東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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プロローグ

 

 

「うぅ、ん」

 

「_____子供?」

 

 

 私こと、八雲紫は後悔した。

 久し振りに暇ができたので外来人のいる結界外にでてみた直後、常人では持ち得ないほどの霊力を感じた。

 引き寄せられるように霊力の発生源まで赴いてみたのだが、そこにはまだ立つこともままならない赤ん坊が路地裏の端に籠に入った状態で捨てられていたのだ。

 

 

「こんな子供にこれだけの霊力が………これは霊夢と同等、いやもしかしたらそれ以上あるわね」

 

 

 毛布に包まれた赤ん坊を抱き、霊力量を測るために額に手を当てたところ、今私が育てている博麗の巫女候補と負けず劣らないほどの霊力を有していることが判明した。

 

 

「もしかしたら幻想郷に害を及ぼす可能性があるわね。ここで消しておこうかし……ら……!!」

 

「うぅぅ!」

 

「!!!」

 

 

私の手をぎゅっと握り締め、笑いかける赤ん坊___

 な、なななんという可愛さ!? これも霊夢に負けないくらいに!

 何で、なの……これまで赤ん坊を見てもなんとも思わなかったというのに……この前、霊夢を拾ったばかりだというのに………

 

 

「うぅ……」

 

「な、なによ。そんな目で見たってなにもないわよ」

 

「うぅ、あぁ!」

 

 

 きらきらした眼で此方を見ている! うっ、なんて反則的な眼をしているの! こんなの、こんなの始末なんて出来っこないじゃない!

 

 

「(持って帰りたい)」

 

 

 そうよ、この子は捨て子なのよ。持って帰ったって誰も困りはしないわ。

 

 よし、拐おう。

 

 そうと決まれば善は急げよ。この子は私が愛情を持って育て上げるわ。

 と、意気揚々にスキマを展開したはいいが、私はある1つの問題に気付いた。

 

 

「この子、どうやって育てようかしら」

 

 

 そう、この子の世話についてだ。ただでさえ霊夢の面倒で手一杯なのにそれにこの子まで加わるとなると_____

 

 

「紫様! ここにおられましたか!」

 

「あら、藍。どうしたの」

 

 

 この子の世話をどうしようかと思案していると、私の式である九つの黄金色の尻尾を持つ妖狐、八雲藍がスキマを通じて私の前に姿を現した。

 このスキマの能力も私の式となった恩恵として力を授けているのであり、藍も私と同じように数回程度なら問題なくスキマを扱うことができる。

 

 

「実は私にも新しい式を従えたのですが、家に置いても宜しいでしょうか?」

 

「ねぇ、貴女には霊夢の世話があるでしょ? それはどうするの」

 

「ちゃんと霊夢の世話もします! ですのでどうか!」

 

「どうしようかしらねぇ」

 

 

 別に家に空きがないわけではない。しかも私ではなく私の式である藍が育てるというならば煩くしない限り問題も特にない。

 認めてあげても良いのだけれど____あら、丁度良いじゃない。

 

 

「仕方ないわね、許してあげましょう」

 

「ありがとうございます!」

 

「ただし条件があるわ」

 

「は、はい?」

 

「二人の世話をするのよね?

 

 

 ____なら、もう一人増えても特段問題ないわよね?」

 

「……え゛っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

「ということで霊夢、貴女に弟が出来たわよ」

 

「うぅ、うえぇん」

 

「なにこいつ、うるさいわね」

 

 

 上手く言い包めて藍に育児を任せられた事により、八雲家にまた二人、人口が増えた。

 

 

「橙! そこはテーブルの上だ! そこの座布団の上に座りなさい!」

 

「藍さまぁ、お昼ご飯まだですかぁ~?」

 

「さっき食べたのを忘れたのか!?」

 

「うえぇぇん! うえぇぇん!」

 

「もう! うるさいってば! しずかにしないとどつくわよ!」

 

「ああ、もう、泣くな! ほらほら、抱っこしてやるから!」

 

「賑やかでいいわねぇ」

 

「紫様! 見てないで手伝ってください!」

 

「あらぁ、貴女の式をここに住まわせる条件はなんだったかしら?」

 

「ゆ、紫さまぁ~……」

 

 

