東方狐答録   作:佐藤秋

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第百十三話 永遠亭では危険なすごろく

 

 ~永遠亭~

 

霊夢「……みたいな感じのルールよ。私が最初にやったときは紙に命令を書いたわね」

 

妹紅「……へぇ、王様ゲームか。霊夢たちも面白いことしてるんだなぁ」

 

輝夜「……ふーん。ゲームの最中にいろいろ命令ができるって面白いわね」

 

霊夢「でしょ?」

 

妹紅「……ゲームの最中に命令というか、命令するのがメインみたいだけどな」

 

輝夜「……うるさいわよ妹紅、揚げ足を取らないでくれる?」

 

妹紅「取ってないけど!?」

 

霊夢「……まぁ、面白い部分もあるのは確かだけど、面倒なことも多いわよ? 今日はその命令のせいで、わざわざここまでルールを広めに来たからね」

 

輝夜「王様の命令が有効なのは原則ゲーム中だけなんでしょ? それならそう面倒でもないわ」

 

霊夢「……あっそう。輝夜がそう思うなら別にいいのよ」

 

妹紅「……なんだ、霊夢は変な命令でもされたのか? 真が外の世界で買ってきたような服に着替えさせられたとか」ニヤニヤ

 

霊夢「別に、そんな命令は無かったけど?」

 

妹紅「なーんだ」

 

霊夢「……でも、それいいわね。妹紅とやるときはその命令を書いておこうかしら」

 

妹紅「……え?」

 

霊夢「『2番はスカートに着替えてゲームを続ける』、みたいな」

 

妹紅「……だ、駄目だ駄目だ! 霊夢、そんなの書いたら怒るからな!」

 

霊夢「なんで? かわいくて似合ってたじゃない。輝夜に見せつけてあげましょうよ」

 

妹紅「輝夜に見せるとか絶対駄目! 霊夢の前でも恥ずかしかったのに……」

 

霊夢「……じゃあ、また神社で着る練習をしましょうか。 ……そうだ! 私の巫女服の替えがあるから着てみてよ!」

 

妹紅「えぇ……? それは……」

 

輝夜「(……あれ、霊夢と妹紅っていつの間にこんなに仲良く…… これは……)」ムムム

 

妹紅「……巫女服もちょっと着てみたいけど、霊夢のは肩周りが見えてるし……」

 

輝夜「……どーん!!」ガバッ

 

霊夢「わ」サッ

 

妹紅「うわっ!? か、輝夜なにすんだいきなり!」

 

輝夜「そんな話はどうでもいいのよ!」

 

妹紅「……いや確かにどうでもいいけどさ……」

 

輝夜「それで結局、今から王様ゲームをしてみるのかしら!? わざわざ霊夢が説明に来てくれたわけだしね!」

 

妹紅「なんでちょっと機嫌悪いんだよわけわかんないなぁ……」

 

霊夢「……そうねぇ、ゲームを教えに来た以上、一緒にやってみて教えたほうがいいとは思ってたけど」

 

輝夜「じゃあやりましょう! 真も一緒にやるわよ! 確か霊夢と一緒に来てたわよね!」

 

霊夢「……えーと、確かに一緒に来てたけど、そういえば真のヤツ私に説明させてる間に自分は何を……」キョロキョロ

 

妹紅「ああ、真なら……」チラリ

 

 

てゐ「……真のお膝はあったかいウサ~♪」ゴロゴロ

 

鈴仙「……すいません真さん、またてゐが勝手に……」

 

真「ああいいよ別に、俺も悪い気はしないしな」ナデナデ

 

鈴仙「(……ものすごく優しくてゐの頭撫でてる……)」

 

真「……ほらてゐ、ポッキー食べるか?」

 

てゐ「食べる~。二本」アーン

 

真「ほれ、二本」

 

てゐ「~♪」サクサク

 

鈴仙「……」

 

 

妹紅「……向こうのほうでてゐを愛でてるな」

 

輝夜「……」イラッ

 

霊夢「……」ムカッ

 

妹紅「相変わらずてゐは、真には甘えるんだよなぁ」

 

輝夜「……あんのチビ兎、誰に断って真の膝に……」

 

霊夢「しかも、あーんなんかされちゃって…… 普通なら狐にあーん(捕食)される側のくせに……」

 

