東方狐答録   作:佐藤秋

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真「題名通り、俺が外の世界で買ってきたお土産を渡す話、渡した後の反応の話だ。特にオチもない台詞形式のみの話だが、長くなったので二つに分けることにした。今回は永遠亭、紅魔館、博麗神社での話になる。それではどうぞ」



第八十三話 お土産①

 

 『永遠亭』

 

てゐ「~♪ 真のお膝は座り心地がいいウサ~」

 

真「そうかそうか。じっとしてろよー…… よし、できた」

 

てゐ「? なにこれ? にんじんの首飾り?」

 

真「外の世界のお土産だ。てゐに似合うと思ってな」

 

てゐ「ふーん…… 別に幻想郷でも作れそうだけど、真がくれたんだから身につけておいてあげるウサ」

 

真「そうか、ありがとう」

 

てゐ「へっへー、かわいい?」

 

真「かわいいよ」ナデナデ

 

てゐ「~♪ ……ん?」

 

鈴仙「……てゐ! また貴女は仕事をサボってこんなところに!」

 

真「む」

 

てゐ「げっ、鈴仙……」

 

鈴仙「げっ、じゃないわよ! 一人で大変だったんだからね!」

 

てゐ「あ、もう終わったの? お疲れ~」

 

鈴仙「そこは『ごめんなさい』と『ありがとう』でしょうが!」

 

真「まあまあ…… すまんな鈴仙。仕事の途中とは知らなかったもんで、てゐには俺が邪魔してしまった」

 

鈴仙「え? あ、いえ、別に真さんが謝ることでは……」

 

てゐ「そうそう。だから仕方なかったんだって」

 

鈴仙「貴女はもう少し申し訳ない顔をしなさいよ! まったく…… あれ、てゐそれは……」

 

てゐ「これ? いいでしょー、真がくれたんだ」

 

鈴仙「へぇー、なかなかかわいいじゃない」

 

真「外の世界に行ったお土産だ。外の世界のお金はこっちじゃ使えないから、全部使い切ってしまおうと思ってな」

 

鈴仙「あ、外の世界に行ってたんですか、いいですね。私や姫様たちは結界から出ると、おそらく月からの追っ手に見つかってしまいますので……」

 

真「それで、一応鈴仙にもお土産を買ってきているんだが……」

 

鈴仙「えっ、私に、ですか?」

 

真「ああ、これだ」ボワンッ

 

鈴仙「……こ、これは……」

 

てゐ「あ、美味しそうだね」

 

鈴仙「うどんですか…… しかも完成形……」

 

真「ああ、ウドンゲだからな。月見うどんを見てピーンと来た」

 

鈴仙「(まさかの駄洒落……)」

 

真「……もしかして気に入らなかったか?」ズーン

 

鈴仙「いえいえそんな! ありがとうございます! まさか私の分があるなんて思ってなかったのでとても嬉しいですよ!」

 

真「そうか! うん、喜んでもらえるならよかったよ」パァッ

 

鈴仙「(よかった、元気になった。悪ふざけじゃなかったのね)」

 

真「……まぁ幻想郷でも食えるしな多分。でも俺、あんまり鈴仙のこと知らないからなぁ……」

 

鈴仙「い、いえ、あんまり知らない相手にお土産をくれる時点ですごいと思います。てゐ、半分こして食べようか」

 

てゐ「食べるー」

 

真「ほれ、箸と取り皿」ボワンッ

 

鈴仙「……準備がいいですね」

 

真「まぁ適当なものがあれば変化でなんとかなるからな」

 

鈴仙「ではいただきますね」

 

てゐ「いただきまーす。 ……熱い!」

 

真「出来立てだからな、気をつけろよ」

 

てゐ「はーい。鈴仙、玉子崩すよ」

 

鈴仙「え? ……あ」

 

てゐ「月見うどんの玉子を最後に飲むヤツいるけど、それじゃあ普通のうどんと変わらないよね」

 

