ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド   作:亀川ダイブ

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報告:またしても予告とサブタイトルが変わりました。悪しからず、ご了承ください。



Episode.15 『バトルフラッグスⅠ』

【ガンプラバトルフラッグス 交戦規定(レギュレーション)

・五対五の変則チームバトル。

・フィールドはA1~D4の計16のエリアに区画されている。

・各エリアに一つ、フラッグを配置。フラッグ一つの破壊で1ポイント。

・どこか一つのエリアに、特別なフラッグを配置。破壊で5ポイント。

・通常フラッグ計15ポイント、特別フラッグ5ポイント、合計20ポイントの争奪戦。

・相手チームへの攻撃、撃墜は可。相手チームの全滅でも勝利となる。

 

 達筆な書道で書きつけられた交戦規定の紙がバンと壁に貼り付けられ、その前にゲンイチロウが腕組みをして立つ。

 

「以上が、ワシが用意した特別バトル――ガンプラバトルフラッグスのルールじゃ。ものどもォッ! 奮起するがよいッ!」

『Beginning Plavsky particle dispersal』

 

 旧式の、機械的なシステム音声に合わせて、バトルシステムが青白い粒子の輝きに包まれた。六角形のユニットを二つ繋いだ大型バトルシステムの周囲には、右に男子五人、左に女子五人、計十人の高校生ガンプラファイターがずらりと並んでいる。それぞれにGPベースと愛用のガンプラをシステムにセットし、対戦相手と向かい合う。

 浴衣姿の者も多い。ここが温泉旅館「ひしまる屋」であることもあって、両チームの間にあるのがバトルシステムでなく卓球台だったら、温泉卓球の団体戦にも見える光景だった。

 

『GANPRA BATTLE.Combat Mode. Damage Level,Set to B.』

 

 ダメージレベルB――それを聞いてエイトは、少し安心した。バトルシステムの外見(ハード)は旧型でも、内部(ソフト)はダメージレベル制に対応した最新型のようだ。レベルBなら、ガンプラが大きく破損する心配はない。こんな戦いに巻き込まれて、ガンプラ大破なんて目も当てられない――と、言うよりも。

 

「……タカヤ。なんで先輩たちを差し置いて、僕が男子代表に組み込まれているんだよ。僕は今、バイト中なんだけど」

「運悪く、先輩たちのガンプラは昼間の部活タイムで改造中のが多くてよ。サフ吹いたままだったり、プラセメント乾いてなかったり――ま、なにより、お前も写真欲しいだろ。主にアカサカ先輩のが、さ? 安くしとくぜ♪」

「あっ、なっ、何言って! タカヤああっ!」

 

 無駄にウィンク、さわやかに微笑むタカヤ。エイトは顔を真っ赤にしながらタカヤの口を塞ぎにかかるが、タカヤはのらりくらりと避け続ける。

 その横で、我関せずとばかりに空手の道着姿で座禅を組み、精神統一を図るダイ。そしてタカヤの写真コレクションに期待を膨らませる三年生男子二人。

 その一方で、女子チームは。

 

「――ったく、よォ。何だってンだよこりゃァ」

「ふふ……ぼやくなよ、ビス子。なかなかに楽しくなりそうじゃあないか」

「ウフフフフ……♪ 久しぶりですわ、部長さんと本気でやり合えるのは……♪」

 

 三者三様、といった様子で粒子フィールドの完成を待つ、ナツキ、ナノカ、そしてなぜか未だに競泳水着のアンジェリカ。ナツキが女子チームに組み込まれている理由は、エイトのそれとまったく同じだった。

 

「まァ、嫌いじゃあねェけどよ、このノリも。――ただ、約束は守ってもらうぜ、絶対になァ。〝強過ぎた白雪姫(オーバーキルド・プリンセス)〟」

「ええ、もちろんですわ。あなたのガンプラ、今度はせめて、メガキャノンの一発ぐらいには耐えられるように創り上げてきてくださいな?」

「あァンッ、てめェ! 今ここでヤってやろうかァッ!」

「やめなよ、ビス子。今はチームメイトだ。GBOでいくらでもやり合えばいい――始まるよ」

『Special Field,HISHIMARU-YA Inn.』

 

