ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド   作:亀川ダイブ

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れいずゆあふらあああああああっぐ!
鉄血のオルフェンズがかなりいい感じですね。もういっそこのままビーム兵器なしで、鈍器で殴り合うガンダムを見てみたいものです。レベルを上げて物理で殴ればいい。(真理)

超絶珍しく、平日の休暇が取れたのでこんなタイミングで更新です。
平日が休みというだけでこんなに心が安らぐなんて……嗚呼、刻が見える……!


Episode.10 『ウェスタン・シスターⅠ』

 ギアナ高地の独特な植物群が、轟音に震えていた。

 打撃音、破壊音、爆発音――テーブルのような台地に叩き付けられたプラスチックの欠片が辺り一面に散乱し、頑丈なはずの岩石質の台地すら粉砕した。

 

『うわああ! ぶ、部長、すみませ――』

『三号機ロスト、畜生め! 部長、何なんだよあのカラテ・マスターは!』

『去年の決勝進出者(ファイナリスト)だ! 準決勝まできて、あんなバケモノにあたるとはなあ!』

 

 爆発に追い立てられるように空中に飛び出してきたのは、トリコロールカラーに塗装されたデルタプラスとゼータプラスだった。両機とも飛行形態(ウェイブライダー)に変形し、爆心地から全速力で遠ざかるが、

 

『距離をとって射撃をぐあっ!?』

『部長!?』

 

 突如、まるで見えない糸(・・・・・)にでも引っ張られたかのように、デルタプラスが墜落した。一瞬にして密林の奥深くに引き擦り込まれ、その姿が見えなくなる。

 直後、「あっひゃっひゃ♪」という特徴的な高笑いがフィールド中に響き渡り、引き千切られたデルタプラスの手足や翼が撒き散らされる。オイルとプラフスキー粒子がまるで血のように飛び散り、木々の葉にべったりと赤黒い模様をつける。

 

『畜生、畜生、畜生ーーッ!』

 

 ゼータプラスは即座にMS形態に変形、デルタプラスの救援に向かう――が、その時。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 轟ッ! 熱気を竜巻のように巻き上げながら、二機のガンダムが舞い上がる。

 

「いくぞっ、サチっ!」

 

 一機は豪傑、筋骨隆々の武闘家のようなシルエット。燃え盛る太陽のような光輪を背負い、ツインアイと胸部の宝玉、そして両手を金色に輝かせている。ゴッドガンダムをベースに改造したそのガンプラの名は、ダイガンダム。大鳥居高校ガンプラバトル部部長、〝RMF(リアルモビルファイター)〟ギンジョウ・ダイの愛機だ。

 

「おうよダイちゃんっ♪」

 

 もう一方は流麗にして華奢、しかしながら細く絞り込まれたアスリートの肉体を思わせるシルエット。装甲のカラーリングはまるでセーラー服を着た女子高生――燃え盛る髪の毛状の放熱フィンを振り乱すそのガンプラは、ノーベルガンダム・ドゥルガー。大鳥居高校ガンプラバトル部副部長、〝不死の悪戯(ノスフェラトゥ・ゲーム)〟カンザキ・サチの愛機である。

 二機のガンダムはまるで物理法則を無視したような超機動でくるくると空中回転、両の拳をがっちりと握り合わせてキメポーズをとる。

 

「我らのこの手が! 真っ赤に燃えるッ!」

「勝利を掴めとぉー! 轟き、叫ぶぅー!」

 

 猛烈な熱量を孕んだプラフスキー粒子が煌めきながら渦を巻き、ゼータプラスを巻き込んでその動きを拘束した。さらには、ダイとサチとの握り合わせた拳の前に、キング・オブ・ハートの紋章を描き出す。収束した粒子が炎のように燃え上がり、巨大な火球となってダイとサチとを包み込んだ。

 

「ばぁぁぁぁくねぇぇつッ!」

「ゴッドフィンガぁー!」

「石破ァッ!」

「ラぁぁぁぁブラブぅ!」

「「天・驚・けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんッッ!!」」

 

