博士の日常   作:天野蒼夜

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自分の性格について考えてみる

「オラァアアアアアアアアアアアアアアアアァ!喰らええぇえぇえええ

ぇえ!!ロケットパァアアアアアアアアァァアアァンチ!!」

 

「サンダー……ブレーク!」

 

ロボットガールズZと地下帝国との戦いの火蓋が切って落とされ、

光子力町では壮絶な激闘が繰り広げられていた。

 

ただし……ロボットガールズZが放つロケットパンチやサンダーブレークといった

必殺技を放ち、周囲が破壊されているという意味でだが。

 

「ちょっと皆!八百屋さんが寿司屋が!ああっ!銭湯まで!町に被害出

さないように戦ってって言ったばかりでしょ!」

 

博士がそう言ってZちゃんとグレちゃんに注意するが、戦いに集中している

せいで博士の声が聞こえていないようだ。

 

「無駄よ博士。二人がああなったら地下帝国がボロボロになるまで

暴れ回るわ」

 

「グレンダさんは今日は戦闘に参加しないんだ?」

 

「まあ、二人がああして果敢になってることだし。今回は私が戦わな

くてもすぐに済んじゃうかなと思って」

 

二人が地下帝国を追い回しているのを見ながら言う。

 

たしかに二人共無駄にハイスペックな性能を持っているのでグレンダさんが

そう言うのも無理はないが……。

 

「ひぇええええええええええええええええええええええええええぇえぇ

え!!どうかお助けをぉおおおおおおおおおおおおおおぉ!!」

 

「敵に情けはかけん!光子力ビィイイイイイイイイイィィム!!」

 

「いやぁあああああああああああああああああああああぁあ!!」

 

Zちゃんの両目から放たれた光り輝く光線を二人は必死に逃げて避ける。

 

それによってビームは本屋に直撃し、跡形もなく消滅する。

 

「このぉ!逃げんな!光子力ビーム!ビーム!ビーム!ビーム!ビィイイ

イイイイイイィィイィィイィイイイイイイィイム!!」

 

Zちゃんが縦横無尽に光子力ビームを連続発射する。

 

しかし闇雲に発射しているのでガラダK7とダブラスM2にはかすりも

していない。

 

「あらあら、この調子じゃ光子力町が全壊するのも時間の問題ね~」

 

「暢気に言ってる場合か!おおぉおおおおおおおおおおおおぉおおいZ

ちゃん!ストップ!ストオォオオオオオオオオオオオォオップ!!」

 

闇雲に光子力ビームを放つZちゃんに博士が向かって行く。

 

Zちゃんのところに向かうと、博士は後ろからZちゃんを羽交い絞めに

して押さえつけた。

 

「冷静になれ!このままじゃ光子力町がまた全壊する!」

 

「う~!放せ~!あいつ等ぶっ飛ばしてやるんだから~!」

 

博士に羽交い絞めにされながらもZちゃんは地下帝国を潰すために

破壊神と化している。

 

しかし、博士はZちゃんと長い付き合いの果てにこの破壊神モードを

止める方法を既に心得ていた。

 

「Zちゃん!いい加減にしなさい!でないとお小遣い減らしちゃうぞ!」

 

「っ!」

 

博士のその言葉でZちゃんは正気を取り戻す。

 

バイトで払われる給料のほぼ全ては壊した町の修理代に回されて

いるため、博士からもらえるお小遣いは彼女にとってとても希少

なのだ。

 

「た……助かったぁ……死ぬかと思った……」

 

「な……ナノ……」

 

「くっ……今日のところは見逃してやる!覚えていろ!ロボット

ガールズ!」

 

そう言い捨てると、地下帝国は一目散に逃げ出して行った。

 

面々がいなくなり、博士は一息吐く。

 

「ふぅ……どうにか帰ってくれたみたいだ……危うく町が全壊する

とこだった……」

 

「でも町はほぼ半壊した」

 