 プラフスキー粒子がフィールドに満ち、仮想の景色を描き出す――海、砂浜、道路、防風林、そして旅館の建物――この「ひしまる屋」周辺の地形を再現したフィールドのようだった。

 吠えるナツキをたしなめ、ナノカはコントロールスフィアに手を置いた。アンジェリカは生き生きとした野性的な笑みで、ダイに熱い視線を送る。あと二人の三年生女子も、写真を取り返そうと小さくガッツポーズをしあって、頷き合う。

 

『BATTLE START!!』

 

 バトルシステム右側に、五基のカタパルトゲートが形成された。それぞれのゲートから、男子チームの五機のガンプラが次々と飛び立つ。

 

「アカツキ・エイト、V8ガンダム! 戦場を翔け抜ける!」

「サナカ・タカヤ、デュナメス・ブルー! 目標を乱れ撃つ!」

「グレイズ改、イサリビ・アキヒサ。出るぞ」

「タガキ・ヤスキ、アッガイTBC(サンダーボルトカスタム)、出撃するぜ~」

「……ダイガンダム。参るッ!」

 

 同時、システム左側にもゲートが出現し、こちらからも計五機のガンプラが次々と射出された。

 

「ヒシマル・ナツキ、ザクドラッツェ! ぶち撒けるぜェッ!」

「アカサカ・ナノカ。ジム・ジャックラビット。始めようか」

「ムラサメ改〝ユウダチ〟は、ヒタチ・ユウで出るっぽい!」

「同じくムラサメ改〝シグレ〟、アメ・トキコ……ボクの出番だね」

「ヤマダ・アンジェリカ。レディ・トールギス。参りますわ!」

 

 広大な海辺の特設フィールドに、総計十機ものガンプラたちが一斉に解き放たれた。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

 バトルスタートからほんの数秒。エイトのV8が砂浜に足をつけたかどうかというタイミングで、フィールドに轟音が響いた。

 

「ビームの砲撃音!?」

「あっちだ、エイト! 沖の方!」

 

 タカヤのデュナメス・ブルーが指さす方を見ると、海のはるか沖の方で、まるでファーストガンダムのラストシューティングのように、天に向けて巨大なビームの閃光が撃ち放たれていた。足場となっているらしい座礁した大型空母が、水平線ぎりぎりの位置に見える。

 

「あの色、出力――ヤマダ先輩(レディ・トールギス)のメガキャノン……?」

「フッ……呼んでいるようだな」

 

 ざんっ。白い砂浜を、ダイガンダムの頑強な足が踏みしめる。ダイはにやりと好戦的に笑い、砂浜の上でクラウチング・スタートの姿勢をとった。

 

「かの姫騎士は、我が拳で相手をする――あとは頼んだぞ、同志たちよッ!」

 

 ずだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだッッ!

 返事も聞かずに全力ダッシュ、砂浜を僅か数秒で駆け抜け、そしてそのまま海に飛び出し、白浪を蹴立てながら水面をダッシュ。「右足が沈む前に左足を踏み出す」の理論で、陸上と変わらないスピードで、ダイはあっという間に海の上を駆け抜け水平線へと消えていった。

 

「……なあ、タカヤ。ゴッドガンダムって水上ホバー機能あったっけ?」

「モビルファイターに常識を求めんなよ、エイト。ましてやあの〝RMF(リアルモビルファイター)〟ギンジョウ・ダイだぜ?」

「ふっ……相変わらずだな、部長は。俺たちは俺たちでやろう」

 

 あきれ顔のエイトとあきらめ顔のタカヤの通信に、三年生の声が割り込んできた。同時、モビルスーツにしては巨大な影が、V8の頭上に覆い被さる。

 三年生イサリビ・アキヒサのガンプラ、グレイズ改・クタン参型長距離輸送ブースター装備だ。

 スミ入れとつや消し程度の加工しかしていないようだが、最新のオルフェンズシリーズだけあってキットそのものの完成度が非常に高い。小柄なV2ガンダムベースのV8と比べると、ただでさえモビルアーマーじみた巨大さがさらに引き立てられる。下から見上げるエイトからは、まるでクィン・マンサかクシャトリヤのような巨大さに見えた。