輝夜「……うまいこと言うわね霊夢」

 

霊夢「……え? いやーそれほどでも」

 

輝夜「あとであの兎には制裁を加えておきましょうか」

 

霊夢「いいわねそれ! 乗った!」

 

妹紅「(……あれ、輝夜と霊夢って結構相性いい?)」

 

霊夢「……で、どうするの? 真は置いて、三人で王様ゲームする?」

 

輝夜「そうねぇ…… 真がやらないならこのゲームは……」

 

妹紅「そうだな、真がやらないんだったらこのゲーム……」

 

輝夜・妹紅「「楽しみは妹紅(輝夜)に変なことをさせるしかなさそうね(だな)……」」

 

輝夜・妹紅「「……って真似すんな!」」

 

霊夢「(息ぴったり…… この二人、真の言うとおり実は仲が良いのかも……)」

 

妹紅「……まぁいい。話を聞く限り、王様ゲームは大人数でやるようなゲームと見た。だから今回はやめとくか」

 

輝夜「……ええ、それにゲームは勝敗があるから面白いのよね。王様ゲームにはそれが無いみたいだし……」

 

霊夢「そっか、勝敗か…… まぁ例えば『命令をこなせなかったら負け』みたいなルールにすればできなくもないけど、それだと無茶な命令ばっかりで面白くないかもね」

 

輝夜「そういうこと。まぁ妹紅に変な命令するのは楽しそうだけどね」

 

妹紅「言ってろ。 ……さ、それじゃあせっかく霊夢が来たんだし、さっきまで輝夜とやってたすごろくでも一緒にやろうか」

 

霊夢「……すごろく? ああ、サイコロを振って駒を進めて、止まったマスに書かれたことを実行しながらゴールを目指すアレ?」

 

妹紅「そうそう、一回休みとか何マス戻るとかな。マスに書かれたことは絶対に…… ん?」

 

輝夜「実行しなきゃいけないっていう…… あっ」

 

霊夢「? どうしたの?」

 

妹紅「(待てよ……? すごろくって、言い換えたら『マスに書かれた命令を守らなきゃいけないゲーム』だよな…… これってある意味王様ゲームなんじゃないか?)」

 

輝夜「(そうよ、王様ゲームとすごろくを組み合わせれば、勝敗も決まるゲームにできるんじゃ……)」

 

妹紅「(ルールは当然、止まったマスに書いてある命令を実践しなくちゃいけなくて、その命令は私たちで考える……)」

 

輝夜「(その命令が守れなければ、一回休みとか何マス戻るとかいうルールにすればいいのね!)」

 

霊夢「……二人ともー?」

 

輝夜・妹紅「「あ、ごめんごめん。ところで霊夢、ちょっと別のゲームの提案があるんだけど……」」

 

輝夜・妹紅「「……ってまたか! 真似すんなって!」」ムキー!

 

霊夢「(……見てて面白いわねこの二人……)」

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

輝夜「……よしっ。私と妹紅、それに霊夢が書いた命令の紙を、それぞれランダムにマスに設置して完了ね!」

 

霊夢「おー」パチパチ

 

妹紅「……霊夢は今回、中立な立場として審判を頼む。実行不可能な命令とかがあったら霊夢がうまく判断してくれ」

 

霊夢「ええ分かってるわ」

 

妹紅「……輝夜が変な命令とか書いてるかもしれないからなー」

 

輝夜「……む」

 

霊夢「……まぁ、自分が止まる可能性だってあるんだし、輝夜もそう無茶な命令は書かないと思うわよ?」

 

輝夜「そうだそうだー。憶測でものを言わないでくれるかしら?」

 

妹紅「……あ、それもそうだな。悪い悪い」

 

輝夜「……あれ、やけに素直ね」

 

妹紅「そりゃあ、私が悪いと思ったら反省くらいするさ」

 

輝夜「……ふーん?」

 

霊夢「……さて。今さらルールの確認は必要ないわね? それじゃあ早速始めるわよ」

 

妹紅「ああ。ルールと言っても、『止まったマスの命令に従うこと』」

 

輝夜「『先にゴールしたほうの勝ち』、くらいしかないけどね」

 

霊夢「そうね。それじゃあ妹紅から、サイコロを振っていいわよ」

 

妹紅「よーし! いくぞ!」

 

