転生して主人公の姉になりました。SAO編   作:フリーメア

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 そちらの時間では久しぶり、になるか?まぁそちらに合わせて久しぶりと言っておこう。
 紹介が遅れたな。俺の名前はリョウ。知っているとは思うが、和葉をこの世界に転生させた存在だ。あいつの前では『神』といったが、正確には違う。あぁ、そんなことはどうでもいいか。
 本題に入ろう。俺が出て来たのは、今回の話は()()()()()()()()()()ことを知らせに来たからだ。無論、『外の世界』から観測しているお前たちは別だがな。そのことを了承した者から入るといい。
 では、今回も楽しんでくれ。


オ⬛︎ジ⬛︎
記■


 死銃(デス・ガン)事件を終えてから一週間。ALO内、中立域。そこにてコウ達はMob狩りを行っていた。新しく仲間になったアレンとシノンにALO各所の紹介をしながら、この世界での戦闘方法や飛び方を教えているところだ。と言っても二人がこのゲームを始めたのが事件後からなので、ほとんど教えることは無くなっている。2人の戦闘方法は、また今度語るとしよう。

 因みにメンバーは上記の2人と、コウ、キリト、アスカ、ユイ、シリカ、リズ、リーファ、レコン、クラインの合計11人だ。黒猫団は5人で狩りを行っており、エギルは現実世界で夜の準備を行っているので、彼は後合流するとのこと。

 そしてキリハはというと─

 

「コウさんも何も聞いてないのか」

 

「そうなんだよね。ただ遠慮しますとしか言われてないや」

 

─ここ最近、死銃(デス・ガン)事件を終えてから1人になることが多い。言い方を悪くすれば、付き合いが悪くなっている。

 

(また何か抱え込んでるかな?)

 

 キリハ(和葉)はどちらかと言えば抱え込む方だ。だから今まで、何かあるなら誰にでもいいから話すように言ってきた。それのおかげで、ここ数年は何も言わずともすぐに頼ってくれていたのだが…。

 

(今回は多分、今までとは違う)

 

 直接悩みがあるなら聞くと言っても、はぐらかされた。こんなことは初だ。キリトに聞いても、家族相手にもはぐらかしているとのこと。

 誰にも言えないモノ。果たしてどのようなモノなのか。

 

 

 

 

 12月下旬。死銃(デス・ガン)事件から一週間ほど経つ。あれから奴らを拘束したという報告も、発見したという報告もない。まだ一週間とはいえ、この情報社会において全力で捜索して見つからないなんてことがあり得るのだろうか。考えられるのは、既に海外へ逃亡したか、どこかの犯罪組織と繋がっているかだ。もしそうだとすれば、もうしばらくは拘束出来ないだろう。

 まぁそれは…どうでも良くはないが一先ず置いておく。それよりも重要なことが、和葉にはあるからだ。

 

(こんなこと、誰にも話せるわけないじゃないですか…)

 

 そう考えながら、和葉は家の近所を歩き回る。

 嗚呼まったくもってその通り、和葉の悩みは誰にも話すことなどできはしない。例え話すことができたとしても、信じる者はいないだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、という話など。

 気づけば、家から近い神社まで歩いてきていた。ちょっとした階段を上った先にある、木々に囲まれた場所だ。神社自体の古さ、葉の隙間から降り注ぐ日の光、それらがまるで別空間にいるかのような雰囲気を醸し出している。

 実際かなり昔に建てられたらしく、少なくとも500年前の物らしい。というのも、この神社の詳細が記されたモノがほとんど見つかっていないのが理由だ。では何故年代が分かったのかと言えば、使用された素材や、地質などを調べたとのこと。

 そんなことを考えながら、和葉は思考を続ける。

 

(というか何で思い出してるんですか。あの時、確かに前世の記憶を全て消してくれるように言ったはずなんですけど─)

 

「─そりゃあお前、俺がそう頼んだからな」

 

「っ!」

 

 気配もなく、突然背後から聞こえた声に、和葉は振り向きながら距離を取る。

 

「そんな距離を取るなよ。寂しいだろ?」

 

 口元に笑みを浮かべ、そう言った人物を見て、和葉は目を見開いた。

 先ほどまでは確実にいなかったはずなのに、こいつはどこから現れたのか。そうした疑問は、その人物を目にした瞬間に全て消し飛んだ。

 そいつは黒い軍服を着ており、和葉と同じ姿、見た目をしていた。普通ならばそのことに混乱するはずだが、和葉はそんなことなどはどうでもよかった。こいつが、和葉の()()()()()()()()()()に混乱し、驚愕しているのだから。

 

「混乱してんなぁ。まぁ当たり前か。()()()()()()()()()()()()なんておかしいことだもんなぁ?」

 

 こいつの言う通り、この現状が異様だ。なにしろ目の前のこいつは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。

