東方狐答録   作:佐藤秋

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第百十二話 地霊殿でも王様ゲーム

 

 ~地霊殿、廊下~

 

真「……やー、神社に空いた温泉の穴のお陰で、地底に来るのも簡単になったなー」

 

霊夢「……そうねぇ。地底に用事なんてそうそう無いけど」

 

真「そうか? 地底には立派な温泉があるだろう。寒い季節になったらたまに足を運ぶ気になるんじゃないか?」

 

霊夢「えー? でも神社の温泉も、地底の温泉と成分はほとんど同じじゃない?」

 

真「……んー。まぁ、周りの景色が違うだけでも意外と変わるもんだぞ? それに俺にとってはこっちの温泉のほうが、入り慣れてるぶん落ち着くわけで……」

 

霊夢「……そういうものかしらねぇ。でもまぁこっちだと、真と一緒に入れるんだけど」

 

真「男湯女湯以外に、さとりたちが使ってる温泉があるからな」

 

霊夢「……神社のほうも、個人的に入る温泉を作っとけばよかったわ」

 

真「はは、わざわざ作らなくても、一般に解放してない時間帯なら貸し切りみたいなもんだろう」

 

霊夢「(……むー。そっちじゃなくて、真とお風呂ってことのほうが重要なのに……)」

 

真「……ま、霊夢と風呂ってのも楽しみだけどなー」

 

霊夢「……! そ、そうね、うん! 真の背中流してあげるからね!」

 

真「おー、頼む。じゃあ俺は霊夢の頭でも…… お?」

 

霊夢「あ」

 

勇儀「ん?」

 

真・勇儀「………………」

 

霊夢「(あ、なんか見たことある顔。えーっと、確か萃香と同じ、鬼って種族の……)」

 

真「(げ、勇儀…… またこんなところで出くわすとは……)」

 

勇儀「(……わ、わ、真だ……! ……お、落ち着け私…… 前回は普通に話せたじゃないか……!)」

 

真「(前回普通に話せてたし…… あのときのこと、勇儀はもう気にしてないといいんだが……)」

 

霊夢「……あ、思い出したわ。星熊勇儀。ランキング1位の」

 

勇儀「や、やぁ真……と、確かこっちは霊夢だったかな。今日は二人で温泉かい?」

 

真「……あ、ああまぁそんなところだな。勇儀もここにいるってことは温泉か」

 

勇儀「そうそう。私は一人さびしくだけどねー」ハハハ

 

真「ははは、勇儀が呼べば大抵のヤツはついてくるだろうに」

 

真・勇儀「(……ほっ。どうやら気にしてないみたいだな)」

 

霊夢「(……あ、勇儀の角に星のマークがある。かっこいい)」

 

真「……ん、どうした霊夢、勇儀の顔をじっと見て」

 

勇儀「? 私の顔に何かついてるかい?」

 

霊夢「いえ、なんでも…… 同じ鬼なのに萃香とは似てないなーと思ってね」

 

勇儀「ああそういう…… 萃香は鬼の中ではかなり小さいほうだからねぇ」

 

真「……ところで、二人は知り合いだったのか? 名前は知っていたみたいだが」

 

霊夢「真を迎えに、地底まで来たときにちょっとね。知り合いって呼べるほどでもないわ」

 

勇儀「うん、まぁそんな感じ。 ……ああそうか。前に聞いた、真や萃香と一緒に住んでる神社の巫女。それってこの子のことだったんだね」

 

真「ん? ああ、そうなるな」

 

勇儀「うんうん。それじゃあ改めて霊夢、よろしくね。真から色々話は聞いてるよ」スッ

 

霊夢「あ、うん……」ギュッ

 

勇儀「はは、真から聞いてる通り、妖怪相手でも怯まない人間みたいだ」

 

霊夢「(……聞いてるっていつの話よ?)」ヒソヒソ

 

真「(この前間欠泉を止めに地底に行ったときかな? 勇儀と酒を飲んだときに話した気がする)」ヒソヒソ

 

勇儀「……ふむ、見たところ二人とも温泉はまだみたいだね。じゃあ霊夢、ここは女同士一緒に入ろうか。女湯はこっちだよ」グイッ

 

霊夢「えっ? あっ、ちょっ」

 

真「む…… まぁそうなるか。勇儀、霊夢を任せた」

 

勇儀「了解っ」グッ

 

霊夢「(えーっ!?)」

 

勇儀「じゃ、真、また後でー」

 

真「おー。 ……さて、じゃあ俺は予定通り、こっちの温泉に入るかねー。男湯だと他にいるかもしれないし……」スタスタ

 

霊夢「(ああ、行っちゃう……)」

 

勇儀「……さて、じゃあ私たちも行こうか」

 

霊夢「~!」ペシペシ

 

勇儀「ははっ、どうしたどうした、そんなに温泉が楽しみかい? もうすぐそこだから慌てなさんな」ズルズル

 

霊夢「~!」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ~脱衣所~

 

霊夢「(……くそー、攻撃が効かないから普通に連れてこられてしまったわ…… さすが『真の考える強さランキング』1位……)」ヌギヌギ

 

勇儀「……」ジーッ

 

