東方狐答録   作:佐藤秋

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真「……えー、前回で話の区切りがついたということで、ここからしばらくは台詞のみの番外編をやろうと思う。おそらく八、九話くらいだろうか。『台本形式のどこが小説だよ!』という意見はもっともだと思うが、それでも読んでくれたらありがたい。ではどうぞ」



第百九話 秘めました

 

 ~博麗神社~

 

紫「……うーん、暇! ……寒くて弾幕ごっこする気にもなれないわね…… 面白いことでも何か無いの?」

 

霊夢「……勝手に神社にやって来て、こたつの一部を陣取っといて、これまた随分な言いぐさねぇ…… 生憎だけど何も無いわよ」

 

紫「むー…… 暇暇暇ー!」バタバタ

 

霊夢「子どもじゃないんだから…… もう元に戻ったでしょうに」

 

真「……紫。暇な時間だっていいもんだぞ? こう、皆でこたつに入ってボーッとしつつ、たまにみかんを食べることで、日々の幸せを噛み締めてだな……」

 

紫「なに年寄りみたいなことを言ってるのよ! つまらないから却下!」ビシッ

 

真「!」ガーン

 

魔理沙「……まぁ、年寄りってのは間違いでは無いけどなー。つーか、それなら紫にピッタリじゃん」

 

紫「……はー? 誰が、無理に若作りしているババアですって?」

 

藍「……紫様、魔理沙はそこまで言っておりません。所詮寿命が短い人間風情が考える戯言ですので、それほどお気になさらずに……」

 

紫「……はっ。そ、そうよね。むしろ長生きしながらもこの若い見た目をしていることに対する嫉妬よねー」

 

魔理沙「寺子屋のトイレに出る、妖怪(むらさき)ババアってあれ紫のことなのか?」

 

紫「殺す! もしくは歳の境界を操って、アンタを醜い老婆の姿に……!」

 

藍「ゆ、紫様落ち着いて……!」

 

魔理沙「……年齢が変わる異変はこの前のでもう十分だぜ。紫って結構ワンパターンだな」

 

紫「あの異変は私の仕業じゃないって…… そうだ真、また私を小さい姿にしてよ! そしてそのかわいくない魔理沙を膝の上からどかして、代わりに私を膝の上に……」

 

真「……んー、面倒だから却下」

 

紫「!」ガーン

 

霊夢「……真って、まだ小さくされたことを根に持ってるのかしら。そういうところは結構子どもっぽかったり……」

 

藍「(……子ども姿の真、もう一度見たいなぁ……)」

 

紫「……話を戻すわ。それじゃあ暇つぶしに、何か問題でも出してよ真」

 

真「ん、問題? そうだなぁ…… それじゃあ素数が無限に存在することの証明を……」

 

紫「そういうのじゃなくて、なぞなぞみたいなものよ!」

 

霊夢「なぞなぞねぇ…… そんなの急に言われても、真だって万能じゃないんだから……」

 

紫「……そうだわ。藍!」

 

藍「はい。 ……真、これを」スッ

 

真「……なんだこれ、なぞなぞの本?」

 

魔理沙「なんだぁ? 随分キレイに纏められてる本だが……パチュリーのじゃなさそうだな。外の世界の本……? こーりんのトコから持ってきたのか?」

 

紫「……まぁ、そんなところね。無縁塚から拾ってきたのよ」

 

霊夢「なにそれ、霖之助さん関係ないじゃない」

 

魔理沙「……こーりんの調達場所もそこだから、そういう意味では同じってことだろ」

 

紫「そうそう。細かいこと気にしてるとハゲるわよ?」

 

霊夢「ハゲないわよ。紫たちは大ざっぱすぎるのよねぇ……」

 

真「……まぁなんだ、とりあえずこれから問題を出せばいいのか?」

 

紫「ええ、お願い。最初に解けた人が真からのご褒美で膝枕ね」

 

霊夢・藍「……」ピクッ

 

真「え……」

 

霊夢「乗った! さぁ早く出しなさい!」

 

藍「……紫様の式である以上、頭を使った勝負事で負けるわけにはいかないな……!」

 

真「ええ…… なぜ急にやる気に……」

 

魔理沙「さー。特に魅力的な景品があるわけでもないのになー」

 

霊夢・藍「(そりゃあ魔理沙は真の膝の上に座ってるからね(な)!)」

 

真「……まぁいい、では問題。『いつも壊れている、料理のときに使うものってなーんだ?』」

 

魔理沙「……いつも壊れている、料理のときに使うもの……?」

 

紫「……うーん、普段あまり料理をしないから難しいわ……」

 

霊夢「(……しめた! 普段から結構料理をしている私にはこの問題有利!)」

 

藍「(料理のときに使うもの……となると調理道具系か? 包丁、鍋、お玉……)」

 

「「「「………………」」」」

 

魔理沙「……うーん、ギブ! なんだこれ、結構難しいぜ」

 

紫「……料理のときに使うものー? お箸は食べるときよねぇ……」

 

霊夢「(菜箸(さいばし)、まな板、ザル…… どれも違う…… 壊れているってどういうことよ!?)」

 

