驚いて能力を発動させちゃうお茶目な鈴仙視点です。
「はぁ、疲れた」
「ご苦労さま、はい、お酒」
「霊夢…僕が飲めないのわかってて言ってる?」
僕はいつも通り宴会に出す料理を作っていた。
それで今、やっと一段落して休憩している最中だ。
「でもトオル、なんであんたは宴会に参加しないの?」
「いや、だってほら、僕お酒飲めないからさ。あんなアルハラの化身らの中に飛び込んだら一秒もたたずに意識を手放す自信があるよ」
「まぁ、たしかに。トオル、ほんとお酒駄目だし」
そう霊夢の声を聞きつつ、外の景色を見てみる。
そこには楽しそうにお酒を酌み交わしている皆の姿が見える。みんな頬を赤に染めつつ満面の笑みで笑っていて楽しそうだな。
あ、萃香とチルノがお酒の飲み比べしてる……あ、チルノがつぶれた……どんまい
……はぁ…なんでみんなお酒飲めるんだ……ま、それでもいっか。
「まあ、でも」
「ん?」
「僕がこういう裏方をしているから皆がああやって楽しくできてるって思うとさ。なんだかこれも案外楽しく感じられるよ」
「……そう」
それにあの空間には女の人しかいないから恥ずかしいんだよね
「それじゃあ私は戻るから」
「わかった。楽しんでいってね」
そう言葉を交わし、霊夢は外の方へいってしまった。
「さて、休憩もこれぐらいにして始めるか」
まずはさっき咲夜が持ってきてくれた皿を洗うことから始めようかな
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「あの、誰かいませんか?」
「え?あ、はーい」
皿を洗い終え、残り少ない食材でどんな料理を作ろうか考えていると玄関の方から呼ぶ声が聞こえてきた。
誰なんだろう?入るのにいちいち声かけてくるなんて……
そんな事を思いつつその呼んだ本人のいる玄関に着くと
「あ、鈴仙」
「あ、あんたは昼にあった……」
そこには人参が沢山つまった箱を持っている鈴仙がいた。
あー、どうりで声なんかかけるわけだ。僕の知っている連中の中にそんな常識的な人間(妖怪)はほとんどいないしね。
「それで、どうしたの?」
「あっ、とこれ……師匠が持っていけって……」
と、鈴仙が持っていた人参の詰まった箱を差し出してきた。
「え、くれるの?ありがとう!」
「べ、別に私からじゃないわよ。礼を言うんなら師匠に言って……」
「……そっか。それじゃあ鈴仙の師匠って人にお返ししなきゃなぁ」
「!!?」
それに鈴仙の師匠っていう人に興味がある。
師匠、師匠かぁ~。なんかこう、『ししょう!』っていう響きが良いよなぁ。一度でいいから呼ばれてみたい
「(え?どうして?)……お、お返しなんてしなくてもいいわよ……」
「え、そう?」
ああ、でもこんなに人参も貰ったんだしやっぱりお返ししないと……
「うーん…」
「そ、それじゃあ私は行くから!」
「あっ、ちょっと!…………いっちゃった」
まだ聞きたいことがあったんだけど……やっぱり鈴仙は人見知りなのかな?僕と喋ってるときもどこかよそよそしかったし。
「ま、いっか。取り敢えず食材確保ができてよかった。丁度今不足してたんだよなぁ」
よし、まずは人参のきんぴらにでもしようかな。
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「ハァ…ハァ…ハァ…」
なんで?なんでなの?
私は師匠達のいる場所に走りながら先ほどのことに驚愕していた。
「なんで私の目を見てるのに狂わないの?!」
そう、今の言葉から分かる通り、私の能力が効かなかったのだ。
あのとき、私は師匠に『これで料理でもしてもらいなさい』と命じられ、神社の中にいる料理している人の所へ人参を渡しに行った。
自分でいうのもなんだけど私は人見知りだ。だからあまり知らない人と長話なんてできない。
そして神社の中にいた博麗の巫女の弟(トオルといったかしら?)と会った。
このとき、私は冷静を保っていたけど心臓はバクバクだった。トオルとは昼にてゐと手伝いに行ったときに会ったので初対面じゃなかったので顔は知っていたけど、それでも殆ど会話をしていなかったので正直初対面とあまり大差はない。
(早く渡してさっさと戻ろう……!)
