では、続きです。なんなりとご覧ください。
オレは幻想郷と呼ばれる世界の上空に浮かんでいた。
オレが奴から離れてからもう何日たっただろうか。
そろそろ我慢の限界だ。
戦闘の事を考えると体が疼いて仕方ない。この衝動を抑えるには何かを壊さなければならないだろう。
長らく戦いに身を置いていたからだろうか。どうやらたった少しの日常ではこの感情は治せない様だ。
戦いたい……
いや、蹂躙したい。
最近になって満足に戦える現場も少ない。だからオレと本気でやり合える奴と戦いたい。
オレより弱い奴を立ち上がれるなるまで破壊する。
そうだ。たった少しの仮初とも言える平和の日々に惑わされていた。
オレは伝説の破壊者。
宇宙で恐れられ、全てを破壊し尽くす悪魔。
それがオレ、伝説の超サイヤ人だ。
オレは上空で、緑じみた黄金の長い髪をたなびかせる。
体から気が溢れる。高まる。
あの体より、伝説の超サイヤ人よりも凶悪になった俺の力。
早くこの力を存分に扱いたい。
そして奴に……平和に没頭し、この世界への復讐心を忘れ、戦いの世すらも忘れた"俺"を破壊する。
だが、まだだ。まだ時期では無い。
俺を存分に破壊するには、俺自身にもっと力を付けて貰わなければな。
その後にじっくりと痛ぶる。直ぐには殺さん。奴の仲間と、奴が大切にしている全てを破壊してから奴を殺す。
絶望に苦しみながらも、何も出来ない自分自身に絶望しながら死んで行く。こんな辛い事があるか?
いや、無い。
だからこそ、奴には極上の絶望を感じながら死んでもらおう。
ブロリーと言う破壊者は、オレ1人で十分だ。
*
「うん……あ……?」
広大な魔法の森の中。
ブロリーはとある木製の民家の中で目を覚ました。洋風な作りのその家は、森の中でひっそりと佇んでいる。
窓際やサイドテーブル等には人形が数多く置いてあり、少し不気味な空間になっていた。
ブロリーが眠っていたと思われるテーブルの横にも人形が数体置いてある。まるでブロリーを見ている様だ。
「お目覚めかしら?」
背後から女性の声が聞こえた。その声に、ブロリーは聞き覚えがあった。
「ああ、知らない内に寝ていたのか…済まなかったな、アリス」
「気にしないで。私も久しぶりにゆっくり話が出来て良かったわ」
その者、『アリス・マーガトロイド』はブロリーと少し長い付き合いだ。
人形使いであるアリスは、人里と呼ばれる人間が住んでいる里の子供達に人形劇を披露しているアリスを、咲夜に頼まれて買い物をしていたブロリーが見つけ、子供と混じってその人形劇を楽しんでいた。
それを見ていたアリスが人形劇の後、ブロリーの存在を珍しがり、様々な事を話す様になった。
幸い、ブロリーとアリスは咲夜と言う存在を知っているが故、話に困る事はあまり無かった。
二人共咲夜には苦労させられたのだ。
「それで、もう行くの?」
「ああ、咲夜にこのナイフを届けなければならない」
「…まぁ、貴方の事だから咲夜に得物を届けるだけじゃあ無いんでしょ?」
「……いや……届けるだけだ………」
「……貴方って本当に嘘が下手よね」
「うるさい!もう俺は行くからな!」
なかなか話のペースを自分に持っていけないブロリーは、痺れを切らしアリス亭の扉を開ける。
アリスとブロリーの会話は毎度この様な感じで終を告げる。アリスの言葉にブロリーが折れ、アリスが勝ち誇る様にニヤッと笑みを浮かべる。これが2人の間では普通になっていた。
「世話になった。また何時か寄るかもしれないが、その時も頼む」
「分かってるわよ、紅茶とプリンを用意して待ってるわ」
「…悪いな」
そう呟き、ブロリーは魔法の森上空に飛び立つ。
その姿を、アリスはブロリーが雲の上に消えるまで見送った。
「恐らくあれだろうな」
ブロリーは雲海の上に大きく存在する空間の歪みを睨む。
アリスの情報によれば咲夜と魔理沙、そしてレミリアが言っていた霊夢と呼ばれる奴が雲の上に上がって行ったと言う。
その言葉からブロリーは雲の上に何かがあると推測した。
その推測は間違っていなかった様だ。
「行って見るか」
ブロリーはその歪みの中に間髪入れずに突入する。
歪みの中に入る。
瞬間ブロリーの視界から光が消え、闇が辺り一帯を支配する。それも気にせずにブロリーは闇の中を突き進む。
次に何が起きるか分からない。そんな状況の中で、ブロリーは周囲の警戒を怠らない。
だが、ブロリーの予想にも無かった現象が起こった。
「おう!?」
今までブロリーの腹側にあった地面が、知らない内にブロリーの背に来ていた。
何が起こったか訳が分からない。重力のある土が背後に密着していると言う事は、自分は仰向けに倒れている状態になっているのだろうとブロリーは寝転がった体制のまま考えた。
背後の地に手を付けてみる。どうやら地盤も問題なく、起き上がっても落ちたり壊れたりする事は無いようだ。
足元を確認しながらブロリーは起き上がる。
そして、ブロリーは目の前の光景に絶望した。
「なんだこれは……」
ブロリーの目の前には、何千段あるか分からないほどの長さの階段が真っ暗な上空に続いていた。
奥には大きなピンク色の花を咲かせた気が見える。
「登る気は無いが……飛ぶにしても距離がなぁ………」
あの木までの距離が相当長い。舞空術で飛行しながらあの場まで行くことも可能だが、それで行ってもそれなりに時間はかかるだろう。
木の下で爆発が起こる。どうやら既に戦闘が始まっている様だ。
「面倒だが、行くしか無いか……」
肩を落としながら、ブロリーは踏んでいた地を蹴った。
◇
所変わって長距離階段の踊り場の部分。
そこで数々の斬撃やナイフが宙を舞い、撃ち落とされていた。
「しつこいっ……!!」
「まだまだ!」
斬撃を飛ばしている銀髪で黒いリボンを着けた少女と、その斬撃を躱している咲夜。
銀髪の少女が持つ1つの剣から放たれる斬撃。その数は本当に1本の剣で放ってるとは思えない程の数だ。
突きの斬撃、切り崩し、かち上げ、なぎ払い等などと様々な数の攻撃を多彩に使いこなしている。
その攻撃は先が読めなく、そこから繰り出されるスペルカードに咲夜は苦戦していた。
(このままだったら負ける…!なんとか相手の油断を誘わなければ……!)
