東方姉弟録~もし霊夢が姉だったら~   作:エゾ末

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6話 うどん屋の常連客

 

 

 昼飯時が過ぎ、店のピー……も越えた頃、店の暖簾を潜りこちらに近づいてくる音がした。

 ……お客さんだな。そう判断した僕は挨拶のために一旦台を拭くのを止め、店の入り口の方へ顔を向いた。

 

 

「いらっしゃいませ……って、あ!」

 

「やあ、こんにちは。トオル」

 

「慧音先生!こんにちは」

 

 

 僕の働いているうどん屋には常連客が少なからずいる。その中には今入ってきた人(半妖)、上白沢慧音先生が入っている。

 慧音先生は寺子屋を開いていて、そこの先生をしている。

 実は僕も紫姐さんの計らいで一時の間、慧音先生の寺子屋で勉強を教えてもらっていた。まあ、すぐに紫姐さんに連れられて授業自体は1ヶ月程しかうけてないけどね。ちょっと長い体験入学のようなものだったな。

 まあ、楽しかったけどね。歴史の授業の時凄く眠たくなったけど……

 

 そういうこともあってか僕は慧音先生と知り合いだったんだけど僕がここの仕事に就くときにたまたま来た慧音先生と再会し、それ以来ちょくちょく寄ってもらっている。ありがたい限りだ。

 

 

「それで慧音先生、もう昼から結構経ってますけど寺子屋大丈夫なんですか?」

 

「ああ、今日は午前授業で終わりだったんだ。それでさっき採点してて終わったところ」

 

「そうなんですか。大変ですね……まあ取り敢えずうどんでも食べて元気だしましょう!」

 

「そのために来たんだ、それじゃあ“いつもの″で」

 

「はい、ざるうどんときつねうどんと釜揚げうどんのどれですか?」

 

 

 いつものといわれても度々注文してくるのが違うので分からない。なので取り敢えず比較的よく頼むのをピックアップしてみる。

 

 

「…………すまない、つい常連ぶろうとしてしまった」

 

「いえいえ、慧音先生は充分常連客ですよ」

 

「ありがとう……それじゃあざるうどんを頂こうかな」

 

「かしこまりました」

 

 

 そういって僕は厨房へ向かった。今は僕と店長以外の人はピークが過ぎた後に昼ご飯をとりに行っているからいない。

 実際僕ももうそろそろとるはずだったけど仕方ない。あ、良いこと思い付いた。

 

 

「慧音先生。僕もこれから昼ご飯なんでご一緒しても良いですか?」

 

「うん?ああ、私は別に構わないが」

 

「ありがとうございます」

 

 食べてる途中にもしお客さんが来てもたぶん大丈夫だろう。店長いるし…………寝てるけど。

 

 

「さて、作りますか」

 

 

 注文はざるうどん。これはただ茹でたうどんを冷やすだけなのでかなり簡単だ。すぐにできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~3分後~

 

 

「お待たせしましたー」

 

 そういいつつ僕はお盆にのせたざるうどんとそのつゆを慧音先生のいる台へおいた。

 

「お、早いな。ありがとう」

 

「それじゃあ僕も弁当持ってくるんで」

 

「ああ、なら待っておこう」

 

「いいんですか?それじゃあ早くとりいかないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

 基本的に慧音先生はマナーについては結構厳しい。ちょっと堅苦しいんだ。だからご飯中のお喋りとかはあまりしないらしい。

 つまり食べてる間はうどんを啜る音と、ご飯を食べる音しか店の中では聞こえなくなる。……あ、店長のいびきもあったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさま、今日も美味しかったよ」

 

「どうも…………慧音先生はこれからどうするんですか?」

 

「ああ、今日はこれといった用事はないが」

 

「それじゃあ少しそこの団子屋で話しませんか?僕も今日はもうあがりますし」

 

「ん?トオルから誘うなんて珍しいな」

 

「へへ、ちょっと最近の寺子屋とかの事とか聞きたいんです」

 

 

いつも木に登っては落っこちてた子や、寝ている子の顔に落書きしてた子とか。

 

 

「ああ、そういえば私もトオルが何処に住んでいるのかとか気になっていたところだ。その誘い、乗ることにするよ」

 

「ありがとうございます。よし、それじゃああっちで寝ている店長を起こしてくるのと着替えがあるので少し待っててください」

 

「え?あそこで寝てたのが店長なのか!?」

 

「はい、紛れもなく店長です」

 

 

そう僕が肯定すると、慧音先生の笑顔が消えた。

 

 

「……ちょっとお灸を据えなければな」

 

「え?」

 

 と、慧音先生が店の端で座りながら寝ている店長まで近づき____

 

「ふん!」

 

「ぐぎゃ!?」

 

 

 頭突きを食らわせた。…………うわぁ、痛そう。

 

 

「な、なんじゃ急に!!?」

 

 

 大きなこぶを頭に生やした店長は思わず飛び起きた。あ、無事だったんだ。店長の頭も石頭なのかな?

