灰色の少年   作:橋場由由

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少年は、神に『嫌われ/愛され』ているかのように『不幸/幸運』だった。
そんなある日、彼は美しくも残酷な悪趣味な彼女と出会った。

そんな感じで始まります。
あと、今回の名言。

『勝ったッ!第3部完!』
by.ズィーズィー


第一話 序章にして終章

―――回る回る。セカイは回る。

 

―――赤い赤い、真っ赤な世界でソレは回る。

 

―――踊るように、狂ったように、喜ぶように回る。

 

―――ああ、■■はなんて素晴らしんだ。

 

 

 

 

僕がこの世界に足を踏み入れたのも、こんな嫌に赤い夕焼の日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、ネコー。居るなら出てこーい」

 

 工場の中を僕は猫を探し歩く。

 買い物の帰り、家で飼っている黒猫を見かけて追って来たのだが、途中で見失い猫が入って行った工場の中を歩いている。

 工場の中には人気はなく、錆び付いた工作機械と風化したドラム缶が置かれていた。

 天井の鉄骨には点々と蜘蛛の巣が張られ、窓からの夕差しに照らされた宙には埃が舞っており、良い感じの薄気味悪さを出している。

 さて、ここまで無駄に遠まわしに言ったが、一言で言うなら此処は廃工場である。

 

正直、早くここから立ち去りたい。

 

足元を見れば赤黒い染みが重なり合い、奥へ奥へと伸びている。その先には、またこれでもかと言うよな不気味な鉄で出来た扉があった。

そして、一番の問題は赤黒い染みの線の上に、今しがた塗られた新鮮な赤が半開きになった扉へと続いてることだ。

 

「よし、僕は何も見てないし、こんな場所に猫が居るわけないから帰ろうk」

 

ーーーリン

 

引き返そうとした僕の耳に、聴きなれた鈴の音が聴こえた。

 

「・・・・・・」

「・・・ニャア」

 

錆び付いたロボットのように音のした方向に首を回す。

そこには白く大きな蝶のようなリボンを首に着けた黒猫が居た。

猫はその場で毛繕いをし、例の扉の隙間へと入っていった。その顔は笑っているように見えた。

 

「おい、なんでそこに入る?普通入らないだろ、そんな怪しい扉の中に」

 

 さて、猫が入って行ったということは自分も飼い主として捕まえる為に入らなければならない訳だ。

 僕はもう一度扉を見る。

 扉は先ほどよりも一段と不気味さが増していた。自分の精神的なものが作用しているのだろう、決して悪臭が強くなっているわけではない。

ーーーそう、信じたい。

 

「・・・行きますか」

 

 僕は扉のドアノブに手をつけた。

 錆びた鉄の扉は酷く重いと感じた。

 

 

 

 

「で、やっぱりこうなってるわけですか」

 

 扉を開けた先には五六人からなる手足や胴体などの肉塊が散らばり、赤い血の池に寿命の切れかかった電球の光が反射し、この空間の異様さを際立たせていた。

 体に圧し掛かるような腐った肉の悪臭が包み込む。

 

 ああ、もう本当帰りたい。

 

 足下に落ちていた肉塊を避けながら僕は奥へと進む。

 そして、其処には…。

 

 

 

「なんだ、珍しいこともあるじゃないか。餌の方から来るとは」

 

 其処には巨大な獣がいた。

 首から上と足が狼で、首から腰までは人間の体であるが黒い体毛が生えており、両手の指先には鋭い爪が生えていた。

 

 怪物。十人中十人がそう答えるだろう異形の生物。

 ドスドスという重い音をたてながら自分へと近づいてきた。

 

「なんだ、思いのほか若いではないか?」

 

 怪物は大きな口を歪めながら、僕をまじまじと品定めするように見てそう言った。

 僕は怪物の言葉を気にせず、その腕に掴まれたモノを見ていた。

 掴まれていたのはグレーのスーツを着た女の頭だった。

 頭から下は繋がっており、胸に大きな穴が空いていることから死んでいる事は確定的だった。

 予想はしていたが、やはりこの怪物がこの惨状の犯人だった。

 だとすると、ここは怪物の住処なのだろう。

 

