てゐを肩車した状態で、竹林の奥に進んでいく。てゐを見つけるまでは特定の竹の間や広い道狭い道、細かくしっかりと歩いていたのだが、今はただ歩きやすい道を適当に歩いていた。
なんでもてゐには幸運を与える能力があるようで、今の俺は適当に歩いても目的地につける状態らしい。幸運ってそんな使い方もできるんだな。
「~♪~♪」
「ねぇ真……本当にその兎の言うこと信用できるの? 相変わらず迷ってるようにしか思えないんだけど……」
「え? さぁ……」
「さぁって……このまま進んで何も無かったらどうするのよ」
「そのときは、霊夢がてゐをボコボコにすればいいんじゃないかな。ほら」
俺の隣を歩く霊夢に、肩車しているてゐの足を見せる。両足とも俺がしっかり支えているので、逃げ出すことは不可能だ。霊夢も俺が言いたいことが分かったのだろう、上にいるてゐをチラリと見たあとニヤリと口元を歪ませた。
「へぇ……それもそうね」
「だろ? まぁ多分大丈夫だと思うけどな」
「……ウサ?」
騙している相手に無防備にここまで近付くほどてゐは馬鹿じゃないだろう。俺の頭の上でてゐは上機嫌に鼻唄を歌っているし、嘘をついていたらもう少しいやらしい笑い方をするのではないか。それほど他人の心理を見抜く能力に長けているわけではないが、そう思うほうが幾許か気が楽だ。
「……ん? おい、見えてきたんじゃないか?」
「……本当ね。ちっ」
「なぜ舌打ちを…… 妹紅、ここって……」
「ああ、輝夜たちの住む永遠亭だ。結局ここに来るんだな」
竹林の先に、竹の無いかなり開けた場所に出る。そこには一軒、古い和風建築の大きな屋敷が建っていた。
「異変を解決するっていう大義名分があるんだし、勝手に入ってもいいかしら?」
「え、いやそれはどうだろう……てゐに呼んで来てもらうとかのほうが……」
「あ、誰か出てくるみたい」
なかなか非常識な行動を取ろうとする紫を引き止めていると、屋敷の扉が開かれた。中から現れたのはてゐと同じような兎の耳をつけた少女で、紫色の長い髪をしている。少女は俺たちを見てギョッとした反応をしたあと、俺の上にいるてゐを発見して怒鳴り声を上げてきた。
「……師匠の術を掻い潜ってここまで誰か来たと思ったら…… てゐ! 貴女何ここまで連れてきてるのよ!」
「ウサ?」
怒っている少女を意に介さず、てゐは普通に首をかしげる。妹紅は竹林が何かおかしいと言っていたが、何らかの術がかけられていたようだ。
「だっていつまで経っても夜明けないし、いい加減面倒になっちゃったからさー。それに真なら多分大丈夫だよ」
てゐが俺の頭をペチペチと叩く。大丈夫って、どこからその信頼は生まれてきたんだろう。大丈夫だけど。
「だからって……」
「ちょっといいかしら」
「え?」
なおもてゐに文句を言おうとする少女の前に、いつの間にか紫が移動していた。その紫の手には、なぜか砂時計が握られている。
「見たところ貴女下っ端みたいだし、話の分かる人を呼んで来てちょうだい?」
「え、何を……」
「ああ残念だけど拒否権は無いわ、これは命令。貴女が邪魔するというのなら倒して先に進むだけだしどっちでもいいけど、とりあえず貴女には時間をあげるわ。砂時計の砂が落ちきるまでに話の分かる誰かを連れてきなさい」
「え、ええと……」
「はいスタート。どうせ私たちに入られるのなら、それまでに連れてきておいたほうが無駄に体力を消費することも無いんじゃないかしら」
そう言って紫が砂時計をひっくり返す。
うまい。少し強引だがどっちにしろ中に入るのならば、その意思はハッキリと伝えておくべきだ。
「う…… 私がここを離れている間、勝手に入ってこないという保証は?」
