現在、GBF小説の作者さんお二方とコラボ企画の話があるのですが、今回はそのうちのお一人とのコラボです。ナノカとナツキが、あるガンプラファイターと戦うことになります。あるファイターとは……
どうぞ、ご覧ください!
Extra.01-A 『VS.勝利の女神 前編』
「
初冬、街路樹の紅葉も色を失い、落葉へと変わりゆく季節。ガンプラショップGP-DIVE一階のカフェスペースにも暖房が入り、気の早いクリスマス商戦を告げるポスターやポップの類が店内のあちらこちらに顔をのぞかせていた。
「ああ。父に協力を頼まれたのさ」
ナノカは大きめの湯飲みを両手で抱え持ち、温かいお汁粉をずずいと啜った。冬用の、ブレザータイプの制服姿。赤いマフラーと学校指定の飾り気のないコートは、椅子の背もたれにかけている。
「なんでも、全国各地のガンプラショップと、ヤジマ商事との
「へェ~、コラボねェ。んで、具体的には何すンだよ、その……クロス……?」
「クロスダイブ・プロジェクト」
「そうそう、そのプロジェクトとやらはよォ」
一方、足を組んで椅子に座るナツキは、私服姿だった。上は手首が隠れるやや袖の長いセーター、長い脚はすっきりとしたシルエットのデニムと、男物のブーツに包まれている。ライダース風のジャケットは、ナノカと同じように椅子の背もたれにかけていた。
ナノカはナツキの質問には答えず、おもむろに、ナツキの服装を上から下まで眺めまわした。
「ときに、ビス子……少し安心したよ。今日のファッションは、まあ、まともだね」
「んなッ!? ま、まあ感謝はしてやってるんだぜ、赤姫。だけどよ、もうちょっと言い方ってヤツがよォ……」
ナツキは少し頬を染めて明後日の方向を向きながら、ミルクと角砂糖を通常の三倍ほど投入した甘々のホットコーヒーを口元へ運んだ。
「ふふ。こうして休日におしゃべりをするのも、もう何度目かだけれど……いまだに忘れられないね。上下ジャージにランニングシューズで駅前に現れたキミの姿は」
「う、うるせェ! んで、何なんだよクロスなんたらってのは!」
「ガンプラバトルをするつもりが、キミと服屋巡りをする羽目になるなんて、思ってもみなかったよ。あげくキミときたら、試着室に入るのも人生初だなんて真っ赤になって――」
「あーっ、わーっ! あ、あーかーひーめーェェ……ッ!」
「はは、悪い悪い。冗談さ。ちょっとした、ね」
顔を赤くして詰め寄るナツキに、ナノカは笑って応じる。
ちょうどその時、いつものエプロン姿の店長が、二人のGPベースを手に持ってやってきた。
「ナノカちゃん、
「よし、行こうかビス子」
「おい、まだ説明聞いてねェぞ。今から何すンだよ」
ナノカは立ち上がり、店長からGPベースを受け取って歩き出した。ナツキもそれに続く。向かう先は、二階フロア。バトルシステムだ。
「――
「GBOとリアルの融合……何だよそりゃァ?」
「簡単にいえば、GBOのネットワークを使って全国のガンプラショップのバトルシステムを繋ぎ、バトルが組めるってことさ。レギオンズ・ネストの動画中継で知名度が上がったとはいえ、まだまだGBOの利用者はガンプラというマーケットに対しては少ないからね。ヤジマの技術部の実験も兼ねた、
「ふぅん。回りくどくねェか、それ?」
「そうでもないさ。見ず知らずのファイターとでも、いつでも気軽に対戦できる――ネットワーク対戦の楽しさを知ってもらえれば、そこからGBOに入ってくる人もいるはずさ」
「そうだぜ、ナツキちゃん。実際、今マッチングしている相手もGBOはやっていないファイターみたいだぜ」
店長はフロアの鍵を開け、ナノカとナツキを招き入れた。
「システムは起動済み、〝ZEDAN〟って模型店と
バトルシステムはすでに起動しており、フィールドは構築されていないが、バトルシステムの中央部にはでかでかと『CROSS-DIVE system.』のロゴが立体表示されていた。さらにシステムの向こう側には、プラフスキー粒子によるホログラムで相手ファイターの姿が再現されていた。
相手は二人で、二人とも女性――いや。学校の制服姿の、少女だった。
一人は背が低く、特徴的な白縁の眼鏡をかけた少女。セミショートの黒髪に、翡翠色の瞳。やや幼い顔つきと体つきだが、恐らくは高校生だろう。表面上は落ち着いた雰囲気だが、
もう一人は、金色に近いオレンジ色の髪をポニーテールに纏めた、どこか気品のあるお嬢様然とした少女。色白な顔にあどけなさは残るが、ナノカやナツキに勝るとも劣らない整ったスタイルをしている。まっすぐに前を見据え、腕を組んで仁王立ちする姿は、年齢以上に大人びた落ち着きを感じさせた。
「あのお嬢ちゃんたち、見た目は可愛らしいけどかなりデキるらしいぜ。ナノカちゃんたちと同じだな」
「要は戦って勝ちゃァいいんだろォ。あいつら何か、大会で成績とかあンのかよ、店長」
「ああ、なかなかのモンだぜ。まずはあの白縁眼鏡のお嬢ちゃん。ちょっと前まで、ネットゲームの世界では少々名の知れたプレイヤーだったらしい。本人に自覚があったかはわからんが、そのバトルスタイルからついた二つ名が〝