「暴れてた本人が言うな。Zちゃんもあれほど町はできるだけ

破壊するなって言ったじゃないか」

 

「説教はあとで聞くからそろそろ早く離れてよ……くすぐったい

じゃん……」

 

「……ああ」

 

Zちゃんに言われて改めて彼女に抱き付いたままだと認識して離れる。

 

そして離れた後に放たれた彼女の一言が……。

 

「博士のエッチ」

 

であった。

 

ただ自分は町を全壊しようとしたZちゃんを止めようとしただけなの

に何故そこまで言われなければならないのかと博士は少し理不尽な気

持ちになった。

 

「でも……またほとんどZちゃんだけでやっちゃったわね。またしばらく

はバイトの日々ね。いつものことだけれど」

 

「まったく……店主さん達にまた怒られちゃうよ……プラス請求書が……」

 

「まあまあ!元気出しなって!人間開き直りが一番だよ!」

 

「お前は少しは反省しろ!!!」

 

こうして、(一方的な)戦いを終えたロボットガールズは光子力研究所

に戻って行った。

 

しかしこの戦いでまた光子力普及の夢が遠のいたことは言うまでもない。

 

 

―――――

 

 

今日の仕事を終えた後の夜。

 

博士は夕食を済ませた後、研究室で光子力についてをノートパソコン

にまとめていた。

 

しかし書かれているほとんどが化学式ばかりで一般人から見たら何の

ことかちんぷんかんぷんだ。

 

「(光子力はZちゃんのように攻撃に転用することもできれば光子力

バリアーのように防御に転用できる物質だ……Zちゃんももっと加減し

てくれればいいんだけど……)」

 

今日地下帝国と戦っているZちゃんを思い出して博士は苦笑する。

 

だが、真っ直ぐ一直線なのが彼女の性格なのでそう簡単に改ざん

されるわけがないのだ。

 

「博士」

 

ノートパソコンと睨めっこしていると、Zちゃんが研究室に入って

きて近づいて来た。

 

「何してんの~?うわっ……何この式……理科の勉強でもしてんの……?」

 

「光子力をもとめる化学式だよ。お前も光子力を使ってるんだから

学んでみる?」

 

「いや、いい……あたしこういう頭使う系は苦手だから……」

 

やはり生粋の体育会系ということもあってか、やはりこういうのは

苦手のようだ。

 

「ああ、そう……で、何か用か?」

 

「……うん、今日の戦いのことなんだけどさ……」

 

「ああ、それが?」

 

「……あたし遠回しなの嫌いだから単刀直入に聞くけど、博士はあたしの

ことどう思ってる?」

 

「は?」

 

Zちゃんのいきなりの質問に博士はつい間の抜けた声を出してしまう。

 

「えっと……ごめん、それはどういう意味でかな?」

 

「えっと……女として、かな?」

 

「何で急にそんなことを俺に聞くんだ?それと今日の戦いと何の関係

があるんだ?」

 

「ほら……あたしってこんな性格じゃん?体育会系だし、すぐに熱く

なっちゃうし。戦いになれば見境なくなっちゃうし……これは女とし

てどうなのかってあの戦いの後に疑問になっちゃって……だからと男

の意見が聞きたくて……」

 

Zちゃんがこういうのを気にしたのは正直意外だ。

 

彼女はそういうのは全然気にしないタイプだと思っていたからだ。

 

彼女の言葉を聞くと博士はノートパソコンの電源を切って閉じて

席を立った。

 

「博士?」

 

「パソコンと睨めっこばかりしてると身体によくないな。ちょっと

外に出ないか?」

 

「それはいいけど……何で急に?」

 

「一人よりも二人ってよく言うだろ。それにちょっと夜空を

見たいんだ」

 

「そっか……まあ、たまにはいいかもね」

 

外に出ることを決めて、二人は研究所の中から屋上のほうに出た。

 

屋上のほうに出ると満天の星空がビーズの如く空に散りば

められていた。

 

