東方狐答録   作:佐藤秋

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第百十一話 博麗神社で王様ゲーム

 

 ~博麗神社~

 

紫「……と、いうわけで王様ゲームをやるわよ!」バンッ!

 

霊夢「……」ポカン

 

魔理沙「……?」

 

真「……」

 

魔理沙「……あー、そういえばさぁ、シャボン玉の歌ってあるだろ? あれってシャボン玉が飛ぶことと屋根が飛ぶことに何の因果関係があるんだろうなー」

 

真「……いやいや、『シャボン玉飛んだ、屋根まで飛んだ』ってのは『シャボン玉が飛んだうえに、しかも屋根まで天井から外れて飛んでった』って意味ではなくてだな……」

 

紫「……ちょっと! 全員で無視しないでよ! 私が何か変なこと言ったみたいじゃない!」

 

真「(みたいというか、その通りなんだが……)」

 

霊夢「……リアクションに困ってただけよ。なんなのその、王様ゲーム?ってのは……」

 

紫「よく聞いてくれたわね霊夢! それじゃあ藍、説明よろしく!」パチン

 

藍「はい」シュタッ

 

魔理沙「うおっ」ビクッ

 

霊夢「……いい加減慣れなさいよ。紫や藍がいきなりスキマから登場するのはよくあることじゃ……」

 

真「(……あれ? 紫が指を鳴らして、藍がスキマから登場するっておかしくないか? なんで藍に指を鳴らす音が聞こえてるんだよ)」

 

藍「(……紫様の命令でずっと待機していたからな。音を聞きつけて現れたわけではない)」

 

真「(……なるほど)」

 

霊夢「……」ムッ

 

藍「さて、では説明しよう。 ……といっても、大して複雑なものでもないんだがな。使う道具はこれだけだ」バラッ

 

魔理沙「……これは……割り箸? くじ引きでもするのか?」

 

霊夢「……箸の先には数字がそれぞれ書いてあるわね。 ……あら? 一つだけ違うものが書かれているわ」

 

魔理沙「どれどれ…… 王様とかが頭にのせる(かんむり)のマーク?」

 

紫「その通り! ルールはいたって簡単よ! 皆でくじ引きをして、この王冠のくじを引いた人が王様! 残りのメンバーになんでも命令することができるの!」

 

魔理沙「……なんでも?」

 

紫「そう、なんでも! でも名指しでの命令はできなくて、王様は番号でしか命令できないの! 例えば『1番が王様に○○する』とか、『2番と3番が○○する』みたいな感じね!」

 

魔理沙「……なるほど、単純だな」

 

藍「(ご自分で説明されてしまった……)」

 

霊夢「……へぇ。でも、やり方は分かったけどあまり面白そうじゃなさそうね。命令されることが多くなりそうだし……」

 

魔理沙「そうか? やってみたら結構面白いかと思ったんだけどなー」

 

真「……まぁ、俺もあまりやる気は起きないな。こういうのに男が混ざったらいろいろ面倒になる」

 

霊夢「でしょ? じゃあ私は真と、向こうでお茶でも飲みながら見てるから、アンタ達は三人で楽しんで……」

 

紫「(……ふぅん、霊夢は参加しないんだ…… 残念ねぇ、せっかくのチャンスなのに……)」ヒソヒソ

 

霊夢「(……? どういうことよ)」ヒソヒソ

 

紫「(いい? なんでも命令できるということは、例えば霊夢が王様になれば『2番が王様に膝枕』とかできるのよ? そして真が2番だったら……)」ニヤリ

 

霊夢「……!」

 

真「……さて、じゃあ霊夢、俺たちはお茶菓子の準備でも……」

 

霊夢「何してるの真! 私たちも参加するわよ!」

 

真「……ってなんだその変わり身の早さ!? お前紫に似てきたな!」

 

魔理沙「もともと霊夢は気分屋だから、そういうトコは前から紫にそっくりだぜ」

 

霊夢「(……あっ! でもどうしよう紫! 仮に私が王様になったとして、皆の前で『王様に膝枕』を宣言するのは恥ずかしい……)」

 

紫「(ふふ……だろうと思って、しっかり作戦を考えておいたわ。見てなさい)」

 

霊夢「(……作戦?)」

 

真「あのなぁ霊夢…… 王様の言うことは『なんでも』聞かないといけないんだぞ? こういうのは悪ノリしだしたら大変なことになるし、無茶なことを言い出したらケンカの元に……」

 

紫「……それなんだけど、新しいルールも考えてきたからちょっと聞いてくれない?」

 

魔理沙「……新しいルール?」

 

紫「普通、王様ゲームというのは、王様が決まった時点で命令が考えられるものでしょう? そうじゃなくて、王様が決まる前から命令は既に考えられてるってルールにしてみるの!」

 

真「……? 言っている意味がよく分からないんだが…… それじゃあその、事前に考えられている命令ってのは誰が考えておくんだよ」

 

紫「全員よ! ……具体的に言うと、全員がそれぞれ考えた、命令が書かれた紙をたくさん用意しておいて、王様はそれを引ける、というルールね」

 

魔理沙「……あー、なるほど? くじで王様に決まった者は、命令する権利を得られるんじゃなくて、命令の書かれた紙をランダムで一枚引ける権利を得られるわけか。その命令の書かれた紙っていうのは、私たちがそれぞれ準備しておく、と」

 

紫「イグザクトリィ!」

 

魔理沙「なぜ横文字!?」

 

紫「かっこよくない?」

 

魔理沙「かっこいいぜ!」

 

真「(……ふむ。それなら自分もその命令を聞くハメになる可能性も出てくるから、あまり無茶な命令は書けなくなる……か)」

 

霊夢「(……なるほど! そのルールなら、自分で用意した『2番は王様に膝枕』という紙を引けば、仕方なく命令したという雰囲気も出せるわね!)」

 

