真紅の太陽と黒き極限進化、勝利はどちらの手に!? 書いてる私もまったくの未定、書きながら考えました!!(笑)
どうぞご覧ください。
交錯する光の刃が、粒子の欠片を散らしあう。
黒と赤の二機のガンダム、エクストリーム:Rfとクロスエイトの戦いは、開幕と同時に凄まじいまでの剣戟となっていた。ぶつかり合い、弾き合い、そしてまたぶつかり合う。朽ちかけた
エクストリーム:Rfはどっしりと地に足をつけ、自身の体格にも等しい大型の双刃型ビームブレード〝デュアル・タキオンスライサー〟を力強く振り下ろした。巻き起こった衝撃波が、罅割れた石畳をまくり上げながら驀進し、クロスエイトに襲い掛かる。だが、
「見えますっ!」
エイトはそれをぎりぎりまで引き付けて回避、衝撃波の進んできたルートを逆進し一直線に突撃した。そして、ヴェスザンバーを横薙ぎに一閃。
「ぅらぁぁぁぁッ!」
「ちょこまかと!」
キョウヤは斬り返したタキオンスライサーを振り上げ、ヴェスザンバーを弾いた。小型軽量のクロスエイトは弾きあげられた勢いそのままに上空に打ち上げられるが、それすら加速に利用したかのように、急激なターンを描いて再突撃。ヴェスザンバーとタキオンスライサーのぶつかり合いが、三度、四度と繰り返される。
その一撃一撃の予想外の重さに、キョウヤの口の端にニヤリとした笑みが浮かぶ。
「小型機ゆえのパワー不足を、推進力という長所で補っている、か。やるな、アカツキ君!」
「光栄だと言っておくよ、キサラギ君!」
「……だがっ!」
十数度目の突撃――その直前。エクストリーム:Rfはタキオンスライサーを投げ捨て、クロスエイトの視界を塞いだ。同時、その両腕の追加装甲が、獅子の咢の如くガパリと開いた。内部パーツが金色に輝き、暴力的な熱量がその手に宿る。
(不意打ち、目隠し、至近距離――これで、価値を測らせてもらう!)
エイトは投げつけられたタキオンスライサーを切り払い視界を確保するが、その時にはすでに目の前に、高エネルギーを凝縮した破壊の光球が迫っている!
「獅子咆哮ォォッ!」
ズアアアアアアアアアアアアッ!
猛然と撃ち出されたビーム属性の爆熱火球が、クロスエイトを呑み込む――呑み込めない!
「
クロスエイトの右拳に燃える、紅蓮の刃。熱量収束式攻性ビームシールド――ブラスト・マーカー。クロスエイトのボディに蓄積した熱量を注ぎ込んだ灼熱のビーム刃が、獅子咆哮をギリギリのところで抑え込んでいた。
「だが、足は止まったな!」
「なっ!?」
エイトの背筋に悪寒が走る。獅子咆哮の光球すら目隠しにして、キョウヤはクロスエイトの背後を取っていた。大きく腰をひねったポーズで滞空するエクストリーム:Rfの、脚部装甲が一部展開。獅子咆哮と同質のエネルギー流が渦を巻いて噴出し、黒き機体を金色に照らす。
「獅子ッ! 旋・風・撃ッ!!」
高エネルギーを纏った強烈な回し蹴りが、クロスエイトの細い腰を強打した。バキャリという硬質な破壊音、クロスエイトはほぼ真横に吹っ飛び、コロシアムの観客席へと叩き付けられる。簡素な石段の観客席はがらがらと崩れ去り、その下にクロスエイトは埋め込まれてしまう。
そして、土煙が収まるまでの数秒。埋まったクロスエイトに動きはない。キョウヤは眉根にしわを寄せ、訝りながらもゆっくりと歩いて距離を詰めた。
「こんな程度で終わるか、アカツキ君」
プラスチックを蹴り砕いた感触が、確かにあった。実は当たっていなかったとか、質量のある残像だとかは、断じてない。で、あれば。小型軽量級の装甲で、獅子旋風撃に耐えるなど――ガリ、と足元で音がする。エクストリーム:Rfのつま先が踏んでいたのは、プラスチックの欠片。幅広く分厚い大剣の、折れた刀身。
「……剣を盾代わりにっ!?」
気づき、構えると同時に、足元の石畳が弾け飛んだ。地中から爆発するように土砂が噴き上げ、舞い散る土と石畳をかき分けるようにして、真紅のボディが飛び出してきた。
「らああああああああっ!」
ヴェスザンバー
「じ、地面を掘り進んだのか、こんな一瞬で!」
「以前にジャブローの地下を、バズーカでやった人がいてねっ! ヴェスザンバーで応用をしたぁっ!」
「くっ……!」
クロスエイトのバーニアスラスターが噴き出す炎を強め、ヴェスザンバーがより深く、エクストリーム:Rfに食い込む。キョウヤは歯を食いしばり、左腕に右手を添えて耐える。
(
「このままぁっ! 押して、斬り、抜けるッ!」
ただでさえ圧倒的なクロスエイトのバーニアが、さらに一段階、出力を上げた。猛烈な勢いで噴き出す噴射炎はもはや、光の翼ならぬ〝炎の翼〟と言った様相を呈している。その勢いに押され、ヴェスザンバーがじりじりと追加装甲に食い込んでいく。腕そのものはまだ無事だが、左腕の武装はもはや使い物にならない。
「フッ……だったら!」
キョウヤは額から流れた汗を手の甲でぬぐい、その手の指をそのままアケコンのボタンに叩き付けた。ボタン三つを、同時に押し込む!