霊夢「……なによ、ジロジロ見て」

 

勇儀「……いや、人間ってみんな似たような格好してるじゃん? でも霊夢のその服、結構珍しいなぁと思ってね。それとも今はそんなもんなの?」

 

霊夢「……博麗の巫女は昔から代々この格好よ」

 

勇儀「……や、巫女服じゃなくて、下に着てるそっちのほう。なんだいその胸当てと下着。随分かわいらしいねぇ」

 

霊夢「これは『水着』っていう、濡れることを前提に作られた服……らしいわ」

 

勇儀「……え。てぇことは、それを着たまま温泉に入るつもりかい?」

 

霊夢「……その予定だったわ。真と温泉に入るからわざわざ下に着てきたのに……」ブツブツ

 

勇儀「人間は変なこと考えるもんだねぇ…… 温泉は何も身に付けずに入るものだよ? タオルくらいはいいけどさ」

 

霊夢「……言われなくてもそうするつもりよ。アンタ相手に恥ずかしがる必要なんて無いものね。よっ」ヌギヌギ

 

勇儀「……そうそう、女同士だし平気平気。 ……っと、じゃあ私も準備しないとね」ヌギヌギ

 

霊夢「……!」

 

勇儀「……っぷは」バァーン!

 

霊夢「(で、でかい……! さすがランキング1位……)」チラリ

 

勇儀「……」バイーン

 

霊夢「……」ストーン

 

勇儀「……ふう。大きいと脱ぐとき邪魔だなぁ……」

 

霊夢「~!」

 

霊夢「ふんっ」ペシペシ

 

勇儀「お? ごめんごめん、早く脱ぐって。そんなに温泉が楽しみなんだね」

 

霊夢「……負けないわ」

 

勇儀「? どっちが長く温泉に浸かれるかの勝負かい?」

 

霊夢「(あの大きさ、藍といい勝負…… 今度藍に、どうしたらそんなに大きくなるのか聞いてみようかしら)」

 

勇儀「いいよ、勝負しようか。人間に勝負を挑まれるなんて久しぶりだね~♪」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ~温泉内~

 

勇儀「……へぇー。じゃあその、『王様ゲーム』って遊びを伝えるために、霊夢と真は地底に来たんだね」

 

霊夢「……前回やった最後の命令で仕方なくね。まぁ真と温泉に入るついでみたいなものよ」

 

勇儀「……ふーん? つまり霊夢は、真と一緒に温泉に入りたかったわけだ。まぁ真は昔から子どもには好かれやすいからねぇ……」

 

霊夢「ち、違うわよ! 真との温泉は、地底まで来たついでなんだから!」

 

勇儀「……さっきと言ってることが真逆なんだけど」

 

霊夢「真実は常に形を変えているものなのよ!」

 

勇儀「……ぷっ。ははは! アンタなんか面白いね、気に入ったよ!」

 

霊夢「……? なによ急に…… 笑わせるようなことを言ったつもりは無いわよ」

 

勇儀「アンタと話すのが楽しくてねぇ…… もっと真との話を聞きたいなぁ」

 

霊夢「(……鬼も、天狗に似て話好きなのかしらね。昔は妖怪の山にいたらしいし……)」

 

勇儀「……その王様ゲームっての、真も一緒にやったんだろ? 例えばどんな命令があったんだい?」

 

霊夢「そうねぇ…… 軽いものだと、お茶を淹れさせたり、一発芸をさせたり……」

 

勇儀「……ふむふむ。一発芸ってのは面白いね」

 

霊夢「……膝枕とか、お姫様抱っこなんてのもあったわね」

 

勇儀「……ふーん。霊夢は真にしてもらったの?」

 

霊夢「ぐっ…… そ、それは残念ながら……」

 

勇儀「(残念なんだ)」

 

霊夢「でも真の尻尾を思いっきりモフッてやったことならあるわ! こう、全身に巻きつけてね!」

 

勇儀「……あー、真の尻尾は柔らかくて気持ちいいよねぇ。分かる分かる」

 

霊夢「……へー? まるで経験したことがあるような口ぶりじゃない」

 

勇儀「そりゃあ昔からよくやってたからね」

 

霊夢「……! へ、へぇ…… まぁ真は優しいから? 頼まれたら渋々やってくれるでしょうし……」

 

勇儀「いや、真からやってきてたけど」

 

霊夢「!?」

 

勇儀「萃香が真の尻尾によくじゃれててねぇ…… ついでに私にも尻尾を持ってきて……」

 

霊夢「(ず、ずるい……! なんで萃香は神社(ウチ)じゃあ尻尾に手を出さないのよ!? 普段は真が尻尾を隠してるから!?)」

 

勇儀「……っと、そんなことはどうでもよかったね」

 

霊夢「(どうでもよくない! 他に勇儀が真からどんなことをされてたか、聞いておく必要が……)」

 

勇儀「……他には? どんな命令があったんだい?」

 

霊夢「……え? えぇと他には……あだ名を全員からつけられるとか」

 

勇儀「あだ名ぁ? 萃香で言う、『小さな百鬼夜行』的な?」

 

霊夢「いや、もうちょっと適当なの」

 

