ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド   作:亀川ダイブ

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Episode.43 『ワールド・エンドⅠ』

「……さて。仕掛けは済みました。そろそろ、果実が熟す頃です……甘く。熱く。黒く! 美味を極める食べ頃にね。貴女が。私が。そしてかの〝老人たち〟が。望んだ未来は、もうすぐそこまで来ているのですよ〝覗き返す深淵(ブラック・オブ・ザ・ブラック)〟。お覚悟は……ククク。当然、完了しておいでですね?」

「……今更、問われるまでもない」

「Excellent!! 怖気もなければ興奮もない。それでこそあなたです、黒き仮面の甲斐もあるというものだ。ところで〝傭兵(ストレイバレット)〟君、貴方も契約は続行でよろしいですね?」

「異論はないッス。もう、前金貰っちゃってるッスから。給料分は働くッスよ」

「ククク、実に私好みの返事です。ご安心ください、私は契約には背かない男だと自負していますのでね」

「……イブスキ、さん。うち、ほんとに……これで、あんちゃんの、やくに……たてるんだよね……? あんちゃん……よろこんで、くれるんだよね……?」

「ええそうですよ、お姫さま(・・・・)。貴女の協力なくして、ヘルグレイズの完成はありませんでした――約束しますよ、ゴーダ・レイさん。この戦いが終わったら、貴女とお兄さんが一生困らないだけの資金をご用意いたしましょう。この私の名誉にかけて」

「……わかった。うち、がんばる……がんばるから……!」

「ククク……では参りましょうか。この世界(GBO)を壊して変える、ここがその分水嶺です……!」

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「ビス子。私は銃撃で攪乱しつつ、武器破壊を狙う。迎撃手段を潰して、最後は!」

「大火力でブチ撒ける! 任せとけよォ、赤姫ェ!」

 

 ナツキは気合も十分に吠え、両肩の三連グレネードを全弾発射。高熱火球の花火が六連発で咲き乱れ、アンフィスバエナを火球の檻に閉じ込めた。しかし、

 

「あっはハハはァ! その程度の火力ではなぁ!」

 

 火球を喰い破るように飛び出した双頭のセルピエンテハングに、ダメージはない。長いアームが暴風のようにのたうち、火球はかき消されてしまった。

 

「弱火も良い所だぞ、そんなものか赤姫のチームメイトとやらは!」

 

 ラミアは口の端をつり上げて哄笑し、ドーバーガンを滅茶苦茶に乱射した。狙いも何もない射撃はラプラスコロニーの宇宙港や居住区に次々と突き刺さり、白い構造材が漆黒の宇宙に飛び散っていく。ドムゲルグはシールドで身を守りながら後退、特殊粒子ミサイルを発射してビーム攪乱幕を展開する。

 

「おいコラ狂犬野郎ッ! いくら仮想現実(ゲーム)だからって、コロニー居住区を無差別に撃つかァッ!」

「ゲームでも、私にはすべてだ! ゲームでの雪辱はゲームで果たす、このアンフィスバエナでなぁ! 私が喰い千切りたい赤姫はァッ、どこに消えたァァ!」

「……増長しているね、キミは」

 

 アンフィスバエナの真下、振り回されるセルピエンテハングの死角から、レッドイェーガーが突撃する。両手のビームピストルを全連射(フルオート)、足裏や腰のバーニアノズルを正確に射抜く。いかに頑丈なMG機体(マスターグレード)でも推進器や関節部は弱点であり、ビームピストルの出力でも連続で叩き込めば撃ち抜ける。アンフィスバエナのバーニアが数か所ほど小爆発を起こし、機体の姿勢がぐらりと崩れた。

 

(……弱点とはいえ、やけにもろい……?)

