東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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64話 破壊と共闘

 

「レミィ、この塵を懲らしめる準備は出来てる?」

 

「ええ、とっくに出来てるわよ。いつまでもこの高潔な館にノミを蔓延らせる訳にはいかないもの」

 

「どっちでも良いが、塵かノミかどっちか統一したらどうだ」

 

「それじゃあ間を取ってゴミ虫」

 

「足してんだよそれは」

 

 

 萃香の情報を基に、茸を食べながら薄気味と趣味が悪い館へと訪れた訳だが、どうやら本日はパトロール強化日間だったらしい。

 門番を強制的に眠らせて館へと足を踏み入れた途端屋敷自体が結界で覆われ、対に分かれた階段からそれぞれレミリアとパチュリーが姿を現してきた。

 

 

「貴女を待っていたわよ。人の魔導書を勝手に持ち出した挙げ句燃やして……怒りのあまり喘息がぶり返しそうだわ」

 

 

 うん、今日が偶然という訳ではなかったな。完全に待ち構えられてたようだ。

 こりゃあ相当怒らせてしまってるな。まさかレミリアまで出張ってくるなんて。こんな状態じゃ透明人間について聞いてもまともに取り合ってくれないだろう。

 

 

「どうやって私が来ることが判ったんだ。まさかずっとそこでスタンバってたわけじゃないんだろ?」

 

「敵に手の内を明かすと……「パチェの精霊占いでよ」レミィ!」

 

 

 自信満々で答えてくれるレミリアには感謝するが、パチュリーはもう少し友人関係を見直したほうが良いと思うぜ。

 

 

「ほう、そんな便利な占いが出来るんだな。丁度いい、私のことも占ってくれよ」

 

「ふん、盗人は占うまでもないわ。貴女は今から私達に身包み剥がされた上で門前で磔にされるの」

 

 

 おいおい、冗談じゃないぜ。

 磔なんてされちゃあ日焼けでお肌が焼けちゃうじゃないか。

 紫外線は乙女にとって大敵だって事をこいつらは知らないのか? 

 

 

「んじゃあこうしようぜ。私が勝ったら占ってくれよ。あと、お前らの持ってる情報も吐いてもらうぜ」

 

「……二対一で勝つつもり?」

 

「クククッ、舐められたものだ。なんなら私一人でも事足りるのが判らないとはお笑い者ね。これは一方的な虐め。お前は私達に為す術なく地に伏すのよ」

 

「生憎、お前らよりも化物な奴らを退治してきて絶好調なんだ。今ならお前らが何人いようが敗ける気がしない」

 

 

 とは言ったものの、当然ハッタリであることはあちらも判っているだろう。

 正直万全な状態であっても二人同時は勘弁願いたいのが本音だ。

 パチュリーは魔法の練度だけで言えば私よりも断然上。レミリアもただのカリチュマ幼女だが、吸血鬼という種族特有の圧倒的フィジカルを有している上、意外に思慮深い所があって面倒だ。弱点が多いのに長生きしているだけはある。

 

 

「お喋りはこのくらいで良いでしょう。貴女の顔を見ているだけで腹が立ってきたわ」

 

「寛容に生きようぜパチュリーさんや」

 

「私の堪忍袋は、とうに破裂してるの」

 

 

 尾だけで済んでないあたり、本気でキレてるな。謝って済むのなら直ぐ様土下座してもいいが、恐らく今のパチュリーなら土下座した私の頭に向かってサッカーボールキックをかますだろう。

 

 だから謝らない! 謝っても火に油を注ぐだけだからな! 

 

 

「ならさっさと来てくれよ。日が暮れる前に帰りたいからな!」

 

「今夜は返さないわよ!」

 

「良いわね! 威勢があった方が壊し甲斐があるってものよ!」

 

 

 私がミニ八卦炉を構えると同時に、レミリアとパチュリーも臨戦態勢へと入る。

 勝ち目は薄いがやらなければならない。

 ……透明人間以前に勝たないと私の命がやばそうだからな。

 

 

「火符『アグニシャイン』!!」

『天罰『スターオブダビデ』!』

「恋心『ダブルスパーク』!!!」

 

 

 三方が同時にスペルを宣言し、無駄に広いロビーが一瞬にして眩い光に包まれる。

 2つのスペルに勝てるかは知らんが、火力ならこの中で私が一番上だ。

 出し惜しみはなし、最初から全力で行くぜ! 

 

 

 

 

 ロビーを包み込む高密度の弾幕群。

 各々の実力者が放った弾幕が着弾し合う刹那_____私は確かに目視した。

 

 紅い悪魔が中心に舞い降りた瞬間を_____

 

 

 

「ねえ、私を置いて何楽しそうなことしてるの?」

 

 

 

 屋敷全体が揺れるほどの大爆発に、思わず私は腕で顔を覆った。

 結界がなかったらこの屋敷倒壊しているんじゃないか……? 