 

「…何故、君がいるんですか─」

 

─フェイ─

 

 和葉が目の前の存在の名前を言うと、そいつはニィッと嬉しそうに口角を上げた。

 

「嬉しいぜ和葉。やっと思い出してくれてよ」

 

 和葉は深く息を吐き、自分を落ち着かせる。

 

「…あの時、PoHと戦ったのは」

 

 その言葉に、フェイはその通りと肯定する。

 

「あいつが色々と手を回してくれてな。だからあの時、誰も違和感を持たなかった」

 

 お前を含めてな、と続けた。

 あの時、和葉は深層心理ともいうべき場所でフェイと言葉を交えたが、今の今までそのことを忘れていた。PoHと戦闘してからログアウトするまでの間は、フェイが体を使用していたのだ。だが和葉はそのことを認識できず、それらも全て自身で行っていたとご認識させられていた。流石『神』と名乗るだけのことはある、ということだろう。

 

「それで、どいうことなのか説明しなさい」

 

 君が現れた理由も含めて全て、と睨みつける和葉に対し、そう急かすなよと返した後に口を開く。

 

「寂しかったんだぜ?あの楽しかった人生を一緒に過ごしたのに、記憶を消すなんて言いやがって。だからお前が転生した後、(あいつ)に頼んだんだよ─徐々に記憶を思い出すようにしてくれってな」

 

「楽しかったのは君だけですよ…いえそれより、何故そのようなことを?」

 

 そう問いかけると、楽しそうに笑っていたフェイは笑みを消した。それに伴い雰囲気までもがガラリと変わる。

 

「転生するときに、お前こう思ったよな?辛い人生だったって」

「あぁお前にとってはそうだったろうな。じゃなきゃ俺が()()()()()()わけがねぇ」

「けどよ。ホントに辛いだけだったか?少しでも幸せを感じることはなかったか?んなわけねぇよな」

 

 フェイの発したその声には、紛れもなく怒りが籠っている。突然のこと、ではない。和葉と会って嬉しかったことは本音だろう。ただ同時に、和葉に対して怒りを覚えていただけのことだ。

 

「アイツらは良い奴だ。俺たちが、仲間が戦果を挙げれば一緒に喜ぶ。誰かが捕らえられたときは、見捨てずに助けに行く。

 捨てられてた俺たちを拾ってくれた親父殿。仲間になってくれたあいつら。それを忘れようとしたお前を、俺が許すと思うか?」

 

 瞳孔が開き無表情で怒気を放つフェイに、和葉は何も言えなかった。あの時の選択はフェイを、彼らを裏切る行為だと理解してたのだから。

 重い空気が場を包んでいたが、やがてフェイはフッと笑みを零した。

 

「ま、お前の気持ちも分からないわけじゃねぇ。俺が一番、お前のことを理解できてたからな」

 

 だからチャンスをやろう、と奴は言った。それにどういうことだと、怪訝な表情を和葉は隠さない。

 そんな和葉に構わず、にぃっと笑みを深めたフェイは、こう言い放った。

 

「奴らを捨てろ。そして、俺と一緒にあの場所に戻るんだ」

 

─何を言われたのか、理解できなかった。浩一郎達を捨てる?あの場所に戻る?こいつ(フェイ)は、何を言っている?

 

(あいつ)に確認した。俺らが本当に望むんなら、死んだ時より前に戻らせてくれるってな。

 俺は望むぜ。アイツらとまだ生きていたい。アイツらとまた一緒に戦いたい。あの場所から必ず生還する。次はお前に任せねぇ。俺がやる」

 

 握り拳を作り、フェイは自身の心情を吐露した。本当に心の底から願っている、強い思い。あの場で死んだことは、こいつにとっては許せないことなのだろう。

 お前はどうだ、と手を差し伸べられて、和葉は身動きすら出来なかった。

 

(僕は…)

 

 フェイの思いに共感できない、わけではない。けれど、浩一郎を、今世の家族を、捨てることもできない。だから動けない。

 しばらく手を伸ばしたままだったが、和葉が動かないことを知ると、手を引っ込める。

 

「ま、今すぐに答えを出せとは言わねぇ。どっちにしろ時間は必要だろうしな」

 

 だから、とフェイは期限を設けることにした。

 

「今日の24時。それまでに答えを出し、ここに来い」

 

 来なかったら、答えを決めなかったらどうなるのか。そんなことは言わないし、聞かない。和葉が必ず答えを出すことを知っている。無駄な応答だと互いに分かっているから。

 

「じゃあな」

 

 それだけを言い残すと、瞬きする間にフェイは消えていた。まるで最初から、そこには何も存在しなかったかのように。

 和葉はしばらく留まっていたが、やがて背を向け、その場から立ち去っていく。心底ではどっちを望んでいるのかと、自分に問いかけながら。

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