東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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長らくお待たせしてすいません。
本編30話にして漸く永夜抄です。
なんですが、今回は1話完結です。


30話 欠月より満月

 

 

夜中の11時頃。先程まで寝ていた霊夢だが、妙な胸騒ぎのせいで寝付くことができず、なぜか巫女服に着替え、陰陽玉やお札の準備をし始めていた。

 

 

「やっぱりなにかおかしいわ……」

 

そう霊夢が呟くと、それを見計らったかのように彼女の目の前の時空が歪み、そこがぱっくりと割れ、その割れた隙間から妖怪の賢者が扇子で顔を隠しつつ出てきた。

 

 

「よくわかったわね、霊夢。私が見込んだだけはあるわ」

 

「紫ね。あんたはなにか気づいているの?」

 

「ええ、勿論。貴方の胸騒ぎの原因は私なのだから」

 

「だろうと思った。それじゃあ早速あんたを退治し……」

 

「ちょっとまちなさい。これには深い訳があるのよ」

 

「訳?」

 

 

そして突然現れた紫は霊夢に胸騒ぎの全容を教えた。

 

 

 

 

 

「夜を止めるなんて……随分と大層な事をしてくれるじゃない」

 

「これは致し方のないことなのよ。月の一部が欠けるなんてことは一部の妖怪にとっては死活問題になりかねない重大な事態だわ。そうなると幻想郷のパワーバランスが片寄りかねない。」

 

「それで、そうなる前に解決してこいと?」

 

「いいえ、今回ばかりは私もついていくわ」

 

「はあ?一人で充分よ」

 

「良いじゃない。私と霊夢が組めば恐いものなんてないわ」

 

「元から恐いものなんてないわ」

 

「嘘おっしゃい」

 

「(んまぁ、紫がいてくれれば幾分か楽になるだろうし)よし、それじゃあ早速解決に行くわよ。」

 

「はいはい」

 

「作戦はこうよ取り敢えず私が霊弾を出すから紫は肉壁となって私を守りなさい」

 

「貴方、私をなんだと思っているの?」

 

 

そして、人と妖怪の二人三脚の弾幕ごっこが今、始まりを迎えることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ってな感じで二人とも異変解決に行ったよ」

 

「はぁ、やっぱりか」

 

 

嫌な気配がしたので起きてみれば案の定、異変が起きていた。

そして今、そこらを霧になって漂っていた萃香からその概要を聞かされている。

 

 

「いやぁ、今回は楽しくなりそうだね!霊夢や紫だけじゃなく、吸血鬼達や魔法使い組、さらには亡霊姫らも今回の異変に乗り出しているんだから!」

 

「え、魔理沙だけじゃないの?」

 

 

魔法使い組ってことは魔理沙と他の誰かが組んでるってことかな?

僕の知っているなかではアリスかパチュリーさんぐらいだけど……

 

しかも今回は魔理沙だけじゃなくレミリア達や幽々子さん達も異変解決にいってるってこと?

 

 

「あの紫姐さんやレミリアが自ら出てるって事は……今回の異変はそれぐらい危険な事ってことなのか……」

 

「うーん、危険かねぇ……」

 

 

と、萃香は疑問気に返答する。

そりゃあ萃香レベルの強さになったら異変なんて暇潰し程度にしかならないだろうさ。

 

 

「うーん……」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

 

さて、ここで問題ができた。この前、僕の隣で伊吹瓢の中に入っているお酒を飲んでいる萃香が起こした異変で僕は覚悟を決めていた。

『男』としてのプライドとして、異変は自分で解決する、他力本願はやめようと。

 

でも覚悟のことについては誰にも言ってない。だから別に実行しなくても誰もなにも文句は言わない。実際僕もあのときの覚悟はとっくに切れている。

 

しかし、だ。あのときの僕は人生で初めてといっても過言ではないほどの覚悟で萃香に立ち向かった。

 

そんな一斉一代の覚悟をやる気がなくなったからと無下にしていいものなのか……

 

 

その葛藤が僕の脳内で現在繰り広げられているんだ。

異変を解決しに行くか否か。

 

 

「あんた、もしかして異変解決にいこうか迷ってんの?」

 

「え?なんでわかったの?」

 

「そりゃわかるさ。前に私が起こした異変の時、『覚悟ができたからね!』とかいってたからね。たぶんその覚悟ってのは自分が他力本願なんかやめて自分で異変を解決するってことじゃないの?

だからその覚悟を無下にしたくないから今回の異変を解決しにいこうか迷ってるんでしょ」

 

「…………」

 

 

萃香って超能力者なの?僕の考えてたこと完全に射ぬいてるんだけど……まるでこの前話した覚妖怪みたいだ。

 

 

「はぁ、あんたってば。わっかりやすいねぇ」

 

「わかりやすくて悪い?」

 

「悪いとはいってないよ……それよりもあんた。迷ってる暇があるなら行った方がいいよ。一度決心したことなんだ、曲げるような真似をしたら私が許さないよ」

 

「……わかったよ。いくよ、行けばいいんでしょ!」

 

 

はぁ、迷ったそぶりなんてしなきゃよかった。

ま、でも決めたからには仕方ない。行くか!