「覚醒抜けだッ!」
轟音と閃光、吹き荒れる烈風。エクストリーム:Rf全身のクリアパーツが鮮やかな青に発光し、各部追加パーツが展開、青く煌めく内部機構を露出した。損傷の深い左腕の追加パーツは極限進化の出力に耐えきれず大破するが、それにより、食い込んでいたヴェスザンバーの刃が外れた。
同時に迸ったプラフスキー粒子の衝撃波により、クロスエイトは推進力を相殺されわずかな距離だが、押し返される。
「で、デストロイモードっ!?」
「違うな、これが俺の極限進化! そして!」
解放された脚部パーツから、青白いビームカッターが噴出した。さらに脚部推力機構からバーニア光が迸り、エクストリーム:Rfの機体がふわりと浮き上がった。
エイトはこの日二度目の激しい悪寒を感じ、フットペダルを踏み込んだ――しかし、クロスエイトの動きが、硬直している。アーケードゲームの経験がないエイトには知りえないことだが、
「派生無視、いきなりぶっこみ、打ち上げサマーソルトのぉッ!」
「くっ! 間に合えぇっ!」
「極限進化版ッ! 獅子ッ! 旋・風・撃ィィィィッ!」
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!
縦断一閃、三日月型を描くように振り抜かれた右足が、凄まじい出力で展開された青白いビームカッターが、
支柱を切り崩された観客席が、円形を描く外壁が、音を立てて崩れ落ちる。
煌めく覚醒粒子を散らし、空手道のような残心を取るエクストリーム:Rfだけを残し、フィールドの全ては崩壊した石材の山と化した。
「終わった……か」
キョウヤの呟きを証明するかのように、真っ二つに折れたヴェスザンバーと、肩口から切断されたクロスエイトの右腕が、エクストリーム:Rfの足元へと落ちてきた。またしてもヴェスザンバーを盾にしたようだが、極限進化版・獅子旋風撃は、キョウヤが一度は覚醒技――覚醒状態専用の、超威力の必殺技に設定しようとしていたほどの奥義である。足元に転がる右腕の残骸からもわかるように、そう簡単に防ぎきれるものでは――
「まだだぁぁぁぁッ!」
土煙を突き破り、満身創痍のクロスエイトが現れた。
機体の熱を伝播させた、一撃必殺の熱量兵装、ブラスト・マーカー。文字通り〝最後の一手〟となった紅蓮の炎剣を切っ先として、全身を一つの
「ぅらあぁぁぁぁッ!」
「そうこなくちゃなああッ!」
キョウヤは呼応するように叫び、その右腕に機体に残る全エネルギーを集中した。獅子咆哮に似た圧縮粒子の輝きが、掌を黄金に輝かせる。石畳を割るほどの踏み込み、正拳突きの要領で、右の拳を突き出した!
「極・限・全・力ッ! ラァァイジングッ! バンカァァァァァァァァッ!」
「焼き尽くせッ! ブラスト・マァァカァァァァァァァッ!」
――ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!