藍「(……もしや、外の世界にある特殊な調理器具か? 私の知らないものだとしたらお手上げだ……)」

 

真「……ふふ、みんな悩んでるな。このまま誰も分からなかったら俺の勝ちかな? 俺への景品は何もないわけだが……」

 

魔理沙「……分からん! 答えなんだ?」ヒョイ

 

真「あっおい」

 

魔理沙「えーっと、『こしょう』? ……ああ! 故障とうまく掛かってるのか!」

 

霊夢・藍「(……あー、ね。 ……あー……)」

 

紫「料理のときに使うってそういうこと…… 言われてみれば納得ねぇ……」

 

真「……こら魔理沙、答えを見たら面白くないだろうが」

 

魔理沙「悪い悪い、考えるのは苦手でな。次は私が問題を出すよ」

 

真「ったく……」

 

魔理沙「なになに……『海の生き物が女性の下着を着けたらお菓子になったよ。さてなーんだ?』」

 

真「ふむ……?」

 

霊夢「(つ、次こそは早く答えて膝枕を……)」

 

魔理沙「……ってこれ、答え『ブラウニー』ってなってるけどどういうことなんだ?」

 

霊夢「……」ゴンッ

 

魔理沙「霊夢が急にちゃぶ台に頭突きを! なにしてんだ?」

 

紫「答えをすぐ言っちゃうのね……」

 

藍「……海は幻想郷にはありませんし、外の世界と文化が異なっているため難しい問題になってますね……」

 

真「(魔理沙が分からないのはどれなんだろう…… 下着の名前か、海の生物の名前か、お菓子の名前か…… どれも幻想郷には無さそうだが……)」

 

紫「……外の世界のなぞなぞの本だと、分からないのもあって面白くないわねぇ…… その本を拾ったのは失敗だったかも」

 

真「……よし、じゃあもっと簡単なクイズのゲームをしよう。『秘めました』ってゲームなんだが、知ってるか?」

 

魔理沙「……『秘めました』?」

 

真「ああ。『20の質問』と言い換えてもいい」

 

霊夢「……どっちも聞いたこと無いわねぇ……」

 

紫「一体どういうゲームなの?」

 

真「簡単だ。そうだな、まずは軽くやって見せよう…… 藍」

 

藍「む、なんだ」

 

真「今から、藍の好きなもの大切なものなんでもいい。1つだけ頭に思い浮かべてみてくれ」

 

藍「……大切なもの? そうだなぁ……」

 

真「頭に思い浮かべるだけだぞ? 声に出さないように気を付けてな」

 

藍「ああ分かった」

 

魔理沙「……? なんだ、何が始まるんだ?」

 

藍「(……ふむ、好きなものや大切なものか。油揚げ……というのは(いささ)か単純すぎるかな? しかし他に私が好きなものなんて……)」

 

紫「20の質問…… なるほど? なんとなく予想がついてきたわ……」

 

藍「(……そうか、別に物と限定されているわけではなかったな。試しのゲームで変に()った答えを用意するのもなんだし、純粋に一番好きなもの……人を考えることにしよう。私が思い浮かべる大切なものは、当然『真』だ!)」カッ

 

真「……思い浮かべたか?」

 

藍「ああ、バッチリだ」

 

真「そうしたら藍、次は俺の質問に『はい』か『いいえ』で答えてくれ。具体的な答え方は特にしなくて構わないから」

 

藍「了解した」

 

真「では……『藍が思い浮かべたものは、生きていますか?』」

 

藍「『はい』」

 

真「ふむ…… では『それは人間の言葉を話せますか?』」

 

藍「『はい』」

 

真「……『それは人間ですか?』」

 

藍「む……これは少々悩むが、『いいえ』かな」

 

真「ほう? つまり神や妖怪にあたるのかな? となると次の質問は少し狭めて…… 『それは動物妖怪ですか?』」

 

藍「……『はい』、だ」

 

紫・霊夢「(……ああ、藍が誰を思い浮かべたのか分かったかも)」

 

真「……とまぁ、もう大体分かったと思うが、こうやっていくつも質問することで、藍が心に秘めたものを推理するゲームだ。20回質問するまでに当てられたら勝ちでもいいし、互いに出し合って少なかった方の勝ち、というのもありだな。今回の場合は、四人が順番に質問していって最初に正解したヤツの勝ち、ってとこか」

 

霊夢「……うん、大体分かったわ。心の内に秘めたものを(さぐ)る遊び…… だからゲームの名前が『秘めました』なのね」

 

魔理沙「なるほど! なかなかシャレたゲーム名だな!」

 

紫「……私の予想とほとんど同じルールだったわ。確かにこれなら、なぞなぞみたいに出題者がいろいろ考える必要は無いわね」

 

霊夢「単純に、頭の中に何かを思い浮かべればいいだけだもんね」

 

真「そういうことだな」

 

藍「……それで、真は私の心に秘めたもの(想い)は分かってくれたのかな?」

 

真「ああ、簡単だった。ズバリ『橙』だろ? まぁ最初に大切なものって指定したからなー」

 

藍「いや違う…… 確かに橙も大切だが……」

 

