あれからいくつもの村に訪れた。短いところで数週間、長いときには何十年も滞在したと思う。
商人のような真似事をしながら村へ訪れ、村では適当に頼まれごとを聞く万屋もどきのことをする。妖怪退治も頼まれたこともあった。種族は同じ妖怪であるが自分とはまた別の存在であると考えていたので抵抗はあまりない。人間でも妖怪でも、良いヤツは良いヤツだし気に食わないヤツは気に食わないのだ。
また、人食いが悪いとは思っていない。それがその妖怪としての本能なのだろうから仕方がないと割り切っている。
さて、今回はかなり大きい村についた。いつものように、旅人であり物を売買するために訪れたということを門番に話す。今まで自分が妖怪であることがバレたことはない。今回もすんなりと村に入ることができた。
この村ではミシャグジ様という巨大な白いヘビを神として祀っているのだそうだ。所々でヘビの石像を見かけた。どうやらヘビ神様を祀る神社もあるらしい。一息ついたら見に行こうと思う。ヘビの脱け殻を財布にいれるといいとか聞くから金運でも願っておこうか。
この村はどうやら平和なようだ。平和な村は総じて子どもが元気である。家の外で四、五人の子どもがわあきゃあと走り回っていて騒がしい。
周囲に不審に思われない程度に、微笑ましい子どもたちの様子を見ていると、元気に走り回る子ども達の中に一人、目立つ子どもがいるのを見つけた。
「あれ、あの女の子だけ髪の色が金髪だ」
周りの子がみんな黒髪の中、一人金髪の女の子がいた。アルビノっていうのか? ともあれ珍しい。それに、一人だけ見た目が違うのに子ども達の輪に見事にとけこんでいる。
組織の中でみんなと違うものは、白い目で見られてしまいがちだ。実際俺も、狐として生まれたとき人語をしゃべったせいで家族から追い出されたことがある。
なんて少し暗いことを考えていたが、楽しそうに遊ぶ子どもたちを見ていたらどうでもよくなった。うまくやれているならそれでいいじゃないか。
商いもほどほどに終了し宿でも探そうかと歩いていると、先ほど聞いたヘビ神様を祀る神社を見つけた。長い階段と、両脇にはヘビの像があり、かなり大きい神社のようだ。
早速見に行こうと思うのだが、今の時代ではどのようにお参りすればいいのだろうか。賽銭をいれて鈴がついた縄をならせばいいのか? 二礼二拍手一礼なんて言葉も聞いたことがある。ふむ、一体どうしたらいいものか……
「アンタ、さっき私のこと見てたでしょ?」
「ん?」
考え事をしていたら不意に声をかけられ少し驚く。声のした方を見てみると、ヘビの像の上に先ほど子どもたちと遊んでいる中にいた金髪の少女が座っていた。先ほどとは違い、蛙の目のようなものがついた帽子をかぶっている。
「あ、ああ。髪の色が珍しいと思ってつい、な。不快にさせたのなら謝るよ、ごめん」
「いいや違う、そうじゃない」
「え?」
どんなに子どもが相手であろうと、俺は最低限の礼儀を持って接するように心がけている。頭を下げようとすると、少女が俺の言葉を否定してきた。
「アンタが私に違和感を持ったことに対して言っているんだ。私はこの国を治める神の
「……神?」
「そう」ゴッ
「うわっ」
諏訪子と名乗る少女がとんでもないことを言っている。こんな少女が神様のわけが無いと一瞬思ったが、諏訪子から感じる得も言えぬ迫力に否定された。本当にこの少女は、この大きな村の神なのだ。
「そうか…… いや……初めて神様なんて見たよ。俺の名前は真という。旅をしていてこの村に来た」
「……では真、一つ問おう。お前、人間じゃあないだろう?」
「っ!」
いきなりの指摘に俺は思わずドキリとする。この姿で人間じゃないと見破られるのは初めての経験だ。なんで、どうしてバレたのだろう。尻尾は確かに隠してあるはずだが。