「相も変わらず小賢しくゥゥゥゥッ!」

 

 ナノカの脳裏によぎった疑問は、ヒステリックな叫びに掻き消された。ラミアは六本腕の全武装をレッドイェーガーに集中させた。セルピエンテハング、ドーバーガン、レプタイルシザーズ・シールド、シールドを失くしたアームまでも鞭のように振り回す。さらに腰のミサイルランチャーからも、最終カバーを吹き飛ばして次々とミサイルが飛び出した。

 しかしナノカはそのすべてをミリ単位の姿勢制御で回避し、追いすがるミサイルをビームピストルで撃ち落とし、無傷のままに舞い踊る。

 

「サーペントに乗っていたキミの方が、数段も強敵だったよ。ラミアさん」

「その私は、貴様に負けた弱い私だ! 今の、この、アンフィスバエナの方があぁァッ!」

「その怨讐が、キミの目を曇らせているんだと……行けっ、ヴェスバービット!」

 

 ナノカに銃口を向けていたドーバーガンが、三方向からの野太いビーム弾に串刺しにされた。レッドイェーガーにラミアの目が集中している間に、ナノカはヴェスバービットを回り込ませていたのだ。爆散するドーバーガンを切り離し(パージ)ながら、ラミアはギリリと奥歯を噛み締めた。レプタイルシザーズでヴェスバービットを追い回すが、喰いつけたのは一基のみ。残りの二基は鋭い弧を描いてレッドイェーガーの下に戻り、ビームピストルの先端に連結された。

 

「私を撃墜することを、アンジェリカ・ヤマダが望むのかい? 自分の胸には聞くことはしたのか、キミは!」

 

 ナノカは武装スロットを回転、素早く指を滑らせ、ヴェスバービットとビームピストルのエネルギーを直結した。高出力・高収束の射撃兵器〝ピストルヴェスバー〟を使用制限解除(アンロック)、トリガーを引きっぱなしにして連射した。

 

「恨み妬みで歪んだキミに、気高い番犬の強さはもうない!」

 

 ドドドドドドドドッ!

 拳銃サイズのビーム兵器ではありえないほどの、重粒子ビーム弾の高速連射。ラミアはシザーズ・シールドを掲げて身を守るが、そもそもヴェスバーはUC0100年代のビームシールドすら貫通しうるビーム兵器である。シザーズ・シールドのABC(アンチビームコーティング)は瞬く間に引き剥がされていき、数秒と保たずに穴だらけのプラスチック片へと変わり果てた。

 

「そ、そんなぁ……っ! そんなことを言うなああああああああっ!」

 

 突然ラミアは絶叫、数発の直撃も無視して、セルピエンテハングがレッドイェーガーへと躍りかかった。両腕に喰らい付き、捻り上げ、レッドイェーガーを拘束する。そして四ツ目式バイザーを降ろした顔面に、残り一門のドーバーガンを突きつける。

 

「そんなこと言われちゃアァっ! その生意気な顔面を、吹き飛ばすしかないだろぉおオッ!」

「……ビット!」

 

 ビームピストルの先端からヴェスバービットが分離、射出され、ドーバーガンを左右から撃ち抜いた。爆発の衝撃で拘束が緩み、ナノカは身を捻ってセルピエンテハングから脱出。唇を噛むラミアの視界のど真ん中に、数え切れないほどのミサイルの大群が飛び込んできた。

 

「なっ!?」

「ブチ撒けるぜェッ!」

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォンッ!

 次々と着弾するマイクロミサイルの集中豪雨が、アンフィスバエナの装甲を、六本腕を、足を、頭を、次々と打ち砕き、引き剥がし、破壊し尽くしていく。かなりのダメージを貰ってしまっているが、MG由来の頑丈さが、なかなかアンフィスバエナに撃墜判定を下さない――永遠に続くような、爆撃と激震。その一発ごとにコクピットには激震が走り、ラミアはコンソールに強かに額を打ち付けた。

 

「がはっ、痛ッ!?」

 

 ぽた、ぽたりと。青白い仮想現実のコンソール上に、血が垂れた。額を打ち切ったか、と内心舌打ちをし、ぐいっと手の甲で額を拭った。しかし、その手に血の跡はない。ならばどこからの出血かと、顔を撫でると――鼻血だった。

 

「なんだ、鼻血か……え? 痛い……血……え!?」

 

 ――痛い、痛いのだ。実際に、現実に、ラミアは痛みを感じていた。GBOのアバターが、ダメージの演出として鼻血を流しているわけではない。GBOのゲーム画面をVR表示するヘッドセットのその奥で、現実のラミアの肉体が鼻血を流しているのだ。

 ラミアがその事実に気付くのと同時、青白かったコンソールに真っ黒な染みが広がった。

 

「え、な!? 何が、起きて……ッ!?」

 