 ゴッ……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 圧倒的な光の奔流が、すべてを飲み込み破壊し尽くした。ギアナ高地は根こそぎ消滅し、後に残るのは半径数百メートルにも及ぶ灼熱したクレーターのみ――

 

『BATTLE ENDED!!』

 

 快活なシステム音声が響き、フィールドのプラフスキー粒子は一瞬のうちに霧散した。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

『準決勝第一試合、終了でーーすっ! 強い! 強いぞ大鳥居高校ガンプラバトル部、部長&副部長コンビ! 予選大会では猛威を振るった最速の可変機部隊、チーム・アルバトロスをほぼ無傷で瞬殺し、決勝進出をけってーーいっ! 最強のモビルファイターカップルは、去年の雪辱を果たせるかーーっ!?』

 

 ほとんど水着にしか見えない衣装をまとった大会MCのハイテンションなアナウンスが、だだっ広い市民体育館に響き渡る。エイトはそれを、聞くともなしに聞いていた。

 七月の第三週、多くの学校園で一学期終業式が行われた、その翌日。つまりは、夏休みの初日。第十回ガンプラバトル選手権、地区予選最終トーナメントの試合会場に、エイトは来ていた。

 本来の目的は当然、決勝トーナメントまで駒を進めたダイとサチの大鳥居高校最強コンビの応援だ。しかしエイトの表情は、最強コンビの圧倒的な強さに熱狂し歓声を上げる他の部員たちとは、違っていた。

 

「悩んでるじゃあねぇか、エイト」

「タカヤ……」

 

 左腕に「新聞部」の腕章をつけたタカヤが、ザクバズーカのようなバカでかいレンズをつけたカメラを手に、エイトの隣に座ってきた。

 

「今日はどっちの部活動だよ。先輩の応援? それとも取材?」

「どっちもだよ。バトル部の記事、評判良いんだぜ。このオレ様の超至近距離での独占取材のおかげでね。……ま、一つ言えるのは、今の俺は新聞部一年エース兼ガンプラバトル部イチの事情通サナカ・タカヤであって、〝傭兵(ストレイ・バレット)〟モナカ・リューナリィじゃあねぇってことぐらいかね」

 

 にやにやとおどけた様子でファインダーをのぞき、何枚も連続してシャッターを切りながら、タカヤは言う。

 

「だから相談ぐらいにゃあ乗るぜ? クラスメイトとしてさ」

「……気持ちを貰うぐらいにしておくよ。この悩みは、僕のものだ」

「へいへい、そーかい。んじゃまあオレはこの辺で。愛しのアカサカ先輩によろしく伝えといてくれよー」

 

 前だけを見つめるエイトの表情を見て、タカヤは何かに納得したように頷き、席を立った。

 

「――次は、負けないってな」

 

 ハイテンションな大会MCが準決勝第二試合の開始を告げる、その声にかき消されるかどうかという小声。気障にも聞こえるそんなセリフを、タカヤは真剣そのものといった表情で言って、どこか会場の奥へと消えていった。

 

「……そうか。タカヤも、負けたんだった……ん?」

 

 制服のズボンのポケットに、軽い振動。エイトのスマートフォンに、タカヤからの画像データが届いていた。メールを開いて確認すると――

 

「何だよコレ!?」

 

 大会MCの女性の、胸やら尻やらふとももやらのアップでの写真が多数。「あのカメラはこのためかよ!?」とエイトが内心でツッコむのと同時、後ろから聞き慣れた声がかけられる。

 

「エイト君」

「な、ナノさん!?」

「世の中には、覗き見防止フィルターという商品があるらしいのだけれど――」

「い、いや違うんです! これはタカヤが!」

 

 ナノカの抑揚のない冷たい声色に、エイトは慌てて画像を消し、あたふたと弁解する。そんな様子を見てナノカは、ふっと柔らかい微笑みを浮かべ、エイトにスポーツドリンクの缶を差し出した。

 

「ふふ、いいさ。男の子だものね。見てしまった私の不作法だ」

「いやだから違うんですって――」

「飲み物。受け取ってくれないかい? スポーツドリンクが苦手なら、こっちの〝激濃・乙女のおしるこ缶(あったか~い)〟でもいいのだけれど」

「い、いえ遠慮します。というかこの夏真っ盛りによくありましたねそんなもの」

「ふふ……いいものだよ、おしるこは。季節などは関係なく、私のお気に入りさ」

 