「綺麗……星ってよく分かんないけど、それだけは分かる。博士は星詳しい?」

 

「まあ、理科の授業で習った程度にはな。今の季節は冬だから……時季

的にはオリオン座、ふたご座、おうし座、おおいぬ座とかが見えるか

な。ほら、あの砂時計みたいな形してるのがオリオン座だよ」

 

そう言って博士がオリオン座が点在しているところを指差す。

 

博士が指差しているのを見て、Zちゃんはそっちのほうに視線を向ける。

 

「へ~アレがそうなんだ~。ホントに砂時計みたいな形してるね。で、

ふたご座とかおうし座とかはどこにあんの?」

 

「えっと……ふたご座がアレで、おうし座がアレかな。ま、俺もそこ

まで詳しいってわけじゃないけど」

 

ふたご座とおうし座が点在されている場所を指で指してZちゃんに教える。

 

「ほぉ……よく見たら皆変な形してんだね」

 

「一応双子や牛をモチーフにした形してるんだよ。あ、そういえば

俺がお前のことについてどう思っているかの答え、まだ言ってなか

ったっけな」

 

「あ……うん……それで、どう思ってる……?」

 

緊張しているのか、Zちゃんは若干ではあるが顔を赤くしていた。

 

しかし博士はそんなこと気にせずに言葉を続ける。

 

「まぁ……これはあくまで俺個人の見解なんだけど……Zちゃんはたしか

に男勝りで女の子としては若干欠けてるところはあるかもしれない」

 

「ぐさっ!」

 

博士の言葉でZちゃんがショックを受けたように腹部を押さえる。

 

しかし博士の追撃はこれだけはなかった。

 

「それに無駄に暑苦しいし、町は容赦なく破壊するし、言うことも

あまり聞かないし、それにすぐ力づくで解決しようとするし。女の

子としてはこれ以上に危険なことってないよな」

 

「ぐさぐさぐさぁ!」

 

博士の容赦ない猛追にZちゃんはついに床に倒れてしまった。

 

しかしそんなZちゃんに博士は”でも”と言ってこう付け足した。

 

「でもロボットガールズにおいては頼りになり、たまに可愛いところ

もある女の子とも思ってるよ、俺は」

 

「博士……」

 

Zちゃんの表情が少しずつ華やぐ。

 

すごく嬉しそうだ。

 

「人の長所なんてそれぞれだ。Zちゃんは悪いところはたくさんある

けど、それに負けないくらいいいところもある。俺も皆もそれを知っ

てる」

 

「そ、そうかな……?こんなあたしでもいいとこあるかな……?何かいざ

言われると照れちゃうな……あははっ」

 

照れたようにZちゃんが顔を赤くしながら頬を人差し指で掻く。

 

「あ、でも今日のことは反省して欲しいかな。全壊は防げたとはいえ、

半壊はしたんだから。Zちゃん達にはその分またバイトで働いてもらわ

ないと」

 

「うっ……!」

 

いきなり現実を突きつけられてZちゃんの顔色が急に悪くなる。

 

しかしこればかりは知ってもらわないといけないことなのだ。

 

「夜風にちょっと当たりすぎたかな……そろそろ中に入ろうか。眠

くもなってきたことだし」

 

そう言って、博士は研究所の中に戻ろうとする。

 

しかし中に入ろうとした時、Zちゃんが”博士”と落ち着いたトーンで呼んだ。

 

Zちゃんに呼ばれて博士は”何だ?”と言って振り返った。

 

「その……何ていうか……ありがとね。嬉しかったよ」

 

「……ああ」

 

顔を赤くさせながら明後日の方向を向きながらお礼を言うZちゃん

を見て、男勝りな彼女にも可愛いところはあるのだと改めて認識し

た瞬間だった。

 

それから研究所の中に戻った二人はそれぞれの部屋に戻り、朝までぐっすり眠った。

 

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