ずっとずっと以前からお話をいただいていて、しかもお相手の方にはすでにウチの子たちとのコラボを書いていただいていたというのにっ!ようやく投稿と相成りました~。遅くなってすみません。平謝りです。
さて、タイトルでどの作者さんとのコラボかおわかりでしょうか?
では行ってみましょう。極限ッ!! 進化ァァッ!!
「アーケード型コントローラー……ですか?」
もはや恒例となった、GP‐DIVE併設カフェでのアルバイト……と言う名の、
「ああ、そうだよエイト君。〝
対するナノカは、冬用の学生服に、足元を厚手の黒タイツで防寒対策という如何にもそれらしい冬の女子高生ファッションだ。今は椅子の背にかけているマフラーが鮮やかな赤なのは、彼女なりのこだわりだろう――ナノカは冷えた指先で包み込むようにお椀を抱え持ち、熱々のお汁粉をずずいと啜った。
「アーケードゲームによくある、スティックとボタンによる操作でガンプラバトルを行うものらしい。略称はアケコン、すでに一部のバトルシステムでは先行実装されているそうだよ。GBOの間口を広げるための方策らしいのだけれど」
「ナノさんが、そのテスターを頼まれたんですか? 急に操作方法を変えるのって、難しそうですよ」
「いいや、私は通常のコントロールスフィア操作で、相手がアケコンで試合をする段取りだよ。……エイト君は、ゲームセンターにはよく行くのかい?」
「いえ、あまり……あ、そういえばこの前、ナツキさんに誘われて一緒に行き」
ガタンッ!
「ど、どうしたんですナノさん? 突然立ち上がって……?」
「詳しく」
「え?」
「詳しく、言ってくれるカい? ゲームセんターでナにヲシタのカ?」
ナノカの背後に、バンシィに乗る黒リディを彷彿とさせるドス黒いプレッシャーが渦を巻く。しかしバトル中ならともかく、日常生活でのエイトはそのあたり非常に鈍感だった。エイトはニコニコとした表情で、ナツキと一緒にしたことを読み上げていく。
「詳しくって、普通に遊びに行った感じですよ。太鼓を叩くやつとか、ゾンビを撃つやつとか、写真のシール撮るやつとか。ナツキさんってクレーンゲームとかけっこう下手で、僕が代わりにプチッガイのぬいぐるみ取って、プレゼントしたんですよ。そしたらすっごく喜んでくれて……あとでクレープをおごってもらっちゃいました。楽しかったですよ、ナノさんも一緒に来てほしかったなあ」
「……ヌケガケハユルサヌ」
「ナノさん、何か言いました? なんか様子がおかしいですよ?」
「い、いや何でもないよエイト君。たった今、ビス子に
ナノカは目を細めて作り物のような笑顔を浮かべながら、鬼のような速度でスマホを叩き、ナツキにメールを送った。エイトはその表情の意味にも気づかず、「ナノさんとナツキさん、相変わらず仲がいいなあ」とのんきに微笑むばかりだった。
「……と、言うわけでエイト君。私はちょっと死刑執行……いや、ビス子と少しばかり
「え、あ、はい。突然ですね。お汁粉、どうします?」
「勿論、いただくさ」
ナノカはできたてアツアツのお汁粉を、まるでスポーツドリンクでも飲むようにごきゅごきゅと喉を鳴らして呑み干した。お椀一杯、丸ごとを一気だ。呑み終えたナノカはお椀の横に、五百円玉をぱちりと置いた。
「おつりは要らないよ。代わりと言っては何だけれど、アケコンのテスト対戦、代理を頼まれてくれるかい。すでにクロスダイブ・システムでマッチングはしてしまったらしいんだ」
「え、ナノさん、急に……」
「試合は三分後だ。ありがとう、エイト君!」
アカサカ・ナノカの真骨頂、この人の話を聞かない感じ、久しぶりだなあ。エイトがそんなことを考えている間に、ナノカはクールに手を振りながら店を出てしまった。言っていることは強引だが、大鳥居高校の古風なセーラー服にすらりと背の高い黒髪美人、後ろ姿も実に絵になる。なってしまう。
「しょうがないなあ、ナノさんは」
エイトは少し嬉しそうに苦笑いをして、キッチンカウンターの奥の店長に声をかけた。
「店長、少し休憩もらってもいいですか」
「……姐御がこのシーン見てたら、喜んで引っ掻き回したんだろうなぁ」
「え? 店長、姉さんがどうかしたんですか?」
「いいさエイト、気にすんなよ。ほれカギだ。二階、行ってきな」
店長は力の抜けたような笑顔で、エイトにカギを投げてよこした。エイトは礼を言ってエプロンを外し、二階のバトルシステムへと小走りに向かった。
(それにしても……ナノさんも店長も、何か変な感じだったなあ……)
――この後、ナノカとナツキはガンプラではないバトルを繰り広げることになるのだが、それはまた別の、根本原因たるエイトのあずかり知らぬ話であった。
◆◆◆◇◆◆◆
『……少し、待たされた形になるな』
「す、すみません。ちょっと事情が……」
バトルシステムに入ると、すでに相手ファイターの姿は立体投影されていた。
精悍な顔立ちの、やや小柄な男子高校生。その目付きというか、全身から発するオーラというか、戦い慣れした戦士の様な風格がある。ヤジマ商事がアケコンのテスターに指名するぐらいなのだから、きっと何かのアーケードゲームでは名をはせたプレイヤーなのだろう。
