東方狐答録   作:佐藤秋

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第五話 洩矢諏訪子と八坂神奈子②

 

 あっという間に二十日が過ぎて、神奈子との決戦の日になった。たった二十日だがやれることは全てやった、あと俺に出来ることは祈ることだけだ。

 『答えを出す程度の能力』を使えば諏訪子の勝敗は分かるのだが、それで『負ける』となれば目も当てられないし、『勝てる』と出てもそれは二十日間の努力の末に出たものかもしれない。未来を知ることで未来が変わる可能性は大いにある、要は信憑性に欠けるのだ。それ故に俺は能力を使って結果を調べず、諏訪子の努力に付き合ったのである。

 

 さて、もう既に諏訪子と神奈子の戦いは始まっている。二人は空中で睨み合い、互いに攻防を繰り広げていた。

 

「はっ!」

「なんの!」

「そこだ!」

「甘い!」

 

 諏訪子の攻撃を神奈子が受け止め、神奈子の攻撃を諏訪子が(かわ)す。見たところ二人の実力は拮抗しているようだ。しかし……

 

「はぁっはぁっ……」

「……もうおしまいか?」

 

 諏訪子のほうが押されている。理由は簡単、相性だ。

 

 諏訪子の能力は『坤を創造する程度の能力』。坤とは地を表し、つまり諏訪子は大地を操ることができる。諏訪子は地面を固めて飛ばしたり、抽出した鉄分で丸めて作った鉄球を操り攻撃するのだ。

 

 対して神奈子の能力は『乾を創造する程度の能力』。乾とは天を表し、つまり神奈子は天候を操ることができる。雨は地面をぬかるませ鉄球を錆びさせる。その上で太陽光にさらされた地面は風化していくことになるのだ。

 諏訪子の攻撃は神奈子の影響で、みるみるうちに弱まっていった。

 

 「天」と「地」は、互いに相反するように見えて相性なんてないように思えるが、今この場においては「地」にとって「天」は最悪の相手だ。ある意味で『天と地ほども差がある』とは的を射た表現と言えよう。

 

 このままだとジリ貧だ。戦いが長引けば長引くほどこちらが不利。

 見ている俺でもそう思うのだ、戦っている諏訪子はそれ以上に分かっているだろう。

 

「こ……んのぉぉおお!!!」

 

 いま俺が立っている場所を含めた広大な範囲の大地が揺れる。ついに諏訪子が勝負に出た。

 諏訪子は大部分の地面の表層をひっぺがし、巨大な土壁を神奈子の眼前に迫らせる。いま神奈子の視界には、土の壁が広がっていることだろう。

 

「こんな大雑把な攻撃、通用すると思うか!」

 

 神奈子は土の壁に臆すことなく、むしろ逆に前に出た。逃げる場所など全く無い、それほどまでに広範囲の土の壁。下がっていたらより高密度の攻撃を受けていただろうから、神奈子の選択は最善と言える。

 

「こんな薄い膜、一点なら簡単に破れる!」

 

 神奈子は力いっぱいに土壁を殴り穴を開ける。質を求めれば量を失うのだ、逆に、量を求めれば質を失うのは仕方ない。諏訪子渾身の広範囲攻撃は神奈子により一点のみを破られ、神奈子はその穴から抜けて諏訪子の攻撃を回避した。

 しかしこの展開は諏訪子の予定通り。穴を抜けた神奈子は、そこで驚愕の表情を作る。

 

「……なっ!? ヤツがいない!」

 

 土壁が神奈子の視界を遮っている間に、諏訪子は神奈子の視界から姿を消した。神奈子の後ろには先ほど穴を開けた土壁がある。右、左、上、そして下。神奈子は諏訪子がどこに行ったのか見つけ出そうと周りを見渡した。

 

「くそっ! これは囮か! 目眩ましが目的だったのか! ヤツはどこだ!」

「後ろだよっ!」

「なっ……」

 

 土壁の中から神奈子の背後に、諏訪子が姿を現した。神奈子には振り向く時間はない。

 

「行けっミシャグジ様っ!!」

 

 諏訪子が手をかざすと突然巨大な白いヘビが現れた。ヘビは神奈子に向かって一直線に飛んでいく。

 決まった! 動きを封じてそのまま締め付けろ!