 

 

 ~ゲーム開始~

 

妹紅「てやっ!」コロコロ

 

輝夜「いーち! いーち!」

 

妹紅「うっさい輝夜!」

 

霊夢「……えーと、4かしら」

 

輝夜「ちっ」

 

霊夢「……はい、じゃあ4マス進んで、そこの紙を裏返してね」

 

妹紅「おう」

 

輝夜「(……マスに直接命令を書くんじゃなくて、マスには命令の書かれた紙を裏返して置いておく……)」

 

妹紅「(……そうすることで、マスに止まるまではどんな命令か分からないわけか……)」

 

輝夜「(……このやり方は、さっき真が考えてくれたのよね)」

 

妹紅「(咄嗟に考えたにしては、なかなかよくできたルールだよなぁ)」

 

真「……おー、二人とも頑張れー」

 

てゐ「ウサー」ゴロゴロ

 

霊夢「(……真が普通に観戦に来るんだったら、真もいれて王様ゲームすればよかったんじゃないかしら……?)」

 

妹紅「……じゃあ4マス進むぞ。いちにいさんよんっと」

 

真「……お、この赤いタケノコみたいな駒が妹紅のなのか。なんか似合ってるな」

 

妹紅「……そ、そうか?」

 

輝夜「ええ、タケノコ狂にはピッタリね。まさに狂ったタケノコみたいで」

 

妹紅「タケノコ馬鹿にすんな! ぶっとばすぞ!」

 

霊夢「(馬鹿にされたのは妹紅のほうじゃないのかしら……?)」

 

真「……で、つーことはこっちの駒が輝夜のってことだな。なんだこれは……黄色い竹?」

 

輝夜「黄色じゃなくて金色ね」

 

真「ほー」

 

妹紅「どっちでもいいだろそんなの…… さて、それより私のマスの命令は……っと」スーッ

 

霊夢「記念すべき最初の命令ね。私もいろいろ書いたけど、どの命令が来るかしら」

 

妹紅「まぁ、最初っから変な命令は……」ペラリ

 

 『妹紅は死ぬ』

 

妹紅「……」

 

霊夢「……」

 

真「……」

 

輝夜「……あちゃー、これは最初から難題が来たわねー」

 

妹紅「なにがあちゃーだ! 輝夜ぁ! これ書いたのお前だろ! やっぱり変な命令書いてたじゃないか!」

 

輝夜「……あら? 確か、誰が書いた命令なのかは追及しないルールじゃなくて? それに書いたのは私じゃないわよ」

 

妹紅「じゃあ霊夢が書いたってのか!? 霊夢がこんなの書くわけないだろ!」

 

輝夜「……さー。どっちにしろこれをこなさないと妹紅の負けよ? まぁ負けというかスタートに戻るというか……」

 

妹紅「認められるかこんなん! ノーカン! ノーカン!」o彡°ブンブン

 

真「(……動きが面白い)」

 

妹紅「霊夢! ついでに真! 正しい判断頼む!」

 

霊夢「……まぁ、さすがにこの命令は無しね」

 

真「いくら妹紅が死んでも生き返るとはいえ、な。死ぬとかそう簡単に言ったらいけないぞ? 輝夜」

 

輝夜「むぅ…… まだ私が書いたと決まってないのに……」

 

真「お、確かに、それはすまん。でもお前らもみんな、死ぬとか殺すとか軽々しく言ったら駄目だからな。このゲーム中に限らずだ。言われた方の気持ちも考えて……」クドクド

 

霊夢「(……あ、お説教モードに入ったわ)」

 

輝夜「(ちょっとした冗談だったのに……)」

 

妹紅「……殺すとか軽々しく言ったら駄目? あれ、でも真この前……」

 

真「……ん?」

 

霊夢「……この前なにかあったの?」

 

妹紅「ああ、確か寺子屋で子どもたちと遊んでるときに……」

 

 

男子1『なー、真せんせーって年いくつー?』ヒョコッ

 

真『……おっと。 ……んー? いくつだと思う?』

 

男子2『えーとえーと……八十歳!』ニヒヒ

 

男子3『いや、百歳だろ!』キャッキャッ

 

妹紅『(……ああ、子どもってふざけて高い年齢言ったりするよなー。でも真の実際の年齢はもっと上……)』

 