鈴仙「(私は最後に飲む派だったのに…… でも、二人で分けてるんだからこうしたほうが平等か。ああでも私のお土産なのに……)」

 

てゐ「あれ、鈴仙どうしたの?」

 

真「……やっぱり鈴仙へのお土産がこれってショボいよな」

 

鈴仙「へ? い、いえ別にそんなことは……」

 

真「いや、いいんだ。正直俺もこんなお土産はどうかと思ったし」

 

鈴仙「(思ったんだ)」

 

真「それでだな、外の世界のお土産とは別に、もう一つ鈴仙に渡そうと思ってたのがあるんだよ」

 

鈴仙「え? お土産とは別に、ですか?」

 

真「ああ。これだ」スッ

 

鈴仙「葉っぱ……? あ、これ、姫や師匠が大事に持ってる葉っぱと似てるような……」

 

真「おお、あいつらまだ持ってたのか」

 

鈴仙「ええ。なんでも月からの追っ手から逃げるときに真さんからもらったそうですね。使うと地上人の姿に変化できるとか」

 

真「そうそう、それと似たようなものだ。あいつらの持ってるのと同じように、握り締めて念じると変化ができる」

 

鈴仙「へぇー。でも、どうして私にこれを……」

 

真「鈴仙ってさ、相手の目を見ながら話せないんだろ? 自動的に相手を狂気に陥らせてしまう赤い目を持ってるとかで」

 

鈴仙「え、ええ……」

 

真「その木の葉を使ったら、姿はそのままだが狂気の瞳を持たない鈴仙に変化できる。鈴仙は人里にも結構行くみたいだし、そんな瞳を持ってたらなにかと不便かと思ってな」

 

鈴仙「た、確かに苦労してましたが……」

 

真「いまいち信用できないか。なら、使って俺の目で試してみよう。ほら、握って念じてみろ」

 

鈴仙「は、はい、では…… 変な感じがしたらすぐに目を逸らしてくださいね……」ボワンッ

 

真「よし、じゃあ見るぞ」ジーッ

 

鈴仙「(……見たところ体に変化は無いようですが……)」ジーッ

 

真「……」ジーッ

 

鈴仙「(み、見つめられる経験が無いからなんだか恥ずかしい……)」ジーッ

 

真「……」ジーッ

 

鈴仙「だ、大丈夫なんですか……?」

 

真「ああ、なんともない」

 

鈴仙「ほ、本当に!?」

 

真「本当に。ほれ、鏡」

 

鈴仙「! 私の目が赤くなってない!」

 

真「成功したみたいだな。よかったら使ってやってくれ」

 

鈴仙「あ、ありがとうございます! 感激です! ……でもどうして私の目のことを……」

 

真「なに、てゐから聞いたことがあったんだよ。だからお礼はこっちに言うといい」

 

鈴仙「そうなんですか…… てゐ、貴女もありが……」

 

てゐ「ウサ?」チュルン

 

鈴仙「……ってあー! なに一人で全部食べてるのよ!」

 

てゐ「え、だって鈴仙ずっと話してるからいらないのかと」

 

鈴仙「いるわよ! 真さんから私への折角のお土産なのに……」

 

てゐ「あ、なんか真の評価が上がってるね」

 

鈴仙「! そ、それに一人で全部食べちゃったらこの後のご飯が入らなくなるでしょう!?」

 

てゐ「あー。じゃあ私の分は少なめでいいよ」

 

鈴仙「まったく…… 師匠に言っておかないと……」

 

永琳「……あら、私がどうかした?」

 

鈴仙「あ、師匠、丁度いいところに。実は……」

 

輝夜「くんくん…… こっちからいい匂いがするわ。真からもらった漫画も区切りのいいとこまで読んだし、お腹が空いたから何か食べたいわね」

 

鈴仙「あ、姫も。真さんからのお土産の匂いですよ。てゐがそれを一人で食べちゃって、だからてゐには今日のご飯は少なめに……」

 