真「試しのゲームだったし分かりやすいのを思い浮かべてくれたんだろうが…… って、え、違う?」

 

藍「ああ違う、橙ではない動物妖怪だ。私の一番大切な……」

 

真「……紫って動物妖怪だっけ?」

 

藍「紫様でもない!」

 

真「……あれ~?」

 

紫「(藍……)」

 

霊夢「(どんまい……)」

 

魔理沙「……よっしゃ、早速やってみようぜ! 最初は誰が出題者になる?」

 

真「……じゃあもう一度練習も兼ねて俺がやろう。思い浮かべるのは『単語』のみで、『全員が知っているもの』に限定だからな」

 

藍「(そのルール、別に私は破ってないのに…… どうして自分を選択肢に入れないんだ真は!)」プンプン

 

真「あれ、なんか藍怒ってる? ……ごめんな藍、最初に説明しとくべきだった」

 

藍「……いや、私が思い浮かべたのは、真の知らない人物だったとかではなくてだな……」

 

真「……でも、藍もこんなことで怒ったりするんだな。意外だが、そういう一面も結構かわいいぞ」ナデナデ

 

藍「……う、うん……」///

 

紫・霊夢「(……まぁ、良かったわね、藍)」

 

藍「(くぅ……我ながらチョロいなぁ……)」

 

 ・・・・・・・・・・

 

真「……じゃあ始めるか。 ……うん、『秘めました』」

 

魔理沙「……それは言わなきゃいけないのか?」

 

真「そんな決まりは無いが……ゲームが始まった合図っぽいだろ」

 

霊夢「……別に、大切なものっていう縛りは今回無いのよね?」

 

真「ああ、今回もこれ以降も気にしなくていい。まぁ俺が今回秘めたのは、一応好きなものだけどな」

 

霊夢「……」ピクッ

 

藍「(む、次は真の好きなもの、か……)」

 

紫「(……いや、まさかねー。 ……でも)」

 

霊夢・紫・藍「(『私』だったら嬉しいなぁ……)」

 

真「……って、今のも質問の答えみたいなもんだったな。次からもう質問扱いでいいな?」

 

魔理沙「いいぜー。んじゃ、まずは私から。『それは食べることができるものですか?』」

 

真「ん、『いいえ』」

 

魔理沙「……なにっ!」ガーン

 

真「いや、どこに驚く要素があったよ、おい」

 

魔理沙「油揚げじゃなかったのか!」

 

真「……まぁなんだ、俺は何も言わないぞ? うっかり口を滑らせてしまうのもどうかと思うしな」

 

魔理沙「分かってるよ!」

 

霊夢「……じゃあ次は私ね。『それは人間ですか?』」

 

真「『いいえ』」

 

霊夢「!」ガーン

 

真「なんでお前ら、最初からショック受けてんの? 最初っから具体的に予想しすぎなんだよ」

 

霊夢「(私じゃなかった……)」

 

紫「……馬鹿ねぇ、食べ物じゃないんだから人間なわけないじゃない」

 

魔理沙「おおう、妖怪的発想! そう言えば真も妖怪だったぜ」

 

真「(いや、例え人間を思い浮かべていても、魔理沙の質問には『いいえ』で答えていたが……)」

紫「次は私ね! 『真が考えてるそれは、妖怪ですか?』」

 

真「『いいえ』」

 

紫・藍「!」ガーン

 

真「もうなんなのお前ら」

 

紫「……『いいえ』ばっかりじゃない……」

 

真「知らねぇよ…… そういうこともあるだろうし、選択肢は絞れてるんだからいいじゃないか。つーか質問がまだまだ下手なんだよ」

 

霊夢「……下手って言われても」

 

魔理沙「まだ私ら初心者だしなぁ?」

 

真「……まぁそれは仕方ないな。なに、悪いと言ってるわけじゃないから安心しろ」

 

藍「……ふむ。では、『それは形が存在していますか?』」

 

霊夢「……は? ちょっと、どういう質問よそれ」

 

真「……うまいな藍。そう、それが基本の質問の一つになる。答えは『いいえ』だ」

 

魔理沙「『いいえ』ぇ!? 形が存在してないってなんだよそれ!」

 

藍「……つまりは、言葉や概念であるということだろう。例えば"弾幕ごっこ"などは名詞として存在しているが、形は存在してないだろう?」

 

霊夢「ああ、そういうこと……」

 

紫「一気に難しくなったわね…… さ、魔理沙の番よ」

 

魔理沙「え…… ちょっと待て、どんな質問していいのか分からなくなってきたぜ」

 

霊夢「そうよねぇ。形の無いものっていう発想が無かったもの」

 

魔理沙「……えーと、『それは"弾幕ごっこ"ですか?』」

 

真「……適当だなおい。それが質問でいいのか? 質問というか回答だが…… 答えは『いいえ』だ」

 

魔理沙「あー、残念」

 

霊夢「当然よね」

 

紫「……藍が言った例をそのまま質問にするんじゃないわよ! もうちょっと選択肢が絞れる質問にしなさい!」

 

魔理沙「す、すまないぜ…… でもさ、これ選択肢を絞る質問をしたとして、次に私の番が来る前に、他のヤツに当てられちゃったら負けちゃうじゃん? だからさぁ……」

 

