幻想郷事件簿   作:クリッパー

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ミステリー


始まりの朝

まだ夜明け前の時間帯

命蓮寺は幻想郷で一番早く活動しだす。お経が寺中に響き渡る一方で山彦妖怪の幽谷響子は境内を掃除していた。

「おはようございます。文々。新聞お届けに参りました」

「おはよーございます!」

いつも射命丸は新聞を手渡しするだけだが今日は違った。

いつもとは違う様子で少し興奮している。

「響子さん、今日はビックニュースですよ!ビックニュース!」

「はぁ」

響子は少しついていけなくて生返事をしている。

だが、新聞の大きな字が目に入った瞬間、ここには紅魔館のメイドは居ないのに、響子の時間は止まった。

 

多々良小傘タブーを犯す。人里で人殺しか!?

 

響子と小傘は仲が良い。

最近寺の管理をしている墓地に小傘が住み着いてから二人で会話したり一緒に夕飯を命蓮寺に招待して食べたりするほどに、だ。

 

「有り得ない」

 

そう、響子は感じていた。普段の会話や様子から小傘が人を殺せるような妖怪だと思えなかったからだ。

しかも場所が人里だ。人里で妖怪が人を襲う事は禁止されている。その決まりは幻想郷が出来た始めからある。

知能の低い、本能のままの雑魚妖怪は兎も角小傘のような理性を持つ妖怪がこの決まりを破るとは思えないからだ。

 

「本当に信じられないですよね。彼女が人里でねぇ……そうそう、処刑は秋分の日にあるそうです」

 

「え、もう処罰が決定しているんですか?」

 

速い、いくらなんでも速すぎる。

そんな想いが覚り妖怪でなくとも分かる表情だった。

 

「仕方ないですよ、彼女は幻想郷一のタブーを犯した。問答無用ですよ」

 

人里で妖怪が人殺しをして無罪だったらどうなるか、それは簡単だ。

人々は完全に安全な場所が無くなったと感じるだろう。そして新たなそこを探し始める。探す場所は幻想郷の外に目をつけられるかもしれない。そしてそれが実行され幻想郷が無くなった時、自分達の先は死だ。

 

「でも、彼女がやったという証拠は現場に駆けつけた時にいた。という事だけじゃない」

 

新聞を詳しく読んだ響子は理不尽だと大声をだす。

 

「ちょっとうるさいですよ。仕方の無いことです。小傘さんに、いえ、妖怪に少しでも疑念を持たれたら幻想郷のバランスは一気に傾いてしまうのです。例え犯人が違ったとしてもすぐに処理をしなければいけない事ですので」

 

煙たがっているような表情で射命丸は説明する。

 

「秋分の日は……」

 

「今日入れて7日ですね。それでは、私は配達するところがまだ有るので」

 

そう言って射命丸は飛び立って行った。

響子は考える。小傘は人を殺めるようなことは絶対にしないはずだ。驚かす努力はするけれども。

なんとかしないと小傘が死んじゃう。

次の瞬間、響子は弾丸のように走り出した。

箒をしまってから寺の中にいる聖の下へ。聖は仏壇の前で読経していた。

 

「聖様!」

 

「どうかしました?響子?」

 

「聖様は知っていると思いますが町で人殺しがあって友達が捕まったんです!そんな事は絶対にしないような友達なんです!助けてください!」

 

響子の叫びを聞いて聖はゆっくりと振り返った。

 

「本当にその子は人を殺すことなんてしないのですね」

 

「はい!天に誓って」

 

「そうですか……ですが私は力にはなれません」

 

「そんな」

 

響子の頭の特徴的な犬耳が垂れ下がる。

 

「そうそう、響子、あなたは昨日こっそりと私の甘味をつまみ食いしましたね?」

 

「っえ、いや、あれは鵺ちゃんが……」

 

突然聖が話題を変えてきて更にはその話が昨日鵺とこっそりと食べたお菓子の事がバレていて声が小さくなってしまう。

 

「そこであなたには食べたお菓子を人里に買いに行って貰いたいのです。しがしそれは人気で早く並びに行かなければならない。そこで、一週間後の発売日に買えるように今から人里へ行ってきてください」

 

「え……」

 

響子は戸惑った。

友達が死ぬのにお菓子なんて買いに行けないよ。

 

「もちろん!お菓子が発売される時まで自由時間です。気になる事は調べたりしても良いですよ」

 

「へっ?ほ……本当ですか!?」

 

「私は甘味を食べ損ねて怒る寸前です、早く行って誠意を見せてください」

 

聖は響子から視線を外し読経を再開した。対して聖が何を言っているか分かった響子は立ち上がった。

 

「ありがとうございます!聖様!必ず買ってきます」

 

響子は出掛けの服装に着替え命蓮寺を飛び出した。

 

「さて、鵺には朝の掃除当番を任せましょうか」

 

聖は門から出て行く響子を愛しそうに見送った。

 

「頑張りなさい、その子が犯人であろうとなかろうとあなたにとって良い経験になるはずです」

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