この状況を打開せんがため、咲夜は残り少ししかないナイフを投げる。
スペルカードは残り1つ、『殺人ドール』だけだ。これを使い、もし避けられたらその時点で咲夜の敗北が決定する。
それに対して銀髪の剣士、《魂魄妖夢》はまだスペルカードに余裕を残している。この状態で戦い続けたら咲夜の体力が尽き、弾幕を食らうだろう。
それは咲夜も十分理解していた。
(私が持ってきたナイフは全部で30…28ものナイフが折られてしまったけど、まだチャンスはある!)
「気を抜かない事ですね!天上剣『天人の五衰』!」
妖夢がスペルカードを詠唱する。
すると、妖夢の持っている剣に光が集まっていった。更に咲夜と妖夢を囲むように弾幕が出現する。
これで咲夜の移動に制限が出来てしまった。さしずめ、弾幕の闘技場と行った所だろう。
そして、妖夢が剣を構え直す。
「行きますっ!」
妖夢がかける。そのスピードは先程より格段に上がっていた。
咲夜は妖夢がまだ力を残していた事に畏怖する。
「クッ…!」
妖夢の繰り出した横なぎの斬撃を咲夜は後方に大きく飛ぶことで躱す。
そして後部に存在する弾幕のギリギリで着地し、妖夢を更に警戒する。斬られた咲夜のメイド服の一部が妖夢と咲夜の間を舞った。
宙に舞った服の一部が咲夜と妖夢の視線の間に割って入る。そしてその服片が咲夜の視界から消えた時には、既に妖夢は咲夜の足元まで来ていた。
妖夢が右手に持った剣を振るう。
ギィィンン!!
その攻撃を咲夜は29本目のナイフを犠牲にする事で受け止める。辺りに甲高い鉄と鉄が擦れ合う音が響く。
咲夜のナイフと妖夢の剣との鍔迫り合い。
「そんな鉄ではっ!!」
妖夢が自身が持つ剣に更に力を込める。
瞬間、咲夜のナイフが綺麗な断面を作りながら2つに別れた。
自身の得物が破壊された咲夜は、時を止めながら距離を取る。
妖夢は目の前から消えた咲夜に一瞬だけ驚くも、素早い切り替えにより咲夜の位置をすぐさま特定する。
「なかなか面倒な能力ですね。ですが、これであなたの武器は無くなったはずです」
「……どうして、そう言い切れるのかしら?」
「あなたの動きに繊細さが増したからです。体にあんなにも多くの危険物を所持していては、あそこまで早く行動は出来なかったでしょうから」
「なるほどね……」
勝った、とこの時咲夜は確信した。
咲夜にはもう1本ナイフがある。今日持ってきたナイフは30本。さっき消費したナイフが29本目だ。
咲夜はこの最後のナイフに全てをかける。
狙うは妖夢が油断して接近して来る瞬間。
背後から来られても正面から堂々と来ても咲夜は対処出来る自身があった。
(これで勝負を決める!)
咲夜は最後の1本があると思わしき足に手を回す。
「これで終わりです!」
妖夢が叫ぶ。
先程よりも早い突進。恐らく突きの攻撃だろう。
咲夜のナイフの有効距離は約60cm。そこまで妖夢を引き寄せる。
そして、妖夢が咲夜から約2mの位置に到達した。
その瞬間、妖夢の姿が消えた。
「もらったぁぁ!!」
背後からの叫び声。
首を回し背後を見ると、そこには妖夢が鞘に入れた刀を抜刀しようとしていた。
居合切り。それは鞘からの抜刀の瞬間に敵に攻撃する事で、通常の斬りの数倍は早く横切りが放てると言う、昔侍がやっていた剣術の1つである。
スピードが増している斬撃。だが、その斬撃よりも早く咲夜が反応した。
(勝った!!)
咲夜が足のナイフを取り、妖夢の腹に突き刺した。
かに見えた。
(……あれ…?)
手にナイフの感覚がない。ナイフを仕舞っていた筈の足を見ると、そこにはナイフは一つも無かった。
(…忘れた……?)
あの時、フランが咲夜の部屋の戸を叩いた時だ。取ろうとしたナイフを、咲夜は取ることも無くフランを部屋に招き入れた。
あの時に忘れたのだ。
妖夢のナイフが咲夜の眼前に迫る。
(終わった…申し訳ありません、お嬢様……)
咲夜は、死を覚悟した。
「どいて貰おうか?」
聞き慣れたあの声が聞こえるまでは。
今回も短い。
でも次回は長くさせます!アイディアが浮かべばですが……