 俺と諏訪子が勝ちを確信すると同時に、神奈子はその口元をニヤリと歪ませた。

 

「はっ!」

 

 ヘビが神奈子に当たる瞬間、間に巨大な柱が現れる。勢いよく柱に衝突したヘビは、そのまま柱に巻き付いてしまった。

 

「なっ!?」

「……このヘビ、熨斗をつけてお返しするよ!」

 

 神奈子はその柱を掴むといなや、諏訪子に向かって投げつけた。突然の反撃に諏訪子は反応できない。

 

「うわぁっ!!」

 

 柱が諏訪子に直撃する。諏訪子は跳ね飛ばされそのまま地面に激突した。

 まともに直撃した攻撃はこれが初めてだが、小柄な諏訪子の姿では一撃さえも命取り。地面に突っ伏したまま諏訪子は動く気配が無い。

 

 ……決着だ。

 この戦争は神奈子の勝ちで幕を閉じた。

 

 

 

 

「諏訪子っ!」

 

 俺は倒れた諏訪子に駆け寄って抱き抱える。体についた砂を払って諏訪子の口元に耳を当てると、微かに呼吸音が聞こえてきた。

 ……どうやら気絶しているようだ。死んではいないようなので一安心する。

 

「……私の勝ちみたいだね」

「!」

  

 ホッと安心したのも束の間、神奈子が背後から話しかけてくる。俺は咄嗟に諏訪子を庇うようにして抱き締めた。

 

「……大丈夫、トドメを刺したりしないさ。むしろ生きてて欲しいとさえ思う」

「そ、そうか……よかった……」

「こんなに手強い相手は久しぶりだった…… 目を覚ましたら伝えておいて。楽しかったってさ」

「……あぁ」

「……じゃ、数日後また来るよ。そん時に今後について話し合おう」

 

 気絶してしまった諏訪子と、放心した状態で返事をする今の俺では話にならないと判断したのか、神奈子はくるりと背を向けた。負けることの覚悟もしていたが、いざボロボロの諏訪子の姿を見てしまうと、落ち着くのには時間がかかりそうだ。

「……なあ」

「? なんだ?」

 

 用もないのに、なぜか神奈子を呼び止めてしまう。おめでとうと称賛の言葉を言うつもりは無いし、よくもやったなと非難の言葉を浴びせるつもりも無い。約束通り、正々堂々の一騎討ちだった。

 

「いや……なんか前とキャラ違わないか?」

「……? 性格って意味なら、これが素だ」

 

 咄嗟に適当に出てきた俺の言葉にそう返すと、そのまま神奈子は去っていった。

 

 ……これから諏訪子はどうなってしまうのか。神は信仰があるから存在しているのだが、戦争に負けた諏訪子はこれから神奈子に信仰を奪われる。そうなると諏訪子はどうなるのだろう。存在が消えて無くなってしまうというのだろうか。

 いや、神奈子は諏訪子に生きていて欲しいと言っていた。数日後、話をしに来るとも言っていた。おそらく諏訪子は神奈子の下につかされるのだと思う。そうであるならまだ希望は持てるが、しかしそれには確証はない。

 

「あぁもう! 『諏訪子の今後』!」

 

 いくら考えても答えは出ない。仕方がないので、俺は能力を使い調べることにした。もし諏訪子がこのあと死んでしまったり不遇な扱いを受けてしまうのならば、能力を使って全力で阻止しようと考えた。

 長い間一緒にいたのだ、多少なりとも情は移る。それに友の幸せを願うのは当然のことだ。本当ならば能力をこういう風に使いたくはないのだがやむを得ない。そう決心していざ能力を使ってみる。

 

「!! へぇ……」

 

 どうやらそう心配することはなかったようだ。いや、それどころか……

 

 