 言いながらナノカは、器用に片手でプルタブを開け、持っているだけで手汗の滲みそうなアツアツのおしるこを、ごきゅごきゅとのどを鳴らして飲み下していく。足を肩幅に開き腰に手を当て、まるでお風呂上りにビンの牛乳を飲むが如くだ。そんな姿すら絵になってしまうから、ナノカは美人だとエイトは思う。例えそれが、真夏におしるこ(あったか~い)だったとしても。

 

「んく、んく、んく……ぷはー。さ、エイト君。キミも」

「……まったく、ナノさんらしいですね」

 

 エイトは誤解を解くのを半ばあきらめ、苦笑しながらスポーツドリンク缶を受け取った。ドリンクはよく冷えていて、一気に流し込むとキーンとした冷たさがのどを下っていくのがよくわかる。

 外は真夏日を大きく通り越した猛暑日だが、体育館の中は空調が効いて涼しい。バトルシステムの発熱も計算してか、夏用の制服一枚きりでは少し肌寒いぐらいの温度設定だ。

 準決勝第二試合は、共に優勝候補とされていたチーム同士の対決となっていた。そのうち一方は、去年部長たちが決勝で戦い、敗北した強豪校のチームだ。ビームが奔り、ファンネルが舞い、サーベルが切り結ぶ。大鳥居高校の部員たちは、観覧席から、部長たちの決勝の相手がどちらのチームになるのかを真剣な眼差しで見守っている。部長と副部長は、バトルシステムのわきに設置された作業スペースで、ガンプラの最終調整をしているようだった。

 

「一気に、一万人を超えたそうだよ」

「え、何です?」

「登録者さ。GBOジャパンランキングの」

 

 唐突にしゃべりだしたナノカの視線は、少し遠くを眺めているようだった。

 あの「レギオンズ・ネスト」から数日。エイトは、ナノカとは部室で何度か顔を合わせ、オンラインでも会っていたが、ナノカはずっと、何事かを考えているような顔をしていることが多かった。

 

「各動画サイトでの、レギオンズ・ネストの生中継とダイジェスト版の配信。かなり好評……というより、想定以上の大反響らしくてね。特に、現実世界(オフライン)でも名の知れたファイターが参加していたグループの動画再生数は、ちょっとしたものらしいよ」

「よかったですね、ナノさんのお父さんは」

「ふふ、そうだね――父が主導して、ガンプラショップへの広報や、ネット上での広告をしていたらしいんだ、今回の大会は。おまけに、公式動画視聴者の中から五〇〇名に、GBO用のデバイスセットのプレゼント付きだ。ヤジマ商事も、本腰を入れてくれたらしい」

「そう、ですか」

「本社の協力を取り付けた父は、中々やり手だったようだよ。誇りに思うべきなんだろうね、娘としては――私がエイト君一人をGBOに誘っている間に、父は五〇〇〇人だ」

 

 どこか悲しそうに苦笑するナノカに、エイトはかけるべき言葉を迷ってしまう。

 二人ともがちょうど缶を一本飲み終わるほどの空白があいた、その後。ナノカから先に、ぽつりといった。

 

「〝一つ目の理由〟は、クリアできたということだよ。エイト君。」

「……はい。ナノさん」

 

 ナノカはエイトの隣に、ゆっくりと腰かけた。少しうつむき加減の顔を、さらりと流れた長い黒髪が隠して、表情はよく見えない。何を言われるか、わかるようなわからないような……エイトは不安に背中を押されるように、口を開いた。

 

「でも僕は、まだ戦いたいです。あの、その……ナノさんと、いっしょに。ビス子さんともです!」

 

 チーム・ドライヴレッドの初戦であるところのレギオンズ・ネストは、自分の力不足で負けたと、エイトは思っていた。アンジェリカに指弾された通り、ナノカやビス子といった実力者(ハイランカー)の援護を当たり前と思っていた自分自身のおごりが生んだ結果であると。