「おや、どうしてバレたんだって顔してるね。簡単さ、アンタからは霊力が感じられないんだよ。人間なら誰もが身に帯びている霊力を」
「そうだったのか……知らなかった。今まで一度もバレなかったのに」
「はっ。まぁ私は神だからね。そこいらの人間とは違うよ。しかし霊力だけじゃなく妖力も感じない。アンタ……一体何者だい?」
どうやら正体まではバレてはいないようだった。しかし人でないことはもう見破られている。このまま隠す必要はないだろう。
「あぁ、妖力は抑えているんだ。俺は妖怪だよ。ちょっと長生きしただけの狐だ」
「ほう、狐が上手く化けたもんだね。 ……で? 妖怪がここに何の用だい?」
「え、いや何の用も何も、ここ神社だろ? お参りに来たんだけど」
「……へっ?」
像の上に座っていた諏訪子の動きが止まる。あ、あぶない落ちる。俺は咄嗟に手を伸ばして諏訪子を支えた。
「あ、ありがと……ってそうじゃなくて! なんで妖怪が神社にお参りになんて来てんのさ!」
「へ? なんでと言われても……何となく?」
「…………なんつーか、変わった妖怪だねアンタ」
「そうか? 初めて言われたが」
そもそも妖怪だとバレたのが初めてである。いや待てよ、大昔に永琳に言われたことがあるかもしれない。永琳も変わった人間だったが。
「まぁいいや、害のある妖怪ではなさそうだし。じゃあ真、ちょいとうちの神社に来なよ。少しアンタに興味が湧いた。なにより私に気付いたしね」
「いいのか? それじゃあ遠慮なく」
俺も初めて見た神に興味があるので、諏訪子の誘いに応じることにする。諏訪子についていき、俺は神社の中へと入っていった。
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「ええええ! 真って私より年上なの!?」
見た目十才かそこらの少女が、見た目少女の倍以上生きているであろう男にむかってそう叫んだ。二人をよく知らない人間が見たら「なんであの子はそんな見て分かることに対して驚いているんだ」と思うだろう。もっとも少女、もとい諏訪子は神で、俺は妖怪なのだけれど。
この反応、初めて俺が一鬼に会ったときと同じだな。驚いた顔を見るのは楽しいが、諏訪子は人間ではなく神なので、俺の妖力が回復することはない。
「うん、冬だけ数えたけど千回は過ごしたと思う」
「えぇ~、そんなに前から妖怪っていたんだ…… 私まだ五百くらいなのに……ってか千歳越えてるって大妖怪じゃん! 見えないよ~」
「まぁ妖力隠す練習したし」
「うー納得できない。証拠無いの証拠!」
「証拠? うーん……これでどうだ?」
証拠証拠と喚く諏訪子に、俺は隠していた尻尾を三本出した。どうやら俺の尻尾と耳は連動しているらしく、尻尾を出すと耳も出る。大妖怪である証拠と言っても特には無いが、尻尾は妖力の塊であるので、その多さで納得してほしい。
「あっ、尻尾! あと耳も! ほんとに狐だ!」
「え、そこから信じてなかったのか?」
「信じてはいたよ、半分くらい」
「半分疑ってんじゃねぇか! まったく……ほらこの尻尾、妖力は漏れないようにしてるけど、中に妖力詰まってるだろ?」
「んー? よく分からないよ。ちょっと触らせて」
「はいよ」
俺は尻尾の一本を諏訪子の前に伸ばす。最近出していなかったが一応自分の体の一部だ。ある程度自在に動かせるし長さも変えられる。
「どれどれ。 …………うおーすごい!」
「だろう。妖力が大きすぎて隠すのに苦労したん……」
「すっごいもふもふ!」
「え!? そっちのすごい!?」
諏訪子は俺の尻尾の一つを撫で回してきて、更には尻尾に抱きついてきた。諏訪子は小さい上に俺の尻尾は大きいので、それでもまだまだ尻尾は余る。
「うーん、この感触はくせになるかも」
「いや、待ておい。くすぐったいからやめてほしいんだが」