 

「ポイント制のバトルだからな~。索敵とスピードが重要ってことで、オレには水中を任せてもらうぜ~」

 

 もう一人の三年生、タガキ・ヤスキのアッガイTHC(サンダーボルトカスタム)が、V8の横をちょこまかと走り抜け、じゃぶじゃぶと海へ身を沈めていく。通常のアッガイよりも頭一つ分小さく、関節部が特徴的な球体関節になっているこのアッガイは、サンダーボルト漫画版の設定に基づいてタガキがセミスクラッチしたものだ。

 

「フラッグ見つけたら壊しとくぜ~。女子チームとカチあったときはSOS出すから、支援ヨロシク~」

「ったく、お気楽だなタガキ。まぁいい、太陽炉搭載型(デュナメス)なら水中でも素早いだろう。その時には頼んだ、サナカ」

「了解ッス、アキヒサ先輩……レーダーに感、敵襲ッス!」

 

 ピピピピピ……! コクピットに警報音が鳴り響き、同時、グレイズ改のナノラミネートアーマーに衝撃と火花が散った。

 

「ちぃっ、女子チームか! 早いな!」

「いえ、違います先輩。この機影は……!」

 

 エイトはV8のザンバスターを機影に向け、光学照準の倍率を最大まで上げた。細身で、極端に足の長いシルエット。手に持ったリニアライフルを連射しながら、上空からこちらへと迫り来るのは――

 

「フラッグ……! あのカラーは、ユニオンの!」

「ははっ。フラッグを破壊って、そーゆーことかよ!」

 

 タカヤはGN粒子を噴き出しながらグレイズ改のさらに上に飛び出し、GNフルシールドを展開した。ユニオンフラッグはターゲットをタカヤに変えリニアライフルを連射するが、GNフルシールドとGNフィールドを同時展開したデュナメス・ブルーの前には、その威力は豆鉄砲も同然だった。

 

「旅館のご主人は洒落てるなあっ!」

 

 GNスナイパーライフルを一射。ビームの光はフラッグの胴体ど真ん中を貫いて、あっさりと撃墜。どうやらフラッグはデータ上のみ存在するNPCだったらしく、機体そのものがプラフスキー粒子の欠片となって消滅していった。

 フラッグが消滅するのと同時に安っぽい電子音がピロリンと鳴って、空中にでかでかと「男子チーム1ポイント獲得」のメッセージが躍り出た。男子チーム、一点先取。女子チームはまだフラッグを落とせていないらしく、ポイントはゼロのままだった。

 

「こういうバトルか……フラッグはエリアに一機ずつ……先輩。手早く稼ぐには分散するべきですが、どうでしょうか」

「わかるが……エイト。ルール上、女子チームからの攻撃もあり得るはずだ。向こうにはうちの実力ナンバー3のアカサカさんもいるし、旅館の孫娘さんもかなりの手練れだと聞いている」

「はい、ですから――」

 

 エイトはアキヒサとタカヤに、マップ画面を送信した。ゲンイチロウからの説明にあった通り、フィールドはA1~D4の16エリアに分かれている。現在位置は波打ち際の砂浜が続くC4エリア。フラッグを撃破したからだろう、エリア全体がやや暗く表示されている。ダイとアンジェリカが殴り合っているであろう座礁した大型空母はマップの端の端、D1エリアだった。タガキが潜っている海中はD4エリアだ。

 エイトはマップ上に指を走らせながら、手短に作戦を告げる。

 

「僕たちはA・B・Cの三手に分散、索敵・フラッグ破壊をしながら各エリアを4から1へと進攻します。途中で女子チーム、または〝特別なフラッグ〟に遭遇した場合には、隣接するエリアの人間が即座に援護に向かう。多少のリスクは伴いますが、ポイント奪取を優先した作戦です」

「いいけどよ、エイト。割り当てはどうする?」

 

 上空から降りてきたタカヤが、通信で問いかける。エイトはマップ上に各機の頭部を模したアイコンを表示させ、それぞれA・B・Cの各エリアへと割り振った。

 

