東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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42話 肝試しという名の弾幕ごっこ(後編)

 

「肝試し?」

 

「そう、肝試しよ。姫から誘ってくるようにって頼まれたの」

 

 

魔理沙と鈴仙という珍しい組み合わせとお昼を済ませた後、食後のお茶を啜っていると鈴仙がそんなことを言ってきた。

……肝試しってこの時期にするもんなのかなぁ……もう10月も終わるって頃なのに……

 

 

「ほう、それは楽しそうだな。でも不可解な事があるぜ。

なんで前にお前らの異変の解決に乗り出したペアでいかなきゃならないんだ?」

 

「それは……あれよ、ほら……一人だと怖くても二人なら怖くないでしょ?」

 

「そういうわけではないんだが……それに私は別に一人でも平気だぜ」

 

 

……はあ、あれか。いつものパターンのやつね。萃香の時無かったからすっかり忘れてたよ。

 

いつものパターンというのは勿論異変の残留のことだ。どんな異変でもなにかしらこういったものがある。

レミリアが起こした異変の時はフランドール。

幽々子さんの時は紫姐さん達。

それで、今回。おそらく肝試しにいった場所に誰かがいるんだろう。

 

 

「魔理沙、察してあげな。」

 

「あ?何を察するん……ああ、あれか。」

 

 

漸く魔理沙も気づいたようだ。しかしいつもの余波のことを気付いた魔理沙は受け入れ体勢ではなくなんだか嫌な顔をしていた。

あれ、いつもならどんなやつでもかかってきやがれ!返り討ちにしてやる!!って言って啖呵切るのに……

 

 

「魔理沙、なんかあったの?」

 

「お、トオルは分かったか。実はさっき霊夢のやつと会ってな、成り行きで一戦したんだ」

 

 

魔理沙、何やってんの?霊夢、朝から妖怪退治で疲れてるんだよ?

 

 

 

「んで、霊夢が本調子じゃないことを良いことに全力で攻めて勝ったんだけど……」

 

 

いや魔理沙、本当に何やってんの?

調子が悪い霊夢に全力で落としにかかるって……ほら、鈴仙もひきつった顔してるよ。

 

 

「お陰で魔力が枯渇気味なんだよなぁ……」

 

「夜中からとは言わず、今すぐ肝試しに行ってこい」

 

「私もそう思う……」

 

 

完全に自業自得だ。しかも霊夢を……よりにもよって霊夢を倒すなんて……時期が悪すぎる……

 

 

「そ、それじゃあ私は他の人達にも知らせに行かなくちゃいけないから……お昼ありがとね」

 

「あ、うん。またおいでね」

 

 

そう僕が言うと正座の状態から立ち上がり、軽く会釈をして玄関へと歩いていく。

 

 

「……さて、トオル。食後のデザートはまだかね?」

 

「人の姉が弱っているところに全力で潰しにかかったやつにデザートなんてないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ---

 

 

 

「ふぅ、疲れた」

 

 

カステラを魔理沙と食べ、居間でのんびりしていると縁側からそんな声が聞こえてきた。

……この声は霊夢か。

僕が霊夢だと認識したちょうどその時、障子が開かれた。

 

 

「あー!魔理沙!」

 

「よ、霊夢。邪魔してるぜ」

 

「あんた……よくのこのこと……!!」

 

 

どうやら魔理沙が言っていたのは本当の事のようだ。霊夢があきらかに怒りを見せてるし服がボロボロだ。また森近さんに縫ってもらわないとなぁ……

 

 

「取り敢えず霊夢、お風呂沸かしてるから入ってきたら?泥だらけだよ」

 

「トオル……あんたやけに手際が良いわね。

もしかして私がボロボロな理由魔理沙から聞いた?」

 

「うん」

 

「それなら思ったことがあるわよね?」

 

「うん、呆れた」

 

「なんでよ!?怒りなさいよ!」

 

 

声を荒げてちゃぶ台をばんと叩く霊夢。

おお、霊夢がこんなに感情を現すなんて珍しいな。

 

 

「霊夢、そんなに怒ったところで結果は変わらないぜ?ほらほら、泥遊びした後みたいに汚れた身体をさっさと洗ってきな」

 

「あんたのせいでしょうが!」

 

「霊夢、ここで暴れると身体についた汚れが飛び散るから!やるなら入った後にして!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ---

 

 

霊夢がお風呂から上がり、早速魔理沙と取っ組み合いを始めたので、それを止めたあと、僕は鈴仙から聞かされた肝試しに事について話した。

 

 

「嫌よ、どうせ輝夜って奴がなにか企んでるんでしょ。そんな面倒なこといちいち関わってられないわ」

 

 

だよねぇ、僕もそう思う。

 

 

「んー、私もだなぁ。今日はもうゆっくりしたい」

 

「え……ってことは鈴仙がここに来た意味って……」

 