 

「……私がキミを誘ったもう一つの理由、聞いてくれるかい?」

「そ、それは……もっと強くなってからって、約束でした、よね……」

 

 だから、エイトは怖かった。もし、ナノカのいう〝もう一つの理由〟に応えられるだけの実力が備わっていないと言われたら。

 

「キミは強いよ、エイト君。相手があの〝白姫(ホワイト・アウト)〟でなければ、〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟でもなければ、ああも簡単にキミの突撃力を殺せはしないさ」

「ありがとう、ございます……」

「確かに、キミには弱点がある。けれどもそれは、誰にだってある。キミの長所や、これからの成長でだって補える。ガンプラを改造したって良い。――少なくとも、レベル8相手にあそこまで生き残ったレベル4を、私は知らないよ」

 

 缶の中にわずかに残ったおしるこを飲み下しながら、ナノカは言う。あの風紀委員長(バトルマニア)は、新入りに説教をするのが好きなのさ。将来はきっと教師にでもなるに違いない――と。

 

「そう……ですか」

「ああ、そうさ。だから、キミに聞いて欲しいんだ、エイト君。私の目的を。私たちが倒すべき、相手のことを」

 

 こちらを真っ直ぐに見つめるナノカに、エイトは少し緊張しながら頷き返した。

 ナノカは、座席の肘掛にあるカップホルダーに空き缶を置いて、言った。

 

「――GBOジャパンランキング、第一位。レベル8プレイヤー、〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟の〝最悪にして災厄(パンドラボックス)〟。〝変幻自在(ルナティック・ワンズ)〟〝眠らない悪夢(デイドリーミング)〟〝覗き返す深淵(ブラック・オブ・ザ・ブラック)〟……」

 

 ぞわり、と背筋に悪寒が奔る。ナノカが流れるように告げた言葉の羅列に、エイトは言い知れぬ寒気を感じた。数々の異名、そしてランキング一位。エイトのような新参でもわかる。ランキング表を確認すれば、常に、必ず、一番上に名前があるそのファイターは――

 

「――BFN:ネームレス・ワン。主な使用ガンプラは、デビルフィッシュ・セイバー……」

「正解だ、エイト君」

 

 ナノカはこくりと頷いて、白く細い指先で、すっとエイトの胸を突いた。

 

「エイト君。キミが、GBOのトップを倒すこと――それが私の目的だ」

「僕……が……?」

 

 もう一度、ナノカは無言で頷き……そして、ふっと悲しそうな微笑を浮かべて俯いた。

 

「私では、ダメなんだ。私がやつを倒しても、あの子は救われないんだ――私ではない誰か、ゼロからスタートした誰かでなければ――〝奇跡の逆転劇〟を見せなければ。だから、エイト君。私はキミを、GBOにスカウトした」

「ナノ、さん……」

 

 今、ナノカが口にした「あの子」という言葉。それが、最後の大会を控えた三年生を巻き込むのをためらった理由なのだろう。だが、「私ではダメ」というのは……疑問はあるが、それでもエイトは嬉しかった。細かいことはどうでもいい。自分の中の少年の(ハート)に、火が付くのを感じた。

 最高に熱いじゃあないか――〝一位〟を倒すなんて。

 

「強くなります、ナノさん。僕たち(・・・)の目的のために」

「エイト君……そうか、ありがとう」

 

 ナノカは顔を上げ、右手をエイトに差し出した。

 

「嬉しいよ。こんな説明不足の私だけれど――頼んだよ、相棒」

「はい!」

 

 エイトはその手を握り返し、力強く頷いた。

 ちょうどそのとき、第二試合の決着がついたらしく、客席がわっと盛り上がった。どうやら勝ったのは、前年度も部長たちと優勝を争った強豪校の方らしい。大会MCがまたハイテンションに煽るような文句をぶち上げ、大鳥居の部員たちは口々に部長と副部長への応援と激励とを叫ぶ。

 その熱い喧騒に紛れるように――いや、まったく紛れることができず違和感を振りまきながら、彼女はいた。

 

「んっふっふー。話はきいたでー、エイトちゃん」

 