真「……まぁ、そのルールならやってもいいかな。なかなかうまいルールを考えるもんだ」

 

霊夢「本当ね! さすが紫! 天才!」

 

紫「ふふふ…… そう褒めるな褒めるな」~♪

 

魔理沙「(……今日の霊夢はやけに紫を持ち上げるな…… うまい食べ物でももらったのかな?)」

 

真「それで……その王様ゲームはここにいる五人でやるのか? 俺、紫、霊夢、魔理沙、藍……」

 

藍「あ、いや、私はやらない。もともとルールの説明だけに呼ばれたんだ。紫様の命令でな」

 

真「そ、そうか…… 説明は全部紫がしてた気もするが……」

 

魔理沙「紫の式も大変だなー。ある意味毎日が、王様の決まった王様ゲームってか」ハハハ

 

紫「あら魔理沙、もう王様ゲームのルールを理解したようね。やるじゃない」

 

魔理沙「おおう、私の皮肉はスルーときたか」

 

真「(……藍は参加しないのか。安心したような、残念なような……って俺は何を考えているんだ。王様の命令という大義名分があっても、藍に変なことしたら嫌われちゃうだろ……)」

 

藍「(残念…… 真からだったらどんな命令をされても嫌ではないのだが……)」

 

霊夢「(……藍が参加しないなら全部で四人? ずいぶん少ないわね……でも……)」

 

紫「(人数が増えたら、真と何かできる確率が減っちゃうものね~♪ 藍には後で、油揚げでも買ってフォローをしておきましょう)」

 

魔理沙「……そうだ、橙は来てないのか?」

 

藍「今日もまた屋敷でお留守番だ。ついでに萃香殿に稽古を頼んである」

 

魔理沙「へぇ~」

 

霊夢「(あ、そう言えば今朝から萃香見てない……)」

 

真「……四人はさすがに少なくないか? 紅魔館の連中なり、守矢神社の連中なり呼んで、もう少し人数を増やしたほうがいいと思うが……」

 

紫・霊夢「む……」

 

魔理沙「そうだな! こういうのは大勢でやったほうが楽しいぜ! アリスとかにとりも誘ってやろう!」

 

霊夢「……人数が多すぎるのもどうかと思うわよ? 今回はほどほどの人数で試してみてもいいんじゃない? ……それに人数が多すぎたら失敗する確率がどんどん高く……」ゴニョゴニョ

 

魔理沙「え? なんだって? 後半がよく聞こえなかったぜ」

 

霊夢「な、なんでもない! たくさん呼びすぎるのは良くないんじゃないってことよ!」

 

紫「……それに、今からいろんなところに呼びにいくのも面倒だしねぇ……」

 

魔理沙「……そうか? じゃあとりあえず一ヵ所どっかから人を呼んでこよう。 ……さて、どこの連中を呼んでくるか……」

 

紫「……それなら白玉楼ね。幽々子と妖夢の二人を呼びましょう」

 

魔理沙「妖夢か! 妖夢もいいな!」

 

霊夢「(……いちばん人が少ない場所を選んだわね。さすが紫……)」

 

真「(六人…… まぁそれくらいいたら、自分に命令が来る確率も下がるだろ)」

 

紫「それじゃあ呼んでくるからちょっと待ってて!」ブゥン

 

霊夢「行ってらっしゃーい」

 

魔理沙「……やー、いつ見ても紫のスキマは便利だよな。もう行っちまった」

 

真「……藍に呼びに行かせるとかじゃないんだな」

 

藍「確かに。このままだと私がここにいる理由が無いな……」

 

霊夢「……紫が戻ってくるまで、お茶の準備でもしてようっと」

 

藍「ああ、それなら私は菓子の準備でも……」

 

 

 ~数分後~

 

紫「ただいまー。連れてきたわよー」

 

真「おかえり。それに二人とも、いらっしゃい」

 

幽々子「おじゃましま~す♪」

 

妖夢「は、はぁ…… なにやらよく分かりませんが……」

 

霊夢「……なに? 説明しないで連れて来たの?」

 

紫「ちゃんとしてきたわよ。 ……幽々子には」

 

魔理沙「……まぁ、やってれば分かるだろ。藍が紙を準備してくれたから、それぞれ命令を書いていこうぜ」

 

妖夢「……紙? 命令?」

 

藍「……妖夢には私が説明しよう。その間に皆は準備を進めておけばいい」

 

霊夢「ええ、そうしましょ」

 

妖夢「お、お願いします……」

 

 ・・・・・・・・・・

 

藍「……ということだ。それでは妖夢も、命令の紙を書くといい」

 

妖夢「は、はぁ……」

 

紫「まだこっちもあまり書けてないから、そんなに急がなくてもオーケーよ~」

 

霊夢「(……漢字が分からない…… お(ふだ)とかに書くやつなら書けるのに……)」

 

 ・・・・・・・・・・

 

妖夢「(……ルールは把握できたけど、どんな命令を書けばいいのかな…… えーと、『3番は今夜の白玉楼の夕食の準備を……』って、さすがにそれは駄目ですよね……)」ウーン……

 

真「(……王様ゲームって普通どんな命令があるんだっけ。 ……『後ろ向いて振り返りながら、"大好き"ってやって』、とか?)」ムムム……

 

霊夢「(……こういう命令もあり……よね、うん)」カキカキ

 

紫「(ええと、私が知ってる王様ゲームには、確かこういう命令があったはず……)」スッスッ

 

幽々子「~♪」サラサラ

 

魔理沙「(私が王様じゃなかったときのことなんか考えないで、とりあえず面白そうなのをいっぱい書くぜ!)」ガガガ

 

藍「(参加しない私も命令を書くのか…… とりあえずは無難なものを書いておこう……)」スーッ

 

 ・・・・・・・・・・

 

紫「……書き終わったわ! 後は……」

 

