良いも悪いも関係無く、ただ、悪戯でもするかのように平穏を掻き乱し、自分を道化のように躍らせ続けるのだ。
ある者は其れを「ただ、運がなかった」と言って哀れんだ。
ある者は其れを「主の与えられた試練だ」と言って祈りを捧げた。
そして、彼女は笑みを浮かべ「其れこそ君の■■だ」と愉快げに僕に言った。
そんな感じで始まります。
今回の一言。
『それは偶然ではなく必然では?』
byエジプトニーソ
【前回のあらすじ】
エゾラ「新メインヒロイン登場!その名も霧島☆エゾラちゃん!どんどんサカツキ君のフラグを立てちゃうぞー!」
サカツキ「ありえん(笑)」
時刻は午後七時。
周りはもう暗く、じきに完全に夜になるだろう。
僕はあれから、どうにか家から走って駅に向かい電車に乗り、駅からここまで徒歩で来た。
「クソ、エゾラのせいで予定より遅くなった」
エゾラとの会話のせいで予定していた時間を数十分も超えた。
電車の中で、着いた時にはもう校門が閉められているのでは?と内心焦っていたが、目の前で開かれている校門があるという事はどうやら間に合ったらしい。
僕は早歩きで校門を通過し、大きな校舎の入り口へと向かった。
サカツキが通過した校門に取り付けられたプレートには『私立駒王学園』と書かれていた。
第三話 学校へいこう!
学校に入った僕は、まず最初に職員室を探し、職員室に向かっていた先生を捕まえてエゾラのクラスの鍵を貸して欲しいと話したところ、制服を着ていたこともあり疑われずに職員室まで鍵を貸してもらい、エゾラの教室を開けて目当ての鞄を取った。そして、鍵を閉めて職員室に戻る途中、ふと窓に目が行った。
「木造の校舎……」
窓の奥に見えるのは今居る校舎と違う木造の校舎。
暗いせいか建物はここからだと不気味に見える。
『木造の校舎とそこの関係者には気を付けた方が良い。あそこは一種の“たまり場”というものでね。君のような人間が行くと戻れなくなるんだ』
エゾラが行く間際に言った言葉が脳裏を過ぎる。多分、エゾラの言っていた建物はあそこで間違えないだろう。
さてさて、物語の主人公なら我関せず入っていくのだろうが。残念、僕は脇役以下のエキストラの臆病者だ。
そう、ぴょんぴょんと危険に突っ込むほど馬鹿じゃないつもりだ。
僕は木造の校舎から目を離し、さっさと帰るために鍵を返しに職員室へと向かおうとして、
「あの校舎は今は使われていない旧校舎ですわ」
―――背後からした声に足を止められた。
それは全くの偶然であった。
彼女、姫島朱乃が校舎に訪れていたのはただの気紛れと気分転換であった。
リアス・グレモリーの女王である彼女は、今日あった奇妙な出来事を考えていた。
それは大公からのはぐれ悪魔の討伐の依頼で訪れた廃工場での事だった。
つい最近、主とその眷属を殺したはぐれ悪魔ベルーガが町外れに建っている廃工場に逃げ込んだらしく、この駒王町で活動しているリアス・グレモリーの元に討伐の依頼が来たのだ。
廃工場は所々の壁に穴が空いており、老朽化していた。
外から臭う血と腐敗臭は中の光景が壮絶なものだと物語る。
いつはぐれ悪魔が襲って来ても対応出来るように警戒をしながら、この工場の一番奥の扉まで辿り着いた。
扉越しにでも臭う強烈な悪臭に戦車の小猫ちゃんは顔を歪めていた。
「部長、開きます」
「ええ、お願い」
リアスに確認を取り、敵の奇襲を警戒して騎士の裕斗が扉を開いた。
そして、廃工場の錆びた扉を開いた先に広がっていた光景は、はぐれ悪魔に襲われた被害者の哀れな死体の数々と、同じく獣に食い荒らされたかのようにバラバラになったはぐれ悪魔の骸であった。
骨がはみ出た手首や膝は引き千切られて四方に広がり。食い残された肉塊に蛆と蠅が集り、地面を渇いた血が塗りつぶす。
「こ、これは!?」
「酷い、ですね…」
「……ッ!」
同じ眷属の二人はその光景に驚愕し、主であるリアスは絶句していた。