勇儀「なるほどねー。で、霊夢はどんなあだ名をつけられたの? レイレイ?」

 

霊夢「あだ名つけられたの私じゃないし……」

 

勇儀「ちなみに、はく()()()()む、から取ってみた」

 

霊夢「(あれ、この流れ、前にもあったような……)」

 

勇儀「……王様ゲームかぁ。酒の席でやったら意外と面白いかもしれないねぇ」

 

霊夢「あ、それ私も思った。お酒を飲んでたらもう少しくだけた命令もできるし……」

 

勇儀「……よし! じゃあ風呂から出たらやってみようか!」

 

霊夢「いいわよ。さとりが今、ペットたちにルールを教えながらやってるはずだから、それにいれてもらいましょ。もちろん真も一緒に」

 

勇儀「決まりだね! それじゃ、ちゃっちゃと体を洗っちゃお!」ザパァッ

 

霊夢「……そうね」ザパッ

 

勇儀「よっしゃ霊夢、こっちにおいで! 私が体を洗ってあげるよ!」ガシッ

 

霊夢「……え? いや、別にいい……」

 

勇儀「遠慮すんなって! 王様からの命令だよ!」グイッ

 

霊夢「わぁ! 別にアンタ王様でもなんでもな……あー!」ズリズリ

 

勇儀「こう見えて、妖怪の山では四天王と呼ばれたこともあってだね……」

 

霊夢「聞いてない!」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ~地霊殿、一室~

 

勇儀「……あー! いい湯だった!」

 

霊夢「うぅ……力が強い…… でも洗うのは丁寧……」ツヤツヤ

 

勇儀「さとりー! あがったよー!」

 

さとり「……ああ、勇儀さんと霊夢さん、おかえりなさい。いかがでしたかお湯加減は」

 

勇儀「最高だった! かわいい女の子とも一緒に入れたしね」チラッ

 

さとり「言い方がおじさんみたいですね…… というか霊夢さんと入ったんですか?」

 

勇儀「そうだよ?」

 

さとり「(……なるほど。おおかた勇儀さんに見つかって、女湯に無理矢理引っ張られていったというところでしょう。真さんと一緒に入れなくて残念でしたね、霊夢さん)」

 

霊夢「……あれ? さとり一人だけ? ペットたちと王様ゲームをしてたんじゃなかったの?」

 

さとり「ええ、さっきまでやっていたんですけどね…… あの子たちは自分の欲望に忠実すぎまして、ちゃんとしたゲームにならなかったといいますか……」

 

霊夢「……あー、所詮動物だしねー」

 

さとり「……それで、少し早く終わったので温泉に入りに行きました。霊夢さんが戻ってくるころだと思ったので、私は遠慮しておきましたけど」

 

霊夢「あら、ありがとう」

 

勇儀「……ゲームにならなかったって、具体的にはどんな感じだったんだい?」

 

さとり「そうですねぇ、例えば……」

 

 

 

 ~温泉内~

 

お空「真、聞いて聞いて! さとり様にね、あとでお菓子を作ってもらえることになったんだ!」

 

真「おー、それは良かったなー」

 

お燐「あたいはね! 今夜はさとり様のベッドで一緒に寝かせてもらうんだよ!」

 

こいし「私もねー、あとでまたお姉ちゃんと一緒にお風呂に入るのー」

 

真「(……これはもう王様ゲームじゃなくて、単なるさとりへのお願い大会だな…… 大変だなさとり……)」

 

お燐「楽しみだねー♪」

 

お空・こいし「「ねー♪」」

 

真「……うーん、うまいこと命令の紙を引けたもんだなぁ」

 

お燐「あ、いや、あたいもお空も文字が書けないからさ、王様のくじが引けた人が自由に命令できるルールにしたんだよ」

 

真「あ、そうなのか。一周回って元のルールに戻ったんだな」

 

お燐「そういうことだね」

 

真「ふむ…… それじゃあ、さとりが王様になったときはどんな命令を出されたんだ?」

 

お空「えーっと…… あれ? どんなのだったっけ?」

 

こいし「お姉ちゃんが王様になったのって、一回か二回くらいだったよねー」

 

お燐「ええ、そうでしたね。せっかく心を読めないよう真に変化してもらったのに、あんまり意味はなかったんだよ」

 

真「……そっか。さとりも残念だったなぁ」

 

お空「あ、思い出した! さとり様はこいし様に、うたを歌う命令を出してたよ!」

 

真「へー、かわいらしい命令じゃないか。そっか、こいしが歌ったのか」

 

こいし「そうだよー」

 

真「ちょっとここでも歌ってみてくれよ」

 

こいし「いいよー♪」

 

真「(いいのか。王様ゲームの命令、無意味だな)」

 

こいし「~♪ こーいーしちゃったんだー♪ 多分~♪ 気付いてなーいでしょー♪」

 

お空「……きゃー! こいし様素敵ですー!」パシャパシャ

 

こいし「えへへー」キラッ☆

 

真「うまいもんだなぁ…… 風呂の中だと声が響いて、まるでアイドルのコンサートかと思ったぞ」

 

お燐「だよねだよね! こいし様も曲を作って、ヤマメから地底のアイドルの称号を奪いましょう!」

 