真「……あ、確かにそうだな。四人と俺が、それぞれ一対一で"秘めました"をして、その中で一番質問数が少ないヤツが勝ちってルールのほうがよかったかもしれん」

 

紫「いいえ! それだと無駄に時間がかかるし今のルールがベストよ! いかに相手に気付かれないように確信めいた質問をするのも面白いところでしょ!」

 

魔理沙「あー、そっかぁ、そういう考え方もできるな確かに」

 

霊夢「……もう次の質問に行っていいかしら? 次は私の番なんだけど」

 

魔理沙「ああ、いいぜ。スムーズに行こうスムーズに」

 

霊夢「魔理沙のせいで止まってたんだけど……」

 

魔理沙「細かいことは言いっこ無しだぜ!」

 

霊夢「……まぁいいわ。真、『それは私も好きなものかしら?』」

真「……ふむ、『いいえ』かな」

 

魔理沙「ほう、つまり霊夢の嫌いなものか……」

 

紫「違うわ、霊夢の好きではないものよ。『霊夢の好きなものか』って質問の答えが『いいえ』だからって、霊夢の嫌いなものとはならないわ。興味が無いとかもありえるじゃない」

 

魔理沙「あ、そっか」

 

真「そういうことだな。まぁ言ってしまえば、霊夢にとっては嫌いなもので、ついでに興味も無いものだ」

 

藍「(ふむ……?)」

 

霊夢「……私が興味の無いものって、なんかもう当てにくいにもほどがあるわね……」

 

紫「霊夢って興味無いものばっかりだものね」

 

魔理沙「だな。食べ物以外は興味無いよな」

 

霊夢「失礼な! 私ほど多感という言葉が似合う博麗の巫女は他にいな……」

 

紫「……さて、次は私ね」

 

霊夢「(スルー!?)」

 

藍「(そりゃまぁ、博麗の巫女は霊夢しかいないしな……)」

 

紫「そうねぇ…… 『それは幻想郷特有のものですか?』」

 

真「お、うまいな。だが『いいえ』だ」

 

霊夢「……ズルいわね、そんなの外の世界に自由に行き来できる紫だから分かることじゃない」

 

魔理沙「そうだぞ! 外の世界を知らない私たちにはなんのヒントにもならないぜ!」

 

紫「そういうゲームだってさっき私言ったわよね!? だから真もうまいって言ってくれたんじゃない!」

 

霊夢「外の世界行きたーい」

 

魔理沙「行きたーい!」

 

霊夢「海見たーい」

 

魔理沙「見たーい!」

 

紫「うるさいわね! 紅魔館の近くにある湖でも眺めてなさい」

 

霊夢・魔理沙「「えー……」」

 

藍「……次、私でいいのかな。質問させてもらうぞ」

 

真「ああ、いいぞ」

 

紫「……大体、海に行って塩を大量に持ち帰れば幻想郷でひと稼ぎできるって魂胆でしょうけど、海水から塩を取るのは結構手間なのよ?」

 

霊夢「じゃあいいわ」

 

魔理沙「早いな諦めるの!」

 

藍「……『それは、子どもでも知っている……そうだな、人里にある寺子屋の一番小さい子でも知っているような単語ですか?』」

 

真「……! へぇ、そう来たか…… 『はい』だな」

 

藍「……うん。難しい言葉ではないわけか、なるほどな」

 

真「霊夢や魔理沙もいるからな、この四人の中で知らないヤツがいたらゲームにならないだろう……って最初にも言ったな、確か」

 

魔理沙「……まぁそうだよなー。初めて『はい』が来たけど、あまりヒントが増えた気にはならないぜ」

 

真「お、戻ってきた。海の話に夢中かと思ってたら」

 

紫「……まぁ、『はい』が来たからってヒントが増えるゲームじゃないものね。むしろ『はい』『いいえ』どちらが来ても選択肢が減っていくゲームなのよ」

 

真「(さっき『いいえ』ばっかりで文句言ってたヤツが何を言ってる……)」

 

魔理沙「……さて、次は私だな! じゃあ質問はなんにしようか……」

 

真「……ふむ。ここでこう言ってしまうのは少々アンフェアかもしれないが…… ここで当てないと多分負けるぞ?」

 

魔理沙「えっ! 誰か確信めいた質問をしてたのか!?」

 

真「……まぁそういうことだ。多分次に当てられるなってヤツがいる」

 

魔理沙「マジか……」

 

霊夢「(私じゃない……ってことは紫か藍ね)」

 

紫「(……まぁ、タイミング的に藍よねぇ…… そんな分かってる様子あったかしら?)」

 

魔理沙「えーっと……まとめると、形が無くて、霊夢が好きじゃなくて、子どもでも知ってるような何かだろ? そんだけで分かるものなのか?」

 

真「加えて、俺が好きなもの、な。まぁそれだけで魔理沙が分かるかどうかは知らん」

 

魔理沙「……えー、真が好きで形の無いもの…… 『それは"温泉"、でどうだ?』」

 

紫「……なるほど。形が無いもの、をそう取ったのね……」

 