永琳「そう、分かった。まだ作る前で良かったわ」

 

輝夜「これは……おうどんかしら。真、もう無いの?」

 

真「実は、ある。鈴仙へのお土産だったが、もしかすると皆で食べるかもしれないと思ってたからな」

 

輝夜「さすが真! じゃあ食べましょ! 永琳も一緒に!」

 

永琳「……ええ、分かりました。そのほうが私も楽ですから」

 

真「分かった。鈴仙もあんまり食べてなかったし丁度よかったな」ボワンッ

 

鈴仙「(……次は玉子を崩さずに食べよう)」

 

てゐ「えー、皆食べるの? 真、私ももう少し食べたい」

 

真「ああ、それなら俺の分を少し分けてやるよ」

 

てゐ「やった! 真大好き!」

 

輝夜「……ちょっとてゐ、場所をかわりましょう。私もそこに座りたいわ」

 

てゐ「真に食べさせてもらうから、姫の頼みでもそれは無理だね」

 

輝夜「むぅ……」プクー

 

永琳「姫、お行儀が悪いですよ」

 

輝夜「……はーい」

 

真「食べさせるのか? 俺がてゐに? ……まぁいいけど。ほら」

 

てゐ「~♪」ズルズル

 

鈴仙「(……麺類を食べさせるのが上手いってすごいな……)」

 

 ~終~

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 『紅魔館』

 

フラン「じゃ、いってきまーす!」

 

レミリア「留守の間、紅魔館は任せたわよ」

 

咲夜「ええ、かしこまりました」

 

美鈴「任せてください!」

 

咲夜「行ってらっしゃいませ、お嬢様、妹様」

 

フラン「えへへー、お姉さまとお出かけだー♪」

 

レミリア「あ、こらフラン。そんなにはしゃいだら危ないわよ」

 

フラン「大丈夫! 真がくれた傘大きいから!」

 

レミリア「まったくもう……」

 

・・・・・・

 

美鈴「……行っちゃいましたねぇ。大丈夫なんですかお二人で」

 

咲夜「大丈夫よ。真様が途中で合流するみたいだから」

 

美鈴「ああ、なら安心です。真さんも洒落た物を買ってきますよねー、姉妹でおそろいの傘なんて」

 

咲夜「ええ。随分と気に入ったみたいで、だから今日はそれを使って外を出歩きたいっておっしゃられたのよ」

 

美鈴「吸血鬼が昼に外を出歩くってのも変な話ですけどね」

 

咲夜「それは今に始まったことじゃないでしょう」

 

美鈴「それもそうですね。 ……ところで咲夜さんは、真さんからのお土産に何をもらったんですか?」

 

咲夜「これよ。銀の懐中時計」

 

美鈴「うわ、かっこいい! しかも高そう! なんだか咲夜さんにピッタリな気がします!」

 

咲夜「うふふ……私も気に入ってるわ。真様って、正直センスは良くないほうだと思ってたから驚いたわね。美鈴は何をもらったの?」

 

美鈴「私は餃子包み器ですね」

 

咲夜「……は?」

 

美鈴「餃子包み器、と言いました。餃子を簡単に包める器具です」

 

咲夜「それはまた……私やお嬢様たちと随分毛色が違うわね…… ええと……」

 

美鈴「あはは、ハッキリ言っていいですよ。ショボいですよねー」

 

咲夜「……なんかごめんなさい。真様のセンスはやっぱりよく分からないわ」

 

美鈴「まぁこれは、真さんとの付き合いがそれなりに長いからだと思うことにします。もらえないより何倍もマシですし」

 

咲夜「そ、そう。美鈴が良いなら良いのよ。 ……今夜のお夕飯は美鈴が餃子でも作る?」

 

美鈴「……お嬢様たちって吸血鬼だからニンニク食べられなくないですか?」

 

咲夜「中身はほら、創意工夫して……」

 

