転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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早くSAOの方を完結させて下さいとの要望が出されたので、できるだけ早く投稿しようと思います。

ではどうぞ


捜査 祖の肆

「ヨルコさん、これからシュミットさんを連れてきてもよろしいですか?」

 

 ヨルコの言葉で沈黙したあと、キリハはそう切り出した。ヨルコはピクッと動いて、肯定した。

 「誰か部屋の前で待機しときますか?」と聞いたら「いえ、部屋の中なら大丈夫です」と断った。

 ということでヨルコを宿まで送り、シュミットに『これからそちらに行く』とメールを送った。すぐに『分かった。門番には話を通しておく』と返信してきた。ということはDKBの本部にいるのだろう。確かに自分の宿よりはギルド本部の方が安心できるだろう。

 キリハ達三人はDKBの本部に移動した。本部の前には恐らく門番の役割をしているプレーヤーがいた。ギルドの中にはギルドの者か、許可した者しか入れないので門番は実際必要ないのだが...。

 それはさておき、門番には話が通っており三人がプレーヤーの前まで行くと本人確認(アスカとキリハ達二人の特徴を聞いていたのだろう)をして、シュミットを呼んでもらった。シュミットはすぐに来た。場所を変え現在はレストランにいる。

 先に口を開いたのはシュミットだった。

 

「...あんた達には協力をすると言った。だから言える範囲なら言う」

 

 それならと質問をしたのはキリハだった。

 

「それでは、半年前に起きた指輪事件について知っていることがあったら教えて下さい」

 

 シュミットはギョッと目を見開いた。

 

「...誰から聞いた」

 

「ヨルコさんからです」

 

 シュミットは一瞬放心したように上を見上げ、次いで大きく息を吐いた。

 今のが見た目通りに《安堵》なら犯人の線はかなり薄くなる。が、ゼロと言うわけでもない。

 そう考えたキリハは直球な質問をした。

 

「昨日あなたが持っていった槍を作ったグリムロック氏がどこに居るか知っていますか?」

 

「し、知らん!!

ギルド解散後からは一度も連絡をとってないから生きてるかどうかも知らなかったんだ!」

 

 シュミットは早口でそう言って周りを見渡した。まるで槍が飛んでくるのを恐れるように...。

 と今まで黙っていたキリトが口を開いた。

 

「シュミットさん、昨日も言ったが俺達は今回の事件の手口を突き止めたいだけだ。圏内の安全をこれまで通り守るためにな」

 

 そして一層、真剣な表情になった。

 

「残念だが今のところ一番疑わしいのはグリムロックさんだ。もちろん、誰かがそう見せかけようとした可能性もあるが、それを判断するためにもグリムロックさんに直接話を聞く必要がある。だからもし、グリムロックさんについてあんたが知ってることがあるなら教えて欲しい」

 

 シュミットは口許をかたくなに引き結んでしまった、が直後。

 

「...居場所は本当に分からない。でも」

 

 シュミットはぼそぼそと話し始めた。

 

「当時、グリムロックが異常に気に入っていたNPCレストランがある。もしかしたら今も...」

 

「本当かっ。ならその店の名前を...」

 

 それを聞きながらキリハは二つ考え事をしていた。一つはグリムロックについて、ここSAOの中では食べることが唯一の娯楽も言ってもいい(無論他にもあるが)と同時に自分の好みの味がNPCレストランで見つかるのは稀だ。気に入っていたのなら今でも行っている可能性が大きい。そのレストランを当たるのはありだ。

 二つ目は、いつシュミットをヨルコのところに連れて行こうか、と言うことだ。しかし二つ目のことに関しては問題がなくなった。

 

「店の名前を教えるのは条件がある。

 

 

彼女と、ヨルコと話をさせてくれ」

 

 本当にタイミングがいい。

 

 

 

 場所は変わり、ヨルコの泊まっている宿、そこにキリハ達三人とヨルコ、シュミットはいた。

 

「二人とも分かっていると思いますが安全のために武器は装備しないこと、ウインドウを開かないこと、この二つを守ってください」

 

 キリハの言葉に二人は了承した。久しぶりに対面したはずの二人はしばし無言のまま視線を見交わしていた。レベルはシュミットが上の筈なのだが、キリハ達の目にはランス使いの方が緊張しているように見えた。事実先に口を開いたのはヨルコの方だった。

 

「...久しぶり、シュミット」

 

「...ああ、もう二度と会わないだろうと思ってたけどな」

 

 ヨルコは薄く微笑み、シュミットは掠れ声で答えた。二人はテーブルを挟みお互いに向き合っている。部屋の北はドア、西には寝室へ続くドア、東には壁、南は窓となっている。部屋の北側にはキリハが、東側と西側にはそれぞれアスカとキリトが立った。ドアはシュミット側、窓はヨルコ側にある。

 窓は空いていたがシステム的に窓から侵入はおろか、なにかを投げ入れることすら出来ない。

 次に口を開いたのはシュミットだった。

 

「...ヨルコ、カインズのことを訊いてもいいか」

 

 やはり声には緊張を含んでいた。ヨルコは頷く。

 

「何で、今さらカインズが殺されるんだ?指輪を奪ったのは...あいつだったのか?リーダーを殺したのもあいつだったのか!?」

 

 今のセリフはシュミット自身が指輪事件および今回の事件とは無関係と宣言したに等しい。

 シュミットの言葉にヨルコは微笑を消し睨み付けた。

 