藍「……紫様。くじの準備、できております。それとこちらは、命令の書かれた紙を入れる箱です」

 

幽々子「へぇ~。本当に簡単にできる遊びなのね~」

 

魔理沙「よしっ、全員書けたみたいだし始めるか!」

 

霊夢「さんせー。それじゃ、紙を箱に入れましょう」

 

妖夢「……そのまま入れていいんですよね?」

 

真「そうだな。入れてしまえば別に見えないし」

 

魔理沙「………………全員、紙は全部入れたな? んじゃ、一応軽く混ぜとくぜ」ガサガサ

 

幽々子「みんなはどんな命令を書いたのかしら~。楽しみ~♪」

 

妖夢「楽しみですか…… 私はちょっと不安です……」

 

紫「(……ふふふ、後はくじ代わりにしている割り箸の違いを覚えて、誰が何の番号を引いたのか分かるようにしておきましょう。それと、私の命令が書かれた紙にはそれぞれ折り目がつけてあって、触ると分かるようにしているわ。これでうまくやれば真と……)」ニヤリ

 

真「あ、やる前に一応変化の術を掛けとくか。割り箸の模様とかで分かっちゃうかもしれないし…… あと紙のほうにもな」ボワン

 

紫「(……な!?)」

 

魔理沙「……割り箸のほうは分かるが、なんで紙にも掛けたんだ?」

 

真「ん? 筆跡の違いで誰が書いた命令なのか分かってしまうと面白くないかと思ってな」

 

魔理沙「……あ、なるほど。確かに、妖夢が『(あるじ)の悪口を言う』とか書いてるのがバレたら困るもんな」

 

妖夢「書いてませんけど!? というかそれ、どんな命令なんですか!」

 

紫「(うう…… 作戦失敗……)」

 

幽々子「……? 紫、どうかした?」

 

紫「……な、なんでもないわ…… 切り替えていきましょう……」

 

幽々子「(……なにか作戦があったんでしょうね~)」

 

藍「……ええと、紫様が言うには、くじを引くときには全員で『王様だ~れだ?』と言うのが作法だそうだ」

 

真「作法て……」

 

霊夢「……今さらだけど、この中で王様になれるのって真だけよね。性別的に」

 

妖夢「……女王様も含まれてるんじゃないですかね?」

 

魔理沙「いやそこは深く考えなくていいだろ…… じゃあいくぞ! せーのっ」

 

「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」ヒュッ

 

藍「(始まったな…… 私の仕事はこの、くじを持つことだけか。あまり言葉を発せず、裏方に徹しよう……)」

 

 スッ×6 チラッ×6

 

霊夢「あ、私が王様だ」

 

魔理沙「……おー、記念すべき最初の王様は霊夢か! やったな!」

 

霊夢「ふふ……早速来たわね。まぁ最初からいいものが来るとは思ってないけど……」

 

妖夢「はい、霊夢さん箱です、引いてください」

 

幽々子「妖夢~、王様相手になれなれしいぞよ~。ええい、お主は打ち首じゃ~」

 

妖夢「幽々子様!? そういう遊びじゃないですよ!?」

 

霊夢「ええと命令は、『3番が妖夢を打ち首に』……」

 

妖夢「書いてないですよね!? なんで私だけ名指しされてるんですか!?」

 

真「……妖夢の突っ込み、キレッキレだなー」

 

幽々子「剣士だからね~」

 

霊夢「……冗談よ。『3番は王様にお茶を淹れる』、ね」

 

魔理沙「わ、普通~。 ……3番誰だ? 私じゃないぜ」

 

真「俺も違う」

 

紫「……私ね。さっさと済ませて次に行きましょう」スッ

 

魔理沙「お、紫かー。紫がお茶を入れるなんて初めて見るぜ。できるのか?」

 

紫「簡単よ! さぁ藍、私の代わりに霊夢にお茶を淹れてきて!」

 

藍「えっ? は、はい!」

 

妖夢「……え、それはありなんですか?」

 

紫「ありよ! 自分の式を使って、私がお茶を入れているもの!」

 

真「無しだ。自分でやらんかい」ポコッ

 

紫「あうっ」

 

幽々子「……まぁ、そうなるわよね~」

 

妖夢「(ゆ、紫様を叩くなんて……! 真さんすごい……)」

 

紫「うー…… これでいいんでしょ。はい霊夢、お茶よ」

 

霊夢「ご苦労、紫」ズズズ

 

妖夢「(霊夢さんもすごい……)」

 

魔理沙「……どうだ? 紫の入れたお茶は」

 

霊夢「うーん…… ぬるい!」

 

紫「!」ガーン

 

魔理沙「あっはははははは! ぬるいってさ!」バンバン

 

真「……お茶を入れるだけで盛り上がりすぎだろ」

 

幽々子「楽しいわね~♪」

 

 

 

「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」

 

魔理沙「私だ! 命令は……『5番が王様の前で腕立て伏せ』?」

 

真「(あ、俺が書いたやつだ)」

 

妖夢「わ、私が5番です!」

 

魔理沙「……なんだこれ、王様に得が無い命令だな」

 

真「まぁ、大抵はそんなもんじゃないか?」

 

魔理沙「あーそっかぁ、考えてみたらそうだよなぁ…… 書きようによっちゃあ、王様以外でもおいしい目にあえる命令もできたのか……」

 

霊夢「ふふふ…… 私は書くときにすでに気付いたわよ」

 

紫「次やるときのいい練習になったじゃない。あまり大勢集めないでよかったでしょ?」

 

幽々子「……裏を返せば、王様だからって酷い目に遭わないとは限らないってことかしら?」

 

魔理沙「……た、確かにそうだぜ!」

 

妖夢「あのー…… 腕立てしますけど、何回やればいいんですかね?」

 