「無いわね。そんなに不安なら、このてゐって子に代わりに行ってもらえば? どっちでもいいけど時間が無いわよ」
「……分かりました。てゐ、こいつらが中に入ろうとしたら知らせてね。一応師匠まで事情を説明しに行ってくるわ」
「はいはい」
少女は出てきた扉に戻ろうとする。少女が扉に手をかけたとき、てゐが少女を呼び止めた。
「あ、ちょっと待って
「……何?」
「師匠を呼ぶなら、真が来たって伝えたほうが分かると思うよ」
「真? ……分かったわ」
鈴仙と呼ばれた少女はそう言って頷くと、屋敷の中に戻っていった。俺の来たって言えば分かると言うことは、師匠っていうのは永琳か輝夜のどっちかなのだろうか。うん、これで鈴仙がどっちかを連れてきてくれれば、穏便に話は進むと思う。
「なあてゐ、師匠ってのは永琳か?」
「そうだよー。別に何か教えてもらったわけじゃないけど、何となくそう呼んでる。あ、他の兎たちに知恵をつけてはもらったかな」
「へー、永琳ならできそうだな」
頭の中で、兎たちに怪しい薬を飲ませる永琳の姿を想像する。実際は違うんだろうけど、むかし永琳には薬の実験台にされたこともあったしそういうイメージは拭えない。
懐かしいなぁ……鈴仙が永琳を連れてくるとはまだ決まっていないが、郷愁の念に駆られてきた。あのとき同じような姿で、永琳にまた会ってみたい。
「てゐ、しっかりつかまってろよ。妹紅と霊夢は少し離れて」
「え?」
「どうしたの急に?」
「まぁまぁ。 ……ほいっと」
俺自身も妹紅たちと距離を取ると、人化の術を解き元の狐の姿に戻った。さすがにもう大きさの変化はあまり無いが、尻尾が十本に増えている。
「……ふー」
「うおおー!? なにこれスゲー! 私いまスゲーのに乗ってるウサ!」
狐になった俺の背の上で、てゐが大げさにはしゃぎ出した。そのてゐとは対照的に、周りの三人は静かなものだ。妹紅も霊夢も紫でさえも、ポカンという表情でこちらを見ている。妹紅にはこの姿を見せたことはあったはずだが。
俺がこの姿を見せたことがあるのは……分かる範囲だと十人くらいか? 多いのか少ないのか分からないな。俺以外の動物妖怪で動物の姿を見たことがあるのはお燐だけだし、まぁそんなもんなんじゃないか。
「え……真?」
「うわ、おっき……なんだこれ」
「わぁ……初めて見るかも……いえ、確実に初めてだわ……」
三者三様に、それぞれ驚きのリアクションをとる。しかしどれも共通するのは、誰もこの姿にビビっていないということだ。
「スゲー! これはまさに狐の威を借る兎状態!」
「いや、そんな言葉無いだろ」
「……ハッ。ちょっとズルいわよそこの兎! 真、私も!」
「あ、待てよ霊夢私が先に……」
「おっと! 私の土地に侵入しようったってそうは……あっ」
てゐが俺の背中の上に立ち上がる。しかしいくら普通の狐よりサイズが大きいと言っても、安定して立てるほどの大きさは無い。少しバランスを崩したてゐは、俺の背中から落ちそうになった。
「うわ、落ち……」
「危なっ」
両手(前足)は地面についているため、尻尾を伸ばしててゐを捕まえる。高い竹もスルスル上れるくせに何やってんだてゐは。
「おお!? なんか知らんけど助かったウサ!」
「礼を言わんか礼「わー! こりゃまた絶妙な手触りだね!」聞けよ……ん?」
「……邪魔な兎もどいたことだし、私も乗っていい?」
元の姿に戻るときに距離を取っていた霊夢と妹紅が、いつの間にかそばに来ていた。乗せてと頼まれたのは萃香以来初めてだろうか、高いところに上りたくなる気持ちは分からなくもない。
「いいよ。妹紅もか?」
「……うん」
「分かった。じゃあ……」
「あ、そのままでいいわ」