真『……百ぅ? それだったらかなり爺さんってことになるなぁ』

 

男子1『あははー! 真せんせーはじいさん!』

 

男子3『ジジイだジジイ! かれーしゅーがする! くっせー!』

 

男子2『ジジイくっせー!』

 

 

霊夢「……ずいぶん元気な子どもたちだこと」

 

輝夜「……あ、分かったわ。その生意気な子どもたちに向かって、真が『殺すぞ』とか言ったんでしょ」

 

霊夢「まぁ気持ちは分かるけどねー」

 

真「……いや、俺はこんなことで子ども相手に怒ったりしないが……」

 

妹紅「そう、もうちょっとだけ続きがあってだな……」

 

 

妹紅『……こら! 先生にそんな口利いていいと思ってんのか!』

 

男子1『わー! もこたんが怒ったー!』

 

男子2『こえー!』

 

男子3『口うるせーなーもこたん! こう見えてけーねせんせーよりもずっと年上のババアだもんなー!』

 

真『……ん?』

 

男子2『あははー! ババアだー!』

 

男子3『チビのババアだー!』

 

真『……おい、お前ら』

 

男子1『……あれ、せんせーどうし……』

 

真『殺すぞ』ゴッ

 

男子2・3『『』』

 

 

妹紅「……ってことがあって……」

 

真「……そ、そんなことがあったかなー」

 

妹紅「あったんだよ。まったく、子ども相手に妖力で威嚇するんだもんなー、大人げない」

 

真「だってあいつら、妹紅の悪口を……」

 

妹紅「……まぁなんにせよ、真だって『殺す』とか普通に言ってるじゃないかって話だ。自分のことを棚に上げて、私たちに注意する資格はないよなぁ。なあ二人と……」チラッ

 

霊夢「……許せないわね! 妹紅を(ババア)呼ばわりなんて! こんなにかわいいのに!」プンプン

 

輝夜「そうよ! 真、ガキどもによく言ったわ!」プンプン

 

妹紅「」

 

輝夜「……まぁ、男子は好きな相手にちょっかいをかける生き物だってことは知ってるけど……」

 

霊夢「それが逆効果だって気付くのはいったいいつになるのかしらね?」ハァーア

 

妹紅「……あ、あれぇ? 反応が予想と違う…… と、とりあえず、このマスの命令は無しということで、私の番はこれで終了……」

 

輝夜「……真、その男子たちの名前を教えておいてくれるかしら? 後で半殺しにしなきゃいけないから」

 

霊夢「そうね、妹紅を傷つけた罪は償わせないと……」

 

妹紅「つ、次行こう次!!」

 

 

 

輝夜「……じゃ、サイコロ振るわね。4が出て妹紅と同じマスに止まった場合は……」

 

妹紅「何も無しってことで」

 

霊夢「当然ね」

 

輝夜「まぁそうよね。じゃあサイコロが割れて7が出たら?」

 

妹紅「振りなおしだ」

 

霊夢「サイコロは真に直してもらいましょう」

 

輝夜「分かったわ」

 

真「……いや、割れる勢いでサイコロ投げんなよ……」

 

輝夜「……よーし、6出すわよー…… とうっ!!」ブンッ

 

真「言ったそばから!」

 

霊夢「……えーと、3ね。じゃあ3マス進んで」

 

輝夜「ちぇー。 ……さて、マスの内容は……」ペラリ

 

 『しっぺ、デコピン、富士山される』

 

輝夜「……なにこれー!」

 

真「おお、罰ゲームの王道みたいなの来たな」

 

霊夢「……しっぺとデコピンは分かるけど、富士山ってなによ?」

 

妹紅「手の甲の皮をつまんで引っ張られるやつだな。こんな感じに」ムニー

 

霊夢「……あはは! くすぐったい!」

 

輝夜「……私には絶対そんな感じにしないくせに」

 

妹紅「当然だろ?」

 

霊夢「くふふ……んっ! ……はい、じゃあ妹紅は輝夜に全部やってー」

 

妹紅「よっし! ……はぁ~」フゥー

 

真「(ああ、いるよな、しっぺするときに指先に息を吹きかけるヤツ)」

 

妹紅「……ドルザ!!」ペシーン!

 

輝夜「グリュード!」アイター!