真「(ヤマメにそんな称号が……)」

 

 

 

 ~地霊殿~

 

さとり「……みたいな感じですかね」

 

霊夢「……あー、何て言うか、大変ねぇ…… その場で終わらない命令は無しっていうルールが必要だったわね。これは暗黙の了解だと思うけど」

 

さとり「ですよねぇ…… あらかじめ心を読んで注意しておくべきでした……」

 

勇儀「……あ、今のさとりは心が読めない状態だったね。 ……ふーん、いつもと変わらないような姿だけど……」

 

さとり「一応いまはサードアイが閉じてる姿になってるんですよ。普段はこれで心を読んでますから」

 

勇儀「ん、本当だ」

 

霊夢「……真の変化の術は便利ねぇ。吸血鬼を太陽の下でも歩けるようにもできたりするし」

 

さとり「……ですが、今も心を読めないというのは結構不安なんですよ? 単純なペットとか、嘘をつかない勇儀さんの前だったらある程度は平気ですけど……」

 

勇儀「なるほどなぁ…… でも安心しな! 霊夢がさとりに変なことをしようとしても、私が守ってやるからさ!」

 

さとり「勇儀さん……」キュンッ

 

霊夢「……いや、変なこととかしないからね?」

 

勇儀「ははは。ま、それはさておき……」

 

霊夢「(流された)」

 

勇儀「あいつら(ペット達)がいないのは予想外だったね。王様ゲームに混ぜてもらおうと思ってたんだけど」

 

さとり「……そうなんですか? それでしたらせっかくですし、この三人でやってみます?」

 

霊夢「え、三人で? 少なくない?」

 

さとり「少ないですけどそれはまぁ、初めての勇儀さんの練習ということで。やってたらそのうち真さんも戻ってくるでしょうし」

 

勇儀「やりぃ! それでいいからやろう!」

 

霊夢「(……まぁ、後から真も入るならいいか。こいつらの真との過去でも聞き出してやりましょ)」

 

さとり「……まずは練習ということで、紙は用意しないで割り箸だけでやりましょうか。王様のくじを引いた人が、なんでも自由に命令できる」

 

勇儀「シンプルでいいねぇ」

 

霊夢「ええ、それでいいわ」

 

さとり「では……」

 

勇儀「あ、待って! お酒準備しとこうお酒!」

 

霊夢「そうねぇ…… 温泉から出たばかりで喉も渇いてるし」

 

さとり「……では、準備が終わり次第開始ということで……」

 

 

 

「「「王様だ~れだ?」」」

 

勇儀「はい私ー! 命令を出していいんだよね?」

 

さとり「ええ。番号を指定して命令してください。三人なので1番と2番しかありませんが」

 

霊夢「物理的に不可能な命令は、当然だけど無しだからね」

 

勇儀「オーケー、無茶なのは言わないようにするよ。 ……じゃあ最初の命令は『1番と2番は、酒を一杯、一気飲み』で!」

 

霊夢「あ、私1番だ……って! どっちでも変わらないじゃない!」

 

さとり「……まぁ、三人しかいないと、ほぼ確実に命令を受けますよね」

 

霊夢「……でもいい命令ね。早速お酒をもらえるかしら?」

 

勇儀「はいはーい♪ さぁさぁお前ら、飲みねぃ飲みねぃ」トクトク

 

霊夢「っとと…… ふふ、お酒はそっち持ちなんて気前がいいわね」

 

さとり「……大丈夫ですか? 人間にはその量は少し厳しいような……」

 

霊夢「……………………っぷはー! 余裕!」ガシャン

 

さとり「(勇儀さんの杯を一口で……)」

 

勇儀「おおっ、いい飲みっぷりだね! 真だったらそれだけでも、半刻はかけてチビチビ飲むのに!」

 

霊夢「ふふ…… 真なんか相手にならないわ!」

 

さとり「では私も一杯…… 自分に合った量でいただきます」トクトク

 

霊夢「というかこのお酒おいしいわね! どこ産!? 地底!?」

 

さとり「(そりゃまぁ地底で作られたお酒でしょうが……)」クピクピ

 

勇儀「おっ、酒のうまさがわかるとは霊夢やるじゃないか。たしかにこれはいい酒だが、杯のほうにも秘密があってね……」カクカクシカジカ

 

霊夢「……へぇー、()いだらおいしくなる杯とかあるんだ。私もほしい……」

 

勇儀「……生憎だけど、その杯はこの世に一つしかないんだよねー」

 

霊夢「ええっ! なんでそんなのを勇儀が持ってるの!?」

 

勇儀「……へへー。鬼の秘宝の一つだよ」

 

霊夢「鬼の秘宝…… そう言えば萃香から瓢箪のお酒を飲ませてもらったときも、同じようなことを言われたような……」

 

さとり「……ぷは、ごちそうさまです」

 

勇儀「お、飲んだね。それじゃあ次に行こうか」

 

霊夢「(鬼がどうやって作ったんだろ…… 後で命令できるときに聞いてみようかしら)」

 

 

 

「「「王様だ~れだ?」」」

 

霊夢「はい私! それじゃあお返しに、『1番と2番が一気飲み』で!」

 