真「そうだなぁ…… 小さい女の子だし、十回くらいでいいんじゃないか? 無理なら膝をついても構わないぞ?」

 

妖夢「む…… 真さん私を甘く見てますね? 私が本気を出せば、腕立ての百回や二百回くらい……」

 

真「百回も腕立てができるってことは、多分正しい姿勢でできてないんだ。腕は真下について足は肩幅に開いて、三つ数える速さで腕を曲げて、三つ数える速さで腕を伸ばすんだぞ。正しいやり方だったら、十回でもうキツくなるはずだからな」

 

妖夢「……え? そうなんですか? えーとこうかな……」 

 

紫「……出た、真の変に偏った知識」

 

霊夢「そう言えば真、お風呂あがりに柔軟とかもしてたわね」

 

魔理沙「そうなのか。男は体が硬いらしいからなー」

 

霊夢「背中押してあげたら喜ぶわよ」

 

妖夢「……うわ、確かにこれちょっとキツいです!」

 

真「だろー? ちなみに楽にできるようになった場合は、回数を増やすんじゃなくて一回にかける時間を増やすんだ」

 

妖夢「へぇ~…… よし、できました! 幽々子様見てましたか私の勇姿!」

 

幽々子「ええ、バッチリ♪ スカートで腕立て伏せすると見えそうになるのよね~。あとは、息を切らせばさらに色っぽくなるから完璧よ♪」

 

妖夢「ちょ、幽々子様!?」カァァッ

 

魔理沙「なるほど、そういう狙いが……」

 

真「いや、無いからな? 少なくともこのメンバーでは」

 

藍「(……効果のある人物もいるということか? 私の場合はどうなんだろう……)」

 

 

 

「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」

 

真「俺だな…… えーとなになに、『1番の人はお賽銭を入れてくる』」

 

妖夢「1番……ってまた私!?」

 

幽々子「あら~、王様ゲームを楽しんでるわね~妖夢」

 

妖夢「悪い方向にですけどね! というかこれは……」

 

霊夢「……あれれ~? 誰だか知らないけど良い命令を書いてくれる人もいるのね~♪」

 

魔理沙「わざとらしいわ! これ書いたの絶対霊夢だろ!」

 

霊夢「……え? なんのこと? ささ、この神社の素敵な賽銭箱はあちらよ」シレッ

 

妖夢「は、はぁ……」

 

魔理沙「……真と住んでるくせにそういうところは似ないんだな」

 

紫「しらばっくれるのばっかり上手になっちゃって……」

霊夢「む…… 真は分かりやす過ぎるのよ」

 

真「(……妖夢、妖夢)」チョイチョイ

 

妖夢「(? なんですか?)」

 

真「(これ。お賽銭にしていいぞ)」スッ

 

妖夢「(い……!? そ、そんな、受け取れませんよ!)」

 

真「(いいから。霊夢には小遣いとかあげたことないしな、たまにはいいだろ。ほら、行ってこい)」トンッ

 

妖夢「(あ、ちょ…… 真さんがいいならいいですけど……)」

 

霊夢「……さて、妖夢はいくらいれてくれたのかしら~♪」

 

真「さー、それは後でのお楽しみだな。でもあまり期待しないほうがいいんじゃないか? お賽銭なんて大した金額は入れないだろ」

 

妖夢「(1円も入れたんですが…… 落として上げる作戦?でしょうか……)」

 

幽々子「(真は、こういうときにはしらばっくれることができるのよね~。しっかり霊夢に似てるじゃない♪)」

 

 

 

「「「「「「王様だ~れだ?」」」」」」

 

幽々子「は~い♪ 命令は、『1番と3番と5番が、王様に何か食べ物をあーんで食べさせる』~♪」

 

霊夢「……1番」

 

紫「3番よ」

 

真「で、俺が5番か」

 

魔理沙「ほほう、面白い命令だな、参考にしよう。誰が書いたんだろうな」

 

紫「もう、魔理沙。それは追及しないって決まったでしょ」

 

魔理沙「お、そうだったな、悪い悪い」

 

妖夢「(……幽々子様が書いた命令っぽいなぁ……)」

 

霊夢「……ねぇ、食べさせるのはいいんだけど、その食べ物って誰が準備するのよ」

 

紫「そりゃあ霊夢でしょ、ここ博麗神社だし。藍が用意したお菓子は無くなっちゃったしね~」

 

霊夢「えー! 嫌よ! 博麗神社にそんな余裕は……」

 

真「はいはい、俺が準備するから。饅頭と大福と団子でいいな?」

 

幽々子「いいわよ~♪」

 

魔理沙「わざわざ三種類準備すんのな」

 

妖夢「なんかもうすいません……」

 

紫「はい幽々子、あ~ん」つ饅頭

 

幽々子「あ~、んっ♪」パクッ

 

霊夢「(一口で……)」

 

紫「おいしい?」

 

幽々子「おいひい~♪」モグモグ

 

霊夢「まったく…… 真の持ってる食料は私のみたいなものなのに……」

 

真「……え?」

 

霊夢「ほら幽々子、口開けなさい」つ大福

 

幽々子「あ~……」

 

霊夢「(失敗したら手ごと食べられそう……)」オソルオソル

 

幽々子「んっ♪」パクッ

 

魔理沙「(これも一口……)」

 

幽々子「これもおいひい~♪」モグモグ

 

霊夢「……幸せそうに食べるわねぇ」

 

魔理沙「霊夢もこんな感じだけどな」

 

真「ほれ、ラスト。あ~ん」つ団子

 

幽々子「あ~、んっ♡」パクッ

 

妖夢「(また一口……じゃない!?)」

 

幽々子「……ん。あ~……」

 

紫「(そうか、お団子は三つあるから……!)」

 

霊夢「(むむ、ズルい……)」

 

幽々子「~♪」パクッ モグモグ

 