「どうした、恐くて声も出ないのか?この高貴なベルーガ様の前では失礼極まりないが許してやろうじゃないか。ガッハッハ」

 

 反応が返ってこない事に、僕が怖くて声が出ないと判断して何故かテンションを上げている自称好奇なベルーガ様。

 僕は周りを見回す。黒猫は何所にも見当たらない。

 

「聞いているのか人間!貴様はこの高貴なベルーガの血肉となるのだ。光栄に思えよ人間」

 

 反応が返ってこない事に苛立っているのか怪物は涎を撒き散らしながら叫ぶ。その声は工場内を軽く揺るがし響き渡った。

 

(よし、逃げよう。)

 

 正直、今まで冷静を保っていたがもう無理だ。つか何これ?SF映画ですか?

 何でこんな怪物と対峙して餌なんぞにならなくてはならないのか?

 そもそも、何故こんな確実にヤバイ場所にあの駄猫は入るのか?

 考えれば考えるほど愚痴が思い浮かび苛立ちが湧いてくるが、ぶつけたい相手は何処かに隠れて僕を見ているのだろう。実に腹立たしい事だ。

 

 だから、百八十度右回転してからのダッシュに躊躇しなかった自分は間違いじゃない。相手の話の内容を聞いてなかった自分は悪くないのだ。

 

 人の四肢や内臓を踏み潰しながら、さっき入ってきた扉まで全力で走る。

 怪物は何か叫んでいたが気にしている余裕がなく、何度も転びそうになりながら走り、あと二三歩という距離まできた。

 

「よしっ!……って、え?」

 

 扉に手が触れて開こうとした自分の耳に、ブッシュっという水風船の割れるような音がし、そのすぐ後にグサッっという音がした。

 体は急激に重くなり、まるで何かが体に加わったようだ。

 

「…あれ?」

 

 頭を下に向ければ、何かが胸から突き出し、扉に刺さっていた。

 それは赤く滴る液体に濡れた鋭角の物体。その反対側には長い棒が体から生えていた。

 後ろの怪物が気になり振り返って見れば、背中から長い棒が生えていた。怪物は一歩も動いておらず、何かを投げたフォームをとっていた。

 確かあれは槍投げのフォームだった筈だと、まだ冷静な思考が答えを出す。

 

「全く、我の話を聞かずに逃げるとは、これだから下級な人間は困るのだ」

 

 怪物は左手に持った大きな槍を軽く振りながら、僕へとゆっくり歩いて来る。

 どうやら、自分は怪物が投げた槍に刺されたらしい。

 その事を認識すると、激痛が走り悲鳴を上げそうになったが、声が出せず血と唾液が代わりとばかり出た。

 

「では、いただこうか…」

 

 怪物は僕の胴体を握り、力任せに扉に刺さった槍から抜き取った。一緒に腸や胃などの臓器も抜け落ちるが、そんな事を気にせず怪物は僕を大きな口に運び、凶悪な牙で咀嚼した。

 あぁ〜、ヤバい。スゲェ食われてる。

 あまりの激痛に痛覚は麻痺していたことが幸いしたのか、生きながらに咀嚼される痛みは感じなかったが、唾液に溶かせていく不快感に嘔吐しそうなった。

 

「…ああ、クッソ…、恨むぞ、駄猫」

 

 今まで保っていた微かな意識を落としそうになりながら、最後の力で吐いた言葉は何とも陳腐な言葉だった

 

 そして、僕は意識を落とした。

 

 

●●●●

 

 グシャグシャと人間大の獣が汚らしい音を立てながら、床に散乱した彼の胴体の部位を拾い、一心に貪る。

 その姿はおぞましく、獣の凶暴さを物語っていた。

 

―――リィン

 

「ニャーン」

 

