東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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21話 無駄に多い宴会日和(2日目)

 

 

「ここよ」

 

「ねぇ紫姐さん。ここよ、て。ここ博麗神社の屋根だよ」

 

「だからここなのよ…………まあ、見ていなさい」

 

 

 今回の異変が鬼だということをつきとめた僕は何故か紫姐さんに捕まり、『萃香』という名前の鬼のところへ連行される羽目となった。

 

 そして現在、博麗神社の屋根にいる。

 ここにあのちっちゃな鬼が本当にいるんだろうか。

 いやいや、流石に異変の首謀者が妖怪退治屋のいる家の屋根にいるはずがない、常識的にありえない。

 

 

「萃香、さっきまでの話聞いているのなら出てきなさい。まあ、出てこないのなら実力で何とかするけど」

 

 

 と、紫姐さんが呼び掛けるとともに僕たちがいる屋根の奥の方に何かが集まっているのが感じられた。

 ……えぇ。

 

 

「はいはい、仕方無いねぇ」

 

「あ、やっぱりあのときの鬼だ」

 

 

 そして何かが集まっていた靄がどんどん濃くなり、いつの間にかあのときの少女が出てきた。

 

 

「それじゃ、あとはよろしくね」

 

「……はあ、紫。あんたさっき堂々と私の計画をぶち壊すって明言したよね?そんな友人の邪魔をするようなやつの言うことを誰が聞くと思うかい?」

 

 

 そう萃香という名前らしい鬼は紫姐さんのお願いに否定の意思を伝えながら瓢箪の中の液体を一口。おそらくお酒だろうな。

 だってこの娘、物凄くお酒臭いもん。お酒臭すぎて近くにいるだけで酔いそうになるくらいだ。

 

 

「へぇ、それじゃあ早速みんなに知らせようかしら?

 実際この異変も貴女の正体がバレたら意味をなさないわけだし」

 

「なに、私を脅そうって魂胆? はは、言っても無駄だよ、誰も私に勝てはしない。つまり私の計画の邪魔はだれにもできない」

 

「ふふ、さて、本当に誰もとめられないのかしら?」

 

「鬼の力、なめない方が身のためだよ」

 

「なめてなんかいませんわ」

 

 

 なんだか完全に蚊帳の外にされているけど、これって危ない感じ?

 こっちからも伝わってくるほどの圧倒的な力があの少女からあふれでている。

 

 けど僕の危機察知センサーは作動しない。

 ここが危険地帯になることはないって事なんだろう、たぶん。

 なったらなったで困るけどね。ここ、ウチの屋根だし!

 

 

「まあ。こんな戯れはこれくらいにして」

 

 

 ほ~らやっぱり。流石は僕の危機察知センサー。

 

 

「今回の件についてはよろしく頼むわ。実際この子を預かった方がいいわよ。今回の異変の解決に乗り出している連中に知らせようとしていたわけだし。それに預かってくれたお礼には貴方に良い酒を沢山持ってきてあげるわ。」

 

「え、ほんと!? 鬼は嘘は嫌いだからね!……本当に博麗の巫女の腰巾着を次の宴会まで受け持つだけで沢山良いお酒が貰えるの?」

 

「えぇ、ちゃんと差し上げますわ。日の本から離れた地のお酒とかもたんまりとね」

 

 

 そう紫姐さんが言うと少女の喉がごくっと音を鳴らし、顔が火照り始めた。

 どんだけお酒が好きなんだよこの合法幼女は。

 

 

「よし、それなら任せときな。こんな小僧一人、世話見るのなんて赤子の手を捻るようにそつなくこなしてみせようじゃないか!」

 

 

 なにこの鬼、お酒のことが絡んだら滅茶苦茶テンションがあがったんだけど……さっきまで計画の邪魔はさせない!とかいってたのに……

 あと僕は腰巾着でも小僧でもない!

 

 

「それじゃあトオル、ちゃんと萃香の言うことを聞くのよ」

 

「え、紫姐さん。行くの?」

 

「そうよ、萃香への報酬としてお酒を“集め″にいかなくちゃいけなくなったからね。

 そういうことで~」

 

 

 と、紫姐さんはスキマを出してどっかへ行ってしまったか

 

「あ、紫姐さん!?」

 

 ちょっと……僕を一人にしないでよ……

 

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

「それじゃあ早速明日から始めようかしらね。萃香を追い詰めさせるためのお酒集めを。

 まずは吸血鬼のところにでもいってみましょう。

 ……ふふ、考えただけでも笑いがこみ上げてくるわ」

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 話すのが初めてなのででどう話しかけようか迷っていると少女から話しかけてきた。

 

 

「んじゃ、そこのこぞ……確かトオルっていったっけ?次の宴会までよろしく」

 

「あ、うん。それであってるよ。君は確か萃香、だったよね」

 

「そうだよ。それよりあんた、よく私のことがわかったね。細かく散ってたと思ってたんだけど……まさかずっと見えてた?」

 

「いや、見えたのはたまにだけでそれ以外は全く萃香のことは見えなかったよ」

 

「あー、まさか酒呑むときに萃まったときかなぁ……いや、でもその時は他の連中の私への認識を散らしていたからばれないはず……ならなんで?……」

 

 

 萃香がなにかぶつぶつと独り言を言い出した。

 萃まる? 一体なんのことをいっているのか……

 そういえばさっきも何もないところから出てきたりしてたし。ほんと、不思議な種族だなぁ、鬼って。それとも萃香の能力とかが関係しているのかな?