 つい一年前は私と藍しかいなかったこの屋敷がこんなに賑やかになったのは今日が始めてかもしれないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 八雲家に家族が増えた翌日、私はある重要な事を決めていない事実を思い出し、早朝にも関わらず飛び起き、朝食の準備を既に開始している藍の元まで走って向かっていた。

 

 

「そういえばこの子の名前を決めていなかったわ!」

 

「こんな朝早く起きて来たかと思えば。まだ決めていなかったのですか?」

 

「決めてたらとっくに呼んでるわよ!」

 

 

「はあ、そうですか……明日からまた仕事が山のようにありますから今日中に決めましょう」

 

「今ここで仕事のことを言うのはやめてちょうだい。頭が痛くなるわ」

 

「それもそうですね」

 

 

結界の管理に賢者達の会合、神隠しに幻想郷内での治安維持。他にも色々ありすぎて現実逃避をしたくなるわ。

 

 

「ま、取り敢えず決めましょうか。私的には紫紺がいいと思うのだけれど」

 

「私は藍義が良いと思います!」

 

「紫造もいいわね」

 

「藍助も捨てがたいですね」

 

「ううぅ」

 

 

 自分の欲望駄々漏れね。

 まあでも自分の名前をこの子の名前に入れようとしてしまうのは自らの所有物だということを主張したい表れのようなものだと思うの。

 

 

「藍さまぁ」

 

「なんだ? 橙」

 

「籠の中にこんなのが入ってましたぁ」

 

「お、ありがとう」

 

 

 と、藍が橙から一通の封筒を受け取る。

 

 

「へへぇ~」

 

「その籠ってこの子が入ってた物よね?」

 

「はい、どうやら手紙が入っているようですね」

 

「読んでみてちょうだい」

 

「はい_____“この子を拾ってくれた方へ。言い訳になるのですが現在この子を育てるほどの経済的余裕がないため、ここへ置いていきます。もしこの子を拾ってくださる方が心優しい人であることを願います。あとこの子の名前は『通(トオル)』といいます。拾ってくださった方へ、おこがましいのですがどうか通を宜しくお願い致します。″だそうです。」

 

「ふ、ふ〜ん。名前あったのね。それよりなんで児童養護施設に送らなかったのかしら」

 

「そこまで頭が回らなかったんじゃないですか?」

 

「それもそうね、己の経済状況も弁えず子供を作る程だもの」

 

「おお、中々厳しいことをいいますね」

 

 

 そう? 私は至極当然のこと言ったまでだと思うのだけれど。

 

 

「まあ、取り敢えずさっきの私達のやり取りが無駄になったことは確かね」

 

 

 正直捨てた人間の名前をつけたくないというのはあるが、この子も人間であり、或いは人里に住む可能性がある。妖怪に名を付けられた事で人里内で不都合が起きることを考えると、下手に名前をつけない方が良いのかもしれないわね。

 

 

「そうですね。でも名前を考える手間が省けたと思えば気が楽ですよ」

 

「藍、名前をつけると言うのはそう単純な事ではないのよ。親が子供にどう育ってほしいか、そういった願いを込めて名前を子供につけるの」

 

 

 先程まで独占欲の塊のような名前を考えついていたけれどもね。

 

 

「は、はあ」

 

「今、貴女『子供を産んでない癖に何偉そうなこと言ってんだ』って思ったでしょ」

 

「いえいえいえいえ!? そんなこと思うなんて滅相もないです!?」

 

「問答無用!!」

 

「いやあぁぁ!!」

 

 

 取り敢えずお仕置き部屋に通ずるスキマに藍を落とした。なんだか理不尽なことをしてしまったけど気になんかしないわ。

 いつもの事だし。

 

 

「それじゃあ、トオル。これからは宜しくね」

 

「うう!」

 

 

 いずれ霊夢も博麗神社へ行き、博麗の巫女になる。そしてトオルもいずれ巣立ちする日が来るでしょう。その時までこの安らぎを楽しむとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~次の日~

 

 

「うえぇぇぇえん!!」

 

「ああ! もう、せっかくひるねしてたのに!」

 

「藍さまぁ!? 藍さまどこですかぁ!?」

 

 

「らぁーん、仕事よぉー」

 

 

 

 ………………。

 

 

 あ、お仕置き部屋から出してあげるの忘れてたわ。

 

 

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