 

霊夢「え、なに今の掛け声……」

 

妹紅「次はデコピンなー。 ……ていっ!」ビスコン!

 

輝夜「あうっ!」

 

霊夢「こっちは普通だ……」

 

妹紅「……で、最後は……」ムニー

 

輝夜「……あれ、あんまり痛くな……やっぱり痛い!」ブンブン

 

真・霊夢「(いたそう)」

 

妹紅「……ふ~、やりきった」ツヤツヤ

 

輝夜「う~……妹紅め、覚えてなさい……」

 

妹紅「忘れるまで覚えておこう」

 

霊夢「はい、次ねー」

 

 

 

妹紅「……さーて、私の次のマスは……っと」ペラリ

 

 『もみじ』

 

妹紅「……げ」

 

輝夜「ふっふっふ…… 早速やり返すチャンスが来たわ……」

 

霊夢「……もみじ? 椛?」

 

真「……これも富士山と同じ、痛みを与える系だな。背中を思いっきりパーで叩かれるやつだ」

 

霊夢「……なんだ、椛は関係無いのね」

 

輝夜「……ほーら妹紅、後ろを向きなさい。私がきれいな紅葉のマークをつけてあげるわ」

 

妹紅「うぅ…… 私のしっぺは指二本なのに、輝夜は手のひらとかズルい……」クルリ

 

輝夜「………………はぁっ!!」バシーン!

 

妹紅「いったぁああああ!!」

 

真「……うわー、いい音。こりゃー痕がくっきり残るな」

 

霊夢「……あ、なるほど。叩かれた痕が赤くなるから『もみじ』なのね」

 

輝夜「そーゆーことー♪ ……さて、綺麗にできたかしら~?」メクリメクリ

 

妹紅「……ちょ、勝手に服をめくるな!」

 

霊夢「どれどれ…… わー、痛そう」

 

妹紅「痛そうじゃなくて痛いんだよ……」ヒリヒリ

 

真「……こりゃまた綺麗な紅葉マークだなー」

 

妹紅「そりゃあこれだけ痛いんだし……ってなに真も見てんだ! 見んな真!」ブンブン

 

真「おっと」ササッ

 

輝夜「……次は私の番ね~♪ サイコロとってー」

 

 

 

輝夜「……よしっ、開かれてないマスに止まれたわ。書かれてる内容は……」ペラリ

 

 『小さくなる』

 

霊夢「……小さくなる? 子どもになるみたいな意味かしら。でもどうやって……」

 

妹紅「当然、真に頼む。ということで頼んだ真」

 

真「よし来た」ボワン

 

輝夜「きゃー!?」

 

霊夢「……なんか、真がいないとできないことを普通にぶっこんできたわね」

 

真「それな」

 

妹紅「……まぁそこはご愛嬌ってことで…… ところで輝夜は……」

 

輝夜「な……な…… 体が縮んでしまっていた!」チビーン!

 

妹紅「おおっ! 小さくなってる!」

 

霊夢「……輝夜、割と余裕ね……」

 

輝夜「え……これってもしかして、終わるまで私この姿のまま?」

 

妹紅「……えーっと、霊夢、どうしようか」

 

霊夢「そうねぇ。時間は特に書かれてないから、ずっとそれでもいいわけだけど……」

 

輝夜「……!」ガーン

 

霊夢「……じゃあ、次の輝夜の番が来たら元に戻しましょうか」

 

妹紅「ん。まぁそんなもんだろ」

 

輝夜「……」ホッ

 

妹紅「……しかし、小さくなってしまえば輝夜もかわいいもんだな。ほら輝夜、おいでー」

 

輝夜「……なによその手。行くわけ無いで……」

 

妹紅「えいっ」ギュッ

 

輝夜「わわわっ!」

 

妹紅「……んー、小っちゃくてぷにぷにだなー」ツンツン

 

輝夜「妹紅ごときが気安く私に触れるなんて……! どうせ膝の上に乗るなら、真の膝がよかったわ!」

 

真「む。今は膝の上にてゐがいるからそれは無理だな」

 

てゐ「~♪」ゴロゴロ

 

霊夢「……」

 

輝夜「ちっ!」

 

妹紅「……てゐのヤツ、全然しゃべらないから、いるのかどうか分からなかったなー」

 

 

 

