とある日。
休日も必要だということで、博士とロボットガールズZは旅館へとやって
来ていた。
今は用意された個人用の部屋でゆっくりしている。
「いや~たまにはこういうところでゆっくりするのもいいね~。たまには
地下帝国との戦いから遠ざけてさ」
「まあ、ここのところ皆バイトを頑張っていたからね。俺からのご褒美さ。
温泉もあるみたいだからあとで入ってくればいいよ」
「温泉って、あの有名な光子力温泉?」
「うん、そう。何でもその温泉には色んな効能があるらしくて、腰痛や
肩こり、肌を艶々するのに効くんだって」
「あら、それはいいわね。じゃあとで皆で行きましょう」
「男女別々だけどな。俺も今日は仕事のことは忘れてゆっくり―――」
「お姉ちゃぁああああああああぁん!!お兄ちゃぁあああぁん!!!」
窓のほうから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
博士は嫌な予感がして窓のほうに視線を向けると、窓を外からぶち破って、
一つの物体が博士めがけて突撃してきた。
その正体は……。
「み……ミネルバ」
ミネルバX……紅のロングヘアーに紅いりボン、ロボットガールズZ
と似たような服装、両足にはのハイソックスにローファーを履いて
いる美少女、ではなく男の娘だ。
最初はZちゃんのサポートをするために生まれたと言って迫ってきた
が、本当の正体はロボットガールズZのチームを引き裂くために地下
帝国が作り出した機械獣ガールだ。
しかし今ではそんなことをすっかり忘れ、Zちゃんのことを”お姉ちゃ
ん”、博士のことを”お兄ちゃん”と言って求愛を迫ってくる。
「ミネルバ!あんたどうしてここに!?」
「ひどいよお姉ちゃんお兄ちゃん!こんな旅行に私を呼んでくれない
なんて!研究所に行ったら二人共いないし!」
「だったらどうやってここを知った!?」
「だって私の体内にはお兄ちゃんとお姉ちゃんの居場所をキャッチする
レーダーがあるから!これも愛のチ・カ・ラ♡」
嬉しそうに言って、ミネルバXが博士に抱き付きながら頬擦りしてくる。
「お、おいこら離れろ!俺は男にこんなことされる趣味はないぞ!」
「性別なんて愛の前じゃ些細なことだよ!今日こそお兄ちゃんに私の
愛を受け取ってもらいたいから!」
最初は愛の矛先はZちゃんだけだったのだが、その後博士がミネルバXに
色々お世話したのがキッカケとなり、現在に至っている。
さっき博士が言った通り、彼にBLの趣味はない。
普通に女が好きなのだ。
「あらあら、ミネルバさんも相変わらずねぇ。博士、いっそのことミネ
ルバさんの愛を受け止めてあげたら?」
「バカ言うな!俺は普通に女が好きなんだよ!お前は俺にBLに走っても
いいというのか!?」
「大丈夫よ博士、私貴方が腐男子になっても、ずっと私にとっては
博士だから」
グレンダさんは笑顔でそう言うが、こっちとしてはそうなるのは
ごめんだ。
「Zちゃん!この子何とかして―――って!もういないし!?」
博士がZちゃんに助けを求めようとすると、そこにいたはずのZちゃ
んは忽然と姿を消していた。
「Zちゃんならミネルバが博士に気を取られている間に逃げたよ」
「(あの野郎……俺にミネルバを押し付ける気か……!?)ミネルバ!