「ん……うーん……」

「諏訪子! 気がついたか!」

「……真? 私……負けちゃった……」

「……うん、見てた」

「悔しい……悔しいよ。それに、私、これからどうなるのかな……?」

「……諏訪子」

 

 能力を使った俺には、諏訪子がこれからも無事であることを知っている。しかしなぜ無事なのか、いちいち説明している時間はない。今はただ、諏訪子が安心できるような言葉を投げかけた。

 

「……大丈夫だ」

「……え?」

「大丈夫だ、と言ったんだ。諏訪子が心配することは何も無いよ」

「そう……なの……? よく分かんないけど…… 真がそういうなら安心できるかも……」

「ああ。今日は疲れただろう。ゆっくりお休み」

「……うん」

 

 そう言うと諏訪子はまた眠ってしまった。神社まで運んでやるとしよう。

 起こさないように背中に背負いゆっくり飛んでいく。 今はただ、休んで戦いの疲れを癒せばいい。

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

「……うーん……ここは……神社の中?」

「お、おはよう。よく寝てたな。神奈子との戦いのあと、三日ずっと眠ってたぞ」

 

 神奈子との戦いから三日が経ち、ようやく諏訪子が目を覚ました。それほど力を消費していたのだろうが、死んではいないと分かっていたのであまり心配はしていない。諏訪子がいつ目覚めてもいいように、ずっと近くで手を握って待っていた。

 

「……ふぇ、三日も!? そ、そうだ、戦争に負けたんだ! 真、あれからどうなったの!?」

「どうなったもなにも、どうもなってないよ。近いうちに今後どうするか話しに来るってさ」

「そ、そっか……」

「あ、あとアイツから伝言。『楽しかった』ってさ」

「なにが!?」

「お、噂をすれば。ちょうど来なすったようだ」

「へ?」

 

 諏訪子が目覚めて数分もしないうちに、入り口から神奈子が現れた。あまりにタイミングのいい登場だ、もしかして近くで待っていたのだろうか。

 

「……ちょいと妖怪。いささか伝言が雑すぎやしないかい?」

「なんだよ言われたとおり伝えたじゃないか、一言一句正確に。それに俺には真という名前がある。自己紹介しただろ」

「おっとそうだったな真」

「それでいい」

「……ちょ、ちょっと待ってよ」

 

 諏訪子が動揺している。まだ起きてそう時間が経っていないのに、戦争した相手が部屋にいるのだから当然だ。しかし神奈子は気にした様子も無く、平然とした態度で諏訪子に話しかけた。

 

「おう、諏訪の! アンタ強かったねぇ! 久々に苦戦したよ! 私、アンタのこと気に入った!」

「へ? いやぁそれほどでも……って違ぁ~う! お前「八坂神奈子だ」神奈子! アンタここに何しに来たの!」

「……ああ、そうだった。いや、それが、その…… どこから話したらいいものか……」

「当ててやろうか」

「「へ?」」

 

 俺は二人の話に割って入る。神奈子が話そうとしていた内容は、既に能力で予習済みだ。

 

「諏訪の国の民に神が変わることを伝えにいったら拒否された。違うか?」

「……驚いたね、その通りだよ」

「え、そうなの? なんでなんで?」

「なんでってお前…… それほどまでに神の信仰が強いからだろう。それと諏訪子、お前神奈子との戦いの最後あたりに地震起こしたり、目眩ましに地面持ち上げたりしてただろ?」

「うんうん」

「あれで諏訪子の凄さが民に伝わったんだろうな。別の神に乗り換えたらヤバいんじゃないかって、恐怖心が残るくらい」

「そうなんだ……負けちゃったけど、あの戦いに頑張った意味はあったんだね!」

「その通りだ」

 

 三日前能力を使った俺は、この結果を知っていた。俺がなにかをする必要なんて全くない。ひとえに、諏訪子の努力の結果である。

 

「……で、だ。このままでは私が信仰を得ることができない。どうしたもんかね」

「……それについてだが、俺に考えがある」

「……ほう。聞かせてもらおうか」

 

