東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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43話 作戦失敗と明日の企み

 

 僕が妹紅さんに勝負を挑んでから2ヶ月後、幻想郷では銀世界が広がっていた。

 

 

「トオルー」

 

 

 妹紅さんとの勝負の結果は、惜敗(惨敗)してしまい、途中で参戦した紫姐さんが見事に妹紅さんを倒していた。

 本当はそれで終わりだったんだけど……紫姉さんが妹紅さんを倒した直後、幽々子さんペアとレミリアペアが弾幕ごっこをしながら移動している所に遭遇してしまい、妹紅さんと紫姐さんも含んだ大乱戦と化してしまった。

 

 まあ、傍観者の僕から言わせてもらうと、あれはもう凄かったね。なにかの頂上決戦かってぐらい迫力があった。まず、幻想郷でも屈指の実力者らが迷いの竹林で争いを始めたんだ。巨大なクレーターができたぐらいで済んだのは、不幸中の幸いかもしれない。

 

 

「トオルってばー」

 

 

 あのとき僕が妹紅さんに負けたのは、逆に幸運だったのかもしれない。

 うん、それもそうだ。もしあそこで僕が妹紅さんに勝っちゃってたら、あんな隙間ほぼなしの弾幕乱戦に参加させられる羽目になってたんだ。

 あ、決して負け惜しみなんかじゃないよ。もし勝ったらの話をしているんだ__万一に勝機なんて無かったけど。

 

 

「炭が切れたから納屋まで取ってきて」

 

 

 思えば何で僕があんな戦地に行く羽目になったんだ。紫姐さん、いってたじゃないか。無謀なことをするなって。なのになんで僕をあんな戦地に連れていったんだろうか。

 それこそ無謀なことだと思うんだよね。

 

 

「ねー、話聞いてるー?」

 

「……」

 

 

 でもあのときは掠り傷程度で済んだからよかった。ほんと、幸運だったとしか言いようがない。

 弾幕ごっこは遊戯とはいえかなり危険だ。チルノとやるときなんて、2回やったら1回の確率で氷付けにされるし……

 だから今回は比較的ましな方だ。

 まあ、妹紅さんが手を抜いてくれたからだけどね。でもあれは反則でしょ。だって炎の弾とか放ってくるし……避けたって熱いし、当たったら服は焦げるしで付属効果がいっぱい_____

 

 

「トオル!聞こえてんでしょ!さっさと取ってきて!」

 

「嫌だ!」

 

 

 おっと、とうとう霊夢を怒らせてしまった。あのときの話はこれぐらいにしておこう。

 

 

「なんでよ! すぐそこでしょ!」

 

「だって納屋に行くってことは、1度炬燵からでなきゃいけないってことでしょ! こんな寒い中炬燵から出るなんて自殺行為にも程があるよ! 弟を殺す気なの?!」

 

「なわけないじゃない! 屁理屈言ってないでさっさと行け!」

 

「わかった! それじゃあじゃんけんしよう! それなら文句ないでしょ!」

 

 

 冬___冬と言えば前にアリスから仕立ててもらったコートが役に立つ季節だ。

 だけど残念、今年はもうアリスのコートを使うことはない。

 何故かって?……それは僕が秋に死ぬほど頑張ったからだ!

 僕は冬が四季の中で一番嫌いだ。理由は勿論、寒いから。

 そんな冬嫌いな僕は、冬になる前の秋に、うどん屋の仕事を週3から週7にかえて頑張り、昼休み中や家では空腹や眠気に耐えながら内職をした。そして貯めに貯めたお金を冬に備え、一時は人里に買い物に行かなくても大丈夫なぐらいの食材と備品を購入。腐りやすい肉や魚はチルノに凍らしてもらった。

 これにより僕の『今年中家でぐーたらするぞ計画』の大半のプランを完了させた。

 そして最後、うどん屋の仕事を今年中休ませてもらうのを店長に頼むことだったが、それはもう1週間前に了解をとっている。

 

 僕がこれほど頑張ったのは、かなり久しぶりかもしれない……どれほどまでに冬が嫌いなのかが伺えるね!