二人なら大丈夫だろうと思い、地面に伏せようとすると霊夢に止められた。どうやら飛んでそのまま乗るらしい。そのまま
「乗るわよ?」
「いつでもどうぞ」
「とうっ」
「……ってそうやって乗るのかよ」
「おりゃ」
「おう、
てっきり跨がるように乗るのかと思いきや、霊夢も妹紅も俺の背中に垂直向きで腹這いになって乗ってきた。まるで俺の背中を棒としたら、二人は干されている布団のようだ。
「「……あ~~」」
「二人ともおっさんくさいウサ」
「……お酒飲みたい」
「完全におっさんじゃないか」
「……あー、今日はよく頑張ったわ」
「あともう少し頑張ろうか」
二人とも動いている気配がない。時折もぞもぞと動いているようだが、この状態だと後ろがよく見えないので分からなかった。
「全く子どもなんだから……ふふっ」
紫が俺の顔の前まで来て、てゐとは真逆の感想を言う。そのまま毛並みに沿うように、俺の頭を撫でてきた。
「あら、気持ち良さそうな顔してるわね。撫でられるのがいいのかしら」
「……さぁ」
狐としての本能なのか、撫でられると自然に目が細くなってしまう。この姿を人に見せることは滅多に無いのだ、撫でられる経験は更に少ない。思えば俺が普通の狐サイズのときは、永琳がよく撫でてきた気がする。
「藍もね、ああ見えて撫でられるのが好きなのよ? 私の気分が良いときとか
「へぇ……」
そりゃあ何とも羨ましいな、藍も紫も。お前らちょっと俺と代われよ。あ、どっちも俺と代わったら、俺が二人という変な状態になってしまう。
「……それにしても遅いわねぇ。こう見えて中はもっと広いのかしら」
紫が砂時計を取り出し見る。砂は残り三分の一ほどまで減っていた。鈴仙が永琳を連れてくるのに成功しても失敗しても、鈴仙はここに戻ってくるはずである。
「……仕方ないわ。霊夢、一応突入の準備はしておきなさい」
「……えぇー……そのときはもう紫が何とかしちゃえばいいじゃない。解決と未解決の境界を操って異変を解決するとか」
「それができたら最初からやってるわよ」
そりゃそうだ。いくら紫の『境界を操る程度の能力』が強力とはいえ、できないことは沢山ある。解決と未解決の境界なんて抽象的すぎる、もはや言葉遊びの域だろう。
「……えー、やっぱり行かなきゃダメ? 今ちょっと忙しいんだけど」
「どこがよ」
どうやら今の霊夢は無気力状態だ。冬場にこたつに入っていたときのことを思い出す。
というかこのまま永琳が現れなかったらこの姿に戻った意味がないのだが。
永遠亭の入り口を睨んでいると、俺と霊夢の祈りが通じたのか、鈴仙が永琳を連れて現れた。
「師匠、ここで……きゃあっ!! 何よその大きいの! そんなのを連れて屋敷をめちゃくちゃにするつもり!?」
「待ちなさいウドンゲ。 ……ああ、本当に真だわ、懐かしい」
「え、師匠……?」
永琳は驚いている鈴仙を置いて、俺の顔の前まで歩いてくる。紫とは反対側の、俺の頭の右側に来ると、永琳は俺の首元に抱きついてきた。
「……久しぶりね真。また少し大きくなった?」
「……久しぶり永琳。さぁ、自分じゃよく分からないな」
「そう。元気そうでなによりよ。毛並みも昔と同じで綺麗なままね」
永琳は抱きついた体勢のまま、俺の後ろ頭から首筋にかけて撫でてくる。俺も首だけを動かして、永琳の頬に自分の頬を擦りよせた。
「……」
「……」
「ウ、ウサ~! 目が回る~!」
「あ、悪い」
尻尾の先に捕まっていたてゐが、なんとも情けない声を出す。どうやら無意識のうちに尻尾が勝手に揺れていたようだ。俺は一言謝って、てゐを永琳の横に下ろした。
「あらてゐ、いたのね。大丈夫?」
「ウ、ウサぁ……」
「……もういいかしら。貴女が月を隠した犯人ね?」