黄金の掌打と紅蓮の穂先がぶつかり合い、猛烈な衝撃波が辺り一面を更地に変えた。石材の山はすべてまとめて吹き飛ばされ、剥き出しの地面に何本もの地割れが走る。あまりにも凄まじい超威力同士の衝突に、フィールドそのものが崩壊を始めた。割れ砕け、めくれ上がった地面の下にバトルシステムの粒子放出面が、ちらほらと露出する。
「うおおおおおおおおッ!」
「らああああああああッ!」
エイトとキョウヤはお互いに叫び、それぞれのコントローラを限界まで前に押し出し続ける。赤と黒のガンダムは、お互いの主人に応えようと、突き出したその手を力の限りにさらに押し込む。装甲は罅割れ、フレームは軋み、関節部から火花が散る。コクピットのありとあらゆるモニターは警告を発し、
《Caution! Caution!》
システムからの
絶大な推進力による高機動と超出力の熱量兵器を有するクロスエイトだが、
《DANGER! DANGER!》
警告音が、ひときわ大きく騒ぎ立てる。クロスエイトの内部熱量は限界値の99%に達し、過剰熱量がバーニアから、ダクトから、関節部から、炎となって溢れ出す。迸る炎上粒子は、ライジング・バンカーのエネルギーすら巻き込みながら成長し、エクストリーム:Rfの装甲を炙った。装甲表面の塗料が高熱で溶け、エクストリーム:Rfのコクピットにも、熱量ダメージの警告音が鳴り始めた。
「このままじゃあ機体をぶっ壊しそうだが……手加減はしないッ! 恨みっこ無しだぜ、アカツキ君!」
この期に及んで、キョウヤはさらにライジング・バンカーの出力を上げた。覚醒状態は時限強化の一種、もう効果時間は十秒も残っていない。粒子残量も僅かだ。この勝負、ここで――
「――ここで、決めてやるッ!」
「望むところさ、キサラギ君! ここで決めるッ!」
熱量限界、100%。その瞬間にエイトは武器スロットを操作、クロスエイトの特殊機能を発動した。
極限全力ライジング・バンカーと、灼熱化ブラスト・マーカー。
超絶の高出力をぶつけ合う二機のガンダムを中心に、火の粉混じりの烈風が割れ砕けた地盤を一気にまくり上げ、地面の下のバトルシステムが完全に露わになった。
炎と光をまき散らし、死力を尽くして鬩ぎ合うクロスエイトとエクストリーム:Rf。地上も宇宙もなくなったバトルフィールド内で、エイトは力の限り絶叫した!
「燃え上がれ、ガンダァァムッ! ブレイズ・ア……」
《Field break!! Emergency shutdown!!》
◆◆◆◇◆◆◆
――カシャン。
軽い音がして、
《End in a draw!!》
引き分けを告げる、ハスキーな女声のシステム音声。コクピット表示もはらはらと剥がれ落ちるように消えていった。
後に残ったのは、コントロールスフィアを握る姿勢のまま汗だくで固まっているエイトと、同じく汗だくで、アーケードコントローラーを持つ形で固まるキョウヤの立体映像だけだった。
二人は同じように目をぱちくりと瞬かせ、数秒間のお見合い状態の後、息もぴったりにこう叫んだ。
「「何だよそりゃああああああああッッ!!」」
◆◆◆◇◆◆◆
クロスエイト対エクストリーム:Rfの熱戦が、システムの限界による引き分けに終わった、その翌日。エイトは、今日は客として、GP-DIVEのカフェスペースに来ていた。
「――と、言うわけなんですよ! ナノさん!」
珍しく熱の入った口調で、エイトはバンと机に手を突いた。ぐぐいと身を乗り出して、今日もいつものお汁粉を啜るナノカに詰め寄っている。
「え、エイト君、こんな昼間から、こんな場所で……そそそ、そんなに顔を近づけられると、だね……」
よく見ると、ナノカの頬は薄紅色に染まり、お汁粉の入った湯呑みを持つ手は小刻みに震えている。だが、当のエイトはそんなナノカの様子になどまったく気づく素振りもなく、どっかりと椅子に腰を下ろした。
「再戦です! 僕は、彼との再戦を要求します!」
エイトはムスッとした顔で、オレンジジュースを一気に飲み干した。
「連絡先なんかも聞けてないし、GBOユーザーでもないみたいだし……すっきりしないですよ、システム側の理由で引き分けなんて」
「父に相談はしてみるけれど……個人情報だからなあ」
個人情報の取り扱いは、現代の企業にとっては生命線ともなりうるモノだ。いくらナノカの父がGBOや
それよりも、超出力の必殺技同士のぶつかり合いにクロスダイブ・システムが耐え切れなかったことの方が、ナノカは気になっていた。今までに何度かクロスダイブ・システムで戦ってきたが、現在のガンプラバトルの主流である三対三のチームバトルは一度もない。一対一の決闘形式か、タッグマッチのどちらかだった。その理由がまさか、処理能力の限界にあったとは。
(リアルでも、GBOでも、ブレイズ・アップ並みの高出力を誇るガンプラは、そう多くはないだろうけれど……根本的に、処理能力が足りてない。まだまだ未完成と言わざるを得ないね)