美鈴「というか私、こんな器具使わないほうが早く餃子作れるんですよね。餃子の皮の上に中身を置いた状態でいくつも並べて、台を思いっきり叩いてそれが浮いた隙に、逆手でギュギュギュっと握れば百個ぐらい一気に作れますから」

 

咲夜「え、凄い」

 

美鈴「多分咲夜さんもできますよ」

 

咲夜「……美鈴は私をなんだと思ってるのかしら…… 私は全能じゃないんだけど」

 

美鈴「そうですか? じゃあ真さんからもらった餃子作り器を貸してあげますよ」

 

咲夜「……完全に美鈴には必要ないお土産だったわけね」

 

美鈴「ですね。ですがまぁこれはもらえたこと自体が嬉しいわけで……」

 

咲夜「さすが『気を使う程度の能力』の能力を持ってるだけあるわ」

 

美鈴「気を使うってそういう意味じゃないですから。 ……というか気は使ってないですよ!」

 

咲夜「そうなの? 美鈴って結構優しいのね」

 

美鈴「真さんの弟子ですから」

 

咲夜「ふふ、関係あるの? それ。 ……さて、それじゃあ私は屋敷に戻るから。また居眠りして門番の仕事をサボらないように」

 

美鈴「分かってますよー。でも今日はもう魔理沙さんもアリスさんも来てるので、来客は無いと思いますけどね」

 

咲夜「あ、そうか。アリスが来てるんだったわね。後で図書館にお菓子を持っていかないと」

 

美鈴「はい。いってらっしゃーい」

 

・・・・・・

 

咲夜「失礼します。パチュリー様、お客人にお菓子をお持ち致しました」

 

パチュリー「あら、咲夜ありがとう。真ん中にでも置いておいてくれる?」

 

咲夜「かしこまりました」

 

魔理沙「おお、手作りクッキーだ。咲夜が私にお菓子を作ってくれるのは珍しいぜ」

 

咲夜「魔理沙の分は無いわ」

 

魔理沙「ええっ!?」

 

咲夜「食べたかったらアリスかパチュリー様にお願いして分けてもらいなさい。あ、お二人は足りなくなったら言ってください。お代わりをお持ち致しますので」

 

魔理沙「お代わりあるじゃん! 二人のじゃなくて私のでいいだろ!」

 

アリス「ふふふ…… ありがとう咲夜、いただくわ」

 

咲夜「ええ、ごゆっくり」ニコッ

 

魔理沙「おかしい…… 咲夜もパチュリーも、アリスと私で態度が違う気がする……」

 

咲夜「気のせいよ。じゃあね」スタスタ

 

魔理沙「……まぁいいや。アリス、クッキー分けてくれ。パチュリーでもいい」

 

アリス「そうね」

 

パチュリー「いいわよ」

 

魔理沙「よっしゃ。じゃあ二人にも私のを分けてやるよ」

 

アリス「? なにそれ。キラキラして綺麗ね」

 

パチュリー「真からもらったお土産の砂糖菓子だって。アリスが来る前に魔理沙から自慢されたわ」

 

魔理沙「まぁパチュリーも真からお土産をもらってたけどな。真のヤツ、ああ見えて結構律儀だぜ」

 

アリス「真は元々律儀じゃない。魔理沙に合ってるものをくれたわね」

 

魔理沙「ああ、星型なのがいいよな。もしかしてアリスも、真からお土産もらってるのか?」

 

アリス「ええ。珍しい色をした布を数点と……あとはシャンハイとお揃いのリボンをね。リボンなんて簡単に作れるけど、シャンハイは喜んでたわ」

 

上海「シャンハーイ」

 

パチュリー「あら、アリスはリボン付けてないの?」

 

アリス「私にはちょっと似合わないかな。それで、パチュリーは何をもらったの?」

 

パチュリー「私? 私は飴を大量にもらったわ。喉にいいものとか、あとはドロップも」

 

アリス「あ、そういえばパチュリーって喘息持ちだっけ。見たことないけど」

 

パチュリー「真のおかげでもうほぼ症状が出ないからね。アリス、ドロップ食べる?」

 