「そんなわけない。私もカインズも、もちろん元《黄金林檎》のメンバーは全員リーダーのことを尊敬していたわ。売却に反対したのはお金(コル)に変えて無駄遣いするよりもギルドの戦力として有効活用すべきと思ったからよ。」

 

「それは、オレだってそうだったさ。オレも売却に反対したんだ。だいたい、指輪を奪う動機があるのはオレ達反対派だけじゃない。売却派のメンバーにも売り上げを独占したいと思った奴がいたかもしれないじゃないか!」

 

 シュミットは腕を振り上げ自分の膝にガツンと叩き、頭を抱えた。

 

「なのに...グリムロックはどうして今更カインズを...。売却に反対した三人を全員殺すつもりなのか...?オレやお前も狙われているのか!?」

 

 怯えるシュミットに対して平静を取り戻したヨルコが、ポツリと言葉を投げた。

 

「まだグリムロックさんがカインズを殺したと決まったわけじゃないわ。仮に槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし、もしかしたら...」

 

 虚ろな視線をテーブルに落とし

 

「リーダー自身の復讐かもしれないじゃない...圏内で人を殺すなんて普通のプレーヤーには出来るわけないんだし」

 

「なっ......だって、お前さっき、カインズは犯人じゃないって...」

 

 唖然とするシュミットとは対称的にヨルコは薄く微笑んでいた。そしてスッと立ち上がり体をシュミットに向けながら窓までゆっくり後ろ歩きしていった。

 

「私、ゆうべ、寝ないで考えた。結局のところリーダーを殺したのはメンバーの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。指輪がドロップしたら投票なんかしないでリーダーの指示に任せればよかったんだわ。ううん、いっそリーダーに装備して貰えばよかったのよ。剣士として一番実力があったのはリーダーだし、指輪の能力を活かせたのも彼女だわ。なのに、私たちはみんな欲を捨てられずに、誰もそれを言い出さなかった。いつかギルドを攻略組に、なんて口で言っておきながら自分を強くしたいだけだったのよ」

 

 長い言葉が途切れるとヨルコの腰が窓枠にあたり、そこに腰掛けた。

 

「ただ一人、グリムロックさんだけは彼女に任せると言ったわ。あの人だけは自分の欲を捨ててギルド全体のことを考えた。だからあの人は、たぶん私欲を捨てられなかった私たち全員にリーダーの敵を討つ権利があるだわ...」

 

 しん、と落ちた沈黙の中、窓から入ってきた冷たい風が吹いた。そして、カチャカチャと小さな金属音がなった。その音源は細かく震えるシュミットのプレートアーマーだった。

 

「冗談じゃない...冗談じゃないぞ...半年も経ってから、何を今更...。

お前はそれでいいのかよ、ヨルコ!今まで頑張って生きてきたのに、こんな、わけも解らない方法で殺されていいのかよ!?」

 

 突然ガバッと顔を上げたシュミットは声を張り上げた。ヨルコは視線を彷徨わせ、口を開こうとした、瞬間。

 とん、と乾いた音が響いたと同時にヨルコの目と口がポカンと開いた。そしてヨルコの体がグラリと揺れ、よろめくように振り向き窓に手をついた。その時一際大きい風が吹き、ヨルコの背中に流れる髪をなびかせた。その背中には、なにか黒い棒のようなものが突き出ていた。その《なにか》をキリハ達三人は同時に認識した。それは、投げ短剣(スローイングダガー)の柄だった。そして刀身はヨルコの体に埋まっている。つまり、信じられないことだが窓の外から短剣が飛来し、ヨルコを貫いたのだ。前後に揺れていた体が、窓の奥へと傾いた。

 

「ッ!!」

 

 キリハは即座に窓へ移動し、ヨルコを掴もうとしたが、間に合わずそのままヨルコは落ちていった、と同時にキリハもヨルコを追うように窓から飛び降りた。

 

「「(姉さん/和葉)!!」」

 

 ヨルコは驚きに目を見開いた。そしてヨルコの体が地面につく寸前にキリハはヨルコを抱きしめ、自分が下になった。地面に墜落した瞬間、ヨルコは小さく、()()()()()()()()、ポリゴンとなった。

 《それ》を聞いたキリハはある確信をいだいた。

 

(なるほど、そういうことですか)

 

「姉さん、そっちは任せた!」

 

 キリトの声が聞こえたので上を向くと、キリトが窓から飛び出したところだった。アスカがキリトを呼び止めようと窓から身を乗り出したところでキリハはアスカに問うた。

 

「明日香!なにがあったのですか!」

 

「ダガーを投げたと思われるプレーヤーがいたんだ!キリトはそいつを追っている!」

 

「わかりました!僕も追います!方角は!」

 

「南だ!」

 

 キリハは方角を聞いた瞬間、そちらに走りだした。キリトもそのプレーヤーも屋根の上にいることは分かっているので、速度を上げできるだけ家と家の幅が小さいところを狙い、壁ジャンプを繰り返し屋根に登った。南の方を見るとキリトがローブを被ったプレーヤーにピックを投げたところだった。その手には転移結晶を持っていた。どうやら転移しようとしたので少しでもコマンドを遅らさせようとしたみたいだが、相手は憎たらしいほど落ち着いていた。

 キリハもそちらに全速力で向かい、せめて転移場所を聞こうとしたのだが、この街全体に大ボリュームで鐘の音が響きわたったのだ。そしてそのプレーヤーは姿を消した。




恐らく、次に投稿する話は短いと思われます
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