紫が、俺の頭を挟んで永琳に問いかけた。霊夢と妹紅は、既に自分はもう関係無いと言わんばかりに俺の背中でぐてっとしている。妹紅はともかく、それでいいのか博麗の巫女。
「……なるほど。となると、この終わらない夜は貴女の仕業かしら」
「そうよ。で、月を元に戻してくれない?」
「……そうねぇ、貴女が夜を止めるのをやめて朝が来たら、すぐにでも元に戻してあげるわよ?」
その言葉から、偽物の月の異変の犯人が永琳だと分かる。言い方は少し挑発的だがさほど敵意は感じない。紫が理性的な対応を取れば、このまま穏便に終わりそうだ。
「……へぇ、その言葉が本当だという証拠はあるの?」
「そこの真に、真偽を調べて貰えばいいじゃない? 多分それが一番早いわ」
「……確かにそうね。真、さっきの言葉が本当かどうか教えてちょうだい」
「ああ、分かった。『さっきの永琳の言葉が本当かどうか』だな?」
『答えを出す程度の能力』を使い、永琳の言葉が本当かを調べる。どうでもいいが、俺の言葉が本当かどうかはどう判断するのだろうか。いや、嘘をつくつもりはないけどさ。
「……本当だ」
「ほらね?」
「む……分かったわ、信用してあげる」
紫がパチンと指を鳴らすと、微かだが止まっていた月が再び動きだした。どうやら夜を止めることをやめたようだ。先ほどまでは時間が止まっていたも同然なので、いきなり太陽が出ることはない。
「……うん、これで朝になったら月は元に戻しておくわ。明日の夜には本当だって分かると思う。もう話は終わりでいいかしら?」
「待って。なんでこんな異変を起こしたのか聞かせてもらうわ」
「ああそっか、確かに…… ウドンゲー、ちょっと来なさい」
「は、はい!」
永琳がそう言うと、鈴仙が返事してこっちに来る。恐らくウドンゲとは鈴仙のことなのだろうが、どちらが苗字でどちらが名前だろうか。
「紹介しておきましょうか。この子は鈴仙・
増えたぞ、どれが名前だ。もういい、俺は鈴仙と呼ぶことにする。それにしても長い名前だ、フランドール・スカーレットよりも文字数が多い。無駄に長い名前を覚えたりするのは好きだったりするので問題ないが。
「ああ、やっぱり新入りか。道理で初めて見る顔だと思った」
「……で、その新入りが何なのかしら?」
妹紅の反応はさておいて、紫が更に聞いていく。鈴仙が新入りということは、この竹林の兎とはまた違う存在なのだろうか。
「私たちがここに来た理由は知ってるわよね。実は……」
永琳が異変を起こした理由を話し始めた。所々抜けてる理由を推測するに、どうやらこういうことらしい。
俺が月の追っ手から輝夜と永琳の二人を逃がした後、二人は追っ手から逃れるべくてゐの住む竹林に隠れることにした。その後慧音と妹紅が竹林に訪れ、二人はてゐの竹林ごとそのまま幻想郷へ行く。幻想郷には結界が張ってあり、より見つかりにくいと考えたからだ。
そして最近になって鈴仙が永遠亭までやって来た。実は鈴仙も永琳や輝夜と同じく月からやって来た存在なのだという。鈴仙がここに来たことで、永琳と輝夜の存在が月にバレた可能性がある。今夜の満月で地上と月の道が繋がることを危惧した永琳は、満月を隠すことで最悪の事態を避けたのだ。
「……なるほど。月からの追っ手から逃げるために満月を隠して道を塞いだのね」
「そういうこと」
「……師匠、私のくだり必要でしたか?」
「必要に決まっているじゃない、主に責任転嫁のために。転嫁じゃなくてウドンゲのせいだけど」
「あーはい、そうですね。すいませんでした」
「この子も反省してるみたいだから、今回は許してちょうだいね?」
鈴仙が頭を下げてくる。理由はどうあれ実践したのは永琳なのだからそれはどうかと思うが、俺自身は何も被害は無いためどうでもいい。