勇儀「いよっ! 待ってましたー!」パチパチ

 

さとり「(またですか…… 王様になれずにこのまま続くと大変ですね……)」

 

勇儀「……っぷはぁ! はい飲んだ! ふふふ、次は霊夢に飲ませてやらないとねぇ……」

 

さとり「……王様になった人が、他の人にお酒を飲ませるゲームじゃありませんからね? 分かっていると思いますが念のため……」

 

勇儀「分かってるよ! でもこの遊びって、つまるところ交流が目的なわけだろう? 仲良くなるならまずは酒を飲まないとね!」

 

霊夢「その通りね! ……ふふふ、戻ってきたら、真にもたくさんお酒を飲ませてやるわ……!」

 

さとり「心の声が駄々漏れになってますねぇ……」

 

勇儀「さ、次はさとりの番だよ。さとりが飲まないと次の命令に進めないからね」

 

さとり「……お二人の命令の余波で、私が一番お酒を飲んでいるような……」 クピクピ

 

 

 

「「「王様だ~れだ?」」」

 

霊夢「はいっ! 私!」

 

勇儀「おっ、また霊夢かい。なかなか引きが強いねぇ」グビグビ

 

霊夢「えへへー」ゴクゴク

 

さとり「(……霊夢さんも勇儀さんも、命令無しにお酒を飲んでるじゃないですか……)」

 

霊夢「命令は……そうねぇ。お酒の(さかな)に、なにか話でもしてもらいましょうか。『1番と2番は、真と初めて会ったときのことを話すこと』!」

 

勇儀「お、いいねぇ!」

 

さとり「……お酒を飲む以外の命令が出てきて安心しました」

 

勇儀「じゃあまずは私からしようかな!」

 

さとり「お願いします。勇儀さんがどの程度話すのか、私が話すときの参考にさせてもらいますので」

 

勇儀「ああ、いいよ! ……と言っても、真と初めて会ったのは本当に昔のことだから、そこまでちゃんと覚えてはないんだけどね」

 

霊夢「そこはまぁ、そんなものだと理解してるから大丈夫よ。私だって数年前のことを話せって急に言われて、詳しく話せる自信は無いわ」

 

さとり「勇儀さんの場合だと、数年どころか千年以上前のことになりますけどね」

 

霊夢「……ええっ、そんな昔から知り合いだったの!?」

 

勇儀「うん、そうだよ。 ……ええと確か、真と初めて会ったのは、萃香と一緒に旅をしてる途中だったかな? そのときに、同じく旅をしていた真に偶然会って……」

 

さとり「旅ですか…… 私にはほとんど縁のない単語です」

 

霊夢「……そう言えば妹紅、旅をしている真に拾ってもらったとか言ってたわね。昔の真は旅をするのが趣味だったのかしら」

 

さとり「放浪癖は今もあるみたいですね。寿命の短い人間から見るとずっと一ヵ所にとどまっているように見えるかもしれませんが」

 

霊夢「む…… ああでも、真って一回外の世界に出ていったこともあったわね…… なかなか帰ってこなかったし、ふらふらとどこかに行っちゃうのは確かかも……」

 

勇儀「……真とはなんで仲良くなったんだっけなー。狐にしてはいいヤツだったってのもあるんだけど……」

 

さとり「(……どうやら鬼という種族は嘘を嫌うゆえに、人を化かす狐や狸の妖怪を好ましく思ってない部分が多いようですね)」

 

勇儀「……ああそうだ、私と萃香が探していた酒虫のことを知ってて、真が教えてくれたんだった。それにお酒も分けてくれたし、親切な狐もいるんだなーって思ったよ」

 

霊夢「……ふむふむ、お酒につられたと」

 

さとり「……それにしたって、初対面の相手にお酒を分け与えるという一面…… 真さんはかなりお人好しだと言えますね」

 

勇儀「……で、闘ってみたら、なんと私よりも強いじゃないか! それもあって、真にはかなり高い評価を持つようになったねぇ……」

 

霊夢「へー、やっぱり真って強いんだ。私、真が闘うところあんまり見たことないのよね」

 

勇儀「そりゃあもう! 今はもっと強いけど、あのころの真もかなり強かったね!」

 

霊夢「……ふーん。あのころっていうと千年以上前かぁ……」

 

さとり「……なるほど、そのときからもうベタ惚れだったというわけですね?」

 

霊夢「……え、そうなの?」

 

勇儀「ちょ、さとり! 何を言ってんだい! そ、そんなことはひとことも言ってないだろ!」

 

さとり「冗談です」

 

勇儀「ま、まったく……」

 

霊夢「……」ジー

 

さとり「……」クスクス

 

勇儀「……ま、まぁ私の話はこんなところかな。ほら、次はさとりだよ」

 

さとり「あ、そうでしたね。 ……ふむ、真さんとの出会いですか。私も勇儀さんと同じで、昔だったので記憶に薄いですね……」

 

勇儀「……まぁそうなるよね」

 

さとり「しかも結構地味ですし…… えぇと、紫さんが幻想郷を創る過程で、真さんを地底に送ってきたんですよ。そのときには地底に関することを教えた程度で、特に印象に残る話はしてませんねぇ……」