 

 

「貴方、店長なんですよね?」

 

「ああ!ワシがここの店長じゃ!かくいうお主はなんじゃ!…………ってあ、あんたは寺子屋んとこの!?」

 

「その店長が店員に店を任せて居眠りとはどういう了見ですか?」

 

「あ、いや…………その、……あ!トオル助けてくれ!」

 

「さて、着替えますか」

 

 

 こういうのはなるべくスルーする方が良いに決まってる。それにこれまで散々仕事をサボった罰だ。これを機にちゃんと仕事をしてください、店長。

 

 

「まあ、取り敢えず座ってください。これから長い『お話し』をするでしょうから」

 

「……はい」

 

 

 それにしても慧音先生が怒ると凄い迫力があるな。

 怒られてる人は大抵蛇に睨まれた蛙みたいになる。店長も例外じゃなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~5分後~

 

 

「どうしよう…………声かけづらすぎる」

 

 

 着替えが終わり、団子屋へ行こうと慧音先生に声をかけようとしたけど、いまだに話し合いという名の説教が続いていた。

 

 

 

「トオル……店長いったいなにをやらかしたんだ?」

 

「居眠りですね」

 

 

 昼ご飯を終えて戻ってきた先輩店員の人に店長がなにをやったのか聞かれ、正直な事を僕は言った。

 

 

「慧音先生もよくやるなぁ……店長が居眠りするのなんて日常茶飯事なのに」

 

「逆に起きてるときの方が少ないですよね」

 

「それはいえてる……まあ、トオルはもうあがるんだろ?ならもう帰った方がいい。飛び火が来るぞ」

 

「……実はこのあと慧音先生と団子屋に行くんですよ」

 

「なっ?!お前慧音先生を狙ってんのか!」

 

「なわけないでしょ。ちょっと世間話をしようとしてるだけです」

 

 

「そこ!人が話してるときにうるさくするな!」

 

「「あ、はい」」

 

 

 ああ、もう完全に熱が入っちゃってるよ……いつ終わるんだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~1時間後~

 

 

「ありがとうございましたぁ!」

 

「うむ、それでいいんだ。これからは仕事に精をだすんだぞ」

 

 

 お、やっと終わったか。

 結局1時間後近くかかったな。でもあんな目が輝いた店長を初めて見た。流石は慧音先生だね!

 

 

「それじゃあトオル、行こうか」

 

「あ、すいません。着替えてきます」

 

 

 実は説教が長くなると予想した僕は私服からまたここの指定された店員服に着替えていた。

 慧音先生が説教している間にもお客さんが来ているからね。

 

 

「ああ、すまない。私のせいで着替えを何回もさせてしまって」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「慧音先生、お待たせしました」

 

「ああ、それでは行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~団子屋~

 

 

「え!?あの神社に住んでるのか?」

 

「はい、姉と二人暮らしです」

 

「ちょっと待ってくれ。つまり毎日あそこからここまで通っているのか?」

 

「はい、でもだいぶ慣れましたよ」

 

 

 最初は何度も森で迷ったけど、今じゃルートも確立して比較的早くいけるようになったし。

 

 

「いや、そういう問題じゃ…………途中で妖怪とかとでくわさなかったのか?」

 

「いや、確かにたまに会いますけど何故か追いかけられても逃げられるんですよねぇ」

 

「これはいかんな。身近なところでこんな危険な状況におかれている者がいるとは…………早急に対処しなければ」

 

「え?いや、大丈夫ですよ!?そんな困ってるわけじゃないし……」

 

「事が起こったあとでは遅いんだ!このままでは遅かれ早かれ食われて死んでしまう!」

 

「うーん、でも……」

 

 実際今の生活には結構満足してるんだよな……

 ここはなんとかして説得しなきゃな!

 

 

 

 

 

 ~10分後~

 

 

「うーん……納得はしきれてはいないが頑なに言われたら退くしかないか」

 

「ふぅ……ありがとうございます」

 

「まあ、『僕は姉と暮らすのが楽しいんです!!』なんて言われたらな……」

 

「うっ……これは他言無用でお願いします」

 

「わかった。しかしそのまま今の状態を放っておくわけにはいかないからな。これからは定期的に私の寺子屋に来てくれ」

 

「はい、わかりました!」

 

 

 なんとか説得することができた。おかげで恥ずかしい事を言う羽目になったけど。まあ、他に聞かれていなければ大丈夫だろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~路地裏~

 

 

「久しぶりに里にいってみたらとんでもないことを聞いてしまったな。トオルが女の人と話してたから、冷やかそうとして近づいてみたらまさかあんな恥ずかしい事をいうとはな……思わぬ収穫だぜ!これは霊夢に報告だな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日の夜、何故か霊夢が異常に優しかった。そして滅多に作らない夕飯までも作ってくれた。なんでこんなに優しいんだろうか?

 そしていつもの通りうちに来ていた魔理沙がずっとニヤニヤしていた。

 

 ま、まさか、あの事聞かれたとかはないよね?

 

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