やはりフェイト勢は出しません。世界観が違いすぎるので。
その代わり、ある程度話が進んできましたら、マスター仁慈のほうでやろうと思っています。
私が書くヤンデレなんてこんなもんですよぉ!
あまり期待しないで見てくださいね。お兄さんとの約束だぞ☆
大惨事ヤンデレ大戦(前編)
いつものごとく、仁慈は常人なら過労で死んでしまう仕事量をこなして以下略。
肉体面も精神面も並大抵の神機使いを凌駕する彼も、腹芸や書類仕事はいつまでたってもなれないらしい。特に今回の場合は諸事情というか過去に行っている間の半年間行方不明状態だったために、色々お偉いさんから腹の中を探られたため疲れは倍だろう。
そんなこともあり、仁慈は自分がつくづく現場で神機片手にエキサイトしているべき、完全実践型の人間なのだと思いつつ、泥のように自分のベッドで眠りについた。彼にとって睡眠とは心のオアシスである。正直肉体面での疲労は大したことはないのだが、精神面的には大いにダメージを受けていた。それは上記に記したことからも明らかである。
彼にとって、睡眠とは数少ない逃避場所なのだ。しかし、今回に限ってはその逃避が悲劇を招くことになる。
―――――――――さぁ、幕を上げよう。味方も敵も、平等に振り回す樫原仁慈が、
―――――――――――――
ふと、違和感を覚えて俺は目を覚ました。近くにいつも置いてある置時計に視線を向けてみると、その置時計は6時30分を示していた。いつもより10分かそこら違うだけである。これだけの違いだと誤差の範囲だし、普通に起きだそうかと体に力を入れる。しかし、俺の考えるように体が動くことはなかった。唯、代わりにジャラリ……という鎖が動く音が耳に届いただけである。
「えっ」
えっ。
なにこれこわい。両手足も同じように動かしてみるものの、肢体すべてに鎖がつけられているらしく、全く動けなかった。昨日寝たときはもちろんこんなに愉快な状態になってはいなかった。つまり考えられるのは、俺が寝た後に誰かが俺のことをこんな愉快な状態にしてくれたということだ。けれども、しっかりと自室に鍵はかけていたはずだ。おかしいな、と考えながらほかに何かないかと記憶を掘り返す。
そうしている間に、隣から声がした。
「あ、起きたんですね。おはようございます。仁慈さん」
ぞくっとした。
気配察知にはかなりの自信を持つ俺でも、声をかけられるまで気づくことができなかった。唯一拘束されていない首をさび付いたブリキの人形のごとくゆっくりと声が聞こえた方向に向ける。そこには、屈託のない笑顔を浮かべたアリサさんが隣に寝転がっていた。ご丁寧に掛布団までかぶって。
「え、あ、はい。おはようございます?」
朝起きたら当然のごとく俺の布団に居座っている同じ職場の先輩に対してなんて対応をしたら正解なのか、誰か俺に答えをくれ。大至急。というか、ここまで見事な拘束をされているというのに屈託のない笑顔を浮かべるアリサさんは何を隠そう俺をこうした犯人なのではないかと考え付く。状況証拠から可能性は十分だよな。
「ちょっとアリサさん。俺、今見ての通りの状態なんですが……何か知りませんか?」
「もう、仁慈さん。さん付けなんて水臭いですねぇー。昔みたいに呼び捨てでいいんですよ?」
「聞いて」
だめだ。会話がまるでつながっていない……ッ!そして今気づいたけど、アリサさんのハイライトが仕事していない……ッ!これはまずいぞ。俺の本能が全力で逃げろと信号を出している気がする!