紫「(……心なしか、私や霊夢が食べさせてあげたときよりも幸せそうなんだけど……)」

 

霊夢「(……というか、幽々子なら三つ一気に食べられたでしょ!)」

 

幽々子「~♪」パクッ モグモグ

 

藍「(真からの、あ~ん、とはまた羨ましいが…… ふふ、私は出会ったときに何度もしてもらったことがある。またそういう機会は無いものか……)」

 

幽々子「ごちそうさま~♪ おいしかったわ~♪」

 

魔理沙「……やっと終わったか。やけに長かったな。いや、あの量でこの時間なら短いほうだが……」

 

霊夢「……でも長かったわ」

 

紫「本当にね」

 

真「……ん? 幽々子、ほっぺに団子のたれがついてるぞ」グイッ

 

幽々子「ん……」

 

真「……よし取れた。食べさせるのが下手だったかな。えーと、近くに手を拭けそうなものは……」

 

幽々子「……はむっ♪」パクッ

 

真「……え?」

 

藍「!?」

 

霊夢・紫・妖夢「ああーーっ!!!」

 

魔理沙「わっ、うるさっ!」

 

紫「ゆゆゆゆ幽々子いま、真の指をパクッて……!」

 

幽々子「……どうしたの紫? 『ゆ』が多いわよ?」

 

妖夢「ゆ、幽々子様、女の人がはしたないですよ! ああもう真さんすいません……!」

 

霊夢「(……こ、こんな行為が許されるの!? ……いいえ、許されるはずが無いわ、私だってしたことないのに……! 真、叱ってやりなさい!)」

 

藍「(そ、そうだぞ真! ここは一つビシッと……!)」

 

真「こーら、幽々子、お行儀が悪い。全くしょうがないヤツだな……」ナデナデ

 

幽々子「~♪」

 

紫・霊夢・妖夢・藍「もっとちゃんと怒りなさいよ!(ってくださいよ!)(れよ!)」

 

真「?」

 

 

 

「「「「「王様だーれだ?」」」」」

 

霊夢「私ね。命令は……っと、3番って誰?」

 

真「? 3番は俺だけど……」

 

魔理沙「どうしたんだ? 命令を早く読めよ」

 

霊夢「……失礼。『3番が尻尾を持っている相手に限り、3番は王様に尻尾を触らせる』、よ」

 

真「……『尻尾を持っている相手に限り』って、藍が参加してない以上、尻尾を持つのは俺しかいないんだが……」

 

魔理沙「妖夢もまぁ似たようなもの持ってるっちゃあ持ってるけどな。いつも周りを飛んでる白いやつ」

 

妖夢「半霊は尻尾じゃないですよ!?」

 

幽々子「……え、違うの?」

 

妖夢「幽々子様!?」

 

魔理沙「……つーか、本当にそんな命令書いてあるのか? ちょっと見せてみろよ霊夢」ヒョイ

 

霊夢「あっ、ちょっ!」

 

魔理沙「えーと…… なんかまだ続きがあるぞ? 『ただし、3番が尻尾を持っていない場合はお賽銭を入れてくる』……」

 

真・妖夢・幽々子「……」

 

紫「(……そ、その手があったか! 結果的に叶う命令が一つなら、人物の選択も可能になるという寸法ね!)」

 

真「いや、なに『その手があったか!』って顔してんだよ。駄目だからな?」

 

魔理沙「……これ書いたの霊夢だろ……」

 

霊夢「……さ、さぁ~? 誰だか知らないけど良い命令を書いてくれる人もいるのね~」

 

魔理沙「さっきも聞いたわその言い訳! こんな命令を書くヤツが霊夢以外にいるか!」

 

霊夢「……私が書いたと思わせる、実に巧妙な作戦ね……!」タラリ

 

魔理沙「まだ言うか!」

 

真「……まぁ、3番は結果的に俺だったから別にいいだろ。今後も同じような内容の命令があれば、一番簡単なやつを採用するからな」

 

妖夢「……それが一番妥当ですかね」

 

真「……とりあえず命令をこなしておくか。ほいっ」ボワンッ

 

妖夢「あ、尻尾」

 

真「よっと」ヒュンッ

 

霊夢「……とかなんとか言っちゃって、書いたのは実は魔理沙だったり……わわっ!」グルン

 

真「……これだって一応触らせてるに入るだろ。あれだ、何がとは言わんが、その格好のままもう少し反省な」

 

霊夢「……くっ。 ……まぁ、あんな紛らわしい命令の紙を私が引いてしまったのは事実だから、責任とってこの罰は甘んじて受け入れるわ……」ニヘラ

 

幽々子「(……罰になっていないわね~)」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

妖夢「私ですね…… えーと、『2番の人は全員からあだ名をつけられる』……?」

 

魔理沙「私が2番だ! よし、ちゃっちゃといこうぜ! さっきからやけに時間がかかってたしな!」

 

霊夢「魔理沙にあだ名かぁ…… えーと、『魔理ちゃん』」

 

魔理沙「魔理ちゃん!?」

 

紫「んー、『マリマリ』」

 

魔理沙「マリマリ!? ……ま、まぁこんなもんか……」

 

幽々子「……ん~、じゃあ『リサリサ』で♪」

 

魔理沙「マリマリはともかくそれは無い! 魔理沙の上半分じゃなくて下半分を取るなよ!」

 

幽々子「あら、き()()めま()()、略してリサリサよ?」

 

魔理沙「そこかよ!」

 

妖夢「えーと、えーと…… 『きりりん』?」

 

魔理沙「なんでお前らは苗字から取るんだ……」

 

真「『シューティングスター』」

 

魔理沙「最後がそれかよ! だせぇ!」

 

真「な…… ダサくはないだろ。 ……なぁ?」

 

霊夢「……ダサい」

 

紫「……ダサいわね」

 

藍「……可もなく不可もなく、と言ったところだな」

 

