僕が紫姐さんに拉致られて主犯の萃香に預けられて丸一日が経った。一度霊夢が神社へ帰ってきたけど萃香の能力のせいで僕の姿は霊夢に見えない。よって気付かれることなかった。霊夢も霊夢で『トオルが帰ってきてない……もしかして女でもできたの!?』なんて勘違いをしていた。なわけないでしょうが……
そして今日、昼前にきた妖夢と対峙し見事うちまかした霊夢は紅魔館の方へむかった。
……いつもなら姉の勝利に喜びたいんだけど今は正直そんな気分になれない。何故なら僕は今、絶望の中にいるからね。
「…………」
「なにこの世の終わりみたいな顔してるんだい?」
「……萃香、お前は許さないぞ。たった一日で僕の保管庫の食糧を食べつくすなんて」
「いやぁ、まさかあんなに溜め込んでいたとはねぇ。食べなきゃ勿体ないじゃん?」
「勿体ないじゃん?じゃない!僕がどれだけ腐らせないよう鮮度を保たせたりしてまで楽しみにしていた食料たちをこうもあっさり消えていったんだよ!」
「さっさと食べないのが悪い」
「自分へのご褒美としてチマチマ食べてました!」
「チマチマ食べてたのが悪い」
「ぐぬぬ、こ、この鬼幼女め……」
いけない、目頭に涙が溜まってきた。
僕に力がないばっかりに……!
熟成肉、団子、煮干、煎餅、『おんわ』の期間限定ででてた饅頭ケーキ……いや、これは完全に賞味期限とか切れてたからよしとして。
兎に角今言った食べ物以外にも沢山の食べ物が僕の保管庫にはあったんだ。
少しなら確かに大丈夫だった。流石に僕一人だけじゃ食べきれない数の甘物やお酒のつまみがあったからね。でもそれを食べ尽くすのは流石に駄目だと思う。
しかも甘物を頬張りながらお酒飲んでたし……あれ絶対合わないでしょ。
「ふふふーん。紫はまだかなー?早く来ないかなー?」
と、ずっと僕が萃香を睨み付けているにも関わらず、萃香は紫姐さんからもらうお酒のことで頭がいっぱいのようだ。
「ねぇ、睨まれてんのによくそんな呑気でいられるよね」
「へ?……ああ、別に睨まれたって構わないよ。普通の人間は大抵絶対的強者の前では勝つことを早々に放棄してなけなしの勇気で睨み付けてくるか誇りを捨てて無様に命を乞いをしてくるだけだしね。私になんにも被害はでない。……まあ、少し胸くそ悪くなってイライラするけど。
少しは殴りかかってくるなり根性見せろっていいたくなるね」
「うっ……」
う、確かにそうだ……
そういえば僕は萃香にたいして最初から勝つこと……いや、それ以前に戦うことすら放棄してただ睨み付けていた。
しかもましては萃香を誰かに倒してもらおうと完全な他力本願であることも……
「あんたさ、ずっと思ってたけど弱虫だよね。」
またもや的を射た言葉。
認めたくないけど僕は弱虫だ。
そんな認めてしまう自分があまりにも情けなくなる。
今回の異変の犯人は目の前にいると言うのに。
霊夢なら。魔理沙なら躊躇いもせず突っ込んでいくだろう
それなのに僕はなんだ?弱いから、他に誰かがやるだろうから。そうやって自分を勝手に逃げることにたいしての正当化したって戦わなくていい理由なんてないんだ。そんなのただの自己満足にすぎない。
そうやって目を背けていちゃ戦うべきところで勝つことなんてできやしない。
……誰だって身をはってまで守らなければならないことがあるんだから。
今回がそのいい例だ。
僕は昨日から今日まで萃香から散々コケにされ続けた。
守らなければならない。僕の、いや、『男』としてのプライドを!
紫姐さんいわく人間離れした霊力の持ち主だと言われた。……つまり僕にだって強者に立ち向かうだけの力が備わっているということ。紫姐さんお墨付きなんだからまちがいない。
やろう。いま、ここでぼくが!汚名返上、名誉挽回するために_________
異変を解決する!!!
「萃香。今暇?」
「あ?まあ明日まで暇だけど…それがどうし……………ほう、良い顔つきになったじゃん。
いいよ、相手になってあげる」
「うん、ありがとう。
でもそんなに余裕でいられるかな?これまでの僕とは一味違うよ。
覚悟ができたからね!」
「はん、人間風情が鬼に叶うと思っているのかい?
その浅はかな考え、あんたの敗北と共に葬ってくれる!」
そう萃香が言ったとともに
僕は屋根から飛び降り、弾幕を発生させた。
やってやるぞ!!