 

 そしてこの大爆発は、弾幕同士が着弾したからじゃないことは判っている。

 

()()()に、私達の弾幕が『破壊』されたんだ。

 

 

「フラン、邪魔しないで頂戴」

 

「ねえねえお姉様。なんで二対一で弾幕ごっこをしてるの? これって卑怯じゃない?」

 

 

 狂気の権化、フランドール・スカーレットだ。

 あの高密度の弾幕群の最中へと飛び込み、その全てを破壊していった張本人。

 フランドール自身の身体は当然のように無傷、如何に奴の能力が馬鹿げているかが窺える。

 

 

「なあ、フランドール。丁度いいところに来てくれた。絶賛今からこいつらに虐められるところだったんだ。助けてくれよ、茸あげるから」

 

「その要因を作ったのは考えなくても魔理沙であることは確かだよね。パチュリーがあんなに青筋立ててるのなんて、貴女以外あり得ないし」

 

 

 ちっ、流石は吸血鬼の妹。洞察力はレミリアと引けを取らない。

 フランドールを味方につけて二対二のイーブンに持っていこうと考えたんだが。

 

 

「でもフランドールお前、レミリアに借りがあるだろ?」

 

「借り?」

 

「妹様。そこのゴミ虫の戯言は流した方がいいわ。思考が腐る」

 

「思考が腐るとはまた大袈裟だな。私の言う事聞いてれば思考が私寄りになるってだけだぜ?」

 

「だから腐るって言ってるのよ」

 

「ねえ、借りがあるって何のこと?」

 

 

 パチュリーの発言は心外極まりないが、フランドールは私の鎌かけにまんまと引っ掛かったようだ。

 引っ掛かってくるだろうと読んでたぜ。

 

 幾ら綺麗事を並べようとも、フランドールはこの話に乗ってくる。

 

 

 

「プリン騒動のあの日、お前レミリアに敗けてただろ」

 

「うっ……」

 

 

 プリン騒動とは以前、レミリアとフランドールが咲夜のプリンを巡った大喧嘩のことである。

 確かあの時私が知らずにプリンを食べて色んな奴にぼこぼこにされたのは今も記憶に新しい。

 

 

「フラン、気にしなくていいのよ。あれは紙一重の戦いだった」

 

「その紙一重だとしても敗けは敗けだろ」

 

「ううっ」

 

「リベンジの時は今がやり時じゃないか? 今だけなら魔理沙ちゃんのバックアップ付きで他に邪魔は入らせないぜ」

 

「……ほんと?」

 

「ふ、フラン、 止めなさい。今は貴女に構ってられないの。リベンジがしたいのなら今度日を改めて戦ってあげるから今日は我慢して頂戴」

 

「二対一で不公平な戦いに見兼ねて名乗りを上げた吸血鬼。私は一瞬お前が天から舞い降りた天使のように見えたぜ」

 

「う〜ん、天使は別にいいかな。悪魔の方が格好良くて好き」

 

「じゃあ悪魔! アモン! イポス! デモゴルゴン!」

 

「それはそれでヤ!」

 

 

 なんだよもう、折角ふと頭に浮かんだ悪魔の名前で呼んでやったってのに。

 でもまあ、これは完全に此方の勝ちだ。

 レミリア達も身内相手じゃ一手二手を講じるのに奥手となっている。

 身内、というより妹相手でなければ此奴等は攻撃の手を止めることはなかっただろう。

 

 遂に私にも運が回ってきたってことだ。

 

 

「でもよ、フランドール。何時でも出来るタイマンなんかより、今しか出来ない二体二の方が、絶対()()()だろ?」

 

 

 フランドールの思考は手に取るように判るぜ。

 

 こいつは今、()()()()()()()()()()()()しか考えていない。

 

 でなければあんな爆心地に自ら飛び込んでくる訳がない。

 

 ならば私はより楽しそうな条件を提示してあげるだけ。

 幾ら私がこの件の発端であり悪者であったとしても、フランドールにとっちゃどうでも良い筈だ。

 

 

「正直な話、魔理沙の掌の上で踊らされるのは否めないんだけど____いいわ、今回は魔理沙の口車に乗ってあげる」

 

「フラン!! ___くっ!」

 

 

 レミリアが叱咤の声をあげようとするが、付近にあった花瓶が突如として割れたため遮られる。

 

 

「お姉様、私と踊りましょ?」

 

 

 既にフランドールの眼は紅く輝き、レミリアに釘付けとなっていた。

 意外に根に持ってたんだな、あいつ。

 

 

「助かるぜ、フランドール! 勝った暁には此奴等を椅子にしてティータイムでも決め込もうぜ!」

 

 

 今日はもう幽香と嗜んではいるが、太陽の畑と紅魔館とで茶葉も茶請けも違うから問題なし! 

 

 

「予定は狂ったけれど、貴女を打ちのめす本筋の予定は変わらないわよ」

 

「おうパチュリー、私もお前に聞かなきゃいけないことがあるんだ。気絶しても叩き起こすから覚悟してろよ」

 

 

 フランドールが此方側ヘと移動し、再び一触即発の状態となる。

 だが状況は打って変わって上々。

 

 此方側に破壊神がいれば鬼に金棒……いや、魔法使いにエクスカリバーだ。

 

 

 

「もういいわ。あんた等私の事を舐めてるみたいだからまとめて相手してあげる。血の噴水を私に見せて頂戴!」

 

「ええ、妹様に魔法を教えたのは私。敗ける道理がないもの。似非魔法使い共々、真の魔法使いが何たるかを再教育してあげるわ」

 

「血の噴水? 見たーい! お姉様とパチュリーの身体でいっぱい見せて!」

 

 

 各々の口上をした後にスペルカードを手に取る。

 いよいよ始まるか。

 

 _____連戦に継ぐ連戦。

 身体は重く、多少の頭痛が私の脳を襲っている。

 だが、不思議と敗ける気がしない。

 数多の戦略が私の脳へと流れ込んでくる。

 

 そのどれもが、あの二人を打ちのめすに足り得る必勝法であるんだ。敗ける道理がないのは此方の台詞だ! 

 

 

「派手にぶっ放すぜ! フランドール、遅れんなよ!」

 

「魔理沙こそ! 私の邪魔をしたら壊しちゃうからね!」

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