「………あぁー……。じゃあアリサ。これをやったの誰なのか知らない?」
ハイライトなしというただ事ではない事態に直面しているため、彼女のリクエストをなるべく遂行しつつこの状況の犯人を尋ねてみる。
すると、今までと変わらず彼女は花が咲いたような笑顔で口を開いた。
「はいっ!」
ノータイム返答。
そこに詫びの気持ちは微塵も感じることができず、やって当たり前むしろどうしてそんなこと聞くんですかレベルの雰囲気を出していた。
「それは、その……どうして?」
「だって、仁慈さんは放っておいたらまた黙って何処かに行ってしまうじゃないですか」
やっべ………。今の解答だけで、今の彼女がどの程度の進行度なのかわかってしまった。これは相手に害を及ぼすレベルの
「えぇ……えぇ……そうです、そうですとも。私に黙って勝手にどこかに行ってしまう仁慈さんは私が管理しておかないといけないんです」
「うわぁお」
どうしよう本格的に大変なことになっている気がする。
そのうちこの部屋に誰かが来てくれる可能性もあるけれど、この状況に対応してくれる神機使いがいったい何人いるか……。極東において、アリサさんは一種のアンタッチャブルとなっているため、俺の味方をしてくれそうな人は根こそぎ回れ右すると思うんだ。
なんにせよ、ただ待っているだけなのもあれなので、俺は一計案じることにした。
「ねぇ、アリサ。俺、お腹が減ってきたんだけど……これ外してもらえない?」
「だめです。食事なら私が持ってきます。ムツミちゃんにオムライスを作ってもらって持ってきますね」
そう言って彼女は俺の布団から出ていき、エントランスに向かって行った。……このタイミングしかない。
俺は今までよりももっと力を込めて鎖を動かしてみる。この状態ならアラガミに近しい力を発揮できる筈なのだが、相変わらず鎖はびくともしなかった。こんなものどっから持って来たんだと思いつつ、仕方がないので肢体の偏食因子を変化させて鎖を侵食する。いい感じにボロボロになった鎖を引きちぎる。
そうして自由になった俺は普段着に着替えると、扉の真上にある天井に張り付いた。気分はニンジャ。そして、アリサさん――アリサが帰ってくるまでじっと息をひそめる。数分立つとアリサができたてのオムライスを持って帰って来た。
「仁慈さん。持ってきましたよ」
ガチャリと中にアリサが入り、ベッドに近づいた瞬間、天井から静かに着地すると扉を閉めて外にでる。そして外からドアノブをいい感じにぶっ壊し、鍵を捻じ曲げてアリサを閉じ込めた。
「なっ!しまっ――――」
部屋が暗いままで助かった。もし、明るくなんてしていたら扉を開けた瞬間にばれていたかもしれない。
アリサを閉じ込めた後俺は全力でエントランスに向かった。これでしばらくは大丈夫だとしてもそこまで時間は稼ぐことはできないだろう。エントランスで任務(泊りがけ)のものを受けて、ムツミちゃんに簡単な料理を作ってもらい、移動しながら食べよう。そして今日はその任務を隠れ蓑にしよう。
今後の方針をまとめ終わり、エントランスについた瞬間階段を下りず飛び降りてカウンターの前に着地する。今日オペレーター担当のフランさんは俺が急に上から降ってきたことに驚いたらしく短く悲鳴を上げた。ごめんなさい。でも急ぎなんです。
「え、仁慈……さん?どうして上から?」
「説明は後です。いきなりで悪いんですけど、数日つぶせる任務はありませんか?」
動揺しつつもさすがは元フライア勤務のエリートオペレーター。すぐに俺の注文にあう任務を探し出してくれた。フランさんマジ天使。もう愛しているといっても過言ではないね。
「ありますね。こちらになります。少々現場が遠いので二、三日はかかると思います」
「ありがとうございます。ならそれを受けます」
任務の手続きを終えた俺はすぐさまラウンジに行き、ムツミちゃんに簡単な料理で尚且つ持ち運びができるような料理を注文する。彼女はそんな奇妙な俺の注文に疑問を持たずまぶしい笑顔で了承してくれた。朝から荒んだ心が浄化されていくようだ。
周囲に気づかれないように視線を向けながらムツミちゃんの料理を待つ。すると背後から近づく気配が一つあった。アリサではないため、ゆっくりとそちらを振り向く。するとここ最近は極東にいなかったアネットさんがニコニコと笑いながら近づいてきた。
「お久しぶりです。先輩」
「………その呼び方、こっちではどうなんでしょうね」
アリサの方もそうだけど、本来なら俺が彼女たちの後輩なのである。過去に行って先輩のまねごとをしたものの、それは過去での話。現在ではそれが当てはまらない。しかし記憶が戻ったからか、第一部隊の人も過去と同じように話しかけてきているのでブラッドの連中がものすごく不思議そうに俺を見ていた。世界から何かしらの修正力がかかっているはずだけど、勘が鋭いやつらだ。相変わらず。
まぁ、この人たちには関係なさそうだけどね。後輩とか先輩とか。人前で呼ぶのは勘弁してほしいけど。
「相変わらず雑な対応ですね。私、あなたの教えをしっかりと守って来たんですけど?」
「誰もそこまで強制してませんけど」
アドバイスと言いたまえ。
というか、基本的に俺は戦い方を強制しない。基礎は教え込むけど発展させて自分に最も合う形を見つけ出すのは本人だし。何より、俺の戦い方なんて教えても実行できるのはリンドウさんくらいだし。
「………そうだ!先輩、私ご飯作って来たんですけど……よかったら食べます?」
「露骨に話をそらしたな……」
あまりにも下手すぎる逸らし方に苦笑しつつ、アネットさんが作ってきたという料理を見る。
中身はサンドイッチですぐに食べられるお手軽サイズにカットされていた。早朝から作ったにしては色々不自然だが、くれるというのであればお言葉に甘えておこう。一ついただきますと言って彼女のサンドイッチを口に運ぶ。少々違和感を感じる味だったが、普通においしかった。
「ありがとうございます。おいしかったです」
「そうですか?よかったです!……常人なら死ぬほどの睡眠薬を混ぜたのに平然としているなんて……もう一つ食べてもらった方がいいかな(ボソッ」
違和感の正体はそれか……!