Zちゃん!Zちゃんは追いかけてなくていいの!?お姉ちゃんが逃げ
たんだよ!」
「お姉ちゃんはいつでも追えるから。お兄ちゃん最近お仕事が忙し
くて全然私に構ってくれなかったし……」
「いや……それは……」
「そういえばミネルバさん、知ってる?ここって光子力を用いた温泉
があるんですって。兄妹の親睦を深めるのに丁度いいんじゃない?」
「温泉!?」
グレンダさんの一言にミネルバXが超反応する。
ミネルバXが反応しているのを見て、博士は嫌な予感がした。
そしてそれは的中し、ミネルバXは博士をどこからともなく取り出した
ロープで身体をふん縛る。
「おい待て!まさかお前!?」
「そういえば今日はまだお風呂に入ってなかったっけ!だから温泉に行
きましょう!背中の流しっこしましょ!」
「温泉だと!やだよ!入るなら一人で入れよ!お前絶対よららぬこと
する気だろ!?」
「兄妹には時に裸の付き合いも大事だよ!さあ温泉にレッツゴー!」
「いやぁああああぁあ!!!誰かこの子を止めてくれぇええええ!!!」
だが、博士の叫びも空しく、そのままミネルバXに連れられて温泉に
連行されてしまった。
博士がミネルバXに連行されて行くのをグレンダさんとグレちゃんは
最後まで見送る。
「ここまで追ってくるなんて、ミネルバさんも可愛いわよね~」
「あんた、ミネルバがああ言うと分かっててワザとあんなこと言っ
たでしょ……?」
「いいじゃない、どうせ男同士なんだから。間違ったことなんて絶対
起きないわよ。多分」
「博士も可哀想に……さすがに博士に同情するよ……」
ミネルバXに連行された博士をグレちゃんは心から同情した。
「~♪」
連行されること数分。
温泉に連行された博士は着ていた服を全て脱がされ、ミネルバXに背
中を洗ってもらっていた。
柔らかい布地に泡立てて綺麗にしているのだ。
「どう?お兄ちゃん?気持ちいい?」
背中越しにミネルバXが聞いてくる。
「ああ、気持ちいいよ。思ってたより上手なんだな」
「ふふっ、だってお兄ちゃんの背中だもん。大切に洗わないとね。
それに」
博士の背中のほうを見る。
博士の背中は平均的ではあるが、無駄な肉はないしっかりとした背中をしている。
「お兄ちゃんの背中、大きいよね。小さい私と違って」
「これぐらい普通だろ。レスラーみたいにガッシリしてないし」
「ううん、それでも十分大きいよ。その背中を洗えるなんて私、
幸せだから」
「……幸せって、俺男だぞ?」
「そんなの分かってるよ。だからお兄ちゃんって言って慕ってるん
じゃない。お兄ちゃん、私が敵なのを分かっててすごく優しくして
くれたし」
ミネルバXには敵意がない……なら戦う理由はない。
それだけのことだ。
「だってお前、Zちゃん達が暗黒大将軍子にやられそうになった時
助けに来てくれたじゃないか。そんな人に敵意を向けられるわけな
いじゃないか。戦えない俺と違って……」
「あの時はお姉ちゃんがピンチだって聞いて必死になってただけだ
よ。それにお兄ちゃんは無力なんかじゃない」
「どういうことだ?」
「たしかにお兄ちゃんには私達みたいに戦闘能力はないかもしれない。
でも私知ってるよ、お兄ちゃんがお姉ちゃん達を裏で支えてくれてるっ
てこと。お姉ちゃんはあんな性格だから言わないけど、いつも感謝して
るって言ってたよ」
「Zちゃんが?」
「うん、この前言ってた。でも博士には恥ずかしいから絶対言わない
んだって。他の二人はどうでもいいから知らないけど」
相変わらずZちゃんと博士以外には興味なしのミネルバである。
「だからお兄ちゃんは無力なんかじゃないよ。だってお兄ちゃんには
私達のできないことができるんだから」
「お前……」
「ふふっ、どう?お兄ちゃんを諭してる私ってお兄ちゃん思い?愛を
受け止める気になってくれた?」
一瞬でもときめいた自分がバカだった。
やはりミネルバはミネルバだ。
「そんなわけないだろ。お前の愛を受け止めたら俺の何かが終わる」
「大丈夫、最初は誰だって道を踏み外すのが怖いものだよ。でも、その
一歩を踏み出すのが大事なんだよお兄ちゃん!」
「その道だけは絶対開拓したくねぇぇええええええええええぇ!!!」
しかし、ミネルバXはちゃんと博士のことを見ているということは分かった。
だが……愛が重すぎるのがタマにキズだ。
それからは二人は背中を流し合い、一緒に温泉に入った。
しかし、博士の旅館生活はここからが本番である。