとユウくんがシオとデート(狩り)に出かけた時、エイジスに向かって不自然に歩いていこうとしたそうだからなね。一応、ギリギリでユウくんが止めに入ったらしいけどねその反応からしてエイジスには特異点を引き寄せる機械が設置されていると考えるのが妥当だろう。このことからシオも迂闊に外に出せない状況だ。今は何とか私が作った部屋に匿いしのいでいるが、それも問題の先送りに過ぎない。

ぶっちゃけ、この部屋の電源が落ちたら一瞬でばれてしまう。ヨハンもヨーロッパ行きの件で私に疑いの目を向けているようだしね。

 

そんなことを考えていると、急に研究所全体が揺れ始め、部屋の電源が落ちてしまった。

………ふむ、これは確かに俗に言うフラグというものかな。

 

「あっはっはっは、いやーまいったまいった」

 

「………ついにおかしくなったか?」

 

「どうしたんですか、博士?」

 

「おー?博士、あたまおかしくなったか?」

 

唐突に笑い出した私に対して、今は同じ部屋の中にいるソーマとユウくん、シオがさらりと毒をぶつけてくる。

 

「ひどい言われようだね。いや、そうじゃない。私たちは今、とってもまずい状況にあるんだ」

 

「まずい状況……?」

 

『やはりそこだったか。博士』

 

「……っ!?今の声は」

 

「親父か……ッ!おい、おっさん。どうなってやがる!?」

 

「前にも言ったと思うけど、非常用の電源はここじゃない、もっと極東支部の中核を担う機関が担っているんだ。当然、復旧作業を行う際にはこっちのデータをごっそりと持って行かれる」

 

「つまり、バレました?」

 

「あぁ、完全にばれたね。それはもう見事にばれたね。言い逃れできないレベルでばれたね」

 

「何度も繰り返さなくていい……!それで、どうする!?」

 

「とりあえず、彼女を匿わないと。流石のヨハンもそこまで手荒な真似はできないし、私たちの元に来るのは時間がかかると思うからね」

 

ドバン!

 

「ヨハネス支部長からの命令だ。特異点を渡してもらおうか」

 

「………対応が何だって?」

 

「はっはっはっは、準備万端過ぎだね。流石ヨハン」

 

「機関銃まで装備してる……こりゃ完全に読まれてましたね」

 

この後無茶苦茶牢獄に入れられた。

 

 

––––––––

 

 

「イィィィッヤッ!!」

 

「アバー!?」

 

「南無三!」

 

「アイエェェェェ!!??」

 

「イヤー!」

 

「サヨナラ!」

 

………何で、ニンジャが湧いているんですかねぇ(困惑)

目の前で繰り広げられるニンジャバトル(偽)を視界の端に納めつつそんなことを考える。

 

俺が学習もせずに新たな黒歴史を作り上げた後、本部にやってきた神機使いたちはもはや誰だお前というレベルで改心して俺の訓練に参加するようになった。返事をする時は必ず敬礼をしだすし、経歴関係なく敬語を使われる。特に一番ひどいのが、サメロだ。なぜか俺のことを兄貴と呼びだし、出会った頃とはまた違う小物感を身につけてしまった。ついでに結構な戦闘力も身につけているからタチが悪い。迂闊に注意できない。

驚くべきことはそこだけではない。何とこの新人神機使いたちの中にアネットさんもいたのである。バスターとは名ばかりの、もはやそれハンマーじゃねーの?という武器を振り回すことに定評のあるアネットさんだ。極東(未来)にいた時に数回だけ一緒に任務に出たことあるけどあれはすごかった。豪快という言葉がよく似合っている戦い方だった。俺も数発巻き込まれそうになった。

まぁ、それは今いいとして、さすがに未来で極東に染まるだけあってスジがよかった。なので彼女には少ししかアドバイスはしていない。正直、ベテランの神機使いの方が苦戦している。彼等は今まで戦場で培ってきた自分なりの戦い方があるから苦戦を強いられている。だから彼女に関わっている時間はすごく少なかったはずなんだけど……。

 

「先輩!新しい立ち回り方を押してえてください!」

 

何でこっち来るんですかねぇ……。

まるで子犬のように駆け寄ってきたアネットさんに戸惑いを隠しきれない。

先ほども言った通り、俺は彼女に少ししかアドバイスをしていない。そのアドバイスの内容も、ガードが苦手でよく怒られるんですと言ったごく普通のものに対してのことを教えただけだ。

え?俺の答えは何かって?当たらなければどうということはない精神を教えてあげた。

 

