すっかり夜になり、現在の時刻は午後11:34。
博士は自分の部屋に布団を敷き、毛布の中に入って就寝していた。
毛布の中が温かいこととミネルバにつきまとわれて疲れたことも
あり、博士は
すぐに眠りにつけた。
しかし、そんな博士の部屋の天井の板の一枚が開き、そこから何
者かが博士を覗き込んでいた。
ミネルバXだ。
「(ふふふっ、寝てる寝てる。でもここからじゃ見えないな……。
下りて寝顔覗いちゃお~っと)」
小声で楽しそうに言うと、ミネルバXは天井裏から音を立てずにゆっ
くりと下りて博士の布団の中に潜り込む。
ずいずいと上のほうに上っていき、毛布の中から半身だけを出す形
で博士の寝顔をじっくりと眺める。
「(お兄ちゃんの寝顔、可愛いな~。今思えば寝てるお兄ちゃんの
寝顔見るの初めてだな、私)」
「んっ……んぅ……」
「あっ……」
ミネルバXにのしかかられていることに重みを感じた博士が閉じて
から数分しか経っていない瞼をゆっくり持ち上げる。
「ふふっ、こんばんは。お兄ちゃん♡」
綺麗な笑顔でミネルバXが博士に挨拶をする。
ミネルバXのその言葉をキッカケに博士はようやく自分が置かれて
いる状況を理解する。
自分は今……ミネルバXに夜這いされているのだと……。
「み……ミネルバ!お前何やってんだよ!?」
Zちゃん達が隣の部屋で寝ているので博士はボリュームを抑えて
聞いた。
「いや、お兄ちゃんと一緒に寝ようと思って。私の部屋一人部屋
だから寂しいんだもん」
「ならZちゃんのとこに行けよ!何でわざわざ俺のとこに来る!?」
「だってお姉ちゃんの部屋はあいつ(グレちゃん)がいて厳重で
部屋にすら入れそうにないし。それにお兄ちゃんも一人部屋だか
らおねえちゃん達がいないから寂しいかな~?って思って」
「子供じゃあるまいし……寂しいわけないだろ!それより自分の部屋
戻れ!そして寝ろ!」
「……お兄ちゃん、私のこと嫌い?こんなことする私のことウザい?」
ミネルバXが両目に涙を溜めて言ってくる。
そこで鬼の一言が言えない博士はミネルバの泣き顔に萎縮してしまう。
「別にお前のことが嫌いなわけじゃない。でも、やっぱり男同士で
こんなことは……」
「……私、お姉ちゃんのこと大好きだけど、お兄ちゃんのことも同じ
くらい好きだよ。だからお兄ちゃんも私のこと好きになってもらい
たい。本当の妹みたいに可愛がってもらいたい。だから……」
視線を博士の胸板のところにロックオンして寝巻きの浴衣の帯
に手をかける。
脱がせようとしていることに博士は驚いてしまう。
「おい、お前何してんだよ!?」
「大丈夫、全部は脱がせないから。ちょっとはだけさせるだけ」
ミネルバXがそう言っている間に浴衣の帯を完全に解かれ、ミネル
バXの前に肌をさらけ出す形になった。
博士の胸板は筋肉質というわけではないが、それなりに頑丈で、色白の
肌を持っていた。
「一緒にお風呂に入った時も思ってたけど、お兄ちゃんの肌って綺麗
だよね。それに……いい匂いがする」
顔を胸板のほうに寄せて鼻をひくつかせて博士の匂いを嗅ぎ始める。
それが若干博士にとってはくすぐったく、身をよじらせる。
「くすぐったいんだ……じゃあこっちのほうはどう?」
そう言ってミネルバXは顔を胸板のほうから博士の首筋に移動させる。
首筋に到達するとそこを紅い舌でチロチロと舐め始めた。
「あっ……んっ……ミネルバ、そこは……」
「ここ……弱いんだね。そんなに顔真っ赤にしちゃって。可愛い」
博士の顔を一目見て意地悪っぽく笑みを浮かべると、また首筋に顔
を移動させて舐める。
その舐め方はいやらしく、くすぐったく、そしてエロかった。
「あっ……あぁ、はぁ……ミネルバ……やめっ……それ以上はぁ……!」
「やめて欲しい?でもダ~メ、こんな可愛いお兄ちゃんを見られる機
会なんて滅多にないもん。もっと可愛いお兄ちゃんを……私に見せて」
「やっ……だから、ダメだってばぁ……!あっ……んっ……ふぁあああぁっ」
「あははっ、何か楽しくなってきちゃった♡今夜は一緒だよ、
お兄ちゃん♡」
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、ミネルバXは博士の首筋を攻め続けた。
―――――
朝……博士は小鳥のさえずりでいち早く目が覚めた。
昨晩のミネルバXの夜這いが原因だ。
「(ったく、ミネルバの奴……人が抵抗しないからって執拗に首
責めてきて……)」
ミネルバXに責められて博士は自分が思っていた以上に首を舐め
られるのに弱いということが判明した。
グレンダさんに知られでもしたら大変なことになってしま
うだろう。
「(それに結局……こいつは本当に俺の部屋で寝ちゃったし……)」
自分の隣ですやすやと寝息を立てているミネルバXのほうに
身体を向ける。
「(こいつ……人の気も知らないでぐ~すか寝やがって……このっ、このっ!)」
ちょっとした仕返しのつもりなのか、博士は人差し指で寝ているミネル
バXの頬をつつく。
しばらくつつかれると、ミネルバXは反応しているのか、身をよじらせる。
「ん~」
しかもそれだけでは飽き足らず、ミネルバXは両目を瞑りながら博士
に密着して抱き付いてきた。
オマケに本当に寝ているとは思えないほどの怪力で。
「ミネルバ……ちょっと苦しい……!ていうか寝ぼけてないでさっ
さと起きろ!」
「ん~……お兄ちゃぁ~ん」
何の夢を見ているのか、ミネルバXが甘えるような口調で博士を呼ぶ。
博士はその夢の内容を想像しようとしたが、恐ろしくてとても
できなかった。
「えへへ~お兄ちゃん、大しゅき~」
「……」
夢の中ではよっぽど甘えさせてもらっているのか、ミネルバXが
本当に嬉しそうな表情で寝言を言う。
きっとミネルバXには姉のような存在はいても兄のような存在の
人はいないのだろう。
何故なら彼女は機械獣として作られ、周囲にも同姓の機械獣しか
存在しないからだ。
それを悟った博士は溜め息を吐いてミネルバXの頭を優しく撫でる。
「お前が本当に女で、本当に兄妹だったら……俺は本当に兄として
お前を笑顔にできるのだろうか……?機械獣が妹なんて全然想像で
きないけどな」
そう言って博士は苦笑する。
それよりももうすぐZちゃん達が起きてこちらにやって来るはずだ。
朝食の時間が始まっているのだ。
「ミネルバ、起きろ。朝だぞ。いつまでも寝てるんじゃな
いよまったく」
隣で寝ている男の娘な妹の身体を揺さぶって、博士のドタバタな
日常がスタートする。
これからも変わることのない……平凡とはかけ離れた毎日を……。