「我慢しろ」
「命令!?」
言葉こそ傍若無人ではあるが、尻尾と無邪気に戯れる諏訪子の姿は、年相応の子どもに見える。
まぁ見た目もさることながら、中身も俺のほうが大人である。大人は子どもの我儘を聞くものだ。諏訪子が飽きるまで付き合ってやるか、と思った。
あれから二時間が経過した。俺の尻尾は依然諏訪子に弄られている。会話の最中も諏訪子はずっと尻尾に抱きついているし、飯のときには腰かけてやがった。おい、それは座布団じゃないぞ。
「うおー発見した! 尻尾二本だともふもふが二倍だ! 私ここで寝る!」
「いつまでやってんだ、よ、っと」
「うわっあてっ」
いつまでたっても終わる気配がないので尻尾を消す。乗っていた諏訪子はそのまま全身で落下した。あ、そのポーズめちゃくちゃ蛙っぽい。
「あーうー、私の尻尾……」
「俺のだ」
ジト目で俺を見てくる諏訪子とついでに帽子、一体どういう仕組みだろう。少し沈黙が場を支配したが、諏訪子の息を吐く音がそれを破った。
「ふぅ…… ところで真」
「なんだ」
「真は、明日にはもうこの村を出るの?」
「いや、もう少しは残るつもりだが…… 訪れた村は、一通り全部まわってみるつもりなんだ。この村は大きいからな、どれくらいかかるか……」
「……その間滞在する場所は?」
「まだ決まってない。宿屋が閉まる前にはここを出発しないとな……」
「それならさ! ここに住んじゃいなよ!」
諏訪子が立ち上がり、目の前に来て俺の手を取る。全く予想もしてない言葉に、俺は少しだけ目を白黒させた。
「え? それはなんとまあ魅力的な提案だが……いいのか? 妖怪が神社に住んで。いろいろマズくないか?」
「妖怪が神社にお参りしようとしてたのになにを遠慮してんのさ。それに神である私がいいって言ってんだ、マズいことなんてあるもんか。私、真のこと気に入っちゃったよ」
「気に入ったって、俺自身がか? 尻尾がか?」
「どっちもだよ」
「あ、同率なんだその二つ…… ともあれ…… じゃあ世話になる。いつまでかはわからんがよろしく頼むよ諏訪子」
「へへ、いつまででも大丈夫だよ真」
今夜の寝床も決まっていなかったし、諏訪子の提案は都合がいい。こうして俺は諏訪子と一緒に、この洩矢神社に住むことになった。
この日俺は新しく、神様の友達ができたのである。
初めての妖怪の友達の一鬼。初めての人間の友達の永琳。そして初めての神の友達の諏訪子。年が近い友達はできないものだな、と思った。
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諏訪子と共に住むことになってから百年ほどが経過した。我ながらよくこんなに長居したと思う。
諏訪子に頼まれて村の住民の頼み事を手伝っているうちに神の使いか何かだと勘違いされるようになった。何年たっても姿形が変わらないことが、その勘違いを加速させた原因だろうか。このままではいずれ自分がいなくなってしまったときに住人達が混乱してしまうのではないかと心配になった。
ある日、神社の前で捨てられた赤ん坊を見つけた。能力を使って親を見つけることもできたがやめておく。
神社に引き取って
名前は、髪の色に因んで"
緑ももう十二になった。俺の仕事も徐々に手伝わせ、ゆくゆくは一人でメインにやってもらう。俺はその頃合を見てから旅を再開しようかな、と思った。
村は更に大きくなり、いつの間にか諏訪の国と呼ばれるようになった。なにもかも順調、そう思っていた矢先のことだ。
緑が出かけ、諏訪子と二人で神社にいたある日、諏訪子がなにやら焦った表情で俺のところにやってきた。
「……真! 大変だ!」
「……ん、どうした諏訪子、そんなに慌てて」
「どうしたもこうしたもあるか! 戦争を申し込まれたんだよ!」