 

勇儀「え、それだけ? 真に対する印象とかは?」

 

さとり「印象ですか? そうですね、心を読める私を前にしても、気味悪がったりしないのは新鮮でした。そういった点では、結構な好印象だったと思います」

 

勇儀「……へぇ~。で、そのときから真に惹かれていった、と?」ニヤニヤ

 

霊夢「(お、やり返した)」

 

さとり「……そうですね、今思うとそのときからベタ惚れだったかもしれません」

 

勇儀・霊夢「「ぅえ!?」」ガタッ

 

さとり「冗談です」クスクス

 

勇儀「お、驚かせてくれるじゃないか……」ゴクゴク

 

霊夢「……強いわね……」ゴクゴク

 

さとり「(心を落ち着けるために飲むんですね)」

 

勇儀「……っぷはぁ。よし、こんなもんでいいだろう?」

 

霊夢「そうね、次行きましょう次」

 

 

 

「「「王様だーれだ?」」」

 

勇儀「お、私だ! よっしゃ、じゃあ次は霊夢のほうの話を聞かせてもらおうかな! 『1番と2番は真と初めて会ったときのことを話す』!」

 

霊夢「……まぁ、そう来るんじゃないかと思ってたわ」

 

さとり「(また余波で私に同じ命令が……)」

 

勇儀「特に霊夢は、どうして真と住むことになったのか、とか気になるねぇ……」

 

霊夢「……あれ? そう言えばどうして真は神社に住んでるんだっけ…… 確か紫が真を連れてきて……」

 

勇儀「おいおい、霊夢はそこまで昔の話じゃないはずだろー?」

 

霊夢「人間にとっては一年でも長いのよ! えぇと…… あ、そうだわ、私から一緒に住もうって誘ったのよ」

 

さとり「ほー。出会ったときから大胆な……」

 

霊夢「いやぁ、真はたくさん食料を持ってるみたいだったから、私の生活が潤うかなーと。お賽銭もいっぱいいれてくれたし」

 

勇儀「打算的だ! ははは、霊夢は良い性格してるねぇ!」

 

さとり「……出会ったときから、お酒を分けてくれたりお賽銭をいれてくれたり、真さんは昔から変わってませんね」

 

霊夢「……まぁ今は、お金や食べ物を抜きにしても、真が神社に来てくれてよかったなーとは思うけど……」

 

勇儀「え、なんて?」

 

霊夢「……な、なんでもない! それより次はさとりの番よ!」

 

さとり「え? 私はさっき話しましたが……」

 

霊夢「王様の命令は絶対よ! なんでもいいから話しなさい!」

 

さとり「……では、先ほど話した後にちょっと思い出したことがあるので、それを話しますね。真さんと初めて会ってその翌日のことですが……」

 

霊夢「うんうん」

 

さとり「……私、真さんと一緒にお風呂に入りましたね」

 

霊夢・勇儀「「ええっ!?」」

 

 

 

「「「王様だーれだ?」」」

 

霊夢「私だー!」

 

さとり「(……あれ、おかしくないですか。何回もくじを引いているのに、一回も王様になれないんですけど)」

 

霊夢「……なんとなくだけど、勇儀は2番を引いてる気がするのよねぇ。ってことで、『2番が王様にお姫様抱っこ』よ!」

 

さとり「……王様にお姫様抱っこって、王様なのかお姫様なのかどっちなんですかね」

 

勇儀「おー! すげー! 確かに2番は私だよ!」

 

霊夢「ふふふ、今日は勘が冴えてる気がするわ……」

 

勇儀「よっし、お姫様抱っこでもなんでもしてやろうじゃないか! 要は持ち上げてやればいいんだろ?」

 

霊夢「お姫様抱っこのやり方はね、まず片膝を……」

 

勇儀「……そぉりゃ!」グイッ

 

霊夢「きゃあっ!?」

 

勇儀「はっはっは軽い軽い!」グルグル

 

さとり「(……うわ、酔いが回って気分が悪くなりそう)」

 

霊夢「きゃー! 勇儀すごーい! 力持ちー!」キャッキャッ

 

さとり「(喜んでた)」

 

勇儀「おりゃー!」グルグル

 

霊夢「わー!」ギューッ

 

さとり「(随分仲良くなりましたね…… お酒の力ってスゴイ、改めてそう思いました)」

 

 

 

「「「王様だーれだ?」」」

 

霊夢「む、私じゃない! 2番だった!」

 

勇儀「私でもない! こっちは1番!」

 

さとり「おお、ということはやっと私が王様ですね。というか二人とも、自分の番号言わないでくださいよ」

 

勇儀「……あれ私、自分の番号言っちゃってた?」

 

霊夢「あちゃー、どんまいどんまい!」

 

さとり「(……霊夢さん、かなり酔いが回ってますね…… まぁ、人間が勇儀さんについていったら当たり前です。むしろ気持ち悪くなってないことがすごいと思うべきなのでしょう……)」

 

霊夢「さ、それで命令はなにかしら? 面白いのがいいわ、面白いの!」

 

勇儀「なんでもいいよ! さとりにもお姫様抱っこしてあげようか!」

 