はぐれ悪魔ベルーガは騎士の駒二つで転生した転生悪魔だ。その実力は自身の主とその眷属達を同時に相手して勝つほどである。そんな強力なはぐれ悪魔が今や物言わぬ食い荒らされた肉塊に成り果てていた。
「…これをやったのは堕天使やエクソシストではなさそうね」
「えぇ、彼等でもこんな殺り方はありえないわ」
近頃、町の外れに建つ教会で堕天使やはぐれエクソシストを目撃されたという知らせはあった。更にこの前、学園の生徒が神器を持っていたことで堕天使に殺されたのだ。
その生徒は死ぬ間際、使い魔達が配っていたチラシでリアスを呼び、リアスが彼を悪魔の駒で眷属にしたのだ。その時、兵士の駒を全部使った事に驚き、彼にかなりの期待をしている。
しかし、彼らならば悪魔の弱点である光や祓魔弾で殺す筈だ。間違ってもこんな殺し方はしない。
そもそもこれは殺害ではなく捕食だ。餓えた獣が獲物を食らったような跡だ。
自分と同じくその事に気付いたリアスは頭に手を当てた。
「どうやら、堕天使やはぐれエクソシスト以外にもこの町に来ているようね」
「はい、それもとても危険な“獣”ですわね……」
その後、バラバラになった死体や血液を消してその場を後にしたのだ。
「一体、誰があんな惨い事をしたの・・・?」
目蓋を閉じれば今でも思い出してしまう。どうにかそれを忘れたくてここに来たのだ。
しかし、忘れる事が出来ず、こうして一人夜の廊下を歩いていた。
「あれは…?」
ふと、一人しか居ない筈の校舎の廊下の先に生徒の後ろ姿が見えた。
他の眷属の誰かかと思ったが、ここに来る前に全員部室に居るのを見ているからありえない。しかし、生徒は既に帰宅して居ないはずだ。
彼女は気付かれぬよう注意しながら人影へと近付く。
そして、月明かりを背に立っていたのは灰色の髪の青年だった。
背丈は高くなく、かと言って低くもない。後ろを向いているので自分の向きでは顔は見えなかった。
今まで彼のような生徒を学校で見かけた事はなかった。
そもそも、この学園には白い髪の少女は居ても灰色の髪の人間なんて居ない筈だ。
青年は窓から旧校舎を物珍しそうに眺めていた。
「彼は?」
彼女自身、何故彼が気になったのか分らなかった。
そう、敢えて理由を挙げるならば『目が離せなかった』のだ。
それが何を意味するのかを知る者は此処には居らず、彼女は彼に声を掛けた。
若い女性の声に反射的に振り返ろうとする体を無理矢理止めて、そのまま声のした方向と反対に向く。
駒王学園の制服を着てはいるが、自分がこの学園の生徒ではないとバレないとは限らない。仮にバレたとしても顔だけでも隠したかったからだ。
「…ああ、あの木造の校舎はそう言うのですか」
如何にか言葉を返し、僕は振り返らずに一歩ずつゆっくりと足を進めて女性との距離を離す。
「はい、今は使われていないんです」
まあ、とある部活が使っているのですが。と言って、彼女は同じように足を進めて自分との距離を元に戻す。僕はそれを見て顔を歪めそうになる。
「そう言えば、貴方はこんな時間に何で学校に?」
「あらあら、そういう貴方も何故こんな時間にここに来たのですか?」
「いや、これがまた間抜けな事に鞄を机に置き忘れて帰ってきたのですよ。しかも気が付いたのは家に帰って財布を持ってコンビニ行こうとした時なんですよ」
「あらあら、少し抜けているのですね」
「ええ、本当に困ったものですよ。アハハハ」
「ウフフフ」
会話は滞りなく続く。しかし、自分と女性の距離は変わらない。寧ろ女性と自分との距離が縮まってすらいる。本来降りる筈だった階段を通り過ぎ僕は如何やって離すかを内心で必死に考える。
「つかぬ事を訊きますが…」
そして、それが隙になったのか、彼女は歩みの速度を上げて自分の前に回り込んだ。
窓から射す月明かりに照らされ彼女の姿がはっきりと見える。この学校の制服を着た女子生徒。艶のある長い黒髪をポニーテールにし、高校生とは思えない母性的な大きな乳房、大人びた雰囲気に笑みを浮かべた顔。大和撫子という言葉を表すような美女だ。
―――貴方は何処の誰ですか?
