「あれ?今飛んでいったのって霊夢と魔理沙だったような………」
今日もいつも通りの仕事を終え、借りてきた本を片手に博麗神社へと続く階段をのぼっていると、霊夢と魔理沙が何処かへ飛んでいったのを発見した。
「あっちの方は確か…………レプリカ達のいる『紅魔館』がある方向だよな。なにか用事でもあるんだろうか」
「誰がレプリカよ!」
「うわ!?」
そして階段をのぼりきった所にいつかの吸血鬼がいた。完全に油断しきっていたから余計吃驚したな……
「レプリカ!?なんでこんなところにいるの?」
「だ~か~ら!レプリカな訳がないでしょうが!!レミリアよ レ ミ リ ア!!」
「あ、そういえばそんな名前だったような……」
「霊夢といい魔理沙といい……吸血鬼を馬鹿にするのが流行っているのかしら?」
「……少なくてもそんなことができるのはあの二人だけだよ」
少なくてもそんな命知らずのこと、僕にはできない。
「それで?なんでレミリアがここにいるの?そもそも日光浴びたら気化するんじゃなかったっけ」
「私がここに来ちゃいけないわけ?あとちゃんと日傘をしてるから大丈夫よ」
「……そんなので防げるとは……まあ、取り敢えずあがって。お茶ぐらいは出すよ」
「ワインがいいわ」
「帰れ」
そんなのあるわけないでしょうが。
~母屋~
「それで?なんで家の主はどっかにいって遊びに来たレミリアがここに残されてるの?いじめ?」
「いじめるのだったらむしろ私の方だわ」
「…………」
偏見ではあるけどレミリアにそんな事できるのか疑問に思えてくる。
「あんた、今私の容姿をみて無理だろって思ったでしょ」
「いやいや、そんな事はないよ。ただ霊夢をいじめようとして返り討ちに合うことしか思い浮かばなかっただけ」
と、自分でも驚くぐらい綺麗に嘘を吐く。うわぁ、僕ってこんな才能があったのか。嬉しいような悲しいような……
「ああ、確かに。夢想封印くらわされそうだわ」
「おおっと、さっきの質問を忘れるとこだったよ」
「ああ、そうね。実のところあんたに教える義理なんて全く無いんだけど暇だから特別に教えてあげるわ」
いちいち言わなくていいことを言いながらも教えてくれるようだ。
「ふーん、つまり紅魔館の辺りにだけ吸血鬼の弱点である雨(流水)が降って家に帰れなくなり、なんでそこにだけ雨が降っているのかどうかを霊夢達に調べさせに行かせたと?」
「そうよ」
「レミリア……どんまい……追い出されたね」
「やっぱり姉弟ね。霊夢と同じことを言ったわ」
「いや、これはもうそうとしかいえないでしょ。だって吸血鬼の弱点を使ってでも家にいれたくないんでしょ?見限られたんだよ」
「……あんた、私をなめてるわね」
「滅相もございません」
目の色を暗くして睨み付けられた。凄く恐いです。
「おそらく私の妹のせいよ」
「あれ?レミリアに妹がいたの?」
「ええ、そうよ。」
「へぇ」
別に興味はわかないけどね。
「まあ、どうせ最近私がここに行ってるから自分も行きたいとか言い出したんでしょ」
「え?別に良いじゃないか。連れてきても」
「あら?これに関しては霊夢とは違った答えね。霊夢は来んな!っていつも言ってくるけど」
「そりゃあ、霊夢、何気に賽銭の事気にしてるからね。神社に妖怪が遊びに来るから参拝客が来ないとか思ってるんじゃない?もうとっくに遅いと思うけど」
「それはいえてるわね。少なくても私が来てる間に参拝客が訪れたことなんてないわ」
「大丈夫、年に一人来るか来ないかレベルしかないから」
僕がここに住み始めてから来た参拝客はなんと一人だけだったんだよな……因みにその中に森近さんが入ってる。あ、つまり森近さんだけか。
「まあ、取り敢えず妹が外に出ると大変なことになるからパチェが雨を降らせて出られなくしたんでしょ」
「パッチェ?」
「パチェよ!……本名はパチュリーだけど」
「ああ、パチュリーさんね。魔理沙からよく聞くよ」
「……何となくわかるけど一応聞くわ。どんな事を聞いてたの?」
「本を貸してくれる良い奴」
「……パチェ可哀想ね……大切な本を……」
「まあ、僕はこの事に関してはノータッチでいきます」
「一言ぐらいいってやんなさいよ」
「僕が注意したところで魔理沙が本を返すと思う?」
「いえ、思わないわね。付き合いが浅い私でも分かるわ」
「でしょ………………あとさっきのレミリアの妹を外に出しちゃいけないってどういうことなの?」
レミリアの妹ってことはレミリアと同じく小さいのかな? 姉と同じく傲慢かつ我儘なのかな? そんな妹だったら嫌だなぁ。
「ああ、それね。実は私の妹、フランドールって言うんだけどね。情緒不安定なの。しかも能力が能力だから家から出すと大変なことになるのよ」
「能力って……どんな?」
「『ありとあらゆるものを破壊する程度』の能力よ」
「おお、それは末恐ろしい子だね」
「まあ、兎に角霊夢と魔理沙がフランの心の穴を埋められれば良いんだけど。」
「ああ、つまり最初から雨の事は分かってたのに霊夢たちにいかせた理由ってそれだったのか」
「ええ、そうよ。いい加減フランも外と関わり合いを持った方がいいわ」
「妹思いだね、少しだけレミリアが姉っぽく見えたよ」
「もとから姉よ」
「霊夢とは大違いだ」
「一緒にされたくないわね、あれとは」
心底嫌そうな顔をするレミリア。いやまあ、霊夢にもちゃんと良いところはあるんだよ、うん。
そんなことを思っていると、縁側から朱色の明かりが差し込んできているのに気づいた。
ああ、そういえばもうそんな時間だったな。
「まあ大体の事は分かったし、夕飯でも作るとするかな」
さっさと夕飯食べて借りてきた本を読みたいしね!