アリス「じゃあ一ついただくわ」

 

パチュリー「はい。全部で七色あるからアリスにピッタリね」

 

アリス「あら本当ね」クスクス

 

魔理沙「パチュリー、私にももう一つ」

 

パチュリー「はい。自分で勝手に取りなさい」

 

魔理沙「どれ…… あ、白だ。別のにしよう」

 

パチュリー「あ、こら戻すな!」

 

魔理沙「だってこれスースーするんだぜ?」

 

パチュリー「そういうものなの! まったく……戻したら中でくっついちゃうのに……」

 

こあ「……パチュリー様ー、先ほどクッキーを持ってくる咲夜さんが見えたので、紅茶を準備致しましたが」

 

パチュリー「あら、ありがとうこあ。それじゃあ人数分注いでくれる?」

 

こあ「かしこまりました。 ……はい、どうぞ」

 

魔理沙「サンキュー」

 

アリス「ありがとう。 ……よかったらこあも一緒に食べる? 私からあげられる物は無いからあれだけど」

 

こあ「よろしいんですか? それなら是非!」

 

アリス「ええ、もちろん」

 

魔理沙「ははは。そうなると、この中でこあだけ魔法使いじゃないな」

 

パチュリー「……こあは私の使い魔だから」

 

こあ「ふっふっふ…… 魔理沙さん、実は私も魔法が使えるんですよ……」

 

魔理沙「なにっ、どういうことだ!?」

 

こあ「まぁ見ててくださいよ」ジャンッ

 

パチュリー「(あ、真がこあにあげてたお土産)」

 

魔理沙「? なんだそれは」

 

こあ「実験道具です」

 

アリス「(どうみても違う…… ねるねるねるねって書いてある……)」

 

こあ「まずは1の白い粉を出して水を入れると……」

 

魔理沙「おお! 色が少し変わったぜ! やるなこあ!」

 

こあ「ふっふっふ…… それだけじゃないんです! 更に2の白い粉を入れてよく混ぜると……」

 

魔理沙「おおお! また色が変わって膨らんできた! どんな魔法を使ったんだ!?」

 

こあ「内緒です」

 

アリス「(化学反応だ……)」

 

パチュリー「(おそらくアントシアニンの酸塩基反応……)」

 

こあ「そして完成! 3のキャンディチップをつけて美味しく食べられます!」

 

魔理沙「なに!? こんな色のした物体が美味しいわけが……」

 

こあ「どうぞ」

 

魔理沙「! うまいっ!」テーレッテレー

 

アリス「(……魔理沙楽しそうね)」フフッ

 

パチュリー「(こあ楽しそうね)」フフッ

 

こあ「? どうしたんですかお二人とも」

 

パチュリー「……いえ、なんでもないわ。それじゃあ後で魔理沙には魔法の薬の調合を手伝ってもらいましょうか」

 

魔理沙「ええー。こあに手伝ってもらえよ」

 

こあ「へぁ? え、えーと私はその……」

 

パチュリー「こあは自分の調合で忙しいのよ」

 

こあ「! そ、そうなんですよ!」

 

魔理沙「……ちぇー」

 

アリス「(こあは自分の調合で忙しいて…… ふふ、パチュリーも意外とノリがいいのね)」

 

 ~終~

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

 『博麗神社』

 

妖夢「はぁ……どうして私がこんな格好を……」

 

真「いいぞ妖夢似合ってる! よし、そこでポーズをとって決め台詞を……」

 

妖夢「やりませんよそんなの!」

 

真「あー、小さいときは素直にやってくれたのになー。『斬れぬものなど、何一つ無い!』って」

 

妖夢「そ、それはお爺様の…… って、小さいときっていつですか!」

 

真「悪い、今も小さかったな。今よりもっとちっこいときに……」

 

妖夢「馬鹿にしてますね!? っていうか真さんとは初めて会ってからまだ数年しか……」

 