さとり「(……とはいえ、このテンションはちょっと面倒ですね。なんかこう、軽く正気に戻れるような命令を……)」

 

霊夢「あはは! さとりが抱っこされたら子どもをあやしてるみたいな感じになるわね! お菓子でもあーんで食べさせてあげましょうか!」

 

さとり「……。……決めました、それでは『1番と2番がポッキーゲームする』、で。ちょうどポッキーならここにありますので」スッ

 

勇儀「……んう? なんだい、そのポッキーゲームってのは……?」

 

霊夢「んふふ……私が教えてあげる! こうやってお互いに、このお菓子の端っこを手に持って……」

 

さとり「待った、それは初心者用のルールです。本家だと、手ではなく口でくわえて勝負をするんですよ」

 

霊夢「……え、そうなの? えーと……」ハム

 

勇儀「口でくわえる? ……ふぉれへいいのかい?」

 

さとり「ばっちりです。これで自分の取り分が多くなるように折ればいいわけですが、そのまま食べ進めることでより多く食べることが基本戦略になりますね」

 

勇儀「ふぁるほど……」

 

霊夢「ひらなかったわ……」

 

さとり「……それでは私がスタートを言いますから」

 

霊夢「わかっは!」

 

勇儀「いつへもいいよ!」

 

さとり「よーい……スタート!」

 

霊夢・勇儀「「っ!」」カリカリカリカリ

 

さとり「(あ、マズい。始まって冷静になるかと思いきや、普通にポッキー食べ進めてます)」

 

霊夢・勇儀「(負けない!)」カリカリカリカリ

 

さとり「(このままだと二人がちゅーすることに…… あ)」

 

勇儀「ふんっ!」グサッ

 

霊夢「あいたぁー!?」

 

さとり「……勇儀さんの角が霊夢さんに…… 痛そう……」

 

勇儀「ああっ! 霊夢ごめんよ! 大丈夫かい!?」

 

霊夢「いたい……」ピュー

 

勇儀「頭から血が……」

 

霊夢「……ああ、頭がスーッとなってきた……」

 

さとり「(……まぁ、結果的に目的は達成できたということで良しとしましょう)」

 

 

 

霊夢「……真、遅いわね。いつまで温泉に入ってるのかしら?」

 

勇儀「真の風呂は長いからなぁ……」

 

さとり「……ちょっと様子を見てきましょうか」

 

勇儀「……男湯の様子を? それはまた……」

 

霊夢「いいじゃない。男の人が女の人のお風呂を覗いたら問題だけど、逆はそれほど問題ではないわ」

 

勇儀「……すごいこと言うね霊夢は。でもその通りな気もするよ」

 

さとり「……まぁ、嫌がる男の人もいるでしょうが、真さんなら特に気にしないかと。いま真さんが入ってるのは、恐らく私たちが普段入っているほうの温泉ですよね? それなら他に男の人はいませんよ」

 

勇儀「あ、そうなの。真だけならまぁ、私が様子を見に行っても……」

 

霊夢「別に私でもいいわよ? というかみんなで行く?」

 

さとり「……大勢で行くのは変じゃないですかね?」

 

勇儀「じゃあこうしよう。クジを引いて、次の王様の命令で、一人が真の様子を見てくるんだ」

 

霊夢「あ、いいわねそれ」

 

さとり「そうしましょうか」

 

勇儀「じゃあ、せーのっ」

 

「「「王様だ~れだ?」」」

 

勇儀「私だね。それじゃあ『2番のヤツ、真の艶姿(あですがた)を覗いてきなよ』」

 

霊夢「ふふ、なにその言い方」

 

さとり「男の人にその表現は変ですね……と、私が2番ですか。では行ってきます」

 

勇儀「行ってらー」

 

霊夢「てらー」

 

さとり「(……霊夢さんと勇儀さん、すぐに仲良くなりましたね……)」スタスタ

 

勇儀「……さて、さとりが戻ってくるまで、酒を飲みながら待ってようか」

 

霊夢「どっちが多く飲めるか勝負でもする?」

 

勇儀「いいね、負けないよ!」 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ~脱衣所の前~

 

さとり「……考えてみたら、こいしたちもこっちのお風呂に行ってましたね。もしかしたら真さんに遊んでもらってるのかも……おや? 声が……」

 

 

 

真「……こらこいしあんまり動くな、拭きづらいだろ。髪をちゃんと拭かないと、風邪を引いても知らないからな」ワシャワシャ

 

こいし「ふぅ~♪」

 

真「……あーあーお空、浴衣の着方がめちゃくちゃだ。いい加減覚えろよ、ったく……」セッセッ

 

お空「むぅ…… この服、着るの難しい……」

 

お燐「あはは~、真がいっつも手伝うから覚えないんだよ~」

 

真「……よし、できた。次、お燐」

 

お燐「えっ、あたい?」

 

真「爪、伸びてるだろ。風呂上がりで柔らかくなってるから切ってしまおう。ほら来い」ポンポン

 

お燐「……あー」

 

お空「見て見てこいし様! 荒ぶる鷹のポーズ!」へ○へ

 

こいし「それならこっちも! おりゃー! 夜叉の構え!」-○>

 