 これも既に予習済み、二人の納得のいく方法を言うだけだ。もっとも俺が言わなくてもそういう結論が出るのだろうが、早く決まるに越したことはない。

「新しい神を作るんだ。といっても形だけのだが。神奈子が作った神を諏訪子が広める。そうすれば民は今までと変わらず諏訪子を信仰しているように思う。しかし実際は神奈子を信仰している形になるわけだ。これなら諏訪子を通して神奈子も信仰が得られるようになる。 ……どうだ?」

「なるほど……信仰を全部は得られないが、その方法なら無駄な労力をさほど使うことなく信仰を得ることができる、というわけか…… 乗った!」

「私も。もともと負けたこっちは信仰を全部持っていかれても文句は言えないんだ。私にも信仰が残るなら喜んで賛成するよ」

 

 さすがは二人とも神である。実は信仰の仕組みなど俺は全く分かっていないのだが、バッチリ二人には伝わったみたいだ。

 

「よし、そうと決まればまずは…… おーい! 緑! 緑ー!」

「? 誰だい緑って」

「うちの神社の風祝(かぜはふり)……祝子さ。赤ん坊の頃からうちにいる。私と真の娘みたいなもんさ」

「……くっははは! 妖怪と神を親に持つ人間か! 面白いね!」

 

 なにやら神奈子が楽しそうに笑っている。俺の気分としては、この神社に一人新しい神が増えただけだ。そうなるとまずは緑も含めて紹介し合わないとな。

 俺の声を聞きつけた緑が、急いで俺たちのところにやってきた。

 

「お呼びでしょうか真様! あ、諏訪子様がお目覚めになったのですね!」

「うん。心配かけたね」

「おう来たか緑。うちの神社に新しい神が来たぞ。それに伴いいろいろやることがある。神社の名前も変えることになるだろう。ともあれ、まずは自己紹介だ」

「はい真様!」

 

 緑が神奈子に向き直る。持ち前の明るさで、初対面の相手にもハキハキと話す、それが緑の良いところだ。

 

「初めまして、貴女がこの神社に来た新しい神様ですか? 私は緑といいます! この神社の風祝です!」

「うむ。我は八坂神奈子という。元気な娘だな、見ていて気持ちがいい。 ……それに美しい髪の色をしている」

「あ、ありがとうございます!」

「……ねぇ真。あれって……」

「……あぁ、神奈子のやつ、初対面の相手にはああなるっぽい。俺のときも最初そうだった」

「私もまぁ少しはそうなるけど、あれほどではないよ」

「うるさいそこ!」

 

 一瞬で化けの皮が剥がれた神奈子に対し、俺と諏訪子はハハハと笑う。どうせすぐ元に戻るのだから、バレるならさっさとバラせばいいのだ。俺と諏訪子の笑いにつられ、緑と神奈子も笑い出す。

 神奈子を加えた洩矢神社は、こうしてあらたな道をたどることになった。俺は……諏訪の国が安定するまで、もう少しこの国に残ろうかな。

 

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 

 

「……で、どうしてこんなことをしているんだっけ?」

「そりゃあ、まずすることと言ったら仲を深めることだろう? 酒でも飲めばすぐに打ち解けるさね」

「……まぁいいか」

 

 あれから少し経っていま俺たちは、神社に残って酒盛りをしている。俺、諏訪子、神奈子、緑の四人だ。他にすることが沢山有るような気もするが、今日ぐらいはいいだろう。

 

「とはいえ緑は子どもだからまだお酒は早いかな……って神奈子! 緑に酒を注ぐんじゃない!」

「いいじゃないか、もう十二なんだろ? だったらもう十分大人さ」

「そうです! 私もいつまでも子どもではないのです!」

「ああ緑っ!」

 

 俺の制止をまったく聞かず、緑は注がれた酒を一気に飲み干す。おそらく初めての酒であるのに、なんて大胆な飲みっぷりだろう。

 