 瞬く間にコンソールを染め切った真っ黒な染みは、まるで空間を侵食するように、コクピットを黒く満たしていった。液体とも気体ともつかない黒いモノは、一切の光を通さない漆黒のはずなのに、自分自身は真っ黒に発光している。ずるりとまとわりつくような暗黒物質に、ラミアのアバターは呑み込まれつつあった。

 

「これは、黒色粒子……!? ガンプラのエネルギー源ごときが、一体何をッ!?」

『……ご苦労様でした、ラミアさん』

 

 真っ黒に染め上げられたメインモニターの片隅に、〝赤い三つ目の蛇〟の紋様が浮かび上がる。イブスキ・キョウヤのパーソナルマークである。

 

「イブスキぃぃっ!! 貴様、この状況をわかっているなァッ! 私はもう二度と、赤姫に負けられないのだと! やっとここまで来たのだと!」

 

 タールのように粘つく黒色粒子の浸食は、もうラミアの胸元まで迫って来ていた。粒子に呑み込まれた部分の、アバターの間隔がない――ラミアは必死でコントロールスフィアを掴もうともがくが、そもそも自分の手のひらが存在しているかも怪しい状態だ。鎖骨のあたりまで迫ってきた黒色粒子の上に、鼻血がぼたぼたと流れ落ちている。

 

「私を勝たせろ、イブスキ! そのためのアンフィスバエナだろうがぁッ!」

『ええ、勿論です……そのつもりでしたし、貴女にとって最上の結末は勝つことだったでしょう。ですがまあ、この結果は予想通り――そして、予定通り。貴女はもう負ける直前で、機体の最終プログラムが作動している状態です』

「最終プログラム……!? 何が起きている、イブスキぃぃぃぃッ!!」

『万が一、貴女がアンフィスバエナのオーバードーズシステムを自力で発動させられるようでしたら、まだ使い道はあったのですがねぇ。どうやら貴女の利用価値は、この程度で終わりのようです。最後にせめて、役に立ってくださいね。私の――いえ、我々の。この、偽りだらけの電脳世界を、再構成する聖戦の礎として』

「イブスキ貴様ッ、何を言ぐっ……!?」

 

 焦燥と怨嗟に満ちたラミアの言葉は、最後まで言えなかった。ついに、黒色粒子はラミアの頭までも呑み込んだのだ。銀色の髪の頭頂部までもが、漆黒の闇の中に沈んでしまった。

 次々に着弾するミサイルの衝撃、そして爆音だけが鳴り響く中、メインモニターから〝赤い三つ目の蛇〟が消え、そして――

 

《Overdose-system――BLACK OUT!!》

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

『ビス子。私は銃撃で攪乱しつつ、武器破壊を狙う。迎撃手段を潰して、最後は!』

『大火力でブチ撒ける! 任せろよォ、赤姫ェ!』

 

 通信機越しに聞こえる、ナノカとナツキの声。普段からとても仲の良い二人の連携なら、何の心配もない――が、ラミアの狂気は、脅威だ。エイトは早く援護に駆け付けるためにも、まずは目の前の相手に意識を集中させた。

 

「そこですっ!」

「やっ……るじゃねえか! 赤いのッ!」

 

 灼熱化(ブレイズ)ビームサーベルが、バンディッドエッジとぶつかり合い、火花を散らす。

 エイトはバーニアユニットを全開にし、体格差を推進力でカバー。そのまま刃を押し込もうとするが、バンの巧みな剣捌きで力の向きを逸らされ、受け流された。勢いのまま翔け抜けていくクロスエイトの背中に向けて、Bレオパルドのヘッドバルカンが火を噴く。四門のヘッドバルカンは猛烈な勢いで弾を吐き出し続けるが、飛燕の如く飛び回るクロスエイトには当たらず、バーニア光が残す青白い軌跡を射抜くばかりだ。

 

『エイトォ! そっちの援護も同時進行でいくぜェッ!』

「頼みます! 敵機との間に弾幕を!」

『お安い御用、ってなァ!』

 

 二秒後、ラプラスコロニーの方向から、ナツキが放ったマイクロミサイルの大群が押し寄せてきた。Bレオパルドはヘッドバルカンをミサイルの迎撃に向けざるをえず、射線がクロスエイトから外れる。エイトはその隙を逃さず鋭角的なターン、身を翻して突撃した。