 

 後は僕が今年中、家で炬燵の中でぐーたらしていれば計画は完遂する。

 だからアリスからもらったコートは今年中は必要ない。来年になったら流石に休みがとれないから使うことになりそうだけど。ていうかこの事、アリスに言ったら殴られそうだね!

 

 

「……ふぅ、仕方ないわね。これで負けても文句とか言わないでよね」

 

「ふふ、受けたね霊夢。言っておくけど僕、じゃんけんには自信があるんだ」

 

 

 苦あれば楽あり。そんなことわざがある。

 その理屈が正しければ、秋の間を仕事三昧で苦しかなかった僕は、今は楽をすることができるはず。

 

 

「行くわよ___」

 

「うん___」

 

「「じゃーんけーん!」」

 

 

 つまり言いたいのは…………このじゃんけんで勝って楽をするってことだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

「はあ……」

 

 

 負けました。お陰で着る予定もなかったコートを着ることに。

 まあでもアリスがコートにかけた魔法のお陰で全然寒くない、はずだった。

 納屋は僕達の住んでる母屋から少し離れた場所にある。つまり外に出なければいけないということだ。外は猛吹雪。雪で前がほぼ見えない。

 こんな中、外に出ようなんて人は()()()()()()()()()()()

 最初はコートのお陰で寒くなかったけど納屋の前まで来る頃には、隙間に雪が入ってきたりして保温効果の意味がほぼ失っている。ていうか寒い、炬燵が恋しい。

 

 

「うう……」

 

 

 なんとか納屋のドアを開け、中に入る。中は一応吹雪を凌ぐことができるけど、寒いのはあまり変わらない。早く炭を持ってこよう。

 

 そして炭の入った箱を見つけ、軍手をする。……はあ、このあとまた猛吹雪の中を、歩かなくちゃいけないのか……今度から炭は納屋じゃなく土間に置くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

「なんか増えてるんだけど……」

 

「トオル、久しぶりね~」

 

「お邪魔してます」

 

 

 やっとの思いで居間まで帰ってくると、いつの間にか幽々子さんと妖夢がいた。あんな吹雪のなか来たというのに、服が濡れたり凍ってたりしてる様子が全然ない。なんでだろうね、不思議だ。

 霊夢は少し不機嫌そうだったが、黙認してお茶を啜っている。

 

 

「トオル、早くして。炬燵がぬるくて仕方がないわ」

 

「はいはい」

 

 

 取り敢えず皆を炬燵から出して、炬燵の中から行火(あんか)を取り出す。行火はうちの炬燵の核となる火鉢で、中に炭火を入れて蓋をするだけで暖かくなる逸品だ。これをやぐらの真ん中において毛布をかければ、簡単に炬燵ができるんだ。

 それを持って一旦灰を捨てるため土間へ移動する。

 このとき、妖夢が手伝おうかと言ってきたが、流石に客人にやらせるわけにはいかないので断った。

 そして僕は、土間で行火に炭火をいれる行程を終え、居間まで戻った。

 

 

「うう、寒いわ……」

 

「炭を切らしたついでに暖まりにきたのに寒い思いをするなんてね……」

 

「幽々子様、だから言ったんですよ。私が炭を買いに戻るまで大人しく待っていてくださいって」

 

 

 そこには並んで布団にくるまっている3人の姿があった。

 この光景、なんかシュールだなぁ……

 

 

「寒いなら手伝ってよ、霊夢」

 

 

 と、霊夢に耳打ちをしてみる。

 

「嫌よ、じゃんけんで勝ったじゃない。それにそこの庭師が手伝うって言ってたじゃない」コソコソ

 