エイトは同年代に見えるこの青年に少し気圧されつつも、しかしそこは男子の意地、何でもない風を装って笑いかけた。
「相手を務めさせてもらう、アカツキ・エイトです。一応、GBOでは
『
名乗ったキョウヤは間をおかず、GPベースにガンプラをセットした。そのガンプラを見てエイトは、彼がアケコンのテスターに選ばれた理由を察した。
エクストリームガンダム、ゼノンフェース。ガンダム系アーケードゲームの最高峰と言って過言ではない、あのゲームのオリジナルガンダムだ。ただしその装甲は黒く、各部には丁寧なカスタマイズが施されている。
『このエクストリーム:
嫌味でなく、真に自信があるからこその物言い。初対面なのに名前に「君」付けということは、年下に見られているのだろうか。身長だってあんまり変わらないのに――いや、僕の方が何センチか高いはずだ。たぶん。
そんなこんなをひっくるめて、エイトの心にも火がついた。
「心配ないですよ、
エイトは自分でも珍しいと思いながらも、好戦的にニヤリと笑った。ガンプラケースから取り出した愛機を、GPベースと共にシステムにセットする。
「――クロスエイトの独壇場だ」
『CROSS-DIVE system. Combat Mode. Damage Level,Set to O.』
両者のガンプラを認識したバトルシステムが、ハスキーな女声で高らかに告げた。湧き水のように溢れ出したプラフスキー粒子が、仮想空間を作り上げる。
『Field11,Coliseum.』
構築されたフィールドは、歴史を感じさせる石造りの円形闘技場。すべてがMSサイズになってはいるが、世界遺産のあの建物にとてもよく似たフィールドだった。一対一の対決に使うフィールドとしては、これ以上ないほどに適切だろう。
『All systems are go.』
ハスキーボイスに合わせて、二人のガンプラがカタパルトデッキに乗せられる。エイトは手元に出現したコントロールスフィアにいつものように手を乗せて、握り具合を確かめた。
ふと、相手のキサラギ・キョウヤは今この瞬間、アケコンのスティックに手を添えているのだろうと思い至る。自分はスフィアでの操作に慣れているし、それ以外なんて考えたこともなかったけれど――だがバトルが始まれば、そんなことは関係ない。全力を尽くすのみだ。
「アカツキ・エイト、ガンダム・クロスエイト! 戦場を翔け抜ける!」
エイトの声に答えるように、クロスエイトの
「キサラギ・キョウヤ。エクストリーム:Rf!! GO!!」
一方のキョウヤも、よく手になじむアーケード型のスティックに手を添え、叫んだ。黒いエクストリームは全身のクリアパーツから粒子の煌めきを散らしながら。カタパルトから飛び出した。
赤と黒のガンダムが、それぞれに光の軌跡を曳きながら、コロシアムの空で激突する――
『――BATTLE START!!』
◆◆◆◇◆◆◆
「ふぅーん、いやいや、なかなかどうして」
とても最新式とは言えない古ぼけたディスプレイに、バトルの模様が映し出されている。そこにかじりつくようにして観戦し、満足げに頷くのは、薄汚れた白衣の痩せた男。せっかくの美丈夫も、洗濯していないシャツと無精髭のせいで台無しだった。
「どうだいどうだいハガネザキちゃん。また格闘型かよと思ったけれど、なかなかどうしてじゃあないかこの二機は」
「うーん。そうですねー。けっこう。エネルギー。出てますねー」
もじゃもじゃの長髪の横で、薄紫のツインテールがぴょこぴょこと跳ねる。画面に映し出された二機のガンプラ――クロスエイトとエクストリーム:Rfは、それぞれに大型のビーム刃を噴出する格闘兵装を振り回し、何度も何度も突撃と斬撃、鍔迫り合いを繰り返している。ファイターの気合いの入った大声から考えるに、それぞれ「ヴェスザンバー
ツインテールの少女――ハガネザキ・タガネは、ある意味幻想的とも見える光の刃の交錯を冷めきった目で眺めながら、指はキーボードの上を忙しなく走り回っていた。
「無茶苦茶な出力ですよー。二機ともー。ゼータのハイパー化並みのサーベルをー。ずっと出し続けてますよアレー」
「常識外れの高出力ビーム……お仕事ご苦労、ハガネザキちゃん。期せずして、
「ドウジマしつちょー。にやにや笑い。マジキモいですよー」
ドウジマは嬉しそうにハガネザキの頭をぐしゃぐしゃと撫で、咥えっぱなしだった湿気たタバコをそこら辺に投げ捨てた。そして自分も、彼女と同じようにキーボードを叩き始める。
「さあ、たっぷり学べよGOD。高出力ビーム兵器ってのは、こういうもんだぞ……!」
電子機器で埋め尽くされた狭い部屋が、キータッチの音で満たされる。ドウジマの目には、バトルを続ける二機のガンプラを見ているようで、見ていない。その目に映るのは、もっと別の何か――しかしそれが何かを知る者は、まだこの世界のどこにも、存在してはいないのだった。
と、いうことで。
コラボのお話をいただいたのが前過ぎて、忘れられてたらどうしよう……ガクガクブルブル
後編ではバトルが始まりますが、主人公同士のバトル、どう決着をつけようかいつものように未定でございます。筆の流れるままに進めてみようと思います。乞うご期待!!
感想・批評、お待ちしております。お気軽にどうぞ~。