幽々子「言いにくいわ~」

 

妖夢「……ゆ、ユニークですね!」

 

真「……!」ガーン

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

魔理沙「……っと、私だな。『1番が服を一枚脱ぐ』」

 

妖夢「なっ……」///

 

幽々子「あら? 妖夢どうしたの?」

 

妖夢「だってこれ、人前で脱ぐなんて……! 男の人だっているのに……」///

 

魔理沙「……まぁ一枚ぐらい大丈夫だろ。何度も同じ命令があったら大変だが……」

 

紫「それで、1番は妖夢なの? 私みたいに上下が繋がっている服でも無いんだし、ここは気前よく脱いじゃいなさい」

 

妖夢「あ、いえ、私は1番じゃなくて……」

 

霊夢「1番は私、ね。なんで関係ない妖夢が動揺してるのかしら……」

 

魔理沙「なんだ霊夢だったのか! じゃあほら、パパッと終わらせようぜ」

 

霊夢「脱ぐのは別にいいんだけど……一枚ってどこまでが一枚なの? 上だけ脱げばいいのかしら?」

 

魔理沙「そうだなぁ…… じゃあ下のスカート部分だけを……」

 

真「ていっ」ゴン

 

魔理沙「あたっ!」

 

真「……そこまで指示されてないんだから適当でいいんだよ適当で。妖夢みたいに恥ずかしいなら、頭のリボンだけとか靴下だけでもいいぞ」

 

魔理沙「……う~。それじゃあつまんないかと思ってさ~……」

 

霊夢「……じゃ、じゃあとりあえず袖のところだけ外そうかしら?」

 

真「ああ、そうしとけ」

 

霊夢「……」スッスッ

 

魔理沙「む…… これはこれで新鮮だから良しとしよう!」

 

霊夢「そりゃどうも」

 

妖夢「……れ、霊夢さんなかなか大胆ですね……」///

 

紫「いや、霊夢が新しく見せた部分、妖夢は普段から丸出しじゃない」

 

幽々子「妖夢は、そういうところはまだまだピュアだから~」

 

 

 

「「「「「王様だーれだ?」」」」」

 

紫「ふふ、私よ。えぇと、『2番が4番に膝枕』ね」

 

霊夢「(来た……! 私が4番だから、これであとは真が2番なら……!)」

 

魔理沙「おー、私が2番だぜ。誰だー? 私に膝枕される幸せ者はー」

 

霊夢「……」

 

魔理沙「……お、霊夢が4番か? よっしょ、魔理沙お姉さんの膝に来るといい」バシバシ

 

霊夢「……はぁ」ポスッ

 

妖夢「……おぉ、照れが全く見えませんね」

 

幽々子「仲良しね~♪」

 

霊夢「う~……」

 

紫「(……ふふ、霊夢残念だったわね♪)」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

幽々子「はいっ! ではでは『4番の人。後ろ向いて振り返りながら、"大好き"って言ってください』♪」

 

真「(げ、俺4番だ…… 失敗したなぁ)」

 

紫「私じゃないわね、2番だもの」

 

魔理沙「私でもないぜ」

 

妖夢「私も違います」

 

霊夢「私でもないってことは…… 真?」

 

真「え、えぇと…… 藍、何もしてなくて暇だろう? 俺の代わりに入ってもいいぞ?」

 

藍「ははは、断る。見ているだけで楽しいし、今からはもっと楽しみだ」

 

真「くそぅ…… まぁでも言うだけだし別にいいか…… 唯一の男にこれが当たるとは思わなかったが」

 

紫「……確かに、『大好き』だと少し変な感じね。ここは少し変えて『愛してる』にしましょうか♪」

 

幽々子「そうね~♪ じゃあ『振り返りながら"愛してる"』で♪」

 

真「あまり意味は変わらないと思うが……」グルン

 

紫・霊夢・妖夢「……」ドキドキ

 

魔理沙・幽々子「……」ワクワク

 

藍「(ふふ、まぁ実際に言われるわけでもないし、子ども騙しみたいなものだろうな……)」

 

真「……」クルリ

 

真「……『愛してる』」

 

紫・霊夢・妖夢「!」ドキッ

 

幽々子「……ふふっ」キュンキュン

 

藍「!!?」ドッキーン

 

紫「(……え、いま私のほうを向いて言ったわよね? 真ったら大胆……)」

 

霊夢「(目が合った……? ……うわ、ドキドキする……!)

 

妖夢「(さ、さすが真さん大人だなぁ……)」

 

幽々子「(あらあら~♪ 王様が私だったから、私に向けて言ってくれたのかしら♪)」

 

藍「(し、心臓が貫かれたかと思った……! 私のほうを見て言うのは卑怯だろ……!)」

 

魔理沙「はっはっは、照れるな~♪ でも私には霊夢がいるから、真の気持ちには答えられないぜ?」

 

真「……そっかー、そりゃ残念だ」

 

霊夢・紫「(……真は魔理沙に向けて言ってないんだけど)」

 

妖夢「……え? 魔理沙さんと霊夢さんって……」

 

霊夢「……違うからね?」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

魔理沙「ほいきた、私だ。『王様は5番の胸をマッサージする』」

 

霊夢・紫・藍「!?」

 

妖夢「!!? な、なんですかそれ!?」

 

幽々子「……あら~、妖夢が5番だったらマッサージする部分が無いわねぇ」

 

妖夢「いやいや、そうじゃなくて! これを引いたのが真さんだったらどうするつもりですかってことですよ! ……はっ、もしやこれを書いたのは真さんなんじゃ……」

 

真「え? いや、似たようなのは書いたけどこれは違うなぁ……」

 

藍「(似たようなのは書いたのか!?)」

 

魔理沙「……あ、違った違った。『胸』じゃなくて『腰』だったぜ」

 

真「……あ、俺が書いたやつだ」

 