妹紅「私の番。 ……さーて次のマスは何が書かれて……」ペラリ

 

 『服を一枚脱ぐ』

 

輝夜「……おー!」

 

妹紅「……む、こんなのがあるとは…… しまったなぁ、もうちょい厚着をしとくんだった……」

 

輝夜「いいわねこれ! ふふふ……さぁ妹紅、脱ぎなさい」

 

妹紅「……今回は平気だけど、同じようなマスが何個かあったらマズいな」

 

霊夢「……そのときは、まぁ脱ぎたくなければ脱がなくてもいいわよ。その代わりにスタートに戻るとかの罰はあるけど」

 

妹紅「それはそれで嫌だな……」

 

輝夜「……さ、どっちを脱ぐの? 上? それとも下? リボンは服じゃないから無しよ」

 

妹紅「分かってるよ。じゃあ下で」

 

霊夢「……え、下から?」

 

妹紅「うん、こっちのほうが脱ぎやすいし。それにまだ穿いてるから平気だぞ?」

 

霊夢「……いやまぁ、穿いてない心配はしてないけど…… そっか、その服だったら下が先っていうのもあるかもね」

 

妹紅「だろ。 ……よっ、と」ゴソゴソ

 

輝夜「む……結構普通に脱ぐのね…… もっと恥ずかしい表情とかしなさいよ」

 

妹紅「……ヒラヒラしたものを着るのと比べたら、こっちのほうはまだ恥ずかしくないな」ポイッ

 

輝夜「……そっか、妹紅は弾幕ごっことかしたら自分の炎で服が焼けるから……」

 

妹紅「……ん?」

 

輝夜「……だから、外で裸になってもあんまり恥ずかしくないんだったわね……」

 

妹紅「出鱈目なことをそれっぽいトーンで話すなよ! 霊夢とかが信じたらどうす…… あれ、霊夢?」

 

霊夢「……見て見て真、穿いてみた。これぞ、妹紅白の巫女」

 

真「うまい、十点」

 

妹紅「なに勝手に私が脱いだの穿いてんだ!? いやいいけどさ別に!」

 

真「……でもちょっと違和感があるな。霊夢の腕の装飾を外してみて……そんでポケットに手を入れてポーズを……」

 

霊夢「なるほど……」

 

妹紅「真は真で、コーディネート始めんなよ!?」

 

 

 

輝夜「だいたい半分くらいまで来たかしら。次の私の命令は……」ペラリ

 

 『永琳のわきの下を、背後からこっそりくすぐってくる』

 

真「ほー」

 

霊夢「これは…… まぁ輝夜なら簡単にできることでしょ……あれ、輝夜?」

 

輝夜「」

 

妹紅「輝夜のヤツ言葉を失ってやがる…… 多分自分で書いた命令なのに……」

 

真「……つーか、さっきの『小さくなる』のときの俺もそうだが、だんだんゲームに参加してない相手も巻き込んできてるな」

 

霊夢「ほんと。私たちみたいな観戦者はともかく、全くの部外者となると迷惑甚だしいわね」

 

妹紅「だな。怒られなきゃいいけど」

 

輝夜「……ちょっとやめてよー。 ……うう、まさか自分が踏むなんて……」

 

霊夢「あ、やっぱり書いたのは輝夜なのね」

 

妹紅「輝夜以外に私しかやってないから、このマスに自分が止まる確率は半々だろうが」

 

真「(……どっちも止まらないって可能性もあるし、厳密に言えば二分の一ではないけどな)」

 

妹紅「……ともあれ、さっさと実行してこないとな」

 

輝夜「そ、そうね…… それじゃあ! 私の勇姿を見届けるべく、みんなで一緒に行きま……」

 

妹紅「いや別に一人でいいよ。ちゃんと達成できたかどうかは輝夜が言ってくれればそれでいい」

 

輝夜「えー!」

 

霊夢「そうそう。私たちのことは気にせず、集中してやることをやってきていいわよ」

 

輝夜「そんなぁ…… そりゃまぁ私は真面目だから、誤魔化したりなんてしないけど……」

 

妹紅「だろう? そこは信頼してるぞ!」

 

霊夢「うんうん! 頑張って!」

 

輝夜「二人とも……」

 

妹紅・霊夢「「(……まぁ、一緒に行って共犯者だと思われたら面倒だしね)」」

 