「タカヤは、水中のタガキ先輩の援護に行けるようにCエリア。大型機のイサリビ先輩は、行動しやすい広い道路(ハイウェイ)が続くBエリア。小型機の僕は防風林の中を突っ切るAエリア……どうでしょうか」

 

 最後にアッガイTBCのアイコンをDエリアに配置し、エイトは二人の反応を待つ。

 タカヤとアキヒサはエイトの作戦を理解したらしく、すぐに大きく頷いて見せた。

 

「おう、いいぜ。さぁて、俺の珠玉の写真コレクションのためだ、がんばるかなっ!」

「了解した、エイト。……サナカ、俺は風呂場よりも浴衣姿の写真の方が欲しいんだが……」

「モチロンばっちりッスよ先輩! あぁエイト、おまえ用にアカサカ先輩のセクシーショットもちゃんとあるから安心し」

「さ、作戦開始いいーーっ!」

 

 エイトは叫び、V8のミノフスキードライブを全開。脱兎のごとく飛び出した。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

 ――A2エリアのほぼ中央。防風林が途切れ、少し開けた土地。そこには、「ひしまる屋」の建物を模したらしい基地施設があり、すでに戦闘が始まっていた。

 

「おらァッ、ぶち撒けろォォ!」

 

 ハイゴッグの顔面をぶん殴り、そのまま左腕ザクマシンガン・シールドを零距離射撃。120㎜砲弾を十数発もブチ込み、穴だらけにして蹴り飛ばす。同時、ナツキの背後にアイアンクローを振り上げたズゴックが迫るが、

 

「甘いね、ツメがさ」

 

 シュバババババ! 鋭く短い射撃音。ビームマシンガンのフルオート射撃が、ズゴックに数十もの風穴を開けた。

 

「一応、礼は言っとくぜ。赤姫ェ!」

「一応、受け取っておくよ。ビス子」

 

 ナツキのザクドラッツェの横をすり抜け、低い姿勢で地を駆けるジム・クゥエル改造機――ナノカが駆るガンプラ、ジム・ジャックラビットだ。その両手には細長い消音器(サプレッサー)のようなパーツを装着した専用ビームマシンガンを構え、V字型ゴーグルの奥では、マルチロック対応の多眼式カメラアイがグリグリと回り敵機を複数同時照準(マルチロックオン)し続けている。

 

「私は前に出るよ。退路を確保してくれると嬉しいね」

「ったく、しゃあねェなァ!」

 

 ズゴックやハイゴッグの残骸を乗り越えるようにして、基地施設からモビルスーツの大群がわらわらと沸き出してくる。ジュアッグ、ラムズゴック、ズゴックE、ザク・マリナー、カプル、ゼー・ズール――宇宙世紀の水陸両用MSたちだ。

 ナノカはジャックラビットの全身に追加された小型バーニアをフル稼働させ、地面を低く跳ねるような独特の動きで敵機の大群へと突っ込んでいく。右から左から、アイアンクローが次々と振り下ろされるが、跳び回る野兎のような跳躍機動(ジャンピング・マニューバ)で身をかわし、すれ違いざまにビームマシンガンを連射する。消音器(サプレッサー)のような形の粒子加速装置(アクセラレータ)で貫通力を強化された加速ビーム弾は、水陸両用MSたちの装甲をたやすく貫き、つぎつぎと撃破していった。

 それでも撃ち漏らした数機がジャックラビットに詰め寄ろうとするが、

 

「させるかよォ! おらおらおらおらァァッ!」

 

 ナツキはハンドグレネードを掴めるだけ掴んで乱雑に放り投げ、180㎜キャノンの弾幕をぶち撒ける。大口径徹甲榴弾の嵐と連続的に爆発するグレネードの爆風で、水陸両用MSたちはさらに数機が大破、行動不能になる。

 ひしまる屋風の基地から次々と出撃してきていた敵機もさすがに打ち止めらしく、防衛線が綻んだ。ナノカはその隙を見逃さず、進路上に立ちはだかるゴッグにビームマシンガンをフルオート連射。ハチの巣にして蹴り倒し、さらに踏み台にしてブーストジャンプで跳び上がる。