霊夢「……な、なんだそういうことね……」

 

紫「びっくりしたわ…… さ、私が5番よ、マッサージして頂戴」

 

魔理沙「どっちを?」

 

紫「腰をよ!」

 

真「(……あれ? 考えてみたら、俺は『5番が王様の腰を~』って書いたつもりだったけど、間違えたかな? これだと王様のほうがマッサージしてるじゃないか)」

 

魔理沙「む…… 紫の腹回りぷにぷにだぜ。年を取ったらこうなるのか……」

 

紫「腹回りじゃなくて腰周り! お子様には分からないだろうけど、こんな感じに柔らかくなってからが女は全盛期なのよ! 肌もまだまだすべすべだしね!」

 

魔理沙「服の上からだと分からないぜ」

 

真「(……まぁ、今回の王様(魔理沙)が楽しそうだから別にいいか)」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

妖夢「私ですね。『2番が王様に膝枕』です」

 

魔理沙「また膝枕か、多いなこれ。えーと、ひーふーみー……今回で四回目か?」

 

霊夢・紫「(私が三つくらい書いたからなぁ……)」

 

真「まぁ、分かりやすくていいじゃないか。それじゃ今まで通り、次以降の命令でどちらかが中断せざるを得なくなるまで膝枕続行な。2番誰だ?」

 

幽々子「は~い、私~♪ さ、妖夢、いらっしゃい♪」

 

妖夢「ゆ、幽々子様ですか…… いえまぁ、この中では一番やりやすいですけど、主の膝をお借りするというのは……」

 

幽々子「……何を言ってるのよ、妖夢が小さいときはよくこうしてあげてたじゃない? ……と言っても今も小さいけど♪」

 

妖夢「ゆ、幽々子様! そういうことは人前であまり言わないでくださいよ!」

 

紫「……あら、そうだったかしらねぇ。そう言えば霊夢も小さいときは、私の膝の上によく……」

 

霊夢「……は?」

 

紫「うぅ……霊夢が冷たい……」

 

真「(紫が小さいときには、あまり膝枕をする機会が無かったなぁ……)」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

真「む、俺か。 ……ん? ……『2番が1番をお姫様抱っこ』だってさ」

 

霊夢「(……私は2番で1番じゃないし、真も王様だから2番じゃない…… これはハズレね……って私が2番!?)」

 

妖夢「……あ、霊夢さんが2番ですね。私1番なので、よろしくお願いします」

 

霊夢「あっ、うん……」

 

魔理沙「よかったなぁ霊夢、持ち上げるのが妖夢でさ。これが紫とかだったら重すぎて絶対無理……」

 

紫「……」ギロリ

 

魔理沙「……と、怖い怖い」

 

真「持ち上げるのが俺だったほうがより無理だろうけどなー」

 

紫「ほら真は、尻尾を全部出せば軽くなるし……」

 

真「……」ギロリ

 

紫「じょ、冗談よ……あはは……」

 

幽々子「(もう結構な人数にバレてると思うんだけどなぁ、真の小さい姿)」

 

霊夢「……で、お姫様抱っこってどうやるのよ。 ……こう?」グイッ

 

妖夢「わわっと! 霊夢さん、バランスが……!」

 

真「……やり方を教えたほうがよさそうだな。幽々子、ちょっと」チョイチョイ

 

幽々子「? は~い」フワフワ

 

真「……いいか、まず持ち上げる方は片膝を立てて座って、持ち上げられる方に内側からその上に座ってもらう」

 

幽々子「……ここに座る? でいいのね?」チョコン

 

真「で、腰の上と腿の裏に手を回したら、自分の腰に負担がかからないように、そのまま回りながら抱き上げる……っと」グルン

 

幽々子「きゃあっ」

 

真「……はいできた。簡単だろ?」

 

幽々子「~♪」

 

霊夢「………………」

 

妖夢「……ええと、膝の上に座る? こ、こうですかね?」

 

霊夢「……」グルン

 

妖夢「あ、すごい! 霊夢さんできてますよ!」

 

霊夢「……」チラ

 

幽々子「きゃ~、真は力持ちね~♪」

 

真「まぁ男だしな。持ち上げられる側も、首に手を回して力を入れたら安定感が増して手助けになるぞ」

 

幽々子「……こう?」ギュー

 

真「ああ、そうそう」

 

霊夢「……」

 

妖夢「……お姫様抱っこって女性の憧れですよねー。今は霊夢さんにされてますけど、それでも結構嬉しかったり……」

 

霊夢「……ふんっ」ポイッ

 

妖夢「あいたー!?」

 

紫「(むむ、真め…… 私じゃなくて幽々子を選ぶなんてどういうつもりよ。そりゃあ私のほうが重いかもしれないけど、それは身長が高いからであって……)」

 

藍「(……せっかくいるのだから、私を使って説明してくれていいものを…… 尻尾が邪魔で見えづらいためか……)」

 

霊夢・紫・藍「……はぁ」

 

妖夢「? ?」

 

 

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

魔理沙「私だぜっ! どれどれ……『2番と4番がポッキーゲーム』?」

 

真「……!?」

 

紫「私2番」

 

幽々子「私4番」

 

霊夢「……その前に、ポッキーゲームってなに?」

 

魔理沙「……だな。誰がやるかとか以前に、何をやるかが分からないと反応もできないぜ」

 

紫「……あー、それ書いたの私なんだけど、よく知らずに書いちゃったのよねー。王様ゲームでは定番らしいんだけど……」

 

魔理沙「……なんだそりゃ」

 

紫「ま、まぁ真なら分かるかなーと思ってね?」

 

霊夢「そうかもねぇ。で、真、どういうゲームなの? すぐ終わる?」

 

真「(……ポッキーゲームとは言わずもがな、二人でポッキーを両端から食べていき、下手したら唇同士がぶつかってしまうというドキドキなゲームであるが…… こ、これはちゃんと説明するべきなのか……?)」