「客人に手伝わせる訳にはいかないでしょ。それぐらいわかりなよ」コソコソ

 

「さっきのあいつの発言聞いたでしょ、ただ暖まりに来ただけのやつを客人扱いなんてしなくていいのよ」コソコソ

 

 

 それでも流石に粗略に扱ったら駄目だと思う。魔理沙は別だけど。

 

 結局僕が、行火を設置までやることに。

 そして設置を済ませ、やぐらに炬燵布団を敷いて上に台を置く。よし、完成だ。

 

 

「ふう、やっと暖まれるわ」

 

 

 と、できるやいなや、炬燵の中に入る霊夢。暖かくなるまでもう少しかかるんだけど……

 

 

「まあ、さっきの状態でも暖かったのだけどね」

 

「何故ですか? 幽々子様」

 

「ふふ、人の温もりというものを感じられたからよ」

 

 

 そう言うと笑いながらも少し儚げな顔つきになる幽々子さん。

 失礼だけどその横顔に少しドキッとした。いや、元から美人なのに、不意にあんな顔されるたらとドキッとしない男はいないんじゃないかな。

 

 おっと、流石に女性の顔をずっと見るのは失礼かな……そう考えた僕は、少し赤くなっているであろう顔を隠すように着替えに行く。

 

 思えば雪が服の中に入って溶けてるから、下着がびちょびちょだ。全部着替えないと……

 

 

「霊夢、ちょっと着替えてくるから」

 

「はいはーい」

 

 よし、それじゃあ行くか。

 そして僕は台所に続く襖を開ける。

 すると_____

 

 

「……え?」

 

 

 さっきは気づかなかったけど、台所の端に見覚えのない大きな布袋があった。

 

 

「なにこれ……」

 

「ああ、それね。なんか今日うちで夕飯食べるらしいわよ。この二人」

 

 お茶を啜っていた霊夢がめんどくさそうに言う。

 ……まじか。

 

 

「幽々子さん、ほんとですか?」

 

「そうよ~、たまには自分の家以外で食べたいものね」

 

「トオルさん、すいません。幽々子様の我儘いっちゃって……」

 

 

 ああ、これはどんなに言っても結局うちで夕飯を食べるパターンのやつだ。

 幽々子さんのことはいまだによくわからないが、言い合いで勝つことが出来ないのは目に見えてる。実力者特有の、あたかも理屈が通っているような屁理屈を言われ、納得してしまう。分かっていてもそれを止めることは僕にはできない。だって納得してしまうもん。

 

 

「……はあ、わかりました。この前ご馳走してもらったこともありますし」

 

「流石トオルね。紫のお気に入りなだけはあるわ」

 

「ありがとうございます! 私も手伝いますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このとき、僕は大変なミスを仕出かしていた。

 

 ____そう、幽々子さんが()()()であることをすっかり忘れていたこと。

 

 なんで逆に忘れていたんだろう。気付く場面はいくつもあったはずなのに……

 

 まあ、そんな事を今思っても後の祭り。

 

 

 着替えたあと、少しの間、皆で無駄話に花を咲かせたあと、僕と妖夢は台所へとむかった。

 ほんとは僕一人でするつもりだったけど、妖夢がどうしてもといったので一緒に作ることに。

 そして何故妖夢が料理を一緒に作ると言った理由をすぐにわかることとなる。

 いつも通りに作っている僕と比べ、大量に料理を作り終えていく妖夢。

 そこで僕は漸く気づいた。幽々子さんのお食事事情のことを。

 妖夢につられ、僕も料理を作るペースをあげる。

 速くすると味が大雑把になったり、野菜を切ったりするとき、変になったりと、あんまり利点はないけど、そんなことをを考えている余裕なんてなかった。

 次々と居間に運び込まれていく料理、そしてその料理は数十秒後にはピンク色の悪魔によって、綺麗になくなっている。

 それに何故か対抗して霊夢も負けじと料理を頬張る。

 端からみると、ただの大食い大会だ。

 勿論、食材は幽々子さん達が持ってきた分だけでは足りず、僕が溜めていた食材も使うことに。

 料理を作っている最中、妖夢が「すいません、今度返します」と何度も謝ってきたが、もういい。遅いし。

 