 ぴょこぴょこと跳ねる、短いツインテール。まったく未発達な体躯は小さく、スポーティーな薄手のシャツにぴっちりとした濃紺のスパッツ、足元はアンクルソックスにランニングシューズという出で立ち。その小さな体に不似合いな、冗談のように巨大なバックパックを背負って、数段上の通路から、にやにやとエイトを見下ろしている。

 

「小学生……? 知り合いかい、エイト君?」

「え、あ、はい。そうです」

「えーっ。知り合いなんてモンとちゃうやろ、エイトちゃん! ヒドイわぁ!」

 

 小さい彼女は露骨に不満げな顔をしながら、階段を数段飛ばしで駆け下りてエイトの隣にぽふんと座った。バックパック側面のメッシュ状のポケットに入ったガンプラ用の工具類が、かちゃかちゃと音を立てる。

 

「えっと……キミはビルダーなのかな、お嬢ちゃん?」

「んっふっふー。お嬢ちゃん、ねぇ……」

 

 ナノカの質問に、少女は意味ありげに笑って答える。

 

「そうや、ウチは主にビルダーをやっとる。良い目をしとるね、美人なお嬢ちゃん(・・・・・)

「キミ、どういう……?」

「あ、あのっ、ナノさんっ」

 

 眉をひそめたナノカとにやにや笑う少女との間に割って入り、エイトは少女を紹介した。

 

「近々来るとは聞いていたんですけど、まさか今日この場所に来るなんて……神戸のイトコの、エリサ姉さんです。ガンプラ心形流のビルダーで、僕のガンプラの師匠なんですよ」

「んもー、エイトちゃーん。前みたいにエリねぇって呼んでやー?」

「ふぅん、そうか。エイト君のお姉さ……ん? え……?」

 

 ああ、そうなるよなぁ。毎回だよ……エイトは心の中で、従姉の紹介をするたびに思うことを、今回もまた思う。そんなことを知ってか知らずか、当のエリサはイスに座ったまま床まで届かない足をぷらぷらさせながら、満面の笑みでウィンクして横ピースなどを決めている。

 

「神戸心形流ビルダー、アカツキ・エリサ。今年で二十歳の女子大生や。よろしゅうなー♪」

「と、年上……だって……っ!?」

 

 どう見ても小学生にしか見えないエリサに、驚愕の表情のナノカ。

 しかし、続くエリサの言葉に、ナノカとエイトはすっと顔を引き締めることとなった。

 

「話は聞いた――エイトちゃんの強化、手伝うわ。急ぐんやろ?」

「姉さん、それは……」

「ごちゃごちゃ言わんの、エイトちゃん。お姉ちゃんにまかしときー♪」

 

 そして再び、ウィンクと横ピースを決めるのだった。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

 ――同時刻、GBO内。GW(ガンダムウィング)EW(エンドレスワルツ)ワールド、大統領総督府周辺フィールド――

 

「ブチ撒けろォォォォッ!!」

 

 ゴッ、シャアアアアン! けたたましい金属音が鳴り響き、一機のガンダムタイプがスクラップと化した。引き千切られたアクティブクローク、滅茶苦茶にひしゃげた肋骨のようなデザインの胸部。どうやらそのガンプラは、ガンダムデスサイズヘルだったらしい。

 

「よしっ、まずはこんなモンかァ!?」

 

 トドメとばかりに大型ヒートブレイドを突き立て、デスサイズヘルを完全に沈黙させる。ビス子は荒い息を押さえながら、周辺に敵影がないことを確認した。

 あたり一面に散らばるのは、バラバラになったガンプラの残骸とスクラップとなれの果てばかり。サンドロック、デスサイズ、シェンロン、アルトロン、ナタク――オペレーション・メテオのガンダムタイプのうち、主に近接戦闘に長けた機体たちが、機能停止して転がっている。

 続いてビス子は、ドムゲルグのコンディションをチェック。盾代わりにビームサイズを受け止めたジャイアント・バズがオシャカになったのは痛いが、それ以外は問題なし。バルカンや打撃を数発受けたが、ドムゲルグの装甲はその程度では揺らがない。五体満足の状態だ。スパイクシールドも健在、ミサイルもシュツルムファウストもまだ残弾は半分以上ある。