魔理沙「そういうことだぜ! 藍は言葉や概念だとか言ってたけど、実はこの答えから目を逸らす罠……!」

 

真「ほう…… 考えたな魔理沙」

 

紫「……え、もしかして正解?」

 

真「……だが、残念『いいえ』。温泉ではありません」

 

魔理沙「えー!? じゃあ『お風呂』とか『入浴行為』とか……!」

 

真「そういうイジワルはしない。どれもハズレだ」

 

魔理沙「くぅ~……」ガクッ

 

霊夢「……っていうか私温泉好きなんだけど。魔理沙は私がお風呂嫌いだと思ってたわけ?」

 

魔理沙「……霊夢が好きじゃないってのは、ヒントとして考えなかったぜ……」

 

真「だめだぞー、全部ヒントとして考えないと。それに、霊夢が好きじゃないってのは俺的に結構なヒントだな」

 

藍「(……ああ、私もそれがヒントになった)」ウンウン

 

霊夢「……じゃあ次は私ね! 当てさせてもらうわ!」

 

真「おー、当ててくれ」

 

霊夢「真が好きで、形が無くて、そして私が嫌いなもの…… ズバリ『それは"修行"ですか?』 私は修行が大っ嫌いよ!」

 

紫「誇らしげに言うことじゃないわねぇ……」

 

魔理沙「あっ、それがあったか!」

 

藍「……真は修行が好きなのか?」

 

真「まぁ、体が(なま)らないようにはしてるつもりだが……」

 

霊夢「……で、どうなの? 正解?」

 

真「……残念! 『いいえ』! 修行でもありません!」

 

霊夢「えぇー!」ガーン

 

魔理沙「……ふふふ、残念だったな霊夢。敗者ゾーンへようこそ」

 

霊夢「うう……真の膝枕が……」

 

紫「よしよし。真の膝枕は、私が霊夢の代わりにもらっておいてあげるからね」

 

真「(……え、膝枕? そのルールまだ続いてたの?)」

 

魔理沙「……ってことは、紫はもう答えは分かってるのか?」

 

紫「実はそれがまだなのよねぇ…… えーと? 真の好きなもので、形を持たなくて、霊夢の嫌いなもので、外の世界にも存在して、寺子屋の子どもでも知ってる……」

 

藍「……」ゴクリ

 

紫「……んー、分かんないなー。藍は本当にこれだけのヒントで分かったの?」

 

藍「……え? ええ…… まだ正解かどうかは分かりませんが、一つ候補が出ましたね」

 

紫「……えー? どの部分がその答えを出すにあたって一番のヒントになったの?」

 

藍「そうですね…… 霊夢の好きなものかどうかのときに、真が即答できたのがまず……」

 

霊夢「……はい、だーめ! 紫、藍に話聞くの無し! それと時間かけ過ぎよ! さっと答えてさっと間違えなさい!」

 

紫「むぅ……霊夢のケチ……」

 

魔理沙「霊夢がケチなのは知ってたことだろ」

 

紫「まぁそうね」

 

霊夢「はいあと十数えるまでね! いーち、にーい、さーん……」

 

紫「わわっ! えーとえーと…… そうだ! 『それは"歌"ですか? もしくは"音楽"とかそこらへん!』」

 

霊夢「……!」

 

魔理沙「おお! それっぽい! 真ってよく鼻唄をうたってるもんな! プリズムリバーの音楽も好きみたいだし!」

 

紫「でしょでしょ! 本当はもうちょっと絞り込んだ答えのほうがいいかと思ったんだけど……」

 

真「……ふむ。じゃあそこは特別にそういう答えだと判断しよう。童謡でも演奏でも別にいいと考えて……」

 

紫「……そ、それで結果は……」

 

真「…………」

 

紫「…………」ドキドキ

 

真「……………………」

 

紫「……………………!」

 

真「………………………………っ!」

 

紫「っ!」

 

真「残念!」デレデー

 

紫「わああああー!」ガクーン

 

真「『いいえ』ー。音楽関係でもありませんでしたー」

 

霊夢「……焦らしたわねぇ」

 

魔理沙「……なんか変な顔で笑わせに来てなかったか?」

 

紫「うぅ…… じゃあ答えはなんなのよ……」

 

真「……じゃあ藍、答えをどうぞ」

 

藍「……では、一応形式に(のっと)って…… 『それは"算術"ですか?』」

 

真「『はい』、正解ー。わざわざ()()()()子どもでも知ってるかって聞いてきたから、藍は分かってると思ったぜ」

 

霊夢「ああそういう…… 確かに真の算術の話は、私いっつもスルーしてるわ……」

 

魔理沙「算術かー。言われてみたら確かにだが、多分私じゃ一生思いつかなかったなー…… ん?」

 

紫「……! ……!」

 

魔理沙「……紫のヤツめっちゃ悔しがってる。頑張れば紫なら出せそうな答えだもんな」

 

霊夢「……真がさっき焦らしまくったから」

 

魔理沙「それに自分の式に負けたわけだしな」

 

紫「……」

 