 

「フラッグは――そこか!」

 

 上空から見下ろすと、攻撃目標(フラッグ)は基地施設の最奥部にいた。そのすぐそばに、移動砲台にしか見えない水陸両用機・ゾックが、最後の守りとばかりに張り付いている。

 ナノカは体操選手のように空中で身をひねり、基地からの対空迎撃を回避しながら着地。ゾックが放つメガ粒子砲の間隙を左右に飛び跳ねながら肉薄し、大振りのクローアームの一撃を、脇の下を潜り抜けるようにして回避した。

 

「ビス子、頼むよ!」

「これで貸し借りナシだぜェ!」

 

 直後、本来は対艦兵器であるザクドラッツェのシュツルムファウスト改が、ゾックに直撃し炸裂した。大爆発の後には跡形も残らず、最後の護衛機を失ったフラッグは慌ててナノカにリニアライフルを向ける。しかし、遅い。ジャックラビットは右腕のシールドをリニアライフルに突き立て、内蔵式パイルドライバーを作動した。

 

「遅いよ」

 

 ズガンッ! 轟音と衝撃、シールド先端部の高硬度パイルがリニアライフルを撃ち貫いた。

 フラッグは大破したリニアライフルを投げ捨てソニックブレイドを構えるが、それすらもナノカにとっては遅すぎる。両手の二丁、バックパックにサブアームで保持した二丁、計四丁のビームマシンガンの銃口が、一斉にフラッグを照準する。

 至近距離からの、四丁同時全力射撃(フルオート・カルテット)――

 

「私は、乱射も嫌いじゃあないのさ」

 

 シュバババババババババババババババババババババ!

 ほんの一秒程度のフルオート連射で、フラッグはボロ雑巾のような有様に成り果てた。

 ピロリン、という古臭い電子音と共に、空中にでかでかとスコアが表示される。

 女子チーム、4ポイント目を獲得。一方の男子チームも4ポイント。試合開始から十五分ほどが経った現在、情勢は互角のようだ。

 マップ上ではA1とA2、さらにB1・B2の四つのエリアが暗く表示されている。女子チームがフラッグを破壊したエリアだ。男子チームがどのエリアのフラッグを破壊したかはわからないが、未だに一度も姿を見ていないということは、まだ各エリアの4か3あたりにいるのだろう。

 

「よォーっし、一点ゲットだ。まあまあのペースじゃあねェか」

「そうだね……二人一組(バディ)での作戦行動は、正解だったらしい」

 

 女子チームは、開戦直後にワガママ全開で離脱したアンジェリカのことは早々に諦め、ナノカとナツキ、ユウとトキコでバディを組んでの散開・各自戦闘という作戦を選んでいた。

 マップ上で確認すれば、高速な可変機ペアであるユウ・トキコ組は、すでにB3エリアに突入していた。今頃は、男子チームと会敵しているかもしれない。

 

「このエリアのフラッグは獲った。次に向かおう」

「何だ赤姫、えらく積極的――楽しそうじゃあねェか」

「まあ、真剣にはなるさ。自分の肌をさらした写真が、不用意にエイト君の目に触れるかと思うとね……ちなみにビス子、気づいているかい。キミも何枚か、撮られていたようだよ」

「あァンッ!? マジでか!?」

「キミはスタイルがいいからね。女の私から見ても、羨ましいぐらいだよ――だからきっとこの勝負に負けたら、高値で売られてしまうよ。エイト君にもね」

「あ、な、な、え、エイトにっ……ゆ、許せんッ! あンのカメラ野郎、ギッタギタにしてやらァ!!」

 

 ザクドラッツェはバーニアを全力噴射、ポケ戦のケンプファーのような強襲姿勢で飛び出した。

 

「次ィ行くぞ赤姫ェッ! フラッグも獲って、男子チームも叩き潰してやろうぜッ!」

「ふふ、いいね――その方が、楽しそうだ!」

 

 ナノカは珍しく、にやりと口の端を上げた不敵な笑みを浮かべ、フットペダルを踏み込んだ。ジャックラビットはバーニアを併用した高速長距離跳躍(ハイマニューバ・ジャンプ)で、ザクドラッツェを追いかける。