「「ないな(わね)」」

 

 

はあ……なんだか鈴仙が可愛そうだな。輝夜さんの思い付きに付き合わされ、人見知りなのに幻想郷の実力者達を誘いに行ってるのに来てもらえないなんて……

 

 

「そういえば鈴仙のやつ、『異変の解決に乗り出したペア』で来るようにっていってたな」

 

「ああ、それなら紫一人で行かせればいいじゃない」

 

「お、それなら私もアリスだけ行かせるか。

あ、いっそのこと紫とアリスの二人で行かようぜ」

 

「それいいわね」

 

いやそれ、異質すぎるペアの完成だよ。

アリスと紫姐さんの組み合わせ?一体どんな会話をするんだろうか……なんだかちょっと少し気になるな。

 

 

 

 

「私は嫌よ、あの人形遣いと行くのなんて」

 

「あ、紫姐さん」

 

 

噂をすれば大体来る紫姐さん。今回はちゃぶ台の真ん中に隙間を開けて入ってきた。

 

 

「あらあら、もうちょっと驚くと思ったんだけど」

 

「驚きよりもお茶をこぼされたことに対する怒りの方が強いわね」

 

「あと盗み聞きもな」

 

 

明らかに不機嫌な顔をする霊夢と魔理沙。

それを見た紫姐さんは顔を扇子で隠しつつクスクスと笑っていたが、霊夢を見た瞬間、笑みが消えた。

 

 

「霊夢、貴方霊力が……」

 

「あら、わかったの?今はガス欠、迷惑妖怪ととある迷惑魔法使いのせいでね」

 

 

と、霊夢が言うと紫姐さんはジト目で魔理沙をみる。

すると魔理沙は自分は関係ないとばかりに口笛を吹いてそっぽを向いた。

はあ……魔理沙、そんなベタな誤魔化し方、ほんとにする人初めて見たよ……

 

 

「……どうしようかしら」

 

「行かなければいいじゃない」

 

「いや、行くわ。折角久しぶりに合間が取れたもの。有効活用しなきゃ」

 

 

なにかを思案するように紫姐さんが目を瞑る。

……なんだろう、僕の危機察知能力が逃げろと知らせてくる。

これまでの経験上、僕の危機察知能力の知らせる危機の的中率は100%だ。ここは従ってこの部屋を出るが吉とみた。

 

そう思い僕は立ち上がり、縁側の方へ行こうとすると_____

 

 

「あ、そうだわ!」

 

 

そう紫姐さんがいいつつ、僕の腕をしっかりと握ってきた。

 

それを僕が振りほどいて縁側を出ようとしたのは掴まれた1秒後のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 ~迷いの竹林~

 

 

 

「いやー!!?な、なんでこんなに妖精強いの?弾幕凄すぎるって!紫姐さん!紫姐さんヘルプ!死にます!僕死にます!!」

 

 

なんでこうなった。

 

現在、僕と紫姐さんは迷いの竹林の中を飛んでいる。

そしてなぜか迷いの竹林の中には大量の妖精がいて、尋常じゃないほどの弾幕を放ってくる。

正直、もう体力が尽きそう……くう、結局行くんだったらアリスが良かった!

 

 

「なんだかんだいって全部避けてるじゃない」

 

 

そういいながら紫姐さんは的確に妖精を落としていく。もう紫姐さんだけでいいんじゃないかな?なんで僕を連れてきたの?

そう疑問に思っていると奥の方から気配がした。

 

 

「紫姐さん!」

 

「ええ、どうやら中ボスのようよ」

 

 

僕と紫姐さんがその気配まで近づくとそこには_____

 

 

 

「慧音先生!?」

 

「ん、誰だ……トオル!?」

 

 

そこには紅い瞳を輝かせ角を生やした慧音先生がいた。そっか、今日は満月だからハクタク化したのか……

あれ、ていうかなんでこんなところに慧音先生がいるんだ? 

 

…………それにいつもなら慧音先生には僕の危機察知能力は作動しないのに今の慧音先生からは今すぐ逃げろと危険信号を発してるんだけど……

 

 

「まさかトオルまで”あの方“を狙っているのか!」

 

「え?」

 

「そうはさせんぞ!教え子だとしてもここから先へは行かせない!」

 

 

そう言って慧音先生はスペルを宣言してきた。

ええ!!?なんで?!あの方って誰?!?

