翌日の朝のこと、川神学園の朝礼台には英雄があずみと共にいた。
「九鬼英雄であるっ!!!」
英雄は学園に響かんばかりの声で叫ぶ。
「来る川神大戦に向け我がS組を選んだ賢明なる庶民どもの大儀である。皆の知っての通り我は覇道を行くものである。だが、同時に我は挫折を知るものである。その苦渋を知っている我であるからこそなお一層の勝利を!覇道を望む!故に我は戯れであろうと行事であろうと敗北する気は一切ない。貴様らもS軍に選んだからには勝利者であり続けたい者たちであろう。その渇望!我と共に必ずやかなえてやろう!軍師は我が友、葵冬馬。戦力差はおよそ二倍に達している。」
冬馬が手を振って応えると女子の黄色い歓声が聞こえてくる。
「小細工など必要ない。圧倒的な実力差でF軍を打ち破る!繰り返す!我は覇道を征く者である!S軍を選んだ庶民・・・・・!いや―――――」
次の瞬間英雄の訂正する言葉にそれを聴いていたものたちは驚く。
「我が『戦友』たちよ!」
『!!』
英雄からのまさかの一言に皆心を打たれた。
「我とともに戦い!我とともに蹂躙し!我とともに勝利せよ!S軍大将九鬼英雄が命を下す!鬨の声を上げよ!」
その瞬間S軍に付いていた者たちの鬨の声が学園全体を揺らさんばかりに響き渡った。
同時刻の体育館ではその声を聞いてF軍に味方しているものたちの不安の声が大和の耳に聞こえてきた。
「・・・・な・・・・なえ、今の声S軍・・・・・・・?」「まじかよ。ガチっぽくねぇか?」「勝てんのかよコレ・・・・・」
ギャラリーに不安の声がよぎる、
「さて、ここまで来てくれたみんなの不安を少しでも取り除かないとな。」
大和はそう言うと舞台に姿を表した。
「皆さん、今日はわざわざ集まっていただきありがとうございます、わたくし今回の川神大戦の軍師を務めさせて頂きます直江大和と申します。以後お見知りおきを。」
大和はそう言うと深くお辞儀をする。
「皆様がここに集まっていただいた理由は様々かと思われますが、結果として目指すは勝利であると思います。皆さん先程のS組の声に恐怖し、勝てないと思われているのではないでしょうか?」
大和の言葉に誰も言い返せなかった。
「しかし、私はそうとは思いません。例えどんなに絶望があったとしても光に向かい、希望を見失わなければ必ず勝利は見えると私は信じています。私は皆様を信じ、皆様も私を信じてくれればわずかな勝算でも勝てると私は信じています。どうかに皆様のお力を貸して下さい。」
大和はそう言うとお辞儀をした。
「なんか・・・・・・・やる気出てきたな。」
「ああ。あの人だとなんか頼りになる。」
「けどもう一押し欲しいな。」
ギャラリーがそう反していると進行が進んだ。
「次が委員長の演説だ。F組総大将、甘粕真与!」
「はいっ!」
大和に言われ委員長は返事をして舞台の上をとことこ歩く。が、足を躓き倒れてしまう。むくりと立ち上がりグズりながらマイクまで行くがマイクの位置が高すぎて自分ではどうしようにもならず千花に助けを求めた。千花にマイクの位置を自分に合わせてもらうとそれを見ていたものたちはホッとアンドを吐く。
「み、皆さんこんにちは!総大将の甘粕真与です!クラス同士のいざこざがこんなに大きく発展してしまいまって大変恐縮です。」
委員長はしゅんと落ち込む。
「ですが、こうなってしまった以上全力でぶつかっていこうと思います!S軍の人たちを驚かせてあげましょう!私も精一杯がんばりますので大船に乗ったつもりでいてくだちゃひっ。」
しばらくの沈黙の後委員長は口を開いた。
「かみまひた。」
その瞬間場の空気が明るくなった。
「大船に乗ったつもりでいてくださいっ!よろしくお願いしますっ!!」
笑顔で言われて心を動かされなかったものはいなかった。
「『もうひと押し』きたな。」
「だね。」
「よーし!いっちょやってやろぜ!」
「こんなかわいい総大将泣かせるわけにはいかないもんね。」
「まかせて甘和さんっ!」
「S軍に吠え面かかせてやる!!」
「皆さん・・・・・・ありがとうございます!がんばりましょうっ!」
委員長のその言葉に皆は答えた。
