うむ、妖夢をトオルに向かってのしゃべり方をどうしようかと迷いましたけど結局敬語にしました。
突然だが今回の異変の概要を説明しよう。
今回の異変、『春雪異変』は冥界にある白玉楼の主、西行寺幽々子が万年咲かないでいる西行妖を開花させようとし、春を集めたのが事の発端である。
しかし西行妖を開花させるという目的は霊夢、魔理沙、咲夜の三人によって阻止されることとなったのだが……
そして春雪異変が解決されて数日、奪われていた春は地上へと還元されていき、今では幻想郷中には桜で埋め尽くされていた。
さて、ここで質問しよう。
桜が満開、そして大量の酒がそこにはあります。このときするものといえばなにか?
そう、お花見である。
「いやぁ、綺麗だ」
「何で妖怪がこんなにいんのよ。ここ神社周辺なんだけど。里の人達に見られたらもう参拝客が本当に来なくなるじゃない」
「心配するな。私が桜の花を賽銭箱にでもいれといてやる」
「やめろ!」
いまの会話からわかるとおりお花見が行われているのは博麗神社の周辺である。そしてそこに来ているのは勿論の事、霊夢と魔理沙、そして以前の異変と今回の異変に関わった人外達と偶々通りかかった人外達である。
「チルノちゃん! なに凍らせてるの!?」
「なにって、人間に決まってんじゃん、大ちゃん!」
「おい霊夢、トオルのやつが氷漬けにされてるぜ」
「あら、トオルが相手の攻撃を避けられないなんて珍しい」
「いや、そこじゃないだろ。お前の弟が氷漬けされてるんだぜ?」
「あ、そうね」
と、霊夢が氷の妖精チルノのところへ粛清をしに行く。
その事について深く語ると、少し衝撃的な話になるのでさっき霊夢が言ったことについて話そうと思う。
実は去年の夏、まあ、紅霧異変が終わってちょっとしてから、吸血鬼であるレミリアが急に霊夢と魔理沙、どっちが体術が優れているかという話になり、なぜか模擬戦をすることになった。勿論の事魔理沙は格闘は得意ではないため負けてしまう。その結果に不満なレミリアが次はトオルに狙いをつけ、なんと霊夢と模擬戦をしろといいだした。最初はトオルも無理だ無理だと否定の意思をみせていたが霊夢が食べ物につられてレミリアの仲間となり二人がかりで説得され、結局トオルも折れてしまい、模擬戦をする羽目となる。
そして、その結果が以外にも以外、まさかの引き分けで終わった。
どういう戦いだったかというと、はっきりと言えばつまらなかった。
霊夢が攻撃をしてトオルがそれを避け続けるという完全な受けの姿勢だったのだ。
確かに霊夢の札やお払い棒での攻撃などもすべて避けているのは人外の為せる業なのだが、やはり相手と相手がぶつかり合いを見たかったレミリアは開始から10分程して模擬戦を中止させた。
しかし驚くべきところはなぜ妖怪退治屋でもなんでもないド素人のトオルが戦うことが本業の霊夢の攻撃を避け続けられたことである。
普通の人ならば攻撃されたことすら気づかずに気絶するほどの攻撃をことごとく避け続けたトオルにはもしかすればなにかしらの能力があるのかもしれない……
いや、もしかしなくても能力がある可能性が高いのだが。
「いやぁ、死ぬかと思ったよ。食事を運んでたらいつのまにか凍ってたんだもん」
「しっかりしなさいよね」
「ぎゃははは! チルノのやつ、木から生えてるぜ!」
「あらら、可愛そうに。あ、そうだ。今冷たいものが食べたい気分ね。妖夢、とってきなさい」
「幽々子様、流石に妖精をお食べになるのはどうかと……」
と、チルノが木から生えているのを魔理沙が爆笑していると後ろの方から声が聞こえた。そして三人が一斉に後ろを向くとそこには今回の異変の主である白玉楼の主、西行寺幽々子とその幽々子の剣術指南役兼白玉楼住み込みの庭師である魂魄妖夢がいた。
「なんだ、あんたらか」
「えっ、だれ?」
「今回の異変の主よ。んーと確かゆゆゆと妖怪だったような……」
「……西行寺幽々子よ」
「……魂魄妖夢です」
「あ、そんな名前だったわね」
「いや、ゆゆゆて……どうもトオルっていいます」