 

「うらああっ!」

 

 両手持ちにした灼熱化(ブレイズ)ビームサーベルで、渾身の浴びせ斬り。Bレオパルドはバンディッドエッジで受け止めるが、突撃の勢いを殺し切れずに二機はもつれあいながら宇宙空間を翔け抜けた。バンは絡まり合いながらも左手のナイフを突き出し、隙の空いたクロスエイトの脇腹を狙う。しかしエイトはその動きも読んでいたのか、ヴェスザンバーを腰に装着したまま射撃形態(ヴェスバーモード)で起動、矢のように細いビームがBレオパルドの手のひらを貫いた。

 

「ちぃっ、左手を!」

「その手数なら!」

 

 振り下ろされる、灼熱化ビームサーベル。飛び散った粒子の欠片が装甲を焼く音が、そしてエイトの威勢の良い声が、バンの耳を打つ。バンは熱い汗が頬を流れるのを感じた。ダメージコントロールを確認するが、左手はもう使えない。大型ナイフとバンディッドエッジの連続攻撃で何とか切り結んでいたが、その均衡が崩れたのならば――

 

「二刀流で押し切ります!」

 

 エイトはもう一本のビームサーベルを抜刀、同時に武装限定灼熱化(アームズ・ブレイズアップ)。二刀流となった燃え盛る炎の剣で、縦横無尽の連撃を繰り出した。

 

「うらうらうらうらららららぁっ!!」

「くっ、おおおおおおおおおおおお!」

 

 右、左、左、切り上げ、右、突き、突き、左――目にも止まらぬ連続攻撃を、バンは右手のバンディッドエッジ一本で切り払う。その刀身は何ヵ所も焼き切られて刃が歪み、切れ味はもはやないに等しい。受け太刀にはまだ使えるが、決定打を与える武器にはなりえない。

 

(くっ……負ける、のか……っ!? いや、まだだ! まだ、時間を……俺は、レイを……っ!!)

 

 バンの焦燥は増すばかりだが、起死回生の一手などない。Bレオパルドは特殊なシステムを発動させる素振りもなく、バン自身が急に特殊能力に覚醒することもない。切れ味を失いただのプラ板と化したバンディッドエッジが、灼熱のビーム刃を受けるたびに焼き削られていくだけだ。

 

「まだだ、まだ墜ちるわけにはっ! 俺は、レイを――」

 

 ――瞬間。黒い波動がフィールドを駆け抜けた。しかしそれは、バンが発したものではなく、ラプラスコロニーの向こう側から怒涛の如く押し寄せたもの。宇宙の全てを呑み込む勢いで迸った漆黒の大波は、Bレオパルドもクロスエイトも、戦場の全てを宇宙よりも濃い闇の中へと呑み込んでいった。

 

 

 

◆◆◆◇◆◆◆

 

 

 

「……おかしいわぁ」

 

 ラプラスコロニー内部、宇宙憲章広場前。ハイレベルトーナメント一般観客席。約一万人の観客たちが集うメインステージの上には大型モニターが設置され、試合の模様を映し出してもいるのだが……タマハミ・カスミは、コロニーの天窓から覗く、遠く豆粒のようなガンプラたちの姿をじっと見詰めていた。特に天候など設定されていないはずなのに、不穏な風がカスミのワンピースを揺らす。

 

「何がおかしいのよ。アカツキエイトはちゃあんと、ゴツいレオパルドを抑え込んでるじゃない」

「あのキモい六本腕の狂犬ちゃんも、もう撃墜は時間の問題でしょ? ま、このヤエちゃん様と兄兄ズだったら、もっと早く落とせたけどねっ♪」

 

 ミッツは言葉とは裏腹に、金刺繍の海賊コートの裾をぎゅっと掴み、ハラハラドキドキといった様子でクロスエイトの活躍に見入っている。一方ヤエは、ほとんど水着のような服装に合わせてか、トロピカルドリンクを片手にしての観戦だ。

 

「あ、そーだ♪ この大会が終わったら私、アカツキくぅんに連絡先聞いちゃおうかなーっ♪ リアルでも会ってみたいしにゃー♪」

「ちょ、ちょっと何言ってんのよ! アンタみたいな化け猫娘なんかに、アカツキエイトの連絡先は渡さないんだからねっ!」

 