真「こらー、一応こっちで刃物使ってんだから暴れるなよー」パチン

 

お燐「(さとり様に爪を切ってもらうときとやり方が違う…… さとり様は前から切るのに、真は……)」

 

 

 

さとり「……む、お燐、真さんの膝に座りながら爪を切ってもらうというのはいいですね…… と、それはさておき」

 

さとり「なんだ、もうお風呂から出てたんですか、じゃあもう少し待ってれば来てたんですね」

 

さとり「霊夢さんと勇儀さんに、もうすぐ来ると伝えておきますか」スタスタ

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ~地霊殿~

 

勇儀「……やるね~、人間がここまで飲めるとは思わなかったよ」グビグビ

 

霊夢「……らりよ~、まだちょっと差がついただけで、よゆーな姿を見せてる場合じゃ……」

 

勇儀「お」

 

霊夢「あ」

 

さとり「戻りまし…… ってなんですかこの空き瓶の量」

 

勇儀「おかえりさとり~、ちょっと霊夢に勝負を挑まれてね~。でも結果は私の勝ちみたい」

 

霊夢「……う~、負けた……」クラッ

 

勇儀「おっと」フヨン

 

霊夢「……えへー、やわらかぁい……」

 

さとり「……あ、真さんはもう来るようですよ。既に温泉からあがってました」

 

勇儀「あ、そう?」

 

霊夢「じゃ~次が最後ね~。さぁクジを引きましょぉ」ガバッ

 

勇儀「おー!」

 

さとり「……ふむ、もう一度命令ができる時間があるでしょうか?」

 

「「「王様だ~れだ?」」」

 

霊夢「私だぁ!」

 

勇儀「最後も霊夢か~。霊夢はクジ運が強いねぇ」

 

さとり「(結局一回しか王様のクジを引けなかった……)」

 

霊夢「……それじゃあ最後にふさわしい命令を……」

 

さとり「……というか、真さんが来ても王様ゲームを続けるつもりだと思ってたんですが最後なんですね」

 

勇儀「そう言えばそうだった。私は十分楽しんだけど」

 

さとり「まぁ霊夢さんも結構酔っているようなので、ちょうどいいとは思いますよ」

 

勇儀「だね」

 

霊夢「むぅ……どんな命令にするか悩むわね…… ん?」

 

さとり「あ」

 

勇儀「お、真」

 

真「……よ、勇儀、おまたせ。霊夢の相手してくれてありがとな」

 

勇儀「いやいや」

 

真「さとり、今日の温泉もいい湯だったよ」

 

さとり「そうですか、それはよかったです」

 

真「霊夢は……」

 

霊夢「……あー! 真! やっと来たー!」ダキッ

 

真「おっと。なんだぁ? 霊夢、酔ってるのか?」

 

さとり「……ええ、勇儀さんと私の三人で王様ゲームをしてまして」

 

勇儀「でも飲んだのはほとんど霊夢の意思だよー」

 

真「まぁ酒を飲んだくらいで俺はとやかく言わないが……」

 

霊夢「……えへー、真、私が王様ー!」

 

真「……こんなに酔ってる霊夢は初めて見るな」

 

勇儀「そうなんだ」

 

霊夢「……真! 王様からの命令よ! 今日このあとは私が寝るまで膝枕して!」

 

真「……俺は王様ゲームしてないんだが」

 

霊夢「膝枕ー!」ギュー

 

真「はいはい、分かった分かった。いま座るよ」

 

霊夢「~♪」ゴロン

 

勇儀「……はは、霊夢は真の前だと甘えん坊だね」

 

真「普段は全然甘えてくれないけどな」

 

霊夢「……勇儀ぃ」

 

勇儀「お? どうした霊夢」

 

霊夢「勇儀も一緒に、真の膝枕で寝ましょお?」

 

勇儀「……え」

 

霊夢「早くぅ…… 王様の命令!」

 

勇儀「い、いや、私は……」チラッ

 

真「……ははは! 王様の命令なら仕方ないな!」

 

さとり「『2番は王様と一緒に、真さんに膝枕される』ってところですか」

 

霊夢「そうそれ!」

 

勇儀「えぇー……」

 

真「くくく……ずいぶん霊夢に気に入られたもんだな勇儀。霊夢を悲しませたら許さないからな?」

 

勇儀「そ、そんな」

 

霊夢「早くー」バンバン

 

真「ほら勇儀、早くだってよ」

 

勇儀「……そ、それじゃ、失礼して……」

 

真「ん」ポンポン

 

勇儀「よ、よいしょ……」ポスッ

 

霊夢「……勇儀~♪」ギューッ

 

勇儀「(わ、霊夢…… と、それより私いま、真に膝枕を……!)」

 

真「……いいなぁ勇儀、霊夢に甘えてもらえて。俺に何が足りないんだろ、なぁさとり?」

 

さとり「そうですねぇ……」

 

霊夢「~♪ 柔らかーい♪」ギュー

 

勇儀「わわわ……」

 

真「……胸か。俺にもうちょい胸があればいいのか」

 

さとり「……それはどうしようもないですねぇ」

 

 ~終わり~

 

 


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