"戦争"という物騒な響きを聞いて、俺もつられて眉をひそめる。生憎俺は歴史には詳しくないので、戦争とは申し込まれるものかどうかの知識も薄いが、それでも普通は神に申し込むものなのだろうか。人間たちが勝手に行う土地を巡っての争いごとだと思うのだが。
「戦争……? 諏訪子、一体どういうことだ?」
「うん……それが、大和の神が、私の国の信仰を奪うために攻めてくるらしいんだ…… ど、どうしよう真!」
諏訪子が目に見える勢いで取り乱している。なるほど、神による戦争なんかもあるのか。
俺も内心で動揺するが、焦った様子の諏訪子を見ていると、逆に落ち着かなければと思った。神との戦争となると更に勝手が違ってくる。俺にできることといえばなんだろうか。
「……とりあえず落ち着け諏訪子」
「落ち着いてなんていられないよ! 戦争を申し込まれるなんて初めてのことだし、一体どうしたらいいのかなんて…… 私の国の人間たちはどうなるの!? まさか殺されちゃったりしないよね!?」
「だから落ち着けって。ひとまず諏訪子が知りたいのは『今回の戦争がどんなものなのか』、だな?」
「そ、そうだけど……」
極めて冷静を装って、諏訪子の肩を掴んでじっと目を見る。俺も神の戦争なんて初めてだが、今しがた能力を使ってその内容を理解した。神の戦争とはどういうものなのか、それを諏訪子に教えることで諏訪子にも冷静を取り戻してもらう。
「今回の戦争は……そうだな、信仰を奪うためなんだから、ヤツらも民を傷つけたりはしないはずだ。おそらくは、諏訪子の代わりに国を治める神との一騎討ちになるだろう。どうしようもなにもそれに勝つしかない」
「い、一騎討ち!? わ、私が戦うの!?」
「そうだ。多くの人間が関わる戦争よりも、何百倍も単純で分かりやすい」
「そ、そうだけど…… いや、うん、そうだね…… それなら私でもなんとかなるかも……」
長々と話すのではなく、諏訪子の心配を的確に把握することによって短い言葉で落ち着かせる。具体的な対策方法など話すのはまだ早い。今回の戦争における諏訪子の役割を教えることで、諏訪子は若干だが平静を取り戻した。
「で、でもそれは真の予想だろう? 本当に大丈夫かな……」
平静を取り戻した諏訪子の胸に、またしても不安の虫が寄ってくる。今の諏訪子に必要なものは落ち着く時間と、俺の言葉を信じるのに値するものの存在だ。
俺がこの場に残っても、言葉だけでは諏訪子の不安を払拭できない。いま俺にできること、それは行動することだ。
「……それもそうだな…… よし、それなら俺がその大和の神とやらに話をつけてくる」
「え? そんな、いったいどうやって。今どこにいるかも分からない相手と」
「俺の能力ならおそらく分かる。『大和の神の居場所』…… うん、北だ。少し遠いが急げば夜……明日までには帰ってこれるだろう。じゃ、行ってくる!」
「え、あ、ちょっと真!」
「諏訪子は一騎討ちに備えて力をためときなー」
そう言って俺は神社を飛び出した。やれやれ、もうそろそろこの村から出て行こうと思ってたのにタイミングの悪い。諏訪子には十分世話になったし情もある。その諏訪子が困っているのだ、俺にできることなら何でもしようじゃないか。
「おぉ速い速い!」
空を飛ぶのは久しぶり、思いっきりスピードを出すのはなおさらだ。旅をするときは基本的に徒歩、それは昔から変わらなかった。
「……さて、たしかこの辺のはずだが……もっかい『大和の神の居場所』」
もう一度能力を使って目的のヤツの居場所を確認する。む、近いぞ。周りが木で囲まれているため視界が悪いが、本当にもうすぐそばにいるはずだ。
「……なんだお前は。何が目的でここに来た」
辺りをキョロキョロと見回していると、背後から声をかけられた。こんな森の中で声をかけてくるヤツなどそうはいない、おそらく俺の捜していた大和の神だ。