「んー……そうですね。捕食形態を複数操ることはできますか?」

 

「はい。できます。と言っても、3つだけですけど」

 

「なら、その3つを利用した立ち回りを教えますね」

 

彼女が習得したと言われる捕食形態を見せてもらったのち、俺がちょうどその辺に湧いて出てきたシユウを実験台として立ち回りを見せる。

 

「基本はこんなところです」

 

「わかりました!ありがとうございます!……ところで先輩。今日の指導が終わったらご飯食べに行きませんか?」

 

アネットさんと食事かー。

この人、意外と酒癖が悪くて一緒に飲みに行く時、結構疲れるんだよな。昔からそうなのかな?と思いつつ、どう返事を返したものかと考えていると、右につけている通信機から一通の通信が伝え入った。

 

『やぁ、仁慈君。久しぶりだね』

 

「あれ?サカキ博士?」

 

てっきり、本部の方からさっさと任務を終わらせろという催促の通信かと思っていたので思わず疑問がそのまま口から零れ落ちる。

 

『そう、みんな大好きサカキ博士だ』

 

「みんなって誰っすか………。まぁ、そのみんなについては置いておくとして、どうしました?もしかしてヨハネス支部長が動き出しましたか?」

 

本部からの連絡じゃないということで、先程は思いつかなかったが、彼が俺に通信をよこしてくるなんて俺たちがぶら下げた餌に獲物がかかったということ他ならない。この場合は、ヨハネス支部長が動きを見せたというわけだ。

 

『ヨハンは私たちの狙いどうりに動き出してくれたよ。ただ、その後が問題でね。シオを連れ去られた』

 

「えっ……ユウさんという名の最強ガードがあったのにですか?正直、あの人を超えて特異点たるシオを確保とか想像できないんですけど」

 

もう、ユウさんが相手という時点でやる気がなくなるまである。

 

『実は、私の研究室に匿っていることがバレてしまってね。こちらが手を出せない状態にされたんだ』

 

確かに。

周囲から見れば、人類の敵であるアラガミを人類最後の砦であるフェンリルの施設内に入れて、匿ったんだからよくて牢獄行き、悪くて処刑並みのことだろうな。

 

『その通りだ。実際、僕らは牢獄に入れられているしね』

 

「どうやって俺に連絡飛ばしているんですか」

 

『私のことをあまりなめないほうがいい』

 

「やだ、超頼もしい……」

 

「あっ!先輩、危ない!」

 

唐突にかけられたアネットさんの声。意識を通信機から少しずらしてみると、俺の頭上に一匹、背後にもう一匹の計二体のアラガミが俺に襲いかかって来ていた。

通信機に気を取られたかと反省しつつ、背後から襲い来る敵の攻撃をバック宙の要領で回避、ついでに上から襲い来るアラガミにサマーソルトキックをぶちかます。

 

俺に攻撃を回避されたアラガミにサマーソルトキックをぶち込んだアラガミをぶつけて動いを阻害すると、二体まとめて神機でスライスした。

 

「失礼、邪魔が入りました。それで結局、俺はどうすれば?」

 

『至急、こちらに戻ってきてほしい。もうそろそろ、最終局面だから、こちらも全力で挑まないと』

 

「了解です。遅くても明日には行けるようにします」

 

『頼んだよ』

 

ぷつん、と通信が伝え切れたことを確認した俺は、スレイヤーしている馬鹿どもを呼び寄せる。

声をかけるとこの二週間の成果か、すぐさま俺に向かってダッシュし、一糸乱れぬ整列をした。

 

「少々急用が入ったので、特別訓練に関してはこれで終了となります。もう皆さんと会うこともないでしょうが、これだけは言わせてください。……あなた達は、本当に強くなりました。今なら、自分が後悔しないように戦い続けることができるでしょう。これからも、決して油断せずに一戦一戦全力を持って戦ってください」

 

『はいっ!!』

 

「では、アラガミは?」

 

『死すべし、慈悲はない!!』

 

「よろしい」

 

極東支部でもギリギリ戦えそうになった彼かに背を向けると、世界一有名な暗黒面をかぶった操縦士が操縦するヘリが俺の目の前に止まった。

タイミングばっちりだな、と考えつつ、俺はそれに乗り込んだ。

 

さぁ、いよいよ最終局面……どうなるかな。




そろそろ終わりが近づいてきました。
まぁ、バーストやるんだったらまだ続くんですけど。

果たして、ヨハネス支部長はどうなってしまうのか。シオの運命は!?


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