 

 

「トオル、ここは私に任せておきなさい。」

 

「う、うん……」

 

たぶん今の慧音先生に何を言っても聞いてくれないだろう。僕の危機察知能力がいまだに危険を知らせてくるから間違いない。

ここは言う通りに紫姐さんに任せた方がいいだろう。

ハクタク化した慧音先生は強いと聞く。でも相手は妖怪の賢者と呼ばれこの幻想郷内でも最高クラスの紫姐さんだ。負けるとは思えない。

そう判断した僕は速やかに紫姐さんと慧音先生の戦う位置から退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ---

 

 

 

「さ、急ぎましょ」

 

 

無事に勝つことができたようだ。

今、僕は気絶している慧音先生を妖精の流れ弾が当たらなさそうなところに置いている。

 

 

「あ、ちょっと雑魚処理は頼んだわよ、私は少し休んでおくから」

 

「え、ちょ……紫姐さん?」

 

 

そういうと紫姐さんは隙間の中に入っていく。

ぼ、僕にどうしろって言うんだ……

 

 

 

「うわっ!?」

 

 

紫姐さんが入っていた今は無き隙間を眺めていると急に後ろから弾が僕の顔を横切った。

 

 

「なんだ?…………あ」

 

 

何事かと後ろを振り返ると、さっきまで慧音先生と紫姐さんとの戦いに巻き込まれるのを避けて何処かにいっていた妖精の群れが、ここぞとばかりにほぼ隙間なしの高密度弾幕を放っていた。

 

……あ、死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~~10分後~~

 

 

「ぬおおおお!!!」

 

 

あの隙間が殆ど無かった弾幕を一応持っているスペルカードで防ぐ事に成功した後、僕はしつこく空を飛ぶことを続けている。

いい加減出てきてもいい頃なんだけど……

 

そう思っていると段々妖精達の姿が消えていき、ついには1匹もいなくなっていた。

 

あれ、ついに着いちゃった?

 

 

「あ?誰だお前」

 

 

そして竹林の奥には男性っぽい口調の白(銀)髪の女の子がいた。なんかもんぺを着ていてポケットに手を突っ込んでいる。

印象だけをみると気の強そうな人だ。

 

 

 

「紫姐さーん、出番だよー」

 

 

ここまで来たら僕の出番はない。後は紫姐さんに任せよう。

 

 

「おい、いきなり無視か?」

 

「あ、いや、そういうわけじゃないよ」

 

 

おっと、相手の機嫌を損ねさせると僕の寿命が短くなるから気を付けないと……

 

 

「僕の名前は博麗通。通り名は特にないけど魔理沙からはよく『プライドのプの字もない逃げ腰男』って言われてるよ」

 

「そ、そうなのか……」

 

 

あれ?うどん屋の先輩の大和さんから教えてもらった自虐ネタ、あんまりウケてないな……

 

 

「ごほん……私の名前は藤原妹紅。不死身な身体を持ったただの竹林の案内人だ」

 

 

「こんにちは妹紅さん」

 

「?こんにちは。今夜中だけどな」

 

 

さて、どうしようか。さっきの僕の呼ぶ声に紫姐さんは反応を示さなかった。

おそらくわざとだろう。なんでかっていうとこれも紫姐さんの策略だと思ったからだ。

紫姐さんは僕とそこにいる妹紅さんを戦わせようとしているんだろう。確かに僕は足止めや相手の体力を無駄に削らせるのは得意だ。だってずっと避けてればいいもん。たぶん紫姐さんはそうやって体力を奪われた妹紅さんを倒すつもりだ。今朝の魔理沙が霊夢をやったときのように……

 

本当は嫌だけどやるしかない。今日は調子がよく、体力はちょっと危ないが霊力は有り余っている。

それに初めて異変に本格的に(残留だけど)関わっているんだ。たまには霊夢達の気持ちもわかってあげないと!

 

 

「今日はやけに妖精達が騒がしいと思ったら……さてはあいつの仕業だな?あわよくば私を始末しようと……はん!私はお前と同じ体質だから死なないから意味ないっての!」

 

「あいつ?」

 

「え?……ああトオル?って言ったっけ……トオル、あんたを雇った相手だよ」

 

「え、え……雇ったって……」

 

もしかして輝夜さんのこと?

 

 

「さて、そういうことならやることは1つだな」

 

 

と、妹紅さんが指をポキポキと音を鳴らし、戦闘体勢に入る。

 

はあ……なんか勘違いしてるみたいだけど結局始まるのか、弾幕ごっこ……

  

 

 

 

 

 

「ここまで来て悪いがお引き取り願うよ、ひょろっちい殺し屋さん!」

 

「幻想郷1を自負する僕の避け技、とくとご覧に見せよう!」

 

 

 

弾幕ごっこでは定番とも言える殺し文句を交わし、ついに妹紅さんとの弾幕ごっこが始まった。

 

ふう、1度言ってみたかったんだよなぁ……ってそんな事考えている場合じゃない!集中しないと!

 

 

 

 




妹紅の口調どっちにするか迷ったんですが……
話を誤魔化す時は女性口調、日常会話では男性口調ということにしました。
あと、初のバトル展開!てな感じに終わってますが勿論のこと省きます。結果はもう……見えてますから。
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