妹の幸せを願って何が悪い!   作:のーぷらん

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11 妹に嘘をつく

 

 

「ねえ、シャロ…本当にいいの?」

「…『僕』が決めたんだよ。それより『僕』はシャルのお兄さんなんだから?」

「お、お兄ちゃん?」

「お兄ちゃん…うん、いいよ。すごくいい!」

IS学園の制服のスカートをぎゅうと握り締めながら、上目遣いするシャルはかわいすぎる。周りの乗客からしょっちゅうチラチラと目線が来ているのが当然と思えるほどに。

 

「あ!あれってシャルロット・アズナヴールじゃない?!」

「フランスの代表候補!雑誌で見たけど、実物の方が断然かわいい!」

「あの隣にいる子…顔立ちがそっくりだけど…双子?!」

「昨日のニュース見てないの?!世界で二番目のIS使える男の子だって!」

「双子の美形兄妹…おいしすぎる」

「ハアハア…」

 

やっぱシャルは有名だから、騒ぎになりそうだな。乗客たちが気づいて結構な声で話しているし……俺は、乗客達の方を向いて、黙っておいてという意味を込めて唇に人差し指を当てて目を細めて笑った。

 

「いやあ!かっこいい!!」

「シャルロットちゃんが天使だとするとあの男の子は小悪魔系ね!」

「ご飯何杯でもいけるわね!」

「ぐふふ、ぬふ」

 

あ、あれ?ヒソヒソ声にはなったけど、前より熱っぽい視線と会話になったような?

まあ、他の乗客に言いふらしたりはしていないようだし、いっか。それよりも。

 

「シャル、スカートが短くないか?」

スカート握り締めて座っている状態だとかなりきわどい長さになるんだが…

「そうかな?ソフィさんが仕立ててくれたんだけど…似合ってない?」

「いや、めちゃくちゃ似合ってる。シャルの白くて綺麗でしなやかな足がいつも以上に魅力的に見えてすごくいいです。けど、…今から僕たちが三年間お世話になる先生と会うんだから…その…最初くらいはもっと落ち着いた格好でもいいかなーと…」

 

俺達がこれから会うのは先生と…あのラッキースケベの権化・織斑一夏なのだ。短いスカートなんか真っ先に餌食にされてしまう。というかあのババアが純粋な厚意からシャルにスカートをプレゼントした訳じゃないし。

「…他の荷物全部先に会社から送ってもらってて…」

「……そのままにしよっか」

一瞬、下にスパッツかジャージをはかせようと思ったが、かわいいかわいい妹にそんなもさい物をはかせるのは忍びない。代わりに、一夏を徹底的にマークすることを誓った。エッチな風からは俺が盾になるからな。

「シャ…お兄ちゃんはその、…服は?」

「とりあえずジャージと制服の代えを送ったかな………シャル?」

「シャロ…無理しないでね」

 

俺はシャルの頭をくしゃくしゃとなでた。俺のついた嘘のせいで、シャルは俺が無理をしているように見えるんだろう。

 

 

そう、シャルには、俺が、経営難なデュノア社を心配して、恩返しのために男のふりをして社の広告塔になるつもりだと言っている。

 

 

世界で二番目に見つかった男性操縦者…おまけに世界的にも有名になっている『シャルロット・アズナヴール』の兄であり、大会社であるデュノア社の次期社長候補(このあたりは世間の完全なる誤解だ。俺がデュノア社社長の養子に将来なりうると言ったことでここまで話が広がってしまった)ともなれば、テレビやら雑誌やらが放っておかない。結局昨日まで会社と病院にひきこもって、入学式の今日、学園側の配慮でIS学園の教師であり、もう一人の男性操縦者の保護者である織斑先生が、弟を送るついでに俺達のことも迎えにきてくれることになったのだ。こりゃバレたら牢屋どころじゃ済まないかも…。バレる気はさらさらないが、俺はシャロンさんに体を借りているようなもんだ。シャロンさんが帰ってきたら、一生男として生きることになるなんて…… 早くこの現状をどうにかしなければ。

 