 そんな獣の背後に、一匹の白黒の縞模様の猫が何時の間にか佇んでいた。猫の首には、黒いリボンが蝶のように結ばれており、その中心には自身の瞳と同じ金色の鈴をつけていた。

 猫は人間の胴体に喰らい付く獣を目の前にしながら、恐怖や警戒もせず、毛繕いする余裕すら見せながら佇んでいた。

 猫は、人間の肉を食らう獣の姿を退屈そうに眺めていた。

 

―――リィン

 

 猫は獣を見るのに飽きたのか、床に散らばった彼の頭へと歩く。

 猫が歩く度、鈴の音がリィンリィンと鳴るが、獣はまるで聴こえていないのかのように気付かない。

 そして、猫は彼の頭の前で立ち止った。

 彼の頭は、後頭部の一部が欠け、前頭葉近くは陥没していた。首の断面は捩じ切られたからなのか、断面に近付くにつれて細くなっていた。

 猫は半開きになった彼の片目を舐め、愛しそうに頬を擦りつけて鳴く。まるで、飼い主の哀れな姿を悲しみ嘆くように。

 

 そして、猫は唐突にその口を三日月の様に歪ませ笑った。

 

 その笑みはとても不快で、見ている者を不安にさせるような笑みだ。おおよそ、猫には出来る筈の無い明らかな表情の変化。

 それと同じくして、彼の頭や手足は溶け、黒く混沌とした液体に変化し、獣へとゆっくりと集まっていく。

 

「な、なんだっ!これは…なっ!?」

 

 獣はそれに気付き、黒い液体のあまりの不気味さに危険を感じ取り、距離を取ろうとし、何かに片足を掴まれた。

 獣が下を見ると、地面から生えた黒くて丸い大きな何かが片足に絡まっていた。よく見ると、それには五本の太く丸々とした指らしきものが生えており、それが手だと分かった。

 

「放せ、放せっ!クソ、何故だ何故外れないっ!?」

 

 獣は黒い液体から早く逃げようと、半狂乱になりながら黒い手を必死に己が爪牙で斬りつけるが、手は足を放さない。更に手は何度も斬られているというのに、傷一つ付いていなかった。

 そして、液体は黒い手の根元に集まり、黒い池のように獣を囲むように広がった。

 

「糞っ、来るな来るな来るな来るなぁあ!!俺は主殺しのベルーガだぞ!?こんな…こんな所で死ぬかぁああああ!!!」

 

 獣は叫び、手に向けて己の自慢の一槍を手に召喚し突き刺した。

そして、手は一度大きく膨らみ、水風船のように黒い液体を散らしながら破裂し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破裂した手の中から、大小様々な大きさや形の手の群れが獣の体へと殺到した。

 

 

「な、何ぃいいいい!?」

 

 

 手の群れは獣の手足をムカデのような動きで這い上がり、獣の体を埋め尽くし黒い池に引き吊り入れようとする。

 

「止めろっ!!放せっ放せぇええええっ!!」

 

 獣は激しくもがき苦しむが、爪を食い込ませんと体のいたるところを掴む手は一つとして放れない。

 そして、獣の体は黒い池に飲み込まれていき、五分後には黒い池だけがそこに残った。

 

 こうして、呆気なくはぐれ悪魔ベルーガはこの世から去った。

 

 

 

 

 




主人公「おい、作者」
橋場「はい」
主人公「僕、死んだんだけど、一話目で」
橋場「死んじゃいましたね。呆気なく」
主人公「・・・どうすんのコレ?」
橋場「・・・・・・どうしようか?」
主人公「おい!?」
橋場「次回、我が家に帰ってきた彼を待ち受けていたのは謎の銀髪美少女。可憐にして儚い雰囲気の少女の瞳に映る悲劇とは!?
次回、Eの少女/隠された悲劇!!」

主人公「無視すんな!しかも、嘘予告!?」
謎の美少女「次回は僕も出るから、数少ない読者はこう御期待だね」
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