振り向くと、背中に大きい縄を背負っている青い髪の女がいた。神力、というのだろうか、こいつからも諏訪子に似た力を感じる。間違いない、こいつが大和の神とやらだ。
「……お初にお目にかかる、貴女が大和の神だろうか。俺は諏訪の国の使いとしてやってきた真というものだ。少し話をさせてほしい」
「ほう、諏訪の…… いかにも、我は大和の神の一柱
神奈子と名乗った大和の神は、どうやら話は聞いてくれるようだ。腕を組んでいかにも傲岸不遜といった態度はさすが神といったところか。
「今回の戦争についてだ。ズバリ言おう。戦争内容はこちらの神との一騎討ちということにしてもらいたい」
「……ふん。こちらはもとよりそのつもりよ。相手は我がする」
「ありがたい。それと場所はこちらで提供する。そちらも民を無闇に巻き込むことは本意ではないはずだ」
「当然だ。よし、諏訪の神に帰って伝えろ。戦争は二十日後だと」
「……了解した。それではこれにて」
「待て」
欲しかった言葉は聞き出せた。そうなるともうここには用はない。俺の体に残る神奈子の神力が諏訪子を納得させる材料にもなるだろう。
そう思い少しでも早く諏訪子に伝えようとこの場を去ろうとしたのだが、なぜか神奈子に呼び止められた。
「二つ聞かせろ。どのようにして我を見つけた。それと、お前は妖怪だろう? なぜ妖怪ごときが神の使いをやっている」
「! ……一つ目、そういう能力だ、とだけ言っておく。わざわざ手の内をバラすわけないだろう。二つ目、使いじゃない、俺が勝手に来たんだ。友達だからな」
「……友達? 友達だと? はははこれはお笑いだ。妖怪なんぞと友などと、諏訪の神もたかが知れるというものだな」
「ふん」
一目で俺を妖怪と見破ったのだ、なかなか鋭いヤツである。戦争も一騎討ちの予定だったことから、己の力にかなりの自信があるのだろう。
しかしそれはそれとして、諏訪子を馬鹿にするのは許さない。俺は隠していた尻尾をすべて顕現させて威嚇した。
「あまり諏訪子を舐めるなよ」ゴッ
「……!」
神奈子を睨みつつ、そう言い残すが早いか俺は背を向け飛び立った。どうだ、驚いたか俺の妖力。
神奈子が何か呟いていたようだが俺の耳には届かなかった。
「なんだあの妖力は…… ふふ、楽しくなってきたねぇ……」
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
いやぁ知らなかった…… かなーり久々に全力出したら尻尾の数が七本になってた…… しかもなんでか容姿が小学生みたいになってたぞ。なんだよ、そういう仕様なのか? 結界師の無道さんみたいだな……
……あれ? ってことはあれか? 俺は最後この姿で神奈子を睨みながら「嘗めるなよ」とか言ってたのか? うわ! 超恥ずかしい! うわああああ!
新しく知った自分のことに悶えながら飛んでいると、もう諏訪の国が見えてきた。早いなおい、まだ動揺が残ってるよ。落ち着け、落ちついて尻尾を隠そう……101,103,107……素数は誰にも砕けない…… BE COOL…… AND COOL(冷静になれ……そしてカッコよく)…… よし、落ちついた。小さくなっていた姿も、尻尾を隠すと共に元に戻った。
「ただいま」
「あっ! 真! 大丈夫だったの!?」
「見ての通り。ちゃんと一騎討ちっていう話もつけてきた。戦争は二十日後だと」
「二十日後……! すぐじゃないか! こうしちゃいられない…… 真!」
「ああ、分かってる。練習相手になれって言いたいんだろ? いいよ」
「……ありがと、真」
「いいってことよ」
神奈子の伝言を諏訪子に伝え、本格的に戦争に向けての準備をする。俺は、迫る戦争の期日に向けて、諏訪子と特訓を開始した。