藍「ゆ、紫様! 今回は私に有利過ぎるお題だったに過ぎません! ほら、私は真とそういう話をよくしますし! ですから……」

 

紫「……いいのよ藍、よくこの短い質問の中で正解を導き出せたわね、さすがは私の式…… 私が悔しいのは真に焦らされたせいだから……」

 

真「……やー、ごめんごめん」

 

魔理沙「棒読みだぜ」

 

霊夢「反省する気持ちゼロね」

 

真「まぁ反省してないしな」

 

紫「つ、次は負けないんだから……!」

 

真「……え、まだやるのか? 結構暇つぶしになったと思うんだが」

 

魔理沙「当然だぜ! 次は私がお題を考える役をやりたいな!」

 

真「……まぁ、俺も推理する側に回ってみたいしな。でもその前に休憩しよう。お菓子でも持ってくるから待っててくれ」

 

霊夢「……まぁ、紫が回復するまで休憩は必要ね。じゃあ私も、お茶を新しく用意しようかしら」

 

魔理沙「おー、考えるゲームには糖分が必須だぜ! 私あれがいい、ちょこれーと! 真が外の世界から持って帰ってきたやつ!」

 

霊夢「却下で」

 

魔理沙「えー!」

 

真「(……外の世界のお菓子、あとどれくらい残ってたかなぁ……)」

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

藍「……で、では失礼して……」

 

真「……ん、どうぞ」ポンポン

 

藍「……っ!」ゴロン

 

真「……おー。 ……まぁなんだ、嫌だったら無理に膝枕の権利を使わなくてもいいんだが……」

 

藍「い、嫌ではない! 私が真と触れることを嫌がるものか! ……ただ……」

 

真「……あー、藍はいっつもしっかりとした姿を皆に見せてるもんな。気を抜いた格好を見られるのには抵抗があるか」

 

藍「……ま、まぁ…… 見ているのが真だけなら遠慮はしないのだが……」ボソボソ

 

真「……たまにはゆっくりしていいからな。俺としては、嫌じゃないならなによりだ」

 

藍「う、うむ……」

 

真「……」

 

藍「……」

 

真「……」ナデリ

 

藍「ふぁ!?」ビクン

 

真「あ、悪い。つい膝枕するときの癖で……」

 

藍「……い、いや、驚いただけで、嫌だったわけでは……」

 

真「そうか、ならよかった」ナデナデ

 

藍「(ふわぁ…… 真撫でるの上手い…… 気持ちいい……)」

 

真「……ふふ、それにしても『ふぁ!?』とは…… 藍にしては珍しい反応だな」

 

藍「わ、笑うな! ちょっと油断していただけで、次からそんな失態は……」

 

真「……冗談だ、そう怒るな」

 

藍「……ふん! 真なんかもう知らん!」

 

真「まいったなぁ…… 機嫌直してくれよー」

 

藍「……まぁ、もう少し頭を撫でてくれたら直るかもしれん」

 

真「お、そうかそうか。それならなんとかできそうだ……」ナデナデ

 

 

 

 

魔理沙「……くそ、あいつらイチャイチャしやがって……」

 

霊夢「……完全に二人だけの世界に入っちゃってるわね……」

 

紫「……っはー、冬なのにアツいアツい。まぁ藍は普段からよくやってくれてるから、落ち着ける時間は必要よねー」

 

魔理沙「……あっちがそれでいいなら、あいつらにはもうお菓子分けてやんねー」

 

紫「お菓子なんて無くても、十分甘い時間を過ごせてるわよあの二人」

 

霊夢「というかこのお菓子、真のだし……」

 

魔理沙「……あいつらはほっといて、こっちはこっちでゲームを再開しようぜ。次は私が秘める番だ」

 

紫「……そうね」

 

霊夢「あっちばかり見てても仕方ないし」

 

魔理沙「じゃあ、この三人で勝負して、勝ったヤツが藍と交代な」

 

紫「……あれを見てなお、藍と交代しようって気になる魔理沙の胆力はすごいわね……せっかく藍が幸せそうなのに。でも乗ったわ」

 

霊夢「私も。それで、勝ち負けの基準は?」

 

魔理沙「まぁ普通に考えて、当てられるまでの質問数が一番多いヤツの勝ちだろ」

 

紫「……つまり、三人ともがそれぞれお題を秘める側に回るということね」

 

霊夢「いいんじゃないそれで?」

 

魔理沙「……じゃ、まずは私から行くぜー。『秘めました』!」

 

霊夢「『それは"キノコ"ですか?』」

 

魔理沙「……え?」

 

霊夢「『それは"キノコ"ですか?』」

 

魔理沙「……おい、いきなり当てるなよ……」

 

霊夢「……魔理沙ってワンパターンねぇ……」

 

魔理沙「馬鹿な! 私の思考は二億種類くらいあるはずなのに!」

 

霊夢「とりあえず言ってみたら、まさか当たるとは……」

 

紫「はい、魔理沙は1回目で当てられたということで」

 

魔理沙「……考えられる最小の記録じゃないかな、それ」

 

紫「悩むまでもなく最小の記録よ、これ」

 

霊夢「もういいわ、次は私の番ね。私は魔理沙と違って簡単には……」

 