「へェ……全国優勝……ッ!」
ナツキの表情が変わった。にやりと
「そしてもう一人、ナイスバディのお嬢ちゃんだが……大会成績は特にないが、全国優勝のお嬢ちゃんがタッグを組んでいるんだ、初心者にしてもきっと天才的な何かが――」
「――夜天嬢雅財閥のご令嬢だね。父に連れられたパーティーで、見たことがある」
ナノカの目が、すっと細められる――ナノカは、このバトルが単なる遊びのつもりでは終われないと、感じ取ったようだった。
「夜天嬢雅の人間なら、どんな才能があっても驚かないよ。私の主観だけれど――天才を生む家系、というのは実在する。夜天嬢雅がそれだよ」
「……がっはっは! 二人とも、やる気は十分ってぇ感じだな! よし、じゃあおっぱじめるか! システムに入りな!」
ナノカとナツキはそれぞれに
『CROSS-DIVE system. Combat Mode. Damage Level,Set to O.』
『あ。相手の人、出てきたね』
『うむ、相手も女性二人じゃな。レディース大会を思い出すのう……ん?』
相手側にも、ナノカたちのホログラムが表示されたらしい。ぺこりと軽く会釈をする眼鏡の少女の横で、夜天嬢雅財閥の令嬢がナノカに上品に笑いかけた。
『確か、ヤジマ商事の……アカサカ室長の娘さん、じゃな。奇遇じゃのう、こんなところで』
「パーティーで何度か挨拶しただけの相手を、こうもすぐ思い出せるなんてね。称賛に値するよ、夜天嬢雅さん」
『何じゃ、堅苦しいのう。今の儂は、ただの一人のガンプラファイター、夜天嬢雅八々じゃ。気軽にヤヤと呼ぶが好いよ。儂もナノカと呼ばせてもらおう』
「ふふ……じゃあ、それで頼むよ。ヤヤ」
『……ヤヤちゃん、相手の人と知り合いなの?』
『うむ、何度か本家のパーティーでの。その時は、儂もガンプラのことは知らなんだから――』
「おいおい、女子高生ども! 自己紹介はいいけどよォ――レディース大会全国優勝の実力、錆びついてねェんだろうなァ!」
ざんっ。会話に割り込んだナツキは、システムにガンプラをセットした。今回の機体は、ドムゲルグ・ドレッドノート。以前大破したものを修復し、新造時と同じレベルにまで仕上げている。
「オレはヒシマル・ナツキ、
『は、はい。
「はっはァ、上等! ンじゃあ、自己紹介タイムは終わりだな。早速ヤろうぜ、全国優勝ちゃんよォ!」
気が早く、ナツキはもうコントロールスフィアに手をかけていた。ナノカは「やれやれ」と首を竦めながらも、ジム・イェーガーR7をシステムにセットする。Gアンバーは右手に一丁、バックパックはサブアーム付きシールドとビームサーベルの、通常装備だ。
「すまないね。ヤヤ、マサキさん。この爆撃娘は、性急でいけない」
『いえ、お気になさらず。私も早く戦いたいと……勝ちたいと、思っていたところです』
『ほう、大きく出たのうマサキ。勝ちたい、とはな。ま、儂はおぬしのそんなところを買っておるのじゃがな』
『えへへ……さあ、始めよう!』
マサキはヤヤに小恥ずかしそうに笑い、ガンプラをシステムにセットした。
それはどこまでも純白の、
専用シールド「エイジス」と、それと同等の防御力を有する全身の追加鎧装。そして右手に構えた大型突撃槍「GNインパルスランサー」が目を引く機体だ。
『儂も全力を尽くそう。ツクモに代わって、マサキの相棒を務めさせてもらうぞ』
ヤヤも意気を高めて、システムにガンプラをセットする。
山吹色をメインカラーとした、ヤヤ専用のウィングガンダム。
武装は右手にバスターライフル、左腕に専用シールド。色合い以外には、外見が大きく変わるような改造はない。しかしガンプラ初心者というヤヤの機体としては、非常に丁寧に仕上げられている。
『Field12, maneuvering ground.』
粒子の輝きが形となって、画一的なコンクリート造りの疑似市街地やダミーの基地施設、大きく開けた射撃場など再現した、大規模演習場の光景を作り出す。その広さは、もし現実であればかなりの規模の総合火力演習が行えるほどのスケールだ。
その演習場の空に、仮想のカタパルトデッキが築かれ、射出口が開かれた。ハスキーな女性の機械音声が、システムの準備完了を告げる。
『All systems are go.』
「〝
「ジム・イェーガーR7。アカサカ・ナノカ。始めようか」
『ガンダムアテナ、七種 真幸! 勝利を切り拓く!』
『夜天嬢雅 八々! ウィングガンダム! 推して参る!』
『BATTLE START!!』
四体のガンプラが、宙に踊り出し――
と、いうことで。
ただ、ヤヤ様にはご活躍していただく!(断言)
いやしかし、他の作者さんのキャラを登場させるってドキドキしますね。口調とか大丈夫かなあ……何か修正点があればどうかご指摘お願いします。>カミツさん
次の土日には後編を上げたいと思います。頑張ります!
さらに、繰り返しになりますが一万UAありがとうございます。読者がいるということが、作者にとって最大の喜びです。感謝の極み!!
感想・批評お待ちしておりますので、今後もよろしくお願いします。