 

魔理沙「……なんか悩んでるみたいだぜ?」

 

妖夢「……言葉での説明が難しいのでしょうか?」

 

紫「なるほど…… だったらさ、藍を相手に勝負してみてよ。見たら大体分かるから」

 

真「……!?」

 

幽々子「そうねぇ…… 多分二人でやるゲームなんだろうし……」

 

紫「藍、お願い」

 

藍「はい。 ……さ、真、私はどうすれば…… む?」

 

真「(……ら、藍と!? ……いやいやいや、おかしいおかしい。人前でポッキーゲームとか公開処刑にもほどがあるだろ。するなら誰も見てない場所で……ってそれもおかしい!)」

 

藍「(……様子が少しおかしいな……)」

 

真「え、えぇとだな……」

 

藍「(……言葉の歯切れも悪いし、心なしか顔も少々赤い気がする。こんな真を、どこかで見たことがあるような…… あ)」ピコン

 

幽々子「ポッキーっていうお菓子が、確か外の世界にはあったわよね? 真がお土産に持ってきたのを食べたことがあるわ」

 

霊夢「ああ、そうだったっけ?」

 

魔理沙「つまり、そのお菓子を使ったゲームってことかな?」

 

真「……ま、まぁそういうことだな。 ……これがそのポッキーなわけだが、両端を互いのく、くち……」

 

藍「……ああ、大体理解できましたよ。つまりですね、このようにポッキーの両端を互いに持って……」

 

真「……え?」

 

藍「……ポキン、と折れて、手元に残った分が自分の取り分になるんです。子どもが菓子を分けるときの遊びみたいなものですね。 ……な、真、そういうことだろ?」パチン⌒☆

 

真「……あ、うん、そうそう……」

 

紫「あ、なるほどね…… よし、幽々子勝負よ!」

 

幽々子「望むところ! 私はハンデとしてチョコのほうでいいわよ!」

 

紫「……それはハンデになるのかしら?」

 

霊夢・魔理沙「がんばれー」ポリポリ

 

妖夢「あ、食べてる……」

 

真「(……藍、すまん、助かった)」

 

藍「(……なに、放っておけるものでもなかったしな。私も見られていたわけだし)

 

真「(だ、だよなー)」

 

藍「(……本番はまた今度、誰にも見られていないときに、な)」シー

 

真「(……え?)」

 

 

 

真「……さて、じゃあ次あたりで最後にするか。そろそろいい時間だしな」

 

妖夢「え? ……わっ、もう外が暗くなってる! お夕飯の準備を始めなきゃ!」

 

魔理沙「……おぉ、結構時間がかかるもんだな。命令の紙が無くなって終わりかと思ってたが……」

 

真「そうだなー。ま、読まれずに終わる紙があるのも、ある意味一つの面白さだろ」

 

霊夢「……まだ読まれてないのって何があるかしら? 私が書いたのはほとんど読まれたような気も……」

 

真「……あ、妖夢と幽々子、夕飯はこっちで食っていってもいいぞ?」

 

幽々子「そう? じゃあそうさせてもらおうかしら」

 

妖夢「す、すいません、ありがとうございます。お手伝いはしますから」

 

真「……藍はどうする? 橙と萃香もこっちに連れてくるか」

 

藍「……そうだな。では今のうちに、向こうの様子を見てくるとしよう……」スッ

 

魔理沙「……私には訊いてこないあたり、真も分かってるなー。私も博麗神社の一員ということだな」ウンウン

 

霊夢「それだけしょっちゅうここに来てるってことだから、誇れることでもないけどね…… ご飯の準備も手伝わないし。今日ぐらいは手伝ってみたら……」

 

魔理沙「さー最後のくじ引くぞー」

 

霊夢「清々しいまでの完全無視ね」

 

「「「「「王様だ~れだ?」」」」」

 

魔理沙「……おぉ、最後も私が王様だぜ! さて、命令は……」

 

紫「(私は1番で、真のくじはチラッと見えたけどあれは2番だった…… そして命令の紙の中で、私が書いた()()はまだ読まれていない…… ということは、まだ私にはチャンスが……!)」

 

魔理沙「……お! 『王様以外の全員、この遊びのルールを幻想郷に広めておく』だな!」

 

紫「(……無かったか)」ガクッ

 

霊夢「……すぐにできる命令じゃないけど、まぁこれくらいならありでもいいわ」

 

妖夢「……ですね」

 

真「……綺麗に終わった感じがするなー。みんな、お疲れ」

 

幽々子「楽しかったわね~♪」

 

紫「……ん~、予定ではもう少しこう…… 惜しかったわー」

 

魔理沙「次またやるとしたら、今度は違うメンバーで、だなー」

 

真「……さて、藍がまだ戻ってきていないが、夕飯の準備を始めるか」

 

妖夢「そうしましょう。台所お借りしますね」

 

真「ああ。 ……でも、人数が多いから足りなくなるかもしれんな。他に食材は…… お?」ガサゴソ

 

妖夢「? ……ああ、命令が書かれた紙ですね。捨てておきましょうか?」

 

真「……いや、自分で捨てるよ」

 

妖夢「そうですか。じゃ、先に台所に行ってますね」

 

真「(……これ、引いたのを変化使ってごまかしたやつなんだよなー。ごまかしたのがバレないように、紙を箱に残したまま終了させたわけで……)」ボワン

 

 『1番と2番がキス(場所は自由)』

 

真「……確かこのときの1番と2番は、霊夢と妖夢だったっけ。 ……ま、子どもにはまだ早いっつーことで」クシャ

 

妖夢「……真さーん! どれが使ってもいい食材ですかー!?」

 

真「おー! ちょっと待ってくれすぐに行くー!」

 

 ~終わり~

 

 


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