 

 

「ま、取り敢えずあと1日と半分、面倒見てやってあげるよ」

 

「別に見なくてもいいよ、寧ろいらない」

 

「ほらほら、子供が遠慮なんかするんじゃないよ。私の自慢のお酒もあげるから」

 

「いや、いい。お酒なんて呑んだら僕、一瞬で酔い潰れるよ。それと僕は子供じゃない……はず」

 

「確かに昨日倒れてたね。

 あー、だからか。吸血鬼んとこのメイドと皿洗いや調理をかわり番子とかしてたのは。

 だれもその事に気づいてないから感謝もされない、そんな損しかない役目なんてしていた理由が漸く納得できたよ」

 

 

 酷い言われようだ。皿洗いとか調理は宴会では結構重役だというのに。

 まあ、僕がそれを引き受けたのは酒が飲めないだけじゃなくて、参加者が全員女の子だからなんだけどね。流石に男一人だけだと恥ずかしいんだよ。

 こんど森近さんか茂でも連れていこうかな?森近さんは兎も角茂なら喜んでついてきそうだ。

 

 ……いや、止めとこう。いかせたら最後アル中で死ぬか普通に殺されるだと思うし。僕だけじゃ守れる気がしない。

 これだけ聞くとかなり恐いね、宴会って。参加者全員女の子なのに……って殆ど人外だった!

 

 

 

「実は私、あんたの能力が気になってしょうがないんだ。預かってあげるから能力教えてくれない? 紫も教えてくれなかったんだよ」

 

「あ、そういえば僕も萃香の能力がなんなのか気になってたんだ。」

 

「へぇ、それは都合がいい。じゃあ教え合いっこしようよ」

 

「え? ……まあ良いけど」

 

 

 なんかワクワクするような表情でこっちを見てくるけどそんな強いのじゃないんだけどなぁ……まあ、僕としてはありがたい能力ではあるんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、男なのに女々しい能力だね」

 

「うぐっ、ていうか萃香の能力が汎用性がありすぎるんだよ。

 なんだよ、精神までも萃めたり散らしたりできるって。もう反則の域だよ、チートだ!」

 

「まあ、でも私をなんであんたが見えたのかがわかったよ。

 自分の身体に障害がきたすものは無意識に無効化できるんだよね。たぶん私が精神干渉であんたの眼に障害を与えたからそれで無効化されて見えてたんだろう」

 

「うん、たぶんね。でも物理的に攻撃されたら無効化できないけどね。僕の体力が尽きるまで攻められたら呆気なくやられるよ。だから僕と戦おうなんてこと考えないでね」

 

「考えない考えない。あんたなんかと戦うぐらいなら氷の妖精と戦った方がまだましだよ」

 

「……いけない、このままだと僕の心がズタボロになってしまう」

 

「これぐらいで根をあげるなんて……あんたの心はどんだけ繊細なんだい?男ならバシッと言い返すなりしなよ」バシッバシッ

 

「うわ、痛っ?!」

 

 

 萃香に背中を叩かれた。

 たぶんあっちはしっかりしろよって意味合いで軽めに叩いたつもりでもこっちとしては全力でぶたれたような痛みが走る。

 物凄く背中がじんじんする……

 

 

「さて、時間も良い具合だしご飯にしようかねぇ」

 

「ねえ、ここって僕ん家の屋根だし。普通に帰してくれない?」

 

「だめだめ、お酒がかかってるんだから」

 

「ご飯作るぐらいいいじゃないか」

 

「そこんとこの世話もしてやるっていってんの。

 まあ、見てな」

 

「?」

 

 

 そう萃香が言うと下の方から乾燥熟成肉と団子が飛んできた。

 え、ちょっとまって!?

 

 

「どうだい?私の能力があれば食糧確保なんておちゃのこさいさいさ」

 

「ちょっと、そこの鬼さん?その熟成肉と団子って僕専用保管庫兼隠し場所にあったものじゃないですか?」

 

 

 それも熟成肉は僕が自分の小遣いを奮発して買って楽しみにしていた物なのに……

 

 あ、ついでに僕専用保管庫とは僕の小遣いで買った食べ物とかを博麗神社の境内のあるところに隠している保管庫のことだ。

 生物とかもあるから氷とかを買ったりして腐敗を留めたりしていたけど最近ではおだてれば氷を無償で作ってくれる気の良いやつ(チルノ)と知り合いになったから氷を買うことはあまりなくなった。

 

 

 

「なに、折角の食べ物なのにみんなでわけずに独り占めしようとしてたのかい?こすいやつだねぇ」

 

「自分の小遣いをはたいて買った物なんだから自分がどうこうしようと勝手でしょうが」

 

「ふむふむ、口答えまでするか。

 よし、それじゃあ今度から飯はあんたの保管庫からとることにしよう」

 

「理不尽すぎる?!」

 

 

 

 やばい、このままじゃ僕の保管庫に手を出されてしまう!!

 それだけは回避しなくちゃ。

 これまでコツコツためてきた僕の楽しみが全部水の泡となって消えてしまうのは3日間部屋に籠ってないてしまうだけじゃすまないよ……

 お願い、霊夢、魔理沙早く犯人(萃香)を突き止めて!!

 

 と、いつも通りの完全な他力本願な僕であった。

 

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