「……それにしても、この大きい狐には驚きました。師匠は知ってるみたいですけどなんですかこれ。昔のペットとかですか?」
「ペッ……!? 俺をペット扱いだと……?」
「ああ、まぁそんなところよ」
「えぇー……否定しろよ……」
鈴仙の言葉に、永琳は適当に肯定する。地底ではお燐もお空もさとりのペットだということを誇っていたが、俺はペットという響きはなんだか嫌だ。なんだか少しテンションが下がる。
「あ、いや、ほら昔の真は普通のサイズだったから、ね?」
「ああ、はい、そうですね」
「敬語っ!? ……ちょっとごめんって真。そんなに怒らなくていいじゃない」
「怒ってないんですけど。え? どこか怒るようなところあった? 気付かなかったわー。怒ってないけどそろそろ元に戻ろうかな、うん。霊夢、妹紅、戻るぞー」
何だか急に人の姿に戻りたい気分になったので、霊夢と妹紅に一声かける。背中の上に乗っている霊夢と妹紅をそれぞれ尻尾で捕まえると、その二本だけそのままに俺は人の姿へと戻った。
尻尾を操って霊夢と妹紅を近くにおろすと、その尻尾も消してしまう。
「あー……もうちょっとで眠れたのに……」
「寝るなら異変は解決したんだし帰ってからにしろ。あんな体勢で寝たら体痛めるぞ」
「ふーん……真はペット扱いされるのは嫌なんだ」
「? どうした霊夢」
完全に脱力しきっている妹紅と霊夢を左右の腕でそれぞれ支える。霊夢は更に俺の体を預けると、くるりと首を回して俺の顔を覗いてきた。
「……あ、安心しなさい。真のことを私は、家族みたいに思ってるから」
「……はは」
霊夢が少し顔を赤くしながら言ってきた。別にそこまでペット扱いにショックを受けてはいないのだが、気を使ってくれた霊夢に俺は微笑み返す。
「あらそれなら私だって、真のことを育ての親みたいに思っているわよ?」
「わ、私だって真のことを……師匠?みたいには思ってるよ!」
「うむ。私だって真のことを狐みたいに思っているウサ」
「お前ら……てゐ以外ありがとな」
俺は、霊夢と妹紅と紫、それぞれの頭に手を順番に乗せる。本当は三人とも抱きしめてやりたい衝動に駆られたが、そこはぐっと我慢した。
「……さて、異変も解決したことだしそろそろ帰るか」
「あら、輝夜に会っていかないの? あの子も真に会いたがってるわよ」
「今日はもう遅いからいい。まだ用事も残ってるしな。その代わり明日また来るから、そう輝夜に伝えておいてくれ。ここで異変解決の宴会を開くんだ」
「……そう。じゃあお酒を用意して待ってるわね」
満足したので帰ることにする。永琳に軽く明日のことを伝えて、俺は目の前の三人に帰ることを促した。
「……紫は霊夢を神社まで送ってやってくれ。俺と妹紅は人里に寄って帰るから」
「分かったわ。じゃあ霊夢帰りましょうか」
「……はーい」
紫が霊夢をつれて、一足先に竹林の中に戻っていく。人里に慧音を待たせているので、俺たちも早く戻らなければ。そういえばこの竹林にはなにやら術がかけられているようだが出られるのだろうか。
「じゃ、また明日。てゐも鈴仙もな。お休み」
「ええ、お休みなさい。竹林にかけた術は解いておくからそのままもう出られるわ」
「ああ、それなら大丈夫だな、ありがとう」
永琳が俺の心配を一瞬で無くしてくれる。霊夢と紫もちゃんと出れるだろう。
三人に別れを告げたあと、俺と妹紅は竹林のほうへ戻っていった。慧音に異変がもう心配ないと教えてやらないと。紅魔館と白玉楼の連中には……まぁ異変の詳細は伝えなくていいか。明日になったら分かるだろう。
妹紅は永琳の術さえなければ竹林の道は知り尽くしている。俺は妹紅の先導の元、慧音のいる人里に向かって歩き出した。