夏って感じです!
「………」
気が付くと、そこは見たことのない場所だった。
薄暗く微かに赤黒い。地面という地面なんてものはないが俺はそこに立っていた。あたりに見える無数の目のようなものは明らかに不気味で、誰がどう見ても気味の悪い場所だと答えるだろう。
「ここは夢の中なのか…?確か俺は……」
吹っ飛ばされて気絶したよな…?、と言おうとしたところで後ろから一つの声が聞こえた。
「お前のせいで、お前のせいで…」
思わず鳥肌が立ってしまう。
聞いたことのあるその声は以前、俺を刺したであろう少女の声だったからだ。
振り向くとそこにはその少女と、少女の彼氏でイケメンの……タカ……だっただろうか、二人が立っていた。
二人が、同じナイフを持って。
おい待て、少女のほうがナイフを持ってるのはわかるが、何でタカとやらまでそんなぶつを持っているんだ。
スッ
二人が何やら殺気のようなものを帯びて歩みよってくる。
「………」
…だから何で二人して同じ歩幅、同じ体勢、同じ表情で寄ってくるんだろう。一歩でも動けば刺されそうだが、こいつらは夢に出てきてまで俺を笑わせたいのか。
と、そんな事を考えていたせいで油断したのだろうか。俺の頬に鋭い痛みが走った。恐らくナイフがかすったのだろう。となると無意識のうちに俺もそのナイフをギリギリで避けていたということになる。
俺の反射速度も捨てたものじゃないな。この調子なら逃げ切れ……
「……あらあら、また調子に乗って……。
まぁ、そこがかわいいところでもあるのだけれど」
突然、後ろから声が聞こえる。いきなりのことに振り向いてしまう。
聞いたことがあるような、無いような…………
でも、そこには誰もいなかった。
「……ッ!?」
ってまずい!刺される!
夢の中とは言えもう刺されたくはない。しかし背を向けたこの体勢ではどうすることもできない。
…いやまて、俺はやればできる男だろう。いつだって戦ってきた、こんなところで諦めてたまるか。最後のあがきといこうじゃないか。
バク転の要領で後ろに反り返り地面に手を着く。そして怖いので目をつぶったまま…
「すんませんっした!!!」
必殺、背面土下座!
使ったのはこれが初めてだ。まさか夢の中で使うなんて。
ちなみに、現実の世界では使ったことはない。そんなことをしたら背面変態土下座マンになってしまう。
「………」
何も来ない。まさか許してくれたとか。
「………」
そのまま待つこと約一分。恐る恐る目を開けると、そこは気味の悪い目のようなものもなく、不気味でも何でもないただの病室の風景が広がっていた。
しかし、以前刺されて運ばれた病院ではないようだ。なんというか、今現代風の病院ではない、というか………全身に包帯が巻かれていて、手当された跡があるしここが病室であることはわかる。俺の横にある窓のような場所から見えるのは鬱蒼と茂る竹林だった。
一体、ここはどこなんだろう。
「……ウサウサ」
窓と正反対の方向を見ると、そこには小さい女の子がいた。よく見るとウサミミだ。
まさかこの子が手当してくれたのだろうか。
「すみませんウサ、あなたはいつまでそんな体勢でいるつもりウサ?」
ん?…体勢……?
…………ま、まさか…!
必殺、背面土下座!?
そう、体と頭が理解した時にはもう遅かった。
「もしかして、変態ウサか?」
ぎゃあああぁああぁあぁ!
それを言われたくなかったのにー!俺だって必死だったんだよー!!
夢の中だったんだから仕方ないだろう!
「…何を考えてるか知らないけど、傷口が開いちゃうから……ほどほどにするウサよ?私はお師匠様を呼んでくるから、おとなしく待ってるウサ」
あぁ、多分もうこの女の子からは変態扱いされるだろうな。
「……はい、すんません」
俺は軽い不安を抱えながらその師匠とやらを待つことにした。
主人公のなまえがあぁぁぁああぁ!!