シャルはきっと俺が一人で色々考えた末に苦肉の策で無理をして男装をしていると思っているに違いない。実際は、俺が男装するのも、ババアのせいなのだが。

 

 

 

 

 

ひそひそ話にしたって、車内はうるさい。だが、朝早いし、もう眠いな…シャルが肩を貸してくれたのでありがたく少し寝ることにした。

 

 

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「シャロン・アズナヴール」

 

ババアから初めてまともに名前を呼ばれたのは、一夏の存在が全世界で知られて三日後のことだった。

「命令よ。四月からIS学園に行きなさい。世界で二番目のIS男性操縦者として」

「…なんで」

原作では遅れて転入した気がするんだが…

「数少ない男性の操縦者として世間の注目を集めることで会社をアピールするとともに、織斑一夏に接近して彼と彼に関するISのデータを盗むの。…今は、彼のISは完成していないようだけど倉持技研が総動員で作成しているわ。きっと世界最高峰の技術がつぎ込まれるはず。あと、本来なら、男の仕草や言動を徹底的に叩き込みたいんだけど…あなた、野蛮だから今でも十分男っぽいし、身体的にも、ねえ?」

 

ババアが俺の頭から足の先まで見た。最後に胸を見て鼻で笑う。

シャロンさんは確かにまな板だが、高身長でスレンダーな体型っていいじゃないか!結局身長は166cmから伸びなかったけど、IS学園じゃ高い方だと思うし(フランスだったら、女の子でも160cm以上が普通だってことはこの際置いておく)。

 

「…お母さんは?」

「あなた、今のセリーヌ・アズナヴールが遠い日本まで移動する体力があると思う?それに、私が人質を解放すると思う?」

 

だろうと思ったよ…!お母さんは抗がん剤治療をまた始めている。今度は24時間ずっとではなく、二時間半ずつのサイクルを日にちをおいてしているので「前よりずっと楽」と言って笑っていたが、俺達の前で主食のパン以外食べていない。食べられないんだ、と感じていた。

それほど彼女は弱っている。

 

「毎日通信して無事か確かめるからな…シャルは?」

「シャルロットちゃんもIS学園に行きたいって言ってきてねぇ…」

テレビ出演やテストパイロットをしているシャルは中学校にほとんど行けていないから、IS学園というものは渡りに船だったのだろう。各国にデュノア社の宣伝も出来、IS操縦も学べる学校なのだから。

「だから、学園に行くついでに、織斑一夏にハニートラップを仕掛けてもらおうと思ってるの」

「は?」

 

俺は呆気にとられた。

 

「学園に男一人、あとは思春期の女の子ばかりの中。あなたは男なのだし、スパイとして入学している以上、織斑一夏と接触せざるを得ない。となると、「兄」であるあなたに近づくシャルロットちゃんも、必然的に織斑君に会う機会が多くなるわよね。愛が育まれる可能性は零ではないでしょう?調査では織斑君は女性にモテるタイプみたいだし」

「…!!シャルは別に学園に行かなくてもいいだろう?!」

「彼女が行きたいって言っているのよ。私は強制したわけじゃないわ。それに、IS学園は世界二番目のISが操縦できる男の子と、世界初の双子操縦者が是非欲しいみたいなの。試験なしの推薦で入学させてくれるそうよ?

…それよりも、あなたは『恩のあるデュノア社が経営不振になったので、独断で男装をし、自ら広告塔になった』ということになるのだから、誰にもバレないように。今日から、あなたは『シャルル・デュノア』よ」

「デュノア?!」

「…戸籍上は『シャルル・アズナヴール』だわ。でも、学園で『デュノア』を名乗ってもらわないと宣伝にならない。卒業後に養子縁組の手続きをとる予定とでも言って、デュノア姓を名乗りなさい」

 

デュノアになる。

ものすごくお互い嫌そうな顔をしていたと思う。

後にも先にもババアと気が合ったのは、このときくらいだ。

 

 

 

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「…ちゃん!お兄ちゃん!!」

 

目覚めは最悪だった。夢の中でもババアが出てくるなんて!