真「(……みたいなことを考えてる顔だな、こいつらは)」

 

輝夜「……じゃあ行ってくるわ! 帰ってきてからの私の武勇伝を楽しみにしてなさい!」スクッ

 

妹紅・霊夢「「おー!」」パチパチ

 

輝夜「……」ザッザッザッ

 

 

 ・・・

 

 

輝夜「駄目でした」ボロッ

 

妹紅「うん」

 

霊夢「知ってた」

 

輝夜「……くすぐる前からバレて、逆にめちゃくちゃくすぐられてきたわ」

 

妹紅「ああ、それで服が乱れてるのか」

 

輝夜「そうよ」

 

霊夢「……はい、じゃあ輝夜はマスに書かれたことを守れなかったから、バツとして5マス後退ね」

 

妹紅「おお、いい罰則だな」

 

霊夢「いちにーさんしーご……っと。はい、次はここからね」スッ

 

輝夜「ひどいっ!」

 

真「(……次も5が出たら、輝夜はまた永琳をくすぐりにいくのか…… そうなったら面白いな)」

 

 

 

妹紅「……ふー、ゴールはまだか…… さて、次は……」ペラリ

 

 『反抗期っぽいしゃべり方になる』

 

妹紅「……なんだこれ」

 

輝夜「……読めないの? これはね、はんこうきって読むのよ」

 

妹紅「読めるわ! 馬鹿にすんな! そういう意味じゃなくてだなー」

 

霊夢「……今までも『男っぽいしゃべり方になる』とかあったけど、これはちょっと難しいわね……」

 

妹紅「そうそう、そういうこと…… つーか反抗期っぽくなったところで、霊夢たちに接する態度は変わらないと思うんだが……」

 

輝夜「そうねぇ…… じゃあ永琳を親だと思って、反抗期っぽく罵倒してくれば……」

 

妹紅「……真に対してそういう態度になればいいな」

 

霊夢「そうね、そうしましょうか」

 

輝夜「……ちぇっ」

 

真「……なんだ、今から妹紅は反抗期に入るのか」

 

霊夢「そうよ、真に対してだけね」

 

妹紅「……」

 

輝夜「反抗期がどんなものか考え中みたい」

 

真「……反抗期かぁ。そういえば妹紅には、反抗期らしい反抗期は無かったような……」

 

妹紅「……真!」クワッ

 

真「お」

 

霊夢「始まった」

 

妹紅「誰も産んでくれなんて頼んでないだろ!」

 

輝夜「……あー、あるある」

 

真「いや別に俺は妹紅を産んでないんだが……」

 

妹紅「なにをー! 誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ!」

 

真「それは親のほうの台詞じゃね?」

 

霊夢「反抗期に対するイメージが乏しすぎるわね。私も詳しいわけじゃないけれど」

 

妹紅「えっと…… バーカバーカ! 真なんてもう嫌い!」

 

真「……!」

 

輝夜「えっと……とか言っちゃってるし、単なる悪口ね」

 

霊夢「しかもレベルが低いという…… いやまぁ、悪口が下手なのはいいことよね」

 

妹紅「真の後のお風呂に入りたくないんだけど!」

 

輝夜「それは反抗期というより思春期のような…… あれ、真?」

 

真「……」ズーン

 

輝夜「今ので落ち込んだの!? メンタル弱っ!」

 

霊夢「ちょっ……妹紅、中止ー!」

 

 

 

真「てゐー……」モニュモニュ

 

てゐ「……ウサ?」

 

 

霊夢「……なんか真が向こうで落ち込んでるけど、無視して続けましょう」

 

輝夜「ええ、そうね」

 

妹紅「真がああなった原因私だけどさ、お前らなかなか冷たいよな」

 

輝夜「さて、次の私の命令は……と」ペラリ

 

 『モノマネする。似てなかったら4マス戻る』

 

輝夜「……も、モノマネ!?」

 

霊夢「……これまた難しそうなのが来たわね」

 

妹紅「輝夜いいの引いたな! これは楽しみだ」ニヒヒ

 

輝夜「……"似てなかったら"って、そこはどう判断するのよ」

 

妹紅「そうだなぁ……私たちで判断してもいいけど、それだと公平さに欠けるかもな」

 

