イフリートとの戦いが終わり、アースラに帰還した皆だが、また世界に混乱を招く闇の力が動きだそうとしている。
だが、その中で一番正義感が強いアルカイザーとなった少年は一つだけ悩みがあった。
自分はアルカイザーであっても良いのかと。桜の力を感じた時、自分に足りないものが何なのか。
そして、アルカイザーとは一体何のためのヒーローなのか。
人の為なのか、自分の為なのか。
それは誰にも分からない。
その答は己が見つけだすしかない。
アースラ 寝室
「・・・・・・・・・・・」
[聖様]
グランシャリオが声を掛けても反応を返さない聖。
(あの力は普通じゃない。なのに、あの覚悟は並大抵では無いな。やっぱりあいつは人の考えの先を行くのか。真似できたもんじゃない。)
昨日の出来事を思い出していたのだが、桜のあの力を見てしまった以上、自分はまた人の傍にいられないのでは無いかと、そう思ってしまったのだ。
「はあ、ダメだ。こんなんじゃ。アルカールは自分を失うなと言ったが、ヒーローって何だろうな、シャリオ。」
[貴方は、何故ヒーローの力を受けたのですか?]
デバイスに言われた言葉、何故、ヒーローの力を、アルカイザーの力を望んだのか。
(そういえば、どうしてなのかが分からないな。かっこよかったから?憧れたから?いや・・・・・・・)
深く考え込み、
「街に向かおう。」
[聖様、今の貴方とは行きたくありません。]
「シャリオ?」
グランシャリオは今の聖を嫌った。情けなさでもなく、嫌気が刺したのでもない。ただ、彼が甘えている姿が堪えられなかったのだ。
[貴方は甘えを持っている。私の望む主は正義感があり、どんなときでも諦めない。真っすぐな主だからこそ力を尽くした。でも今は違う、何かにすがって甘えて、仲間の背に立とうとしているのが浮かびます。]
聖は黙り込んでしまう。
そして、部屋から出る前に。
「そんなの・・・・・・分かってる・・・・・」
グランシャリオを机に置いて部屋を出た。
[聖様、早く気づいてください。貴方は何のために戦っているのか、何のために守っているのかを。]
そして、聖は訓練室に入る。
「剣、か」
置いてあった練習用に使う為の剣を手に取り、構えた。
「甘えている、か。分かっているさ、そんなことは誰よりも。だけど俺だって怖いんだ。失う事が、逃げたい時だってあるんだ。現実から。」
心を落ち着かせても、憂いが絶てない心の迷いは更に深くなってしまう。
剣を振るっても、迷いある剣先は何も斬れない。まともに前を向くことも出来なかった。
「俺は・・・・・何なんだ・・・・・」
「君は君だと思うよ?」
いきなり入ってきた少女。
「君は確か・・・・」
名前を尋ねる。
「私はアリシア・テスタロッサ。フェイトのお姉ちゃんだよ。それはまず置いといて、一体何があったの?」
フェイトの姉がやってきて、聖は聞かれた事を全て話す。聖は嘘付くことを嫌っている為、ついさっき起きたグランシャリオとの会話をありのまま伝えた。
「そっか、甘えているって言われたんだね。でも、少しくらいは良いと思うけどな?」
アリシアは落ち着いた言葉で聖に伝える。
「けどね?君は自分が何なのかって言ってたけど、それは自分自身にしか分からないよ。どうしてヒーローの力を持っているか、なんてさ。じゃあどうしてその力を願ったの?ってならないかな」
「自分自身にしか分からない理由」
しかし、アリシアは聖の手を握った。
聖はその手を見て、アリシアを見た。
「抱えすぎだよ聖君。誰だって一人じゃ乗り越えられないんだよ。だからこそ、仲間や友達がいるんだから。」
仲間、友達。
その言葉に思い出した記憶の中から、大切な言葉が浮かび上がる。それは彼が一番忘れてはいけない最も重要な事だった。
「己の心を貫け、迷いがあるのなら己が痛みを伝えよ、最初から誰かを支えられる存在になれるわけではない、まずは一から考えを改めろ、そして正直になれ、ありのままの自分を・・・・・・・」
受け入れろ 弱い自分を。
「気づけた?」
アリシアはにこりと笑い、聖を見た。
「ありがとう、アリシア。どうやら大事な事を忘れてたみたいだ。」
聖は考えを改め、新しい考えを見出だす。
自分が乗り越える為の壁、その壁は高く、何処までも高く、本人を阻んで来る。
だが、
[緊急警報発令!謎の武装集団が海鳴市より出現!数は100から200!その中に人間なのか分からない者が確認され!武装集団を率いて命令している模様!管理局魔導士は速やかに捕らえよ!]