父は当然気づいているのだろうけれど、ユーザーからの意見ということで報告しておくか。ナノカは形の良い眉を微妙に歪ませながら、湯呑みに残ったお汁粉をずずいと啜った。
「ナノさん、クロスダイブ・システムの方では、大会とかないんですか。あれほどの腕前の人なら、きっと出場すると思うんです」
「大会かあ。今のシステムじゃあ、すぐにパンクするのだろうけれど……バージョンアップが進めば、当然、あり得る話だろうね」
「そうですか……じゃあ、その日に備えて特訓しましょう、ナノさん! ハイモックじゃあ相手になりませんから、仮想敵、お願いしますね!」
言うが早いか、エイトは席を立ち、ガンプラケースを抱えて店の二階へと駆け上がっていった。まるで少年のような――実際、エイトは少年なのだが、とにかく、やりたいことに真っ直ぐで一生懸命なその姿に、ナノカは少し、表情が緩んでしまうのを感じた。
「ふふ……やる気だね、エイト君」
ナノカは微笑みながら席を立ち、レッドイェーガーを入れたガンプラケースを手に、エイトを追って店の二階へと上がっていくのだった。
◆◆◆◇◆◆◆
――同時刻、とあるイベント会場で――
「ち、チクショウ……赤姫のヤロウ、覚えてろよォ……!」
ナツキは吹き抜ける寒風にガタガタと震えながら、顔だけは必死に作り笑顔を維持して、来場者たちに向けていた。
年の瀬も迫るこの真冬に、ほとんど水着と変わらないようなぴっちりとしたコンパニオンの衣装。ジオン公国軍の将校用軍装をオマージュした意匠なのは、ナツキに合わせたものかそれともただの偶然か。腕は肩まで、足は太腿のかなりきわどいラインまで、背中も大きく開いて、前はへそまで露出するこの衣装に、防寒能力などほとんどない。
「えーっと、おいコラお客様ァ、撮影は禁止となってんだよォ。スケベな真似してっとぶち撒けますよクソがァ♪」
超ローアングルを狙おうとした男性客の眼前ギリギリに、笑顔でヒートホーク型のステッキを振り下ろし、蹴散らす。
本来はヤジマ商事の新商品発表会のはずだが、客の半分はコンパニオン狙い……の、様な気がする。少なくとも、ナツキのお立ち台の周囲には、結構な数の男性客が集まっているようだった。ナツキ自身に自覚はないが、彼女の長身とスタイルの良さは、その場限りの学生バイトのコンパニオンたちの中では、頭一つ抜きんでていたのだ。
「確かに、抜け駆けはしたけどよぉォ……へっくしょん! あぁ~、寒ィ! 赤姫のヤツ、こんなバイト肩代わりさせやがってェ~!」
さすがに、バイト代はちゃんとナツキが受け取ることにはなっているが……十二月の寒空の下、こんな衣装で何時間もというのは、エイトとの抜け駆けデートの代償としては大きすぎやしないか。自分なんかよりも、いかにも美人なお嬢さまのナノカの方が、こんな仕事は向いているだろうに。
(え、エイトは……オレがこんな衣装着てるなんて知ったら、どう思うかなァ……)
考えると、少し、頬が熱を持つ――その時だった。
「おねーさん、こっち向いてやー♪」
パシャリ。カメラ付きケータイのシャッターを切る電子音。
「おいコラお客様ァ、撮影は禁止だって入り口で――」
「んっふっふー、いやぁええモン見れたわー♪ さっそくぅ、エイトちゃんにぃ、そーしんそーしんっと♪」
「ってコラ何でてめェが何でいやがる何してやがるコラァァァァッ!!」
「きゃー、警備員さーん、コンパニオンがウチに襲いかかってくるー、たーすーけーてー。ほい送信、っと♪」
「ぎゃあああああああ! やめろゴラアアアア!」
――この日。ヤジマの新商品発表会で走り回るほぼ水着の長身美女コンパニオンと、それを手玉に取る女子小学生のニュースが、ごく一部のアングラなニュースサイトで話題となったのだった。
……はい、ということで。コラボ企画第三弾でした~!
孤高のスナイパーさん、えらく時間かかってしまって申し訳ございません(謝)
私がガンダムVSシリーズを連ザⅡプラスまでしかやっていないために、特にエクストリーム:Rfの挙動については理解不足のところが大いにあろうかと思います。重ねて、申し訳ありません(謝2)
さらに、孤高のスナイパーさんのところの世界線では、すでにウチの子たちと一戦交えているのですが、コラボ企画はまあ、とてもよく似た別の世界線だということで、ここはひとつご容赦を。(謝3)
……それはそうと、最近私はどうにかしてストーリー中でビス子を赤面させられないかということばかり考えてしまうのですが、これは病気でせうか。(笑)
ともかく。
今後も、すでにいただいているコラボのお話をできるだけ早めに作りながら、本編も勧めていこうと思います。引き続き、コラボのご提案をお受けしておりますので、えらく古い奴ですが私の活動報告か、直接メッセージでお願いします。
感想・批評もお待ちしています。今後も拙作をよろしくお願いします!