 向かうのは、A3エリア――そろそろ男子チームとも接触することになるだろう。ナノカは油断なくレーダーや各種センサー画面に目を走らせながら、コントロールスフィアをぎゅっと握りしめた。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおッッ!」

「あーっはっはっはっはっはっは!」

 

 金色に燃えるゴッドフィンガーと、真紅に灼熱するヒートロッドとが、吹き荒れ竜巻となっていた。

 まっすぐに突き出されたゴッドフィンガーを、横薙ぎのヒートロッドが弾き飛ばす。縦一文字に振り下ろされたヒートロッドを、ゴッドフィンガーの手刀が切り払う。お互いに額が触れ合うほどに接近しては、頭突きと頭突きをぶつけあって弾け飛び、またゴッドフィンガーとヒートロッドの嵐のような乱打乱撃だ。

 ダイガンダムとレディ・トールギスの戦いは、始まってから激しさを増すばかり。撒き散らされる熱量と衝撃波で海は逆巻き荒れ狂い、足場となっている座礁した大型空母そのものが本当に沈没してしまいそうなほどだった。

 

「楽しい! 実に実に実にぃっ! 楽しいですわ、ギンジョウ・ダイっ! リアル・モビル・ファイタアアアアアアアアアアっ!」

 

 アンジェリカは両肩のヒートロッドをシールドごと強制排除(パージ)し、引っ掴んで投げつけた。ダイはその投擲の軌道を一瞬で見極め、ゴッドスラッシュの居合抜き一閃、シールドを二枚まとめて斬り捨てる。

 だがその直後、切り裂かれたシールドを突き抜けるようにして、レディ・トールギスの拳がダイガンダムの眼前に迫る!

 

「もらいましたわ!」

 

 ガオォンッ! ショットシェル・フィストが炸裂し、零距離で対装甲散弾を喰らった空母の甲板に大穴が穿たれる。しかしそこに、確かに顔面を撃ち抜いたはずのダイガンダムの姿はない、

 

残像(ゴッドシャドー)……っ!?」

「こちらだ、姫騎士ッ!」

 

 背後に気配――猛烈な熱量!

 

「ゴッドォッ! フィンガアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 大上段から、打ち下ろしのゴッドフィンガー! 凄まじい超高熱が飛行甲板を一瞬で蒸発させ、第二層、第三層の格納庫まで一気に崩落。いくつもの区画を誘爆しながら突き抜けて、二機のガンプラは船底近くの機関室まで落下していった。

 

「うふふ……ビームレイピアがなければ、即死でしたわ……♪」

 

 赤熱した瓦礫が降り注ぐ船底で、なおも純白の装甲に汚れのひとつもないレディ・トールギス。自らシールドとメガキャノンを捨てて身軽になった以外は、まったくの無傷。ビームレイピアを捧げ構えるその姿には、戦乙女(ヴァルキリー)とはこのことかと思わせる気品すら感じられる。

 

「我が爆熱を、細身の剣一本で防ぎきるとはな。さらにできるようになった……!」

 

 周囲の瓦礫をすべて熱気で吹き飛ばし、ダイガンダムは轟然と屹立する。まだ明鏡止水モードにすらなっていないというのに、その闘気の凄まじさは東方不敗の名を冠して恥じないほどだ。

 

「三年生になってから、あまり戦う機会はありませんでしたけれど――やはり、リアルガンプラバトルでわたくしを一番滾らせてくれるのは、あなたですわね」

「フッ……いい修行になるのでな。感謝しているぞ」

 

 ――なれば。あとは。拳と剣とで語るまで。

 言葉はなくとも通じ合い、ダイとアンジェリカは同時に飛び出した。

 

「うおおおおッ!」

「はああああっ!」

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

 どぉんっ。がががががっ。ばぁん、ごぉん……

 海を震わせて伝わってくる轟音を、タガキは海底をのそのそと歩くアッガイTBCの中で聞いていた。

 

「部長も風紀委員長も、なんつ~バトルだよ……俺の出る幕じゃあね~な~」

 