 

 

「て、促したはいいけどあんたじゃ十中八九返り討ちされて終わるだろうね」

 

「……ねぇ、急にそんなこと言わないでよ。今ので僕のやる気結構失ったよ」

 

「と、いうことで私があんたに試験を与えよう。もしそれに合格すればあんたの力を認め、異変解決に向かわせてあげようと思う」

 

「えぇ……」

 

なんだよ試験って……

 

「んじゃ、試験の内容を発表するよ。」

 

と、萃香が次に発した試験の内容はとんでもないものだった

 

 

    「『私に一発攻撃を当てる』」

 

「はい?」

 

「簡単でしょ?」

 

「いや、難しすぎるって!?この前僕萃香に掠り傷一つつけられず無惨に負けたじゃないか!」

 

「ん?でも最近修行つけてやってるだろ?なら大丈夫、成長してるよ。……たぶん」

 

「修行って……ただのリンチじゃなかったの?あれ。」

 

 

萃香の分身20体の攻撃を避け続けなければならないほぼいじめな修行をさせられたのはまだ記憶に新しい。

 

 

「まあそんなことはどうでもいいさ。ほら、さっさとかかってきな。早くしないと霊夢らが異変を解決しちゃうよー?」

 

「萃香……もしかして最初からこれが目的で僕を誘導したの?」

 

「…………なんのこと?」

 

 

あ、やっぱりそうだったか。この鬼め。おおかた霊夢達の戦いを見て自分も戦いたくなったからだろう。

それの相手として僕を選んだな?

僕と戦ったって全然面白くないというのに……延ばすだけ延ばして結局僕の体力が尽きてノックダウンが良いところなのにね。

 

 

「ま、いいや。考えるだけ無駄か。」

 

僕が萃香に一撃かますことなんてほぼ0%だ。

そしてこのときにとる僕のとる行動は決まっている。

 

……よし、行くか!

 

 

そして僕は萃香とは逆方向を全力で飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ~迷いの竹林~

 

 

「まさかあそこで逃げるとは思わなかったよ」

 

「はぁ……はぁ……はぁ……やっぱ……無理か」

 

 

はい、捕まりました。

やはり鬼というべきなのか、逃げる事だけなら幻想郷一と自負している僕を捕まえる事ができるとはね。

 

「あーあ、あんたを追いかけている間に夜明けが来たよ。月も元に戻ってるし……」

 

「だ、だから僕も行こうとしてたじゃないか……」

 

そう、今回の異変は前にてゐと会った迷いの竹林の中で起きていた。

なんでわかったのかって?そんなのは簡単。一番危険な場所を僕の能力で調べてみたら迷いの竹林が出てきたんだ。だから今、迷いの竹林の方にきてる。

まぁ、現在萃香に鎖で巻かれて身動きとれないんだけどね。

久しぶり、鎖、前の異変以来だね 

 

 

 

「あれ?萃香じゃない?なんでこんなところに…………ってトオル!?」

 

と、遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

あの声は……紫姐さん?

 

 

「紫姐さん!」

 

声の発生源の方を首だけ動かして見るとそこには間違いなく、紫姐さんがいた。

 

 

「あれ?紫、霊夢と一緒じゃなかったの?」

 

「霊夢は先に帰ったわ。眠いって言ってね。……それよりも萃香、これはどういうことかしら?返答次第では貴方を隙間旅行へ案内しなければならなくなるけど」

 

萃香に紫姐さんが怪訝な顔つきで尋ねてくる。

よし、萃香。隙間旅行へ行ってらっしゃい

 

 

 

「いやぁ、それがさぁ。トオルがどうしても異変解決するって聞かなくてさ。私が止めようとしたんだけど結局ここまで来ちゃったわけだよ」

 

「え?」

 

な、何をいってるんだ萃香!?確かに異変解決に行くっては言ったけどそれを誘導したのは萃香だし、ここまで来たのも萃香からにげてきた訳で……

 

「…………」

 

「紫姐さん、どうしたの?」  

 

「トオル……張り切るのは良いことだけど」

 

と、紫姐さんは腰を下ろして僕の顔にそっと手を添えた。

 

「自分に出来ることを精一杯すればいいの。出来ないことを無理にやろうとすることはただの愚か者よ」

 

と、哀れみの顔で僕に微笑んできた。

ゆ、紫姐さん……

 

「わ、わかったよ……紫姐さん。僕、自分に出来ることを頑張る」

 

「良い子ね」ヨシヨシ

 

紫姐さんが僕の頭を撫でる。

 

なんだろう。いつもなら嬉しいんだけど今回ばかりは全然嬉しくない。

というより紫姐さん、誤解してる。たしかに異変解決に行こうとはしたけど、それを促してきたのは今、紫姐さんの後ろでニヤニヤしながらお酒を飲んでる鬼なんだよ……

 

 

「それじゃあ、いきましょうか。久しぶりに動いたから疲れたわー」

 

「そうだねー。んでもすぐに宴会でしょ?」

 

「そうね。今日の夜にでもやるんじゃない?」

 

 

紫姐さんと萃香はそんな会話をしつつ去っていく。

僕は萃香の鎖からは解き放たれたけどいまだに倒れたまま、動かずにいた。

 

 

「トオル?そんなところで倒れてないで早く来なさい」

 

「……いや、あとでいくから先にいってて良いよ」

 

「?……そう、それじゃあ先に行ってるわよ」

 

 

と、紫姐さんが言ったあと二人とも飛んでどこかへいってしまった。

 

「はぁ、今日はなんか……疲れた。」

 

 

仰向けの状態になり上を見上げてみる。

まだ空は少し薄暗いけど、朝日が竹と竹の間から差しこんでくる。

竹の笹が動く音が心を沈ませてくれる。

そんな安らぎの空間の中、僕は一言呟いた。

 

 

 

「もう……萃香の言うことは絶対に聞かないぞ」

 

 

 

これが今回、霊夢達が異変を解決しにいってるときに僕が学んだ教訓だった。

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