「きりーつ!礼!ちゃくせーき!」
「今日の授業だが、今日は…」
あれから2年の時間が経った、正直あっという間の2年だった。
まずは「ツヴァイウイング」に関する事だ。
結論から言えば「ツヴァイウイング」は解散となった。
理由は「天羽奏」がライブの一件の際に重傷を負い、意識が戻ってない為である。
あの後何があったのか不明だが、絶唱をしなかったとはいえ体に蓄積されたダメ
ージはそれほど大きかったのだろうか?
「というわけでここの数式はこうなるわけだ。次にこの数式だが…」
次に俺の事だが、俺は家を出る事になった。
両親が俺と一緒に居るのに耐えれなくなったのが理由だ。
まぁ、四六時中非難される原因を作った息子だ、仕方ない。
幸い、最低限の支援して貰ってるのでその点は心配ない。
学校の方も大分居心地は悪かったが、卒業し高校に行く頃にはマシになったのは幸いだった。
あれ以上非難の目に晒されたら、頭がおかしくなるかと思ったからな。
今はリディアンに近い公立校にバイトしつつ通いながら、ノイズの出現を待っている状態だ。
また、2年の歳月は俺に心境の変化を促がしたのか、いつの間にか浮かぶ歌も変わった。
「で、あるからしてここの数式はこうなる。さて、次の問題だが…音無、わかるか?」
肝心のノイズについてだが…、こちらは芳しくない。
まず、リディアン周辺に頻繁にノイズが出るのが、ソロモンの杖を使用したフィーネの仕業
だから彼女が行動を起こすまで出るかも不明な点が一つ。
また、仮に出現したとしても自分が気が付けるか、更に気が付けたとしても二課のバックアップ
がある風鳴、そしているかもしれない天羽を出しぬけるか疑問な点が二つ。
おまけに戦闘に参加できてもその後、二課から無事に離脱するまでは気を抜けないのが三つ。
「音無。聞いているのか、音無!」
その結果、ここ二年の間で遭遇できたノイズ戦はたったの二回。
いずれも小規模であり偶発的に遭遇できたおかげだ。
しかもそのどちらもがわずか一ヵ月以内前の話だ。
幸い二課の人間が来る前に始末できたが、もしかしたら、既に立花はシンフォギアを起動している
可能性もある。
原作では風鳴のCD発売時だが、ここは現実。
意図的な覚醒ではない以上、最近のノイズ警報の頻度からいつ覚醒していても不思議ではない。
あくまで可能性が高い程度に考えねばいけないだろう。
だが、俺は練度なんてろくに稼げてないし、原作が始まったとしてもこのままでは本格的にまずいかもしれない。
そんな考えの途中だが、視界の端に黒い影が見えたのでそちらの方に視線を向けてみると…、そこにはかんかんに怒った数学教師の姿があった。
「私の授業中に呆けるとはいい身分だな、音無!!」
「は、はい!・・・すいみません」
「まったく近頃の若い連中は…」
どうやら俺の迂闊な行動で先生は説教モードに入ったようだ。
こうなるとこの先生の話は長くなるのだが、身から出た錆だ耐えるしかない。
だけど、この日常はいつまで続けられるだろう?