ちゃっかり致死量を超えた睡眠薬を投与とか言ってるし、こいつもアリサと同じ状態か……!何が原因でそうなっているのかはわからないが、このままいるのは危険すぎる。つーか俺の体が半分アラガミじゃなかったらそこで死んでるんじゃないか!?
タイミングよく出てきたムツミちゃんの料理を片手に俺はダッシュでラウンジを後にする。すれ違いざまに見えたアネットさんの目にはアリサと同じくハイライトが入っていなかった。くっそ、どうなってやがる……!?
任務に必要な神機を取りに行く傍ら、無線で手あたり次第連絡をかけていく。しかし、コウタさんやジュリウス、ロミオ先輩とギル、ユウさんソーマさんヨハネス支部長……誰もかれもが分からないと言って首を振っていた。そして声も震えていた。
マズイ……ほかはともかく、
なにはともあれ、ここにいるのは危険だと結論をつけると今までより一層スピードを上げた。
神機を保管している場所に到着し、さっさとお目当ての神機を持ち帰ろうとしたのだが、入り口の前には珍しい人影があった。
いつも喪服のような恰好をしていかにも怪しい雰囲気を醸し出す年齢不明の女性、ラケル・クラウディウスである。どうして彼女がここにいるのかはわからないが、とりあえずかまっている暇はないので横を素通りするとする。しかし、彼女の横に来た瞬間声をかけられた。
「あら、無視なんて酷いわ仁慈。私傷ついてしまいました」
「…………あなたがそんなことで心に傷を負うわけないじゃないですか」
文字通りの化け物メンタルの持ち主の癖に。どの口がほざくのか。
「それは心外ですわ。私だって普通とは言えませんが、れっきとした女の子ですのに」
くすくすと本当に少女のように微笑みながらカラカラと車いすで近づく彼女。そして、ゆっくりと俺の前まで来ると屈むように指示をしてきた。無視すると後が怖くなったので俺は彼女の言うとおりに屈む。すると、ラケル博士の白くて細い指が俺の両頬を固定した。
「えっ―――――」
気づいた時には遅かった。
いつの間にやら、ラケル博士の顔が俺の目の前にあり、唇に至ってはゼロ距離である。端的に言えばキスである。
「んっ……んぅ………ちゅっ……ぁ……」
思考がうまく働かない。なにをされているのか、理解ができない。いわゆる完全にフリーズした状態となって、俺はラケル博士のキスを受け入れていた。
そして、何分経ったのかはわからないが体感では数十分にも感じられた時間が終わりを告げる。ラケル博士は唇を静かに離すと再び微笑んだ。
「女の子なら、意中の人の唇を奪うのも……その人の体を欲するのも、自然なことですよね?」
キスの所為で思考が正常に働かないため、彼女がゆっくりと近づいているにも関わらず動くことができなかった。そして、アリサやアネットから逃げなければという考えも消えかかっている。
ただいま頭の中にあるのは目の前の彼女のことだけ―――
「フフッ……たっぷり愛し合いましょう?そして、私にあなたのすべてを見せて?体の中まで、全部」
―――――目が覚めたわ。
今の発言、なんか乙女チックに言っているけど、ただの解剖させて宣言である。可愛くいっても許可なんてできるはずもない。
ラケル博士のマッドぷりに助けられたが、ここにいるのは危険なため、もう任務に出ることにした。俺は彼女からバックステップで距離をとると即座に回れ右を決行し、出撃ゲートへと向かった。
「ベーダー!今すぐヘリを出して!」
『どうしたんですか旦那』
「ちょっとアラガミよりやばいやつらに狙われてるから早くここを出る!」
『過去でも未来でも旦那は厄介ごとに事欠かないっすね』
「別に好きでやっているわけじゃないんですがねぇ!?」
誰が自ら厄介ごとに首を突っ込むかよぉ!厄介ごとのほうから手を振ってやってくるんだからしょうがないじゃないか!
全力でツッコミを入れつつ、もう飛び始めているヘリに飛乗る。ヘリのドアを開けてくれているとはさすがベーダーわかってるな。
「で、旦那。神機はどうしたんですか?」
「あっ」
忘れたわ。
しかし、ぶっちゃけ神機を忘れたことより、あの人たちから逃げられたことの方が大きいわ……。とりあえず、これで二日間くらいは休めるな。
「もはや素手でも問題ないと、旦那が考え始めている件について」
「慣れろ。リンドウさんもやってたんだ。俺にもできるさ」
「その理屈はおかしい」
ヘリの中でこんなバカなやり取りとしながら俺は体をリラックスさせる。これでひとまずは安心だな。
……あれ、もしかしてフラグ?
―――――――――あはっ。
ラケル「初めての相手はナナではない……このラケルだァ……!」ズギューン!!
ナナ「―――――――」
――――――
ジュリウス「一番最初のアリサさんが一番ましだったんじゃないか?」
仁慈「どうせ みんな 悪化する。古事記(ヤンデレアニメ等)にも書いてある」
ギル「目が死んでる……」