そう心で呟きつつ、私はトオルに人参の入った箱を渡す。
「え、くれるの?ありがとう!」
「べ、別に私からじゃないわよ。師匠が持っていけって言って……(ああもう!そんなのいいから早く帰らせて!)」
このとき、私は早くこの場から離れたいと願っていた。
師匠や輝夜さまの所にきて30年近く永遠亭の者以外と話しておらず、つい昨日起きた異変で久しぶりに他人と話したばかりの私にはこれが限界だったからだ。
そしてさっさとこの場から離れようとしたとき____
「……そっか。それじゃあ鈴仙の師匠って人にお返ししなきゃなぁ」
「!!?」
まさかの発言。私は驚きと少しの苛立ち、そして極度の緊張により、思わず能力を発動させてしまった。
私の能力は『物の波長を操る程度の能力』。
この能力でトオルのあらゆる波長に障害をもたらしてしまったのだ。
こうした場合、普通の人なら軽くて一時的に五感に障害が起き、最悪の場合は廃人になる。
「(ど、どうしよう……あの巫女に殺される……)」
もしトオルが最悪な場合になったときは、姉であるあの霊夢に殺されるのは必須だ。その事だけはどうしても避けたい。
どうか軽い症状で留まってと、淡い期待をしつつ恐る恐るトオルをみてみる。
すると__
「(え?なんで?)」
平然と立っているトオルがそこにはいた。
勿論私が渡した人参の入った箱を落としたりはしていない。
「お、お返しなんてしなくてもいいわよ……」
取り敢えずトオルへの返答をする。
え……私の能力が……効いてない……?
ちょっとまって。理解が追い付かない。ここは落ち着くためにもここを離れなければ……
「そ、それじゃあ私は行くから!」
「あっ、ちょっと!」
トオルが今なにかいったような気がするけど気にする余裕なんてなかったため、無視することにした。
はぁ、なんで能力が効かなかったんだろう……思えばあのとき私自身の波長を操ればあんな失態しでかす事もなかったけど……こんなこと初めてだ。異変の時、白黒の魔法使いやメイド、剣士、さらにはあの暴力巫女にすら効いたというのに……
「はぁ、結果的には私は助かったけど……それなりに自信があった能力が通用しないとなんかショック……」
と、宴会会場から少し離れた場所にあった木のひとつにもたれ掛かる。
私の『物の波長を操る程度の能力』は汎用が高く、とても便利なものだ。弾幕ごっこの時にもこの能力を使い、相手を惑わすスペルを使って翻弄したりもした。
「はぁ、こんなに役に立つのに」
今まで混乱状態だったけど、能力を活かして波長を整え、正常な状態に戻す。
これを随時使っていれば極度の緊張をしていても難なく初めての人にも平然と話せていたのに。30年という間にその方法をすっかりわすれていた。
「はぁ……まずは師匠達の所に戻ろう。……今度またあの子に会ったら一応謝っておこう。効かなかったとしても危ない目にあわせようとしたんだから」
人と話すのは苦手だけどこればかりはしょうがない。謝らないと私の良心が痛む。
「ニヒヒ、鈴仙なにしてんのー」
「げっ、てゐ」
うわ、ここで一番会いたくない奴が来た。
「なんであんたがここにいんのよ。ここは宴会場から離れてるわよ」
「それはこっちの台詞、なんで鈴仙がここにいるの?」
「ぐっ、そ、それはちょっと酔い覚ましに……」
「んじゃ、私もそれで」
「あ、あんたねぇ」
てゐの奴、私をからかってるわね……
「んじゃ、冗談はこれぐらいにして。戻るよ」
「へ?」
てゐにまたからかわれる可能性があると身構えていたらまさかの発言。
「わ、私だって戻ろうとしていたところよ」
「お、丁度良かった。それじゃあてつだって」
「……なにを?」
なんだか嫌な予感が……
「まぁ、来れば分かるって」
「え?あ、ちょっと待って!」
と、宴会会場の方へ走り出したてゐの後をついていってみる。
面倒事は止めてほしいんだけど……
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「配膳?」
「そう、配膳。一人だけじゃ間に合わなくてさぁ。ほら、特に彼処にいるピンク色の髪の亡霊。大皿の料理を一口で平らげてるよ」
「うわぁ……」
確かにあの食いっぷりは軽く引くレベルだ。
まあ、でも良かった。配膳ぐらいならお安いご用よ。
「あ、この料理……」
博麗神社の母屋の玄関前にある机の上に置いてあった料理に私は目を奪われた。
「あ、それ?人参のきんぴららしいよ。さっき味見(盗み食い)したけど結構美味しかった」
「あんたねぇ……」
他にも人参を活かした料理がいくつもある。こんな短時間でこんなに作れるなんて……
「ほら、鈴仙。あんたも食べてみれば?」
「あ……うん」
確かに少し食べてみたい。
そう思いつつ近くにあった箸で人参のきんぴらを一摘まみしてみる。
そしてそっと口の中に含んでみると__
「か、辛っ、!?辛い!!なにこれ!!?!」
「あ、ごめーん。さっき一味足せればなぁっと思って唐辛子粉沢山いれちゃった」
「……てゐっ……!」
「あーもー、そんなに怒らなくてもいいじゃん。気楽にいこうよ気楽にー」
と、口笛を吹きながらてゐは逃げた。
「ちょっとまちなさい!今日という今日は絶対に許さないわよ!」
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~一方その頃~
「うどんげ達、いつになったら戻って来るのかしら……」
「どうせまた追いかっこでもしてるんじゃない?」
「あら、それは大変。ちゃんと人参を届けてくれたかしら?」
「まぁ、大丈夫でしょ。そんなことよりも久しぶりに外に出たんだから羽目を外さないと!」
「それもそうね。____輝夜」
鈴仙を臆病にし過ぎた感があります。
まぁ、その性格も今後の展開で直していこうと思います。