「で、何か分かったことはあるか?」
「ぜーんぜん。あの子もあれっきりだし、ノイズの方も芳しくは無いわ」
「そうか…」
俺は特異災害対策機動部二課本部で了子くんから謎のシンフォギアの解析結果と、ここ最近
急増したノイズの調査結果の報告を受けたいた。
二年前「ツヴァイウイング」のライブに、ノイズを倒すため現れた天音遥と名乗る謎の
シンフォギア使い…。
あのライブは裏で完全聖遺物である第4号聖遺物「ネフシュタンの鎧」の起動実験が行われて
いたが、聖遺物の暴走とノイズ騒動のどさくさに紛れて紛失してしまった。
そして、その場に現れたシンフォギア使い。
この二つを結びつけるのは早計かもしれんが、放置するには余りにも大きすぎる問題だ。
それに彼女の使うシンフォギアは我々とは異なる異端技術が使われてるのか、高度なステルス機能を備えてるようで現在の所補足できたのは僅か四度…、一度目はアウフヴァッヘン波形のパターンから判明したがライブの6年前に補足した謎のシンフォギアの反応。
二度目は2年前ライブ会場で、そして三・四度目はごく最近、リディアンから遠くない場所で
ノイズの反応と共に…だ。
余りにも出来過ぎてる状況、疑うなと言う方が無理がある。
実際、政府からも重要参考人としての捕縛の命令も出ている。
ノイズの方も深刻だ、ここ最近の頻度は明らかに異常である。
しかも、発生地点は本部があるリディアンからいずれも近い場所でだ。
これは人為的にノイズが呼び出されてる可能性もある。
もしも人為的に呼び出しているとしたなら、狙いはおそらく地下に保管されている完全
聖遺物『 デュランダル 』だろう。
だが、敵の正体が見えない。
今の所米国の線が疑わしいが、第三者の可能性も否定できん。
また、それ以前にノイズを人為的に操るなどとはたして可能なのだろうか?疑惑が
膨らむばかりだ。
「了子くんは引き続き調査の方を頼む。あおい、奏の具合はどうだ?」
「今のところ落ち着いてます。ですが、何時目覚めるかまでは…」
奏は2年前のライブで命こそ落とさなかったが、ガングニールの破損は著しく再度の
起動は不可能。
肉体的なダメージと、些細な事からその事を知った精神的なショックで奏は深い眠りに
落ちてしまった。
俺のミスだ…、もっと注意しとくべきだったんだ。
「慎次、翼はどうしてる?」
「何時も道理奏さんの所です」
翼も変わった、頑なになり1人ですべてを背負おうとするようになった。
奏の事が原因なのは疑う余地も無いだろう。
今、二課にノイズに対抗できる適合者は翼1人だけ、なんとかしてやりたいが
俺にはどうする事もできん。
俺は…無力だ。
「奏、今日の収録も無事に終わったよ。奏が居ないからすぐ終わっちゃった」
ライブから2年、一足先に戻った奏の元に行きたかったけど、指令にライブ会場の一件を
報告する必要があった。
報告を終え、奏に会いに行こうとした時だった…奏が倒れたと言う報告を受けたのは。
奏はライブの裏で行われる実験の為、しばらく前からLiNKERの投与を控えていた。
そのせいで突然発生したノイズとの戦闘中に効果時間が切れ、無茶な戦闘を続けたせいで身体が
ボロボロになった。
けど、それだけじゃない。
あの一戦は奏だけじゃない、奏の戦う力である第3号聖遺物「ガングニール」すら再度の使用が
不可能なほど壊れたしまったのだ。
奏はノイズに両親を殺され復讐の為だけに過酷な訓練や、血反吐を吐くまでの薬物投与の末に
ガングニールの起動に成功したんだ。
その自分の全てとも言っていいガングニールが壊れたと知った奏のショックは大きく、肉体的な
ダメージもあってかそのまま意識を
手放してしまった。
そして、現在も奏の意識は戻っていない…。
私のせいだ、私がもっと戦えていれば。
「奏、私一人でもノイズと戦えるようになったよ。でも私には奏が居ないとダメなんだ…」
私はあれから、もう二度と過ちを繰り返さない様、感情を捨て一振りの剣であろう
としたのだが…。
無理だった。
病室に行けば目を覚まさないとはいえ奏が居るのだ、捨てようとしてもこの悲しみは消える
ことなくむしろより強く私を蝕み続ける。
「私奏と話したいよ、早く目を覚ましてよ。出ないと私、どうにかなっちゃいそうだよ…」
奏もおらず、かといって一振りの剣にもなりきれず、半端な私はどこへ向かえばいいのだろうか?
眠り続ける奏は何も答えてくれない。
「奏、次の仕事があるから私行くね」
一時は歌うのを辞めようかと思ったが、奏との絆だ。
やめるわけない行かない。
だから私は歌い続ける。
いつか奏が目を覚ましてくれると信じて。