「あら、私の分も作ってくれるの?」
「血は入ってないよ」
「うーん、ちょっとだけ」
「いや、だからないって…………まず何処から供給するのさ」
「何処からって……決まってるじゃない」
「え?なに、なんで僕の方を見るの?あ、あげないよ!僕の血は僕のものだ!」
「まあまあ、少しぐらいいいじゃない」
「え?うわ?!」
いつの間にか後ろに回り込まれたと思ってたら押し倒されてしまった。なんだこの力?!あの細くてちっちゃい腕からは想像もできないくらい強かったんだけど……
「それじゃあ、いただきまーす」
「や、やめてぇぇー!!?」
夕暮れ時、博麗神社に一人の若い男の断末魔が響き渡ったとさ。おしまい…………なわけがないでしょ。まだ続くよ。
「うう、脅かすなよ……」
「ふふ、ちょっとした冗談よ」
「いや、あれは完全に吸おうとしてたじゃないか!」
なんとか吸われないで済んだ。いや、ほんと、妖怪から追いかけられるときよりも恐怖を感じたよ。
「取り敢えず夕飯作るけどレミリアはいらないね。ていうか作らないよ」
「いいわ、作らなくても。でももし本当に作らなかったらここにいる誰かの血が私の夕食になるわね」
「はい、わかりました。快く作ります。」
くう、この吸血鬼め。ここの誰かって、今は僕しかいないじゃないか!
取り敢えずこの鬱憤を本で解消しよう。でなきゃおかしくなりそうだ。
あ、一応いっておくけどちゃんと健全な本だからね。大人の人が読むようなやつではないからね!決して!!
「なにそこでぼーっとしてるのよ。早く作りなさい」
「はいはい、わかりましたよ……ってあ!その本!僕が借りてきたやつ!」
「ああ、この本?これ一度読んだことのあるやつだったから返すわ」
「あ、ありがとう」
ふう、てっきりとられるかと心配したよ
「たしかあれだったわよね?主人公が結局崖から落ちて自殺したバッドエンドな話だったはず……」
「…………え?」
今レミリアからとんでもない事を聞いた気がする……
「まさかレミリア……この本のオチを言ったの?」
「?ええそうよ」
「ああああ!!!!レミリアの馬鹿野郎!!!」
もう最悪だぁーー!せっかく借りてからずっと楽しみにしてたのに!
「な、なによ!急に大声出して!?」
「…………寝る」
「え?!ちょ……」
これはもう寝て忘れるしかないな。この心に開いた穴、つまり喪失感を満たすのはやっぱり時間だと思う。さ、さっさと寝よう……そしてさようなら。本を借りたときにウキウキしていた時の僕……
この日結局僕が布団から出ることはなかった。おかげでレミリアの妹、フランドール・スカーレットと戦ってヘトヘトになった霊夢がその日ご飯を作ることになり、次の日に僕が文句を言われた。文句はレミリアに言ってよ……
そして僕がいつも通りの仕事から帰ると新しい本が置いてあった。どうやらレミリアが僕のために置いていったらしい。なんであのレミリアがこんな粋なことをしてくれたかと言うと、実はパチュリーさんに昨日の事を言ったらそれはいけないと怒られたらしいので持ってきたそうだ。
ありがとう、まだ会ったことのないパチュリーさん。今度魔理沙が奪った本を取り返して持って行きます!