魔理沙「……『それは"お賽銭"ですか?』」

 

霊夢「……」

 

魔理沙「『それは"お賽銭"ですか?』」

 

霊夢「……わ、私はまだ秘めてないからハズレよね……」ダラダラ

 

魔理沙「霊夢もワンパターンじゃないか!」

 

紫「……アンタたち、これじゃゲームにならないじゃない」

 

霊夢・魔理沙「「だって魔理沙(霊夢)が一発で当てて来たんだもの(からさぁ)!」」

 

紫「……ルールを変えましょう。私がお題を秘めるから、二人は協力して質問を20個以内で当てられたら勝ち。これでどう?」

 

魔理沙「……そっちのほうがいいみたいだな」

 

霊夢「……私たちが勝ったときの真の膝枕はどうなるのよ」

 

紫「アンタたちは小さいんだから、二人でも真の膝におさまるでしょ。というかさっきまでのルールだったら私が勝つんだし、文句は言わせないわよ」

 

魔理沙「えぇ……霊夢と一緒かぁ……」

 

霊夢「(むぅ……魔理沙と一緒かぁ……)」

 

紫「じゃ、始めるわよ! 真の膝を賭けて!」

 

真「(……また俺のあずかり知らぬとこで、俺が賭けられてるみたいだなぁ……)」

 

 

 

紫「『秘めました』!」

 

魔理沙「①『それは"幻想郷"ですか?』」

 

霊夢「②『それは"昼寝"ですか?』」

 

紫「アンタたちはまた、いきなり当てに来るんじゃないわよ! どちらも『いいえ』! っていうか霊夢、昼寝って何よ!」

 

霊夢「だって紫、基本的に寝てるじゃない?」

 

紫「いま起きてるじゃない! そりゃあちょっと睡眠量は人より多いけど……」

 

霊夢「……そう言えば紫、今年は冬眠してないわね。どうしたの?」

 

紫「……え。言われてみればそうねぇ…… 妖力に余裕でもできたのかしら?」

 

魔理沙「へー。今までは妖力が少なかったから冬眠してたのか」

 

霊夢「妖力が少ないって言っても、紫の妖力はそこらの妖怪とは比べ物にならないほど多いけどね」

 

紫「(……ついこの前、真に掛けてた術を解いた影響かもしれないわね)」

 

魔理沙「……っと、じゃあ真面目に当てにいきますか。③『それは触れられるものですか?』」

 

紫「『はい』。さっきの算術みたいに、言葉や概念では無いってことね」

 

霊夢「それは考えやすくて助かるわね。じゃあ④『それは決まった形がありますか?』」

 

紫「それも『はい』。水みたいに形を変えたりはしないわね」

 

魔理沙「おお、なんか絞れていってる気がするぜ。じゃあそれの大きさはどのくらい……ってこれじゃ駄目だな。⑤『それはこの部屋に入るくらいの大きさですか?』」

 

紫「『はい』」

 

霊夢「⑥『それはこの博麗神社にもありますか?』」

 

紫「『いいえ』かしら。ざっと見たところは見当たらないわね」

 

霊夢「……じゃあ、もしかしたらある可能性もあるわけね。この質問は失敗だったかも」

 

紫「そうねぇ。できるだけ『はい』か『いいえ』で答えるけど、微妙なものってのは出てくるわ」

 

魔理沙「ふむ…… 質問はまだあるんだ、もっとゆっくり絞っていこうぜ」

 

霊夢「そうね」

 

魔理沙「⑦『それは食べ物ですか?』」

 

紫「『いいえ』」

 

霊夢「⑧『それは生き物ですか?』」

 

紫「『いいえ』」

 

魔理沙「⑨『それは熱い、もしくは冷たい?』」

 

紫「……『いいえ』かしら?」

 

霊夢「⑩『それは柔らかいものですか?』」

 

紫「『いいえ』。私的には柔らかくはないわね」

 

魔理沙「む…… ここで『いいえ』が連続とは……」

 

霊夢「でもこれでかなり絞れてきたわよ。食べ物でも生き物でもなくて、特別熱かったり冷たかったり柔らかかったりしないもの。その上に巨大なものでも無いみたいだし、なんらかの道具と言っていいでしょうね」

 

魔理沙「だな。となるとどんなときに使うかだが……」

 

紫「(二人とも慣れてきたわねぇ……)」

 

魔理沙「⑪『それはいつでも使うことができますか?』」

 

紫「……んー、『はい』? 使おうと思えばいつでも使えるけど」

 

魔理沙「ほうほう。つまり⑫『使う時期なりタイミングなりがあるってわけか?』」

 

紫「それも質問? なら『はい』よ」

 

霊夢「あー! 魔理沙二つも質問使わないでよ!」

 

魔理沙「あ、悪い。次は霊夢が二回質問していいからさ」

 

霊夢「……それに、道具なんてどれも、使う時期が決まってるもんでしょうに。お箸はご飯を食べるときだし、筆とかは文字が書きたいときよ」

 

魔理沙「だ、だな、悪い。でもほら、こういったちゃぶ台とかは、いつも使ってるわけだから時期が無いとも考えられるし……」

 