 ミッツは小さな八重歯を剥き出しにしてがなり、金ピカ塗装のマニピュレータ(・・・・・・・・・・・・・)の人差し指をビシッとヤエに突きつけた。しかし、そんなミッツの剣幕にも、ヤエはケラケラと嗤うばかりで、右手のGNソード(・・・・・・・・)に刺したストローを――

 

「って、ええええええええ!?」

「んにゃっ!? にゃによこれぇぇぇぇ!?」

 

 驚きの叫びが、同時に上がった。ミッツのアバターは、腕が丸ごと〝AGE-2リベルタリア〟の、金メッキされた右腕に。ヤエの持っていたトロピカルドリンクは〝ブルーアストレア〟が装備するGNソードに。いつの間にか変わっていたのだ。

 同様の異変は、ラプラスコロニーのいたるところで起きていた。

 ハイゴッグの両腕を引きずる男性。∀ヒゲの生えた少女。背負ったオーライザーの重みに押し潰されてもがく少年。デンドロビウムの真ん中に埋め込まれて身動きの取れない女性。そして、

 

「うおおおおお! オレの両手がガトリングに! ガトリング人間にぃぃ!」

「わ、わ、私も! 私もおっぱいから、おっぱいから、ガトリング砲が!」

「お、俺もガトリング砲が……逞しく反り返った超大型ガトリングが股間からぁぁぁぁ!?」

 

 全身のいたるところからガトリング砲がにょきにょきと生えてきて、なぜかちょっと嬉しそうな全日本ガトリングラヴァーズの面々。

 

「……戦場の、粒子が……騒いでいる……」

 

 騒然とする会場の中で、一人、天窓の向こうを見据えるカスミ。その真っ白な肌とワンピースには、〝ユニコーン・ゼブラ〟の黒いサイコフレームに酷似した真っ黒なラインが、深々と刻み込まれていた。

 

「何コレ何コレ何コレぇぇぇぇっ!? アア、アタシがリベルタリアになってるぅぅ!?」

「えっ、ちょっと何なのマジキモいんですけど!? ユウ兄ぃヨウ兄ぃ助けてぇーっ!?」

 

 腕が、足が、頭が。まるで質の悪い合成映像のように、アバターとガンプラとを行ったり来たり入れ替わっている。自分の身に起きた変化に戸惑い、混乱するプレイヤーたちを無視して、カスミは宇宙から迫り来るものを凝視し続けた。

 

「……来る……ッ!」

 

 黒い衝撃が、全てを吹き飛ばした。

 コロニーの大地はめくれ上がり、吹き飛び、荒れ狂い、何もかもが引っ掻き回されて、宇宙へと投げ出された。一万人のプレイヤーたちはノーマルスーツも着ないアバターのまま宇宙空間へと放り出され、砕け散ったコロニーの残骸と共に、四方八方へと飛び散っていった――




第四十四話予告

《次回予告》

「……よぉっし! 何か知らんがガードが緩んだ! つかみやしたぜ、お嬢さま! チバさん!」
「よくやったヤス! で、どこだ!?」
「このアドレスは……近所のネカフェですね、こいつは。車、回してきやす!」
「いそげよヤス! 俺らがたどり着いたってこたぁ、当然警察やヤジマの電脳警備部も掴んでるぞ。先に行かなきゃあ、ラミ公の奴が……!」
「チバさん! 原付借りますわねっ!」
「お、おいお嬢っ、無茶すんなっ!」

ガンダムビルドファイターズ ドライヴレッド 第四十四話『ワールド・エンドⅡ』

「ラミア……ラミア、ラミアっ! 今、行きますわね……すぐに行くからっ……!」



◆◆◆◇◆◆◆



 ……はい、という訳で43話でしたー。
 ここ最近ずっと続いていたハイレベルトーナメント編も、いよいよクライマックスです。そして、このトーナメント編が終わったら、物語そのものもラストに向けて一直線。三年目に入る前に、という野望はどうやら潰えてしまいそうですが、なんとかこの夏の間に50話で完結を目指したいと思います!
  あと、なんだかんだと書くタイミングを逃してしまっていたのですが、拙作が4万UA越えを達成いたしましたー!! これもひとえに読者の皆様のおかげです。今後も精進しますので、どうぞ最後までお付き合いください。よろしくお願いします。

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