輝夜「うんうん」コクコク

 

霊夢「……じゃあ、何のモノマネするかを伏せておいて、私たちが当てられたらオッケーってことでどう?」

 

妹紅「……うーん。それだと、モノマネする人物によっては簡単になるような気も……」

 

輝夜「『~だぜ☆』とか言ってれば魔理沙ってすぐ分かるもんね」

 

霊夢「(魔理沙はそんな星マーク付けた言い方しないと思うけど……)」

 

妹紅「……なら、私たちで何のモノマネするか先に決めといて、真に判断してもらおうか」

 

霊夢「あ、それいい」

 

輝夜「……まぁそれが妥当かしら」

 

妹紅「よし、決定な」

 

霊夢「……さて、じゃあ輝夜が何のモノマネをするかだけど……」

 

輝夜「私が知ってる人でお願いね」

 

妹紅「それはまぁ当然として…… というか全員が分かるヤツがいいよな。私と霊夢と輝夜、全員が知ってるヤツ」

 

霊夢「あと真も、ね」

 

妹紅「あ、そうか。えーとそれだと……」

 

輝夜「……もうそれなら、妹紅のモノマネでよくない? 確実に全員分かるわよ」

 

霊夢「……なるほど、そういうのもあったわね。っていうかいいわねそれ!」

 

輝夜「でしょ?」

 

妹紅「えぇ……私の……? なんか私も罰ゲーム受けてるみたいだな……」

 

霊夢「まーまー、いいじゃない」

 

妹紅「いいけどさぁ……輝夜が私のモノマネするってのはどうも……」

 

輝夜「じゃ、行ってくるわね!」

 

妹紅「あっ、ちょっ……」

 

 

真『……』ズーン

 

霊夢「……真はまだ落ち込んでるのね…… あ、輝夜が真の肩を叩いたわ」

 

妹紅「輝夜のヤツ、いったいどんな私のモノマネを……」

 

輝夜『おっす、オラ妹紅! 真よお、おめぇ元気出せって!』

 

妹紅「似てねぇ!」

 

 

 ・・・

 

 

霊夢「……ということで、輝夜は今のマスに残留ね。4マス戻るペナルティは無し」

 

真「うん。めっちゃ似てた」

 

輝夜「やった!」

 

妹紅「納得いかねぇ!」

 

 

 

妹紅「……さん、しー、ご……っと、やったーゴール!」

 

輝夜「ええっもう終わり!?」

 

真「……まぁ3人でマスの命令考えたんだし、そう考えると結構長かったほうだけどな」

 

輝夜「くぅ…… あの5マス戻るやつさえ無ければ……」

 

霊夢「はい、じゃあ妹紅の勝ちねー。じゃあ負けた輝夜は開かなかったマスを2つ選んで、それぞれ命令を実行ね」

 

真「……へぇ、そんなルールだったのか。なるほど、だから今回いい目にあうようなマスの命令が無かったんだな」

 

妹紅「そういうことだ」

 

霊夢「(……まぁ私は、どうせ自分に得が無いしと思って書かなかっただけだけど。私も参加するなら『真に耳掃除をしてもらう』とか書いてたわ)」

 

輝夜「ん…… じゃあこれとこれ!」バンバン

 

妹紅「はいはい。えーっとそれぞれ命令は……」ペラリ

 

 『次の自分の番が来るまで正座』

 

 『次の自分の番が来るまでしゃべるの禁止』

 

輝夜「……次の自分の番が来るまでっていつまでよ?」

 

妹紅「……もうゲームは終わったから……永遠?」

 

輝夜「えぇ……?」

 

真「……拷問ってレベルじゃねーな」

 

霊夢「それは死ねるわね」

 

輝夜「いや死なないんだけど……」

 

妹紅「……仕方ない、もう一回やるか。次は真と霊夢も入れて、命令も一新しよう」

 

霊夢「そうね。もうちょっと王様ゲームに近いような楽しい命令も書きましょう。『お酒を飲む』とか」

 

輝夜「うん、いいわね!」

 

妹紅「……あ、輝夜はその間ずっと無言で正座しながらだからな」

 

輝夜「分かってるわよ! ちぇー!」

 

霊夢「……さて、じゃあどんな命令を書こうかなぁ……」

 

 

 ~終わり~

 

 


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