ーーー
「はっ!ここは……まさか死後の世界!?」
「あんたん家の屋根だよ」
どうやら気絶していたようだ。
……うん、コテンパンに負けましたね。
いや、勝つどころかかすり傷すらつけることが出来ませんでした、はい。
最初は牽制のつもりで出鱈目に弾幕を撒き散らしてたけど、ことこどく避けられた。牽制のつもりだったのだけどあまりにも余裕で避けられたことでむきになった僕は弾幕を高密度にしたところ、萃香がなんかブラックホールみたいなのを作り出してそこに僕の弾幕が吸い寄せられていった。
そのあとは巨大化したり分身を作り出したりしてきてやりたい放題されて、なかば自棄になって避け続けた結果、体力が尽き、そこを萃香にみぞおちをくらい、そのまま意識を手放したのが僕が負けるまで過程。
鬼、強すぎるよ……
「いやぁ、でも能力については中々だったねぇ。完全に決まった!って思った攻撃も避けられるんだから」
「いや、でもそれ以外取り柄がないんだよね」
「なにいってんのさ。これはかなり使えるよ。
相手が攻撃してくるのを避けられるんなら隙をつけるところが多々あるからね。
そこのタイミングをあわせて攻撃すれば決定打にだってなるんだよ?」
「え、ほんと?」
「そうさ、磨けば磨くほど光る鉱石のような能力だね」
まさかこれまで嫌味ばっかり言っていた萃香から褒められるなんて……
そんなに凄い能力なのかな?
と、少しいい気になった僕は立ち上がろうとした瞬間身体中に激痛が走った。
「!!?……いつつっ……なんで?」
「あー、今動かない方がいいよ。殴ったときに吹き飛んで岩やら木にぶつかってたし。たぶん全身打撲はしてるだろうね」
「……まじですか」
殴られた瞬間気絶したからそのあとの記憶がないんだよね。
でも逆によかったかも……岩とかに激突するのを考えるだけでも冷や汗が止まらなくなる。
「んー、もう夕方だねぇ」
「あ、本当だ。」
「んじゃ今日はさっさと寝ようかね。明日の宴会のためにも」
「え、またここで寝るの?」
「我慢しな。それも今日までなんだから」
「そうだけどさ……」
正直家が真下にあるんなら布団の中で眠りたい……
「ほら、飯だよ。さっさと食べて明日に備えな!なんたって宴会日だからね!」
「えー……て、それ昨日霊夢が食べてた残りじゃないか」
「気にしない気にしない」
「ほんと、僕が普通に作ればいい話だというのに……」
「今あんたは端からは決して見えない、厳密に言えば見えていてもそこら辺の小石と同じように見向きもされてない状態ってこと。まるで覚妖怪の妹みたいな状態だね」
「……さとり妖怪?」
「ん?なんだい。覚妖怪も知らないのかい?
覚妖怪とは人の心を読んで相手の思っていることを言い当てていって最終的に心を奪う妖怪さ。
……まあ、彼処のはちょっと違うけどね」
「なんかそれだけ聞くと物凄く恐ろしい妖怪だなぁ」
「いや、あんたがおもっているよりマシなやつだったよ。動物に優しいし。でも覚妖怪の本能でか知らないけどこっちが話す前にその内容とか読まれて言われたりするけどね」
「え、……てことは口に出して会話する必要なくなるよね?
なんだ、別に困ったことなんてないじゃないか」
「……そんな回答がきたのは初めてだよ。普通なら恐れたり、嫌悪したりするというのに」
「え?なんで?」
「人には……いや、妖怪にも言えることだけど何人もやましいことや隠したいことをそれぞれ持っているんだ。でもそんなのは覚妖怪には筒抜けになる。それをバラされたりでもしたらどうする?
勿論嫌だろ。だから皆覚妖怪のことを嫌っている。
私も好きな方ではないね」
「うーん、別に隠し事なんて保管庫以外に無いからなぁ。
……困ったことなんてないや……いや、保管庫のことがバレたら僕にとって結構重大な問題になるな……!」
「随分とお気楽な人生を送ってきたんだろうね……まあ、いずれそういうのも増えてくるものさ。人は誰もが貪欲に生きるものだからね」
「僕はそんな大人にはなりたくないなぁ。やましいことばかり考えて生きるよりみんなで笑いながら人生を送りたい」
「口にするのは誰にだって出来る。
…………でもまあ、それが心の底から思っていることだったとしたら……紫があんたのことを気に入ってる理由がわかる気がするよ。(単に可愛いからだけの可能性もあるけど)」
「まあ、今僕が言ったのは理想論だけどね。
でもそれは口だけじゃない。さとり妖怪の前でだって言えるよ。
今の言葉が嘘じゃないって」
「(この顔つき……嘘をついてるとは思えない感じだね……それぐらいなら覚妖怪じゃなくてもわかる)」
「ん、どうしたの?」
「ふぅ、少しあんたを過小評価し過ぎていたようだね。
気に入った!今日は眠らずに飲みあかそう!!」
「……僕がお酒飲めないことをしっててそれをいってる?」
「そんなの知ったこっちゃないよ!ほら酌してやるから飲みな!」
「……」ダッ!
「逃がすか!」
「ぐへ!?」
痛む体に鞭うって逃走を図ったら萃香のアクセサリーであろう鎖に体を絞められた。こんなことも出来るのか!?
「逃げることはないじゃないの?」
「いや、ちょっと……お酒は勘弁してもらえないかな?」
「駄目!」
「うぷ!?」
そして無惨にも萃香が持っていた瓢箪を僕の口に無理矢理ねじ込んできた。
みるみる瓢箪の中の液体が僕の体内へと入っていく。
このお酒、この前魔理沙と飲んだお酒の何倍も度数が高いね……
「ひゅへ~……」
「あ、やっぱり潰れた」
やっぱりっていうなら飲ませるなよ!、と怒りの言葉をぶつけれられることもなく僕はあえなく酔いつぶれることになったとさ。
これ、二日酔い確定だな。