緊急警報が鳴りはじめ、警戒レベルはAとなった。
「動き始めたか。等々来やがった。」
「聖君。」
アリシアは心配している。彼の事を。
「大丈夫、ようやく答の見つかるヒントを貰ったんだ。絶対に死なないさ。それに、桜、蒼臥、いるんだろ?」
後ろを振り向いたら二人が立っていた。
「聖、やってきたのは間違いない。ブラッククロスの幹部、右腕と言っても過言じゃない。」
「なのはちゃん達やクロノ君は既に出ています。後は僕等三人だけです。」
頷いた聖だが、二人に。
「桜、蒼臥、頼みがある。」
二人は黙って聞く姿勢を取り、アリシアもその内容を聞こうとしていた。
だが、聖からの頼みは誰にも譲れない願いだと知ることになるのは間違いなかった。
「奴は、俺一人で倒す。」
そう、その覆面を被る謎の武装集団を指揮する奴を一人を一対一で倒そうとしているのだ。
「答はもうすぐ見つかる。だが、その意思は行動で示す。ダメか?」
今までなら一緒に戦っていただろう。しかし、聖の目を見た時、凄く輝いていたのだ。まるで、己の行く道が決まったかのように。
「必ず倒すんだ。周りにいる敵はこっちで抑える。」
「桜」
桜は先に向かう。真っすぐに向けられた聖の眼差しを信じる事に決めたからだ。
「僕は信じていますから。絶対に乗り越えて下さい。聖は何処までも、正義感溢れて、真っすぐで、勇気を忘れない。大切な友達なのですから」
蒼臥も出る。
そして、ようやく理解できた。
「忘れてた。俺がどうしてこの力を受け入れたのか。」
アースラを飛び立つ聖を見たアリシア。
その横に来た。
「アリシア、もう良いの?」
プレシアがアリシアの隣にやってきたのだ。娘が何処に行ったのか心配で探していた為、行き着いた場所が訓練室だったのだ。
「うん、お母さん。」
信じているのだ。アリシアは。
彼がきっと自分自身と向き合うことを。
海鳴市
「やれ!力あるものは捕らえろ!力無い奴は殺せ!」
「きゃああああ!!!!」
「誰か助けてくれええええ!!!」
シュウザーが指揮する配下達は街の住人を襲い始める。そして、シュウザーは。
「来たか!俺達の邪魔をする奴らが!」
到着した管理局魔導士達、そして、
「これ以上好き勝手にはさせない!バルディッシュ!」
[Yes ser!Sunder rayge!]
「私達の街を壊させない!レイジングハート!お願い!」
[Akcel! shooter!]
なのはとフェイトの攻撃が交差し、敵に向かって放たれ、大爆発を起こし、
「ぎゃあああああ!!!シュウザー様ああああ!!!」
「何やってやがる!」
「ストラグルチェーン!!!!敵を逃がすな!」
「あたし達がいる限りやらせないよ!」
ユーノとアルフも加わり、結界も張られた。
「ガキ共がナメた真似しやがって!!!これでもくらいやがれ!!!」
自分の腕を飛ばして攻撃してくるシュウザー。その腕は自在に飛び回り、その鈎爪のような手がなのは達に襲い掛かる。
異様な攻撃は二人のバリアジャケットを切り裂いていき、必死に避けるがしつこく追って来る。
「フェイトちゃん!危ない!」
「くっ!」
腕が二つともフェイトを切り裂こうと向かって来る。
だが。
「かざぐるま!」
いきなり目の前に現れた少年がそれを弾き、
「音速剣!」
追撃をかける。
「ちいっ!邪魔がまた増えやがって!何なんだ貴様らは!」
「何処までいってもやはりお前は許すことが出来ないな、シュウザー!」
目の前に現れた一人の少年。
桜達はなのはとフェイトに上着を着せる。
バリアジャケットとはいえ、見た目が服と変わらないので破かれている部分から少々肌が見えていた為。すぐに対応した。
「ありがとう。桜君」
「ゴメンね?蒼臥」
「気にしないで下さい、フェイトさん、なのはさん。」
「子供とはいえ、刺激が強いから」
だが、今は。
「今は聖にあの幹部を任せて、僕達は他の敵を相手しよう。だけど、二人は休んでて?」
蒼臥と桜は半数ずつに別れている敵の軍に向かって行ったが、聖だけは真っすぐシュウザーを見据えていた。
「俺を知っているのか、何なんだ貴様は!」
「教えてやるよ。」
デイブレードを構え、
「俺の名は剣糯 聖!この世界を守るヒーローの一人だ!!!」
ようやく敵対した聖は堂々と名を叫んだ。
その名と共に、聖の勇気がまた、新たな光を宿した事は。
[聖様?]
デバイス以外に誰も気付かなかった。
はい、早めに今回は書くことが出来ました。
それでは次も頑張りますので、
どうかよろしくお願い致します。