ブロリーss
俺は、この世界に送られた意味が分からない。今も、恐らくこれから長い間そうなのだろう。
神とやらのイタズラか、それとも破壊の限りを尽くした俺への戒めなのか。破壊の無い世界は俺にとって苦痛にも等しいものだ。
一体誰が俺をこの世界に送ったのだろうか。ソイツが何故この俺をこんな平和の象徴の様な世界に送ったのか、全て謎のまま。
俺がフリーザを倒す事は、神とやらに許される事なのだろうか。
俺がフリーザと共にカカロットを倒す事は、神とやらが求めた行為なのだろうか。
いや、神なぞに俺の自由を縛られてたまるか。
俺に無かった自由を、俺はここで手に入れる。神とやらがどんな奴か知らんが、姿も見せん臆病野郎に俺の運命を決めらるものか。
俺は運命を変えてやる。
俺は力を手に入れる。
その為に、フリーザを"仲間"にする。
この戦いに勝つ!
力を、仲間とやらの力を!カカロットにも勝る、仲間の力を!!
運命を変えるぞ、レミリア!
「でえりゃぁ!!」
巨大な拳がフリーザの顔面を捉える。だが秒速を超えるその拳は目標に当たる事の無く宙を切った。
「はあぁ!!」
更にブロリーが追撃を加えて行く。全ての拳をフリーザの顔面に向けて放つ。
だがしかし、フリーザ手を後ろで組みながら余裕の表情で交わしていく。一秒15発と言うスピードの攻撃を、フリーザは全て首を軽く傾げるだけで躱す。
ズドンッ!!
鈍い音が空間に響き、ブロリーが後方へと吹き飛んだ。空中にいたブロリーは一瞬で地面に叩き付けられ、土煙を上げる。
「おやおや、見た目通りの筋力馬鹿の様ですね。腹へのカウンターすら見抜けないで、私に勝とうなど片腹痛いですよ」
余裕の表情を崩さず、フリーザはブロリーを煽り続ける。噴煙の中に居るはずのブロリーは、その煽りに何の反応も示さない。
その様子に、フリーザはブロリーの行動に気が付いた。
ポーヒー!!
気弾を放つ音と共に、フリーザの真横を何かが通過した。
「後ろか!」
フリーザが振り返る。フリーザはこの様な土煙が敵を覆い隠す時、敵は背後に現れると言う事を悟空の戦闘で分かっていた。
だが、そこに居たのはブロリーではなく、緑色の気弾だった。
「チィッ!」
気弾を弾く。それに続く様に数多くの気弾がフリーザへと向かった。
「この程度の攻撃で!」
1発や2発の気弾ならどうという事はないが、ブロリーの様なパワータイプのサイヤ人の場合何発も喰らったら只では済まない。だが自分のプライドが許さないのか、フリーザは躱そうともせずに全ての気弾を弾き、爆発していく。
嵐に飲まれ、舞い踊る木の葉の如く飛んでくるブロリーの気弾。それらをとにかく捌き、破壊していく。一つ一つの気弾がフリーザの視界を埋る。
フリーザが幾つかの気弾を弾く。終わりの無く続くように見えた攻防。その中でこの攻撃の意味をフリーザは考える。
(恐らく目的は私の体力を奪うこと。猿にしてはなかなか考えましたが、私には無駄ですよ!)
フリーザの速度が増す。捌くスピードに拍車がかかり、周囲に気弾を撒き散らす。フリーザは改めてこの攻防の為に体制を整えた。
しかし
「ハアァ!!」
「なに!?」
一つの気弾を弾いた瞬間、目の前に現れたのは拳を振り上げたブロリーだった。
ズガンッと強烈な音を立ててフリーザの顔面にブロリーの拳がめり込み、何100キロと言う速度でフリーザを後方へと吹き飛ばし、石畳の地面に大きな穴を開けた。
「ふははははは!!」
高笑いし、フリーザが落ちた所にトラップシューターで追撃していく。されるがままのその光景が滑稽で、ブロリーは大きく笑った。
だが、直ぐにその声は止むことになる。
巻き上がる噴煙の中で、無傷のフリーザがブロリーを見上げ、笑っていたからだ。
「・・・あのサイヤ人以来だよ。私を、見上げさせた奴は!」
頬を釣り上げていた笑みは少しずつ憤怒に口を曲げ、ブロリーへと飛びかかる。
繰り出される幾重にも折り重なった攻撃は、ブロリーの顔面や胸の傷等の急所を正確に狙っている。
だが、所詮は数で戦う物量戦。1発1発のダメージは弱く、通常状態のブロリーでも耐えられる威力だった。だがそれでも数打たれればそれ相応のダメージを食らう。この攻撃を早く終わらせてやろうと、ブロリーは右手に力を込め、その強大な力をもってフリーザの顔面へと拳を振るう。
だが、それを待っていたと言わんばかりにフリーザは大きく体を捻り、ブロリーの背後へと回り込む。余りのスピードに、ブロリーは反応することすら出来なかった。それ程までに速い動きだったのだ。
フリーザはニヤリと笑う。
瞬間、ブロリーの大きな背中に両手のひらを押し当て、己の気を両手に集中させ、一気に解き放つ。
「ぐぅ!?」
背後に回られた事にすら気付いていないブロリーが背後からの衝撃に対応出来る訳が無かった。
空中にいたブロリーはブロリー自身が認知出来ないスピードで地へと落ち、爆音と共に土煙を巻き上げる。
「おやおや、立場が逆転してしまいましたねぇ」
更にフリーザは笑い、土煙に向かって1発の気弾を放つ。
気弾は吸い込まれるようにブロリーが落下した場所に向かい、着弾。それによって起きた大爆発による爆風は、美しい桜吹雪を生み出した。
勝った。そう確信するのに、時間はかからなかった。
今そこに居るであろうブロリーだったものは、既に無駄口が叩けない程に粉みじんになっているだろう。
あのベジータよりは頑張ったが、それまでの話。所詮猿は猿。どこまで減らず口を叩こうが、この宇宙最強のフリーザに勝てるわけが無かった。
勝利に更に酔いしれようと、フリーザは砕け散ったブロリーを探す。
だが、何処にもそれらしき肉片はない。あるのは降り注いだ桜の花びらが数多く。そう、それだけだったのだ。
それもその筈である。
なんせブロリーは
《ギガンティックイレイザー!》
フリーザの背後から、既に特大の気弾を打ち出していたのだから。
◇
突如聞こえた声は、フリーザの脳を刺激した。
後方、まさに背中の後ろからの声は、何故かフリーザの心をも震わせた。
瞬間、ブロリーへと目を向ける。
そこにいたのはブロリーではなく、特大の禍々しい光だった。
例えようのない音がフリーザを襲う。
ブロリーが放った気弾はフリーザを飲み込み、何者にも染まらぬように思えた白を、緑色に塗り替えていく。
有り得ない。と、フリーザは思考した。
たった1人のサイヤ人に、それも何でもない只のサイヤ人に。
伝説の超サイヤ人でもない者に、自分は押されている。
そんな理解しようもない現実が、フリーザを襲っていた。
だが、その思考は緑の無効に見えた一つの光によって全てかき消される。
伝説の超サイヤ人は1人だけ。その筈なのだ。
なのに、目の前に見えるあの忌々しい炎の光は、間違いなく。
あのサイヤ人と同じ、黄金の光だった。
デデーン!!
全てを終わりに繋げる終焉の鐘がなった。
オチとは、正にこの事である。