彼女は変わらず笑みを浮かべながら自分を見る。その眼に映るのは疑いの色か、はたまた好奇の色か。
「そう言えば、自己紹介してませんでしたね。僕は駒王学園一年の
「逆月君ですか。私は三年の姫島朱乃ですわ」
僕はそれを笑みで返しながら姫島さんの横を通り過ぎる。が、それについて来るように、彼女は当たり前のように僕の右隣について来る。
「あらあら、あまり見ない顔なので転校生なのかと思いましたわ」
「いえいえ、ただのしがない存在感の薄い高校生ですよ」
どうにか姫島さんを振りぬこうと早足で歩くが、彼女は苦も無く僕の横を歩く。思い込みの可能性もあるが、目の前の彼女は自分が侵入者であることに気が付いている。……かもしれない。いや、まだばれてない筈だ。きっと多分。
「それにしては、どこか挙動不審ですわね?」
「…気のせいですよ」
あ、これ絶対バレてる。
焦りを隠すように努めて、どうにか目の前の彼女から逃げようと逃げ道を探すが、いつのまにか行き止まりに着いており、引き返すにしても彼女が反対に立っていた。
「あらあら、こんな場所まで何の用事があったのですか?」
彼女は先程よりも美しい見惚れるような笑みを浮かべながら僕に言った。
ああ、成程。会話に集中させて行き止まりまで誘導されたのか。
何所が優しそうな大和撫子だ。あれはドSの女王様の笑みじゃねぇか!
僕は心の中で愚痴り、どうにか逃げられないかと模索する。
しかし、目の前の彼女は待ってはくれず、『綺麗/嗜虐的』な笑みを湛えながら一歩一歩自分ににじり寄る。
「さぁ、其処は行き止まりですしこちらに来てくれますよね?貴方には少々、訊きたい事もありますのよ?」
「はは、それはそれは…、美女と二人でとは期待しちゃいそうですよ、僕?(ヤバイヤバイヤバイ!!?)」
ーーーPrrrr、Prrrr
突然、あと一歩で手が届くというところで彼女の携帯が鳴った。
「あら、こんな時に誰で「今だ!ラディカルグッドスピィィィイドォ!!」しょう。って、え?」
携帯に意識が移った隙に彼女の横を全力で走り抜けて、僕は廊下を曲がった。
「逃がしませんわって、え?」
姫島朱乃は逃げた青年を追い、青年が曲がった先には誰も居なかった。
「逃げ足が速いですね・・・」
侵入者だろう青年を逃がした事は後で部長に伝える事にして、携帯に視線を移す。
そこには、着信番号不明の表示。青年が逃げるまで鳴っていたが、今は切られている。
あまりにもタイミングの合った着信。
その事に悩みながら彼女はその場を後にしたのだ。
そして、彼女の去った事を確認し、廊下の窓の縁からよじ登る。
「行ったか・・・」
僕は曲がった直後、開いている事を予め覚えていた窓に身を乗り出し、縁に捕まる形で隠れたのだ。
咄嗟とはいえこの隠れ方はもうやりたくない。
彼女が少しでも冷静ならば開いている窓から逃げたと気付かれただろう。
「もう、嫌だ。早く帰って寝よう」
僕は姫島さんがいないかとビクビクしながら早々と学園を出たのであった。
さて、これで今回の話は無事終わるのだが。
如何せん、世の中とはどうも上手くいかない。
何故なら…。
「まさか、結界の中にただの人間が入って来るとは」
「グッ、ガァ⁉︎」
腹から大量の血を出しながら地面に悶える茶髪の青年と、見るからに怪しいコートを着た男が公園にいた。
男の背には、これまたカラスの黒い羽が生えていた。
「ああ、うん。今日は厄日だ」
どうやら、僕の1日はまだ続くらしい。
橋場「次回予告!」
絵空「遂に原作主人公と出会った我等がオリ主、サカツキ君。彼はまたもやピンチ!」
橋場「ダンディで強力な堕天使ドナーシーク(操作説明の為の敵)に殺されかける!?」
絵空「でも、大丈夫!平気へっちゃら!だって彼はホームズさんのバリツを習っているから!」
橋場「なら、大丈夫だ!次回、『バリツは架空の日本武術!』です」
絵空「尚、サカツキ君は柔道や空手なんてできないよ」