どうせなら、シャルのナース服とかバニーガールとかメイドさんとか…いかん、教官に毒されすぎているようだ…。

目を開けると目的地の地名が電車の外の窓に見えた。

「シャル!降りるよ!」

「だからさっきから呼んでたのにぃ…!」

呆れているシャルの手を引いて、二人でホームに下りると、その直後に電車のドアが閉まる音が聞こえた。

ギリギリ…セーフだな。

 

だが、ホームには人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人…そしてフラッシュ。え、何このメディアさんの数。

 

「シャルロットさん!シャルルさん!!」

「目線こっちに下さい!」

「日本に降り立った感想は?!」

「これからIS学園に行くにあたって何か意気込みを!」

「双子でのIS操縦者とのことですが、そのことについて一言!」

 

怖!聖徳太子じゃあるまいし、そんな一気に質問されても困るっての。

シャルはテレビ慣れのせいか、一瞬驚いたようだがすぐに「申し訳ありません。これから入学式なので」と丁寧な物腰で取材を暗に断るが、なかなか前にも進めない。俺も丁重にお断りの文句を言ったが、俺が口を開くと余計ヒートアップするし…

そうこうしているうちにホームにかかっている時計を見ると、先生との待ち合わせの時間をとっくに過ぎている!こうなれば、シャルを抱えて強制的に抜けるしか…

 

 

 

「シャルロット・アズナヴールと、シャルル・アズナヴールか」

 

 

 

急に取材の声がやんで、モーセのごとく取材陣の波が二つに分かれた。

鋭い吊り目に、出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでいるボディライン。黒い長髪が無造作に背中に流れており、飾りなど何も着けず黒のスーツのみ…これでこんなに絵になる人もいないだろう。むしろ彼女自身が花なのだ。

そこにいたのは、織斑千冬だった。

 

「織斑先生ですか。遅れて申し訳ありません!私はシャルロット・アズナヴールと申します」

シャルの挨拶した声ではっとし、俺も頭を下げながら言った。

「双子の兄のシャルルです。卒業後に養子になる予定ですので、シャルル・デュノアとお呼び下さい」

「織斑千冬だ。双子初、片割れが男のIS操縦者で、この人ごみなら遅れても仕方がない。先に織斑一夏の方は学校に連れて行った。入学式には間に合わんが、朝のホームルームには参加できるだろう。行くぞ、デュノア、アズナヴール」

ああ、一夏は先に行ったのか。ちょっと安心した。これで出会ってすぐラッキースケベが起こることもない。

あちらこちらにいたマスコミは先生が一にらみした途端、道を静かに開けた。

 

「何をしている。行くぞ」

「「はい!」」

さすがです先生。

 

 

駅の外に停めてあった黒い小型の車に乗った。車の中には音楽がかかっておらず、会話もそこまでない。だが、俺はやっておきたいことがあった。一夏と会う前に、シャルの中での一夏の印象を悪くすることだ!

俺はババアとシャルの会話を思い出していた。

ババアはシャルをハニートラップ要員にしたいらしく、事あるごとに一夏の存在をほのめかすようなことを言っているのだ。スカート一つ買うのにも「似合うわね。これは男の子が放っておかないわね!」→「そんな男の子いませんよ」→「IS学園に行けばいるじゃない」とか!!

この先生のことだから、一夏のことを聞いたらきっと誉めたりしないはず!

「学園には僕と弟さん二人だけが男子なんですよね…織斑先生の弟さんはどのような方なんですか?」

「家事も料理も中々だし、マッサージも上手い。すぐにお前たちとも仲良くなるだろう」

 

あれ?

普通に臨海学校のときみたいに誉めちゃった?

シャルロットは会うの楽しみみたいな顔してるし!

 

俺がどうにかこうにか一夏の悪い所を聞き出そうとして、織斑先生が良く言うという応酬が数回あった後、ふと先生が車を停めた。

 

 

「着いたぞ、IS操縦者育成特殊国立高等学校…IS学園だ」

 

 

 

 

シャルは実に楽しそうに車の窓からIS学園を見ている。俺はこれからすること、戦わなければならない敵を思い浮かべて気が引き締まるのを感じた。

 

そして、俺たちは先生の後をついて、教室に向かった。

 

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