霊夢「……まぁそうね。ならいいわ。それじゃあ……⑬『それは、部屋の中で使うものですか?』」

 

紫「『いいえ』」

 

霊夢「⑭『それは使うときに、体を激しく動かしたりしますか?』」

 

紫「『いいえ』かしら」

 

霊夢「……ふむ。外で使うものだけど、独楽(こま)とかめんこみたいな遊び道具ではなさそうね」

 

魔理沙「……そもそも、道具にしても、持って使うもの以外にも置いて使うものとかあるわけだしなぁ……⑮『それは手に持って使うものですか?』」

 

紫「『はい』」

 

霊夢「じゃあ、⑯『それは手に持ったとき、振り回したりしますか?』」

 

紫「『いいえ』」

 

魔理沙「……あー、私分かったかもしれない」

 

霊夢「うそっ! なになに!?」

 

魔理沙「まぁ待てよ、もうちょい質問してみるから」

 

紫「……そうね。あと質問できるのは4回かしら。最後の1回は答えるのに使うとして、実質あと3回ね」

 

魔理沙「じゃあいくぜ? ⑰『それは紫が持っているものですか?』」

 

紫「……『はい』、よ」

 

魔理沙「来た!」

 

霊夢「えー? じゃあ、⑱『それは紫以外にも持っている人はいますか?』」

 

紫「『はい』」

 

霊夢「……あー、私も分かったかも」

 

魔理沙「だろ! じゃあ駄目押しにもう一つ質問! ⑲『それを使うタイミングは、天気に左右されますか?』」

 

紫「『はい』」

 

魔理沙「決まりだ! これで霊夢も分かっただろ?」

 

霊夢「ちょっと前から分かってたわよ」

 

紫「(……あー、これは当てられちゃったかな?)」

 

魔理沙「じゃあせーので答えようぜ! これで揃わなかったらかっこ悪いな」

 

霊夢「……さすがに、魔理沙の最後の質問を聞いておいて、揃わないことはないと思うわよ?」

 

魔理沙「それもそうだな! せーのっ!」

 

霊夢・魔理沙「⑳『それは--』」

 

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 

魔理沙「……わふー! 真の膝枕だぜー!」

 

霊夢「……魔理沙はいつも座ってるじゃない。今日は私に譲りなさいよ」

 

魔理沙「いつもは膝の上に座ってるだけだ。膝の上に頭を乗せるのは貴重なんだぜ」

 

霊夢「……むぅ……」

 

魔理沙「……つーか霊夢は、普段から真と一緒にいるんだから、そのときにさせてもらえばいいじゃないか」

 

霊夢「そ、それは駄目よ! こういうのは今日みたいに、勝負に勝ったときの賞品だからいいんじゃない!」

 

魔理沙「……ふむ。まぁ一理あるぜ」

 

霊夢「(それに真と二人きりのときでも、何もないときには頼みづらいし…… それにしてもらったとして、途中で萃香なり魔理沙なりが来たらからかわれるに決まってるわ!)」

 

魔理沙「……あー、勝負に勝っての膝枕は気持ちいいなー」

 

紫「アンタたちねぇ……さっきから聞いてれば……」

 

魔理沙「ん?」

 

霊夢「なによ?」

 

紫「……勝負に勝ったのは私だからね!? なんでアンタたちも一緒に、真から膝枕されてるのよ!」

 

魔理沙「……おいおい、何言ってるんだよ。勝ったのは私たちだっただろう。紫のお題、"傘"を見事に正解させてな」

 

紫「"傘"じゃなくて"日傘"だから! 見事正解させてないからね!?」

 

魔理沙「"傘"も"日傘"も同じじゃないか」

 

紫「違うもん!」

 

霊夢「もんってアンタ……」

 

魔理沙「子どもかよ……」

 

紫「子どもよ! 少なくとも見た目はね!」

 

魔理沙「そうだったぜ。私たちの勝ちなのに紫が駄々をこねたから……」

 

霊夢「……私たちまで小さくされて、三人で膝枕されることになっちゃったのよね」

 

紫「駄々をこねたのはアンタたちでしょ! 三人が嫌ならどうぞどこかに行ってくれてかまわないわよ」

 

霊夢「やだ」

 

魔理沙「いやだぜ」

 

紫「アンタたちはもう……」

 

 

 

真「……らーん。子どもたちが俺の膝の上でケンカを始めたんだが……」

 

藍「……なに、じゃれているだけだろう、気にするな。どうしても気になるなら、頭を撫でてやれば少しは落ち着くんじゃないか?」

 

真「そんなもんか……」ポン ポン ポン

 

霊夢・魔理沙・紫「「「~♪」」」

 

藍「……どうだい? お父さん」

 

真「誰がお父さんだ。俺は子どもを作った覚えはないぞ。拾ったことならあるけど」

 

藍「……それじゃあ作るか? 真が子どもを欲しいというなら、私だって協力を惜しまないが……」

 

真「……別に今の台詞に、子どもが欲しいなんて意味は秘められてないよ……」

 

藍「……『秘めました』だけに?」

 

真「うまくない……」

 

 

 ~終わり~

 

 


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