幽々子「いいじゃない妖夢、似合ってるわよ」

 

妖夢「幽々子様…… いや、幽々子様は変な格好させられてないからそんなことが言えるんですよ」

 

幽々子「私だって真からのお土産を身につけてるわよ?」

 

妖夢「扇子じゃないですか! 服である私とは身につけるの度合いが違いますよ! それにこれ男の人の服じゃないですか!?」

 

真「妖夢かっこいい! そしてかわいい!」

 

妖夢「うるさいですよ真さん!」

 

真「!」ガーン

 

幽々子「……妖夢ひどいわ、褒めている真に向かってその対応。真だって悪気は全く無いのに」

 

真「うう……」ズーン

 

幽々子「ルナサの演奏を聴いたときみたいな反応になってるわよ」

 

妖夢「う…… す、すいません真さん、言い過ぎました……」

 

真「妖夢……! やっぱりお前は優しい子だな!」ダキッ

 

妖夢「わわっ! またですか! いいかげん子ども扱いはやめてください!」

 

幽々子「ほんと、どうしちゃったのかしらね~」

 

・・・・・・

 

幽々子「お腹空いたから帰るわ。じゃあね~」

 

真「ああ、じゃあな。妖夢もまた遊びに来いよー」

 

妖夢「(……真さんが元に戻るまで神社に行くのは控えよう……)」

 

霊夢「……やっと帰ったわね。真がずっと妖夢の相手をしてるから」

 

妹紅「……見てたらなんか、大昔にお父様と遊んでもらったときのこと思い出した」

 

霊夢「……完全に子どもと遊んでる雰囲気だったからね」

 

真「……お、妹紅、来てたのか」

 

妹紅「結構前にな。妖夢に着せてたのも外の世界の土産か? ほんと色々買ってきてるな」

 

真「まあな」

 

霊夢「……妹紅は何をもらったの?」

 

妹紅「煙草の形をした甘いお菓子だ。ほら、これ」

 

霊夢「……へぇー。遠くから見たら煙草に見えなくもないわね」

 

妹紅「ああ。まぁ単なるお菓子なんだが、(くわ)えたまま人里を歩いてたら慧音に怒られた」

 

霊夢「あー、本物の煙草と勘違いして、『子どもの前で吸うな』みたいな?」

 

妹紅「それもだが、それと『妹紅にはまだ早い』だって。何年私と一緒にいると思ってんだ」

 

霊夢「あらら。まぁ妹紅は見た目が私と同じくらいだからね」

 

真「(幻想郷では酒は子どもでも飲めるのに、煙草のほうは駄目なのか……)」

 

妹紅「慧音の早とちりには慣れたもんだけどな」

 

真「……ふむ。慧音には悪いことをしてしまったな。妹紅に変なものを買ってきた俺のミスだ」

 

妹紅「いや、紛らわしい真似をした私が悪かったんだよ」

 

真「……しかし大丈夫だ。もう一つのお土産のほうは慧音に見られても怒られないやつだから」

 

妹紅「え、他にもまだあったのか?」

 

真「ああ。丁度いいタイミングで妹紅が来たもんだな。よし、渡すから神社の中に来い」

 

妹紅「うわ、複数あるなんて嬉しいな。いったいなんだろ」

 

霊夢「(あ、これは……)」

 

・・・・・・

 

妹紅「……でもなんでわざわざ渡すのに神社の中まで? 菓子と同じように、人里で偶然会ったときでもよかったのに」

 

真「そりゃあ、外じゃ着替えられないからな。服を渡すなら着たとこまで見せてもらいたいのは当然だ」

 

妹紅「……ん?」

 

霊夢「(……やっぱり)」

 

真「妹紅もいっつも同じ服だからな、たまには別の服も着るべきだろ。ほら、これ」ジャンッ

 

妹紅「……え!? 買ってきたものって服なのか!?」

 

真「そうだ」

 

妹紅「いやいやいや! 私はもうこの服だけで十分だから!」

 

