東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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短めです。


66話 四つん這いのカリスマ

 

 

 陽光の差さぬ紅い霧に覆われた紅魔館。

 時は夕暮れ。

 ほんの数刻待てば闇夜が訪れる所を、態々紅い霧を発生させた吸血鬼は今、テラスにて優雅にティータイムを嗜んでいた。

 

 

「ねえ咲夜。少し聞いてもいいかしら?」

 

「はい、何でしょうお嬢様」

 

「なんで私だけミルクなの。というかなんで平皿なのよ。まるで畜生のようじゃない」

 

「あら、負け犬にしては上等でしょ。ていうか椅子は喋るのかな、お姉様?」

 

「くっ……」

 

 

 先の戦いに勝利したフランドールは、姉であるレミリアを椅子にして紅茶を啜る。

 その姿を感情を殺したかのように隣で佇む完全で瀟洒な従者。

 勿論、どちらも指示をしたのはフランドールである。中々の趣味である。

 

 

「それにしても魔理沙の奴、とんでもなく強くなってたよねぇ」

 

「そうね。パワーは兎も角、これまでの経験則を基にありとあらゆる事態に対応し得る策を瞬時に引き出し、常に先手を取ってくる。所謂ゾーンと言ったらいいのかしら。でなければ私が一度も被弾をさせられずに完封されたのに理由がつかないわ。この私がまぐれで敗ける筈がないもの」

 

 

 茶請けとして用意されたクッキーを一噛みしながら先程まで繰り広げられた弾幕ごっこについて考察するパチュリー。

 その考察を聞いてフランドールはテーブルに頬杖を付きながら欠伸をする。

 

 

「なんかパチュリーオタクっぽいね」

 

 

 フランドールの発言に、一瞬眉が動くパチュリー。

 しかしながら杞憂だろうと軽く首を横に振り、反論する。

 

 

「……オタク? まあオタクといえば私はオタクね。オタクという単語はよく社会性がないとか言語能力が欠如してるとか悪い印象を持たれがちだけれど、一概にはそうとも言えないの。専門的で一つの物事に情熱を注ぐ意味合いもあるの。そういった面で言えば私は魔法オタクと言っても差し支えないわ」

 

「いや言動が」

 

「ぶふっ!」

 

 

 無表情を貫いていた咲夜が吹き出す。

 不意を付かれ、思わず顔を伏せる咲夜であったが、一息ついてチラリとパチュリーの方を見やると、彼女が目を見開きながら睨みつけてきていることを確認して再度顔を伏せる。

 

 

「も、申し訳御座いません」

 

「私、オタクっぽかったかしら」

 

「滅相も御座いません」

 

「自分の得意なことに対して早口になるところとか凄いそれっぽかったよ」

 

「うぐっ……!」

 

「フラン止めてあげなさい! パチェも気にしてるんだから!」

 

「……(そのフォローが一番傷つくのでは)」

 

 

 賑やかな談笑を嗜みつつ、穏やかに時間が過ぎていく。

 メイド以外が皆衣服がボロボロであることと館の主人が椅子になっていることを除けばなんら変わらないいつもの光景である。

 

 

「にしてもフラン。貴女が私達に勝った後続けて魔理沙を襲わなかったのは意外だったわよ」

 

「私が戦闘狂かなんかだと思ってる? まあ否定はしないけど」

 

 

 レミリアは疑問を抱いていた。

 楽しければ容易く物や生物を壊す妹が、絶好の玩具が眼の前にいたというのにみすみす逃していたという事実に。

 

 

「パチュリーが魔理沙を占ってるときは襲ってやろうかとは考えてたよ。でも、結果を聞いてやっぱり止めたの」

 

「私が占った……『博麗の巫女と戦え』ね。精霊が指し示すままを魔理沙に伝えたけれど、それがどうして止めるきっかけとなったの?」

 

「魔理沙よりも継続的に楽しめそうな玩具がなくなっちゃう気がしたから」

 

「……? それはどういうことかしら?」

 

「私にも分かんない。でも、あの時魔理沙は壊しちゃいけないと思ったんだ。だから止めたの」

 

「継続的に楽しめて魔理沙を壊すと無くなる玩具……霊夢のことを言ってるの?」

 

「いや、たぶん違う。なんだろう、感覚的な感じなんだけど、前にも何度か遊んだ気がするんだよね」

 

「それって魔理沙が私に聞いてきた透明人間のことを言ってるのかもしれないわね。私も大図書館に誰か来たという記憶があっても、誰が来たのかまでは記憶できなかったもの。妹様はおそらく、誰が相手か分からずに何度か透明人間と戦ったのよ」

 

「ん〜、合ってるようなそうでないような」

 

 

 感覚的な話になると他者では理解することは非常に困難である。

 ある程度的を射ていたパチュリーの回答にもフランドールは完全には首を縦に振らない。

 

 

「その話はもういいでしょ。違和感なら私にだってあるし。魔理沙が探してるっていうのであればあれじゃない? 異変とまではいかなくとも、軽い事件程度のことで、ちょっと私達も知らぬ間に関わってたから魔理沙は私達のところへ来た。そしてその魔理沙が霊夢のところへ行けば霊夢も動く。それで解決じゃない?」

 

「やけに博麗の巫女の事を買ってるわね」

 

 

 霊夢が動けば今回の件は解決する。

 そう断言しているような口振りのレミリアにパチュリーが素朴な疑問を投げかける。

 それに対し、レミリアは得意気に顎を上げて、

 

 

「そりゃそうよ。私の異変を解決したんだから、こんな違和感程度のへなちょこ事件なんてすぐに解決できるでしょ」

 

 

 と、自身と本件についての比較を交えた持論を提唱する。

 

 

「でも、魔理沙が倒しちゃうかも。ゾーンに入ってるらしいし」

 

 

 得意げに語るレミリアに、フランドールがお尻を軽く叩きながら持論に対する懸念点を提議する。

 だが、レミリアは崩さない。

 それどころか決め顔になりながら自信満々にこう答えた。

 

 

「霊夢は敗けないわ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 "運命を操る程度の能力"

 

 自分自身と自身の能力を掛けた発言に、パチュリーと咲夜は軽く感心する。

 霊夢が勝つというのは、レミリアの希望的観測であることが大きい。

 だが、ここまで断言できるのは自身と霊夢に確固たる自信がある現れであるためである。

 そこには一種のカリスマ性に通ずるものがあるのだが______

 

 フランドールはそれを良しとしなかった。

 そして至極真っ当なことでレミリアの鼻っ柱を折る結果となる。

 

 

「お姉様、無様に四つん這いになりながら決め台詞を吐いてもダサいよ」

 

「ぶふっ!」

 

「なっ!?」

 

 

 

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