 

「ミッション進行度は50%……悪くねェな、このペースなら」

 

 ビス子はつぶやき、大型ヒートブレイドを引き抜いた。

 今、遂行中のミッションは〝終わらない舞踏曲(エンドレスワルツ)〟。GBO内の全VRミッション中最高クラスの難易度を誇る、通称〝全滅仕様(トミノエンド)〟のひとつだ。

 ミッション前半は、近接戦闘型のガンダムに取り囲まれた状態からスタートし、ビームサイズやヒートショーテル、ドラゴンハングに滅多斬りにされる、細切(ミンチ)地獄。ビス子はこれを火力と装甲で押し切って乗り越えたが――このミッションの本当の地獄は、ここからだった。

 

「来やがったなァ……!」

 

 接近警報――地下格納庫の扉が開き、三機のガンダムタイプがリフトアップしてくる。ヘビーアームズ、ヘビーアームズ改、ヘビーアームズ・カスタム(EW)。さらには上空から、超高速で接近する機影が多数。ウィング、ウィングゼロ、ウィングゼロカスタム。さらにはトールギスが、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと揃い踏みだ。

 ビームガトリングが、バスターライフルとツインバスターライフルが、そしてドーバーガンとメガキャノンが、凶暴なビームの光を充填(チャージ)して、一斉にドムゲルグを照準する。

 通称、弾幕(ゲロビ)地獄。一撃必殺の超出力ビームが途切れることなく襲い掛かり、並のプレイヤーでは数秒と持たずに任務失敗(ゲームオーバー)だ。

 過去にこのミッションを単独(ソロプレイ)でクリアできたのは、ほんの数人。そのすべてがレベル8プレイヤー〝最高位の十一人(ベストイレヴン)〟だという曰く付きだ。

 

「さァて、オレサマの特訓に付き合ってもらうぜェ……!」

 

 ビス子は手汗を服の裾でぬぐい、コントローラを握りなおした。そして油断なく、獣のような目つきで敵機を睨み付ける――特にトールギスⅢに、あの〝白姫(ホワイト・アウト)〟の姿を重ねて。

 

「これ以上エイトの前で……無様な姿ァ、見せらんねェんでなァッ!」

 

 熱く滾るビス子の胸の内に応えるかのように、ドムゲルグの核熱ホバーが唸りを上げ、大型ヒートブレイドが真っ赤に燃えた。ミサイルランチャーの全ハッチを解放し、ビス子は叫び突撃する!

 

「ドムゲルグ・ドレッドノート! 〝自走する爆心地(ブラストウォーカー)〟ビス丸! ブチ撒けるぜェ!」

 

 




第十一話予告

《次回予告》
「さーてさてさて、満を持してのウチの登場やー! って出番こんだけかーい!
「んもー、エイトちゃんもなんや冷たいしー。前みたいにエリねぇって呼んでくれへんしー。
「これはもー、なんとかしてもう一度、ウチの魅力をエイトちゃんにたたっこむしかないなー!
「ってーことで! 次回のガンダムビルドファイターズ ドライヴレッドはー!」

ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド 第十一話『ウェスタン・シスターⅡ』

「んっふっふー。エイトちゃーん、ウチに甘えるヨロコビを思い出させたるでー?
「ガンプラ心形流の本気、見したるわ! 心して待っときやー!」



◆◆◆◇◆◆◆



 新参者の主人公が、”一位”を倒すために頑張る。部活モノの少年マンガとかでよくある展開だとおもうのですが、どうでしょう?
 そしてこの流れは機体パワーアップの流れ……!やべぇ、どうしよ。なんも考えてねーわ(汗)。とりあえず新キャラのエリサ姉さんがビルダーなのはパワーアップのためです。なんか年上か合法ロリしかいねーな、このSS。
 以上、平日に休暇が取れてテンションMAXな亀川ダイブでした。
 次の更新はデュナメス・ブルーの紹介の予定です。
 感想・批評等お待ちしております。よろしくお願いします。

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