真「まあまあ」

 

妹紅「し、しかもこれスカートじゃないか! 一緒に旅してるときに、動きにくいからスカートは絶対に穿かないって話をしたの忘れたのか!?」

 

真「覚えてるよ。でも今は旅してるわけじゃないから動きにくくても問題無いだろ? これとか絶対妹紅に似合うと思うんだよなー」

 

妹紅「無理無理無理! 千年以上そんな格好してこなかったんだし……」

 

霊夢「いいじゃない、新しいことに挑戦すれば。きっと似合うと思うわよ」ニヤニヤ

 

妹紅「れ、霊夢…… お前他人事だと思って……!」

 

霊夢「他人事だなんて思ってないわ、私だってこの前同じことをやられたばっかりだし。アンタも観念して潔く着替えてきなさい」

 

妹紅「なっ……! で、でもスカートの穿き方なんて分からないし……」

 

真「……む。それは困ったな……」

 

妹紅「! そ、そうなんだよ! だから悪いけど……」

 

霊夢「それくらい私が教えてあげるわよ」

 

真「お、そうか助かる。よかったな妹紅」

 

妹紅「~~!」

 

霊夢「さ、じゃあちゃっちゃと行きましょ」ガシッ

 

妹紅「お、押すなぁ……! あんなヒラヒラしたのを穿いて、万が一にも中を見られたら……!」

 

霊夢「ドロワーズくらい私のを貸してあげるから。ほら、早く」

 

妹紅「い、一瞬着るだけなんだからなっ!」

 

・・・・・・

 

妹紅「う、ううう……下半身がスースーする…… なんだこの防御力ゼロの装備…… 慧音はどうしてこんな格好で外を出歩けるんだ…… もういっそ殺してくれ……」

 

霊夢「……アンタ殺しても死なないでしょうが」

 

妹紅「だ、だってこれかなり恥ずかしい……」

 

真「何を恥ずかしがることがあるんだ。よく似合っててかわいいぞ」

 

妹紅「ほ、本当に……? 変じゃない……?」

 

真「全然。なぁ霊夢?」

 

霊夢「ええ。この前の魔理沙と早苗の気持ちが分かった気がするわ」

 

妹紅「え、えへへ…… 実は少しこんな格好もしてみたかったり……」

 

霊夢「(なにこれかわいい)」

 

妹紅「あ! でもこの格好で外を歩いたりはしないからな!」

 

真「ああ、今はそれでいいだろ。頑張ったな妹紅」ナデナデ

 

霊夢「(あ、ズルい。どっちも)」

 

妹紅「……」///

 

霊夢「(うわ、真っ赤)」

 

妹紅「れ、霊夢もこんな感じだったのか?」

 

霊夢「え? ああ、まぁそんな感じよ」

 

妹紅「そ、そうか……でもやっぱり私だけってのもフェアじゃないから、霊夢の着替えたとこも見てみたいな」

 

霊夢「……ええ、いいわよ。妹紅にだったら見せてあげる。次の機会にね」

 

妹紅「や、約束だぞ!」ユビキリ

 

霊夢「ん。そのときは妹紅も一緒にね」ゲンマン

 

妹紅「わ、分かったよ……」

 

霊夢「ふふ……」

 

妹紅「へへ…… 霊夢にはもう見られてるから、もう平気な気がしてきた」

 

霊夢「そう、私と同じね。私も妹紅になら平気な気がするの」

 

妹紅・霊夢「……」

 

妹紅・霊夢「……ふふっ」クスッ

 

 

 

真「……さて、じゃあそろそろ次の服にいくか」

 

妹紅「……え? ま、まだあるの?」

 

真「ああ。一着だけとか寂しいからな」

 

妹紅「れ、霊夢……?」

 

霊夢「ええ、私のときもそうだったわよ。さ、もう一回頑張りましょ♪」グイッ

 

妹紅「……ま、待って……一日に二回とかレベルが高過ぎ…… あー!」

 

 ~終~

 

 


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