「ええ、よく紫から聞いてるわ」
「え? 紫姐さんを知ってるんですか?」
「知ってるもなにも紫とは昔ながらの友人よ」
「紫に友人っていたの!?」
「紫ってこの前スイカ持ってきてたやつか?」
「へぇ、紫姐さんに友人がいたのか……」
「……紫様ってそんなに友人少ないんですか? 幽々子様」
「さあ? 私も紫の友好関係なんて知らないわ」
「まあ、取り敢えずあんたら何で来たのよ」
「あらあら、ただお花見をしに来ただけよ。妖夢、あそこにあるお漬物取ってきて、あとあっちにある鶏肉も」
「春を奪ってたやつがよく言うぜ」
ーーー
それから3時間、トオル達は宴会を楽しんだ。
しかし未だに花見に終わりは見えない。
そして妖怪達と同じペースでずっとお酒を飲み続けていた霊夢と魔理沙は結構酔っていた。
「なあ、トオル。なんで飲まないんだよぉ」
「いや、だから飲めないんだって」
「ほらほらこの私が注いであげるから飲みなさい~」
「ああ! もうやだこの酔っぱらいども!」
ついに二人からのアルハラ(飲んではいないが)に耐えられなくなったトオルは霊夢と魔理沙のもとから抜け出して他のところへ行くことにした。
「んーと、あそこにいるのは…………レミリアファミリーか……いや、レミリアの顔が赤い。あそこにいったら血を吸われそうだからいかないでおこう」
「(……って待てよ、思えばこの辺りって……)」
抜け出したはいいが、周りには霊夢、魔理沙、咲夜を除いて人外しかいない。
それにきづいたトオルは一気に青ざめた
「あ、トオルさん」
「え、ああ妖夢か」
お花見の最初の方、三人は異変の元凶であった冥界組と飲んでいた。そこでトオルと妖夢は仲良くなっている。
それもあってか青ざめていたトオルは少しだけ安堵する。
「それでどうしたの? 妖夢」
「はい、実はこれから私の剣術を披露しようと思うので……トオルさん、手伝ってください!」
「ん、別にいいけど……」
いやな予感がしてならないトオルは少し後退りをする。
「取り敢えず私が剣を振り回すのでそれを全部体で受け止めてください!!」
「それ、僕死にますよ? って妖夢、滅茶苦茶酒臭い!? 絶対酔ってるでしょ!!」
「そんなのいいですから! ……いきますよー!!」
「いやぁ!?!」
必死で逃げるトオル、それを2本の刀を振り回すしながら追いかける妖夢。
普通ならば悲鳴をあげてもいい光景。しかしここには人外、もしくは人間離れした者しかいない。
そのためこの光景を腹を抱えて笑うものが後を断たなかった。
「くそぅ、やっぱり速い! このままじゃ追い付かれてしまう!」
「まってくださいよー、切らせてください!」
「そして物騒極まりない!?」
ついに逃げることを諦め、臨戦態勢にはいるトオル。
「く、勝てる気がしないけど一か八かだ!」
「覚悟ー!」
「おりゃ!」ドガッ
「みょん!?」
と、ついに決闘が始まるのかと皆が固唾を飲んでいるなか、横から妖夢の顔面に氷の妖精であるチルノが蹴りをかました。
しかもかなりの助走をしていたため、妖夢は耐えきれずふっ飛び、木にぶつかってそのまま身動きをとらなくなった。
「え? 妖……」
「すぅ……すぅ」
「……寝てる」
「やっぱりあたいったらサイキョーね!!」
「…………」
まさかのさっきトオルを氷漬けにした張本人から助けられたという事実に衝撃を隠せないでいるトオル。
「なによ、私と戦おうっての?」
「……たしかチルノっていったよね?」
「そうよ! 天下無双とかいてチルノと読むのよ!」
「よく言ってる意味がわからないけど…………取り敢えず飲もう。久しぶりに飲みたい気分だ」
「ふん、しかたないわね。この私が飲んであげようじゃないの」
これまでお酒を避けてきたトオルがお酒を呑みたくなるのは大抵かなりのショックを受けたときだけである。
やはりトオルでも妖精よりは強いと自負していたのだろう。それがまさかの妖精に助けられるという事にショックを隠せなかったようだ。
このあとトオルはお酒を二杯飲んだだけで酔い潰れたことをここに記述しておく。