 

 そして30分後_____

 

 

 

「ふぅ、もう食べられないわ」

 

「あら、私はまだいけるわよ」

 

「幽々子様、張り合わないでください! 見てくださいこの皿の山! お陰でトオルさんの家にある食材を殆ど使っちゃったんですよ! どうするんですか!」

 

「え!? ……妖夢それほんと?!」

 

 

 今ごろ驚く霊夢。いや、今ごろ気づいても遅いでしょ。逆にあれだけ食べてよくまだ食材があると思ったね。それにしても凄いなぁ、皿の山。洗うのたいへんだった。

 

「トオル!今妖夢が言ったのは本当なの!?」

 

「本当だよ」

 

「なんでよ!?なんでこんなことのためにうちの食材全部使う羽目になったのよ!」

 

 

 仕方ないじゃないか。霊夢は知らないだろうけど、この前白玉楼でご馳走してもらったとき、結構な量の食材を使ってたんだ。殆どがあっち持ちだったから今回、そのツケを返さないといけなかった。妖夢は別に大丈夫だと言っていたが、それだと僕が納得できなかったので、うちの食材を使うことにしたと言うわけ。

 

 

「本当に今日はありがとね。近いうちにお礼をするわ」

 

 

 と、あんなに食べたのに全然膨らんでいないお腹を擦りながら言う幽々子さん。

 ほんと、幽々子さんの胃袋はどうなってんだろうね。

 

 

「はあ……」

 

 

 思わずため息が漏れる。

 思わぬところで僕の『今年中家でぐーたらするぞ計画』は破綻することになったな。明日にでも買い物に行かないと……

 

 

「あ、そうだわ!」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

 明日の予定について考え、憂鬱になっていると、急に幽々子さんがなにかを思い付いたように声をあげる。

 

 

「ふふ、良いことを思い付いたの。」

 

「なによ、それって私に利点があること?」

 

「ん~、一応はあるわね」

 

 

 と、幽々子さんが僕と、隣にいる妖夢を見る。

 

 

「それは、明日の()()()()、というやつよ」

 

「「?」」

 

 

 そう言ってウィンクする。そのしぐさは可愛いけど、全然いい気分にはなれなかった。

 なんだろう、嫌な予感がする……

 

 

「さ、もう暗いし、帰るとするわ」

 

「はいはい、それじゃあね」

 

「あ、それでは、お邪魔しました!」

 

 

 そう言って幽々子さんと妖夢は、居間から障子と仕切り戸を開けて帰っていく。隙間から見ると、幽々子さんの言う通り、外は雪が止み、日が落ちかけていた。それをみている途中、炭をどうとかで揉めている二人の声が聞こえたけど…………まあいいか。

 

 

「なんか、嵐のように去っていったわね」

 

「そうだね……はあ……」

 

 

 ほんと、苦あれば楽ありなんて言うけどさ。僕の場合苦しかなかったよ……なんか明日も良い日な気がしないし。ていうか冬に買い物にいかなきゃいけない時点で、良い日ではない。

 

 

「ま、取り敢えずお皿を片付けましょうか」

 

「手伝ってくれる?」

 

「流石に手伝うわよ。お腹一杯食べられたし」

 

「あ、そういえば霊夢も、幽々子さんに負けじと食べてたね」

 

 

 そう言いつつ、台所にある皿を片付け始める。まあ、明日のことは明日考えて、今日はこれからゆっくりすればいいか。

 

「さっ! さっさと片付けよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、僕夕飯食べてなくない?」

 

「気のせいよ」

 

 

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