 水陸両用MS特有のアクアジェットを全力運転して駆け付けたはいいが、バトルはまったく、自分などの出るような段階ではなくなっていた。このガンプラの完成度には多少の自信はあるが、あんなバケモノ同士の戦いに割って入れるほどではない。

 

「やっぱ、身の程を知るっつ~のが大切だよな~」

 

 D4エリアからD1へと海中移動する途中、タガキは一機のフラッグを破壊していた。

 D2エリアの海底を無警戒にうろついていたそいつの脳天に、アイアンクローで一撃。ひるんだところに、サンダーボルト版特有の腕部ビームサーベルで一突き。無傷での勝利だった。D4、D3のフラッグはおそらく、上空を哨戒でもしていたのだろう、遭遇すらしなかった。

 すでに自分は、チームに1ポイントを献上している。ここで無理に部長の援護に行くよりも、砂浜あたりにいるはずの一年生と合流したほうが賢いだろう。

 タガキの操作に合わせて、丸っこいアッガイTBCは海底をのんきにホップ、ステップ、ジャ~ンプ。アクアジェットを作動させ、D1エリアを離脱しようとした。

 

「……ん~?」

 

 ちょうどその時、進路上に一機のMSを発見した。

 女子チームの機体ではない。大鳥居のバトル部に、あんな細長いシルエットのガンプラを使う女子はいない。光量不足の水中でわかりづらいが、黒っぽい装甲に、特に脚部が細長い独特なデザイン。左肩の三角錐状のパーツは……太陽炉?

 

「カッカッカ……見つかってしもうたかァ……」

「この声……旅館のご主人? なんでバトルにいぐああっ!?」

 

 最後まで言い切らないうちに、アッガイTBCは頭から左右に真っ二つになっていた。

 鮮やかな紅色のGN粒子が水中に舞い残り、薄暗い深海の底で、ゲンイチロウの機体をほのかに照らす。

 真紅のGNビームサーベルを左手に構える、黒いフラッグ。正式名称、ユニオンフラッグカスタムⅡ――通称、GNフラッグである。

 

「ふむ。GN粒子とやらは便利じゃのゥ。特に水陸両用MSでなくとも、水中でこの機動性とはなァ」

 

 ゲンイチロウはその性能を確かめるように、GNフラッグを数度、水中で宙返りさせる。

 

「まだまだ、若い奴らにゃァ負けられんよのゥ……ヒシマル・ゲンイチロウ、GNフラッグ。老兵の戦いを見せてやろう」

 

 GNフラッグは赤い粒子の尾を曳きながら、ゆっくりと、海面へと浮上していった。




第十六話予告

《次回予告》
「た、たいへんなのです、さっちゃん先輩! ナルミたちの出番がまだなのです!」
「予告と……違う……あたしの出番、まだ……?」
「あっひゃっひゃ♪ こいつは許しちゃーおけねーなー♪ ちょーっとばっかしメタくなるけどさー、作者にゃー、きっちりケジメつけてもらおーかー♪」

ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド 第十六話『バトルフラッグスⅡ』

「あげく……サブタイトルまで……予告と、変わった……」
「うー! ナルミたちに出番をよこすのです!」
「あっひゃっひゃっひゃっひゃ♪ 躾の時間のはじまりだー♪」



◆◆◆◇◆◆◆



 久々に「書き溜め分」が作れたので、週の半ばですが投稿しました!
 次回予告にあるとおり、当初の予定とちょいとばかり違う展開になってしまいましたが……一応、次回でバトルフラッグスは決着する予定です。しかしまた延びるかもしれない。予定は未定。(苦笑)

 それよりなにより、今回の更新分についてですが、「ガンダムビルドファイターズ アテナ」を書いていらっしゃるカミツさんに感謝の極みです。実は今回、ムラサメ改”ユウダチ”と”シグレ”についてネタがモロ被りだったのですが、カミツさんの神対応により私は実に気持ちよく執筆をつづけることができました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 文章がだらだらと長くなるのは私の悪いくせですが……頑張りますので、今後もよろしくお願いします。感想・批評もお待ちしております!
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