「……きゅう~」

「ああもう言わんこっちゃない!」

「あはははは! 緑は酒に弱いみたいだね」

「諏訪子、笑ってないで止めてくれよ」

「んう~、あれ? 諏訪子様が三人もいます……」

「あはははは。ほら緑、こっちにおいで~」

「ん~諏訪子様~」

 

 顔を真っ赤にした緑が、諏訪子の元に抱きつきに行く。こうしてみると仲の良い姉妹がじゃれあっているようにしか見えない。どっちが姉なのかは諏訪子の名誉のために黙っておこう。

 ……おいおい、あんまりふらふら動くなよ? そこらには酒の入った器が沢山……

 

「……って諏訪子、お前もうそんなに飲んだのか!? いくらなんでも早すぎだろ!」

「真が遅いんだよー。ほら、神奈子も同じくらい飲んでるじゃないか」

「なにっ」

「ははは。確かに真は飲むのが遅いねぇ」

 

 諏訪子と神奈子の周りには、空になった器が転がっていた。俺が飲むのが遅いのではない、お前らが飲むのが早すぎるのだ。まだ始まったばかりだと言うのに……

 しかしそう言ったところで二人相手だと分が悪い。ここは軽く流すのが得策だ。

 

「……まぁそう思っても別にいい。ただうまい酒の味わい方は、俺のようにゆっくりとだな……」

「私も~真様は~飲むのが遅いと思います~」

「緑っ!?」

「「あははははははは!!」」

「そこ! 笑ってんな!」

 

 こいつらもう酔いが回ってきてやがる。くそう俺はほどほどに、自分を制御できる程度までしか飲まないからな。

 そう硬く決意した俺はガブガブと酒を飲んでいる二人と対照的に、チビチビと小さく酒を飲むのであった。

 

 

 

 

「……でさぁ、そのとき真は私に言ったんだよ! 『あまり諏訪子を嘗めるなよ』ってね!」

「やめろー」

「ひゃー! かっこいいねぇ!」

「それで尻尾大量に出してものすごい目つきで睨んできてさぁ! まったく愛されてるねぇ諏訪子!」

「ええー照れちゃうねぇ」

「しかしそのときの姿が今よりものすごく縮んでてねぇ……」

「やめてくれー」

「ええっそうなの!? 真よく私を子ども扱いするくせに。この前だってねぇ……」

 

 飲みすぎてテンションがあがっている神奈子と諏訪子。緑はもう結構前に眠ってしまった。

 

「飲みすぎだ二人とも。なんでそんなに飲めるんだ。諏訪子、お前とか蛙の帽子かぶってんのになんで下戸じゃないんだよ。むしろウワバミじゃないか」

「あはははは! 真は面白いこというねぇ!」

「当たり前だろう!? だれが育てたと思ってるんだい!」

「少なくとも諏訪子ではないよな?」

「なにをー。真の癖に生意気だぞ!」

「なんだそのジャイアニズムにあふれた言動は。どちらかというと俺が諏訪子を育てたほうだろ」

「なんだとー!」

「ほーら高い高ーい」

「うわぁ! あーうー、地面が遠いよー」

「ははははははは! ホント面白いヤツだよ! 真も諏訪子も!」

「神奈子も十分面白いよ、その背負ってる縄とか」

「な、なにぃ! かっこいいだろうが! それにこれは私の一部ともいえる存在で……」

「……の割りには諏訪子との戦いのときには外してたじゃないか」

「そ、それは……さすがに邪魔だったと言うか……」

「……まぁ俺も尻尾いつも消してるしな」

「! だろう!?」

「ちょ、ちょっとー早くおろしてー」

 

 ……ああもうめちゃくちゃだ。もういいここまで来たら、最後まで俺も付き合おう。その代わり明日からは、この神社を新しくするための仕事だからな。

 

 そう、明日からこの神社は生まれ変わるんだ。この二人の神の手によって。

 

「真! つぎ私! 私が諏訪子を抱っこする!」

「ええ!? 真はまだしも私は神奈子にそこまで気を許したつもりはないよ!」

「いいじゃないか少しくらい!」

 

 ……この二人の神で、この国は大丈夫なのだろうか。

 

 


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