数日後のグラウンドではゲンさんの指揮の下、戦闘訓練が行われていた。
「おら!第二班!隊列乱すな。前衛が引いたら即崩壊するぞ!根性見せろ!」
「ゲンさん。」
大和がゲンさんに声をかける。
「お疲れさん。苦労してるみたいだね。」
「他人事みてぇに言ってんじゃねぇ。おまえが俺にF軍本体の指揮をとれって言うから、めんどくせーけど参加しているじゃねーか。」
「ゲンさんは一番頼りになるし信頼も高いからね。それにワン子を副将につけて上手くやってるみたいだし。」
大和はワン子の方を向く。
「さー!いくわよっ!」
ワン子を先頭に進軍していた。
「元気だぞ。前とは違って突っ走っているばっかじゃねえ。」
先頭のワン子は後ろからの気配を察知し姿勢を低くするとそのまま右足払いを仕掛ける。仕掛けた相手は後ろに跳び距離を取った。
「クリ!」
「なかなかやるな、犬。」
ワン子は石突でクリスに攻撃する。クリスは左右に身体を反らしながら回避を続ける。ワン子は槍を下から上に一気に振り上げるとクリスのレイピアを持っていた手が上に上げられる。ワン子は左手を柄から離し拳を握ると左正拳突きをクリスに喰らわそうとする。クリスはもう一方の手でその攻撃を受け止めるが勢いが強く後ろに飛ばされる。
「くっ・・・・・・!なかなかやるな、犬!」
「そっちこそ!」
しばらくして訓練は終わった。
「クリスに預けた女子部隊はもう仕上がってるね。」
「自分は軍人の家系だからな。本戦までにはもっと精強にして見せるぞ。」
「チッ!比べて本体はまだ体力面でヌルいな・・・・」
「走りこみでもする?」
「ああ、まずはそこからだ。」
クリスの隊とは違い本体の方は弱かった。
「そうだ大和。重要な!凄く重要な話だあるんだ。」
「え?なに?」
「自分の隊の名前だ。」
「ああ。で、何か思いついたのか?」
「うん。ホワイトペガサスとかどうだ!」
「う~ん、連絡するときに名前が長いと困るし・・・・・・白馬隊ってのはどうかな?」
「はくば?」
「ああ、字で書くとこうね。」
「・・・・・確かにコレならいいな。キャップたちの方はどうするつもりだ?」
「黒龍隊かな。あっちは水筒とナイフだけで遠征に言ってるけど大丈夫だろ。」
大和は腰に手を当ててキャップがいるであろう方角を見る。
「なんだか大和の背中を見ていると安心するな。」
「ん?」
「いや、こっちの話だ。」
そんな二人に委員長たちが声をかけてきた。
「ねー!みんなー!」
「見てみて!」
「「じゃ――――ん!」」
千花と黒子がF組印の旗を見せる。それを見てワン子は興奮する。
「わわっ!すごい!カッコイーじゃない!」
「でしょ?やるぞーって気になるでしょ?」
「アタイの情熱込めすぎてやっべ濡れる!」
「わたしたちは戦力になんないけどバックアップはするからね!」
「負けんじゃねーぞ!」
大和はその光景を見て微笑んだ。
「じゃあ俺はちょっと用事あるから行くわ。」
「どこに行くのだ?」
「ん。内緒。」
大和はそう言うと掛け走り始めた。
九鬼財閥のビルの前に大和はスーツ姿で立っていた。
「さて、入るとするか。」
大和がビルに入ろうとした瞬間呼び止められた。
「おい、そこのガキ。」
「ん?」
大和が声をする方を向くとツインテールの金髪のメイドと中国系の顔立ちのメイドが立っていた。
「どのような用件でこちらにいらしましたか?」
「御社の軍事部門責任者である九鬼揚羽さんに面会をと。」
「ふざけんじゃねーぞ、ファック。」
金髪の女性は苛立っていた。
「私はふざけてはいないのですが。」
「どう見たってふざけているだろ!第一お前まだ学生だろ!」
「ええ、その通りです。」
「もしかしてお前揚羽様の命を狙ってんじゃねーだろーな。」
「滅相も無い。私はそのような人の道を外れたことなどいたしません。」
「どうだか・・・・・・やっぱ見極めさせてもらうぞ!」
「申し訳ありませんが彼女の意見に賛成のため私もそうします。」
二人はそう言うと大和を挟む様に小太刀を振る。小太刀が大和に当たる瞬間無数の十字架が小太刀を止めた。
『っ!?』
二人は距離を取ると大和の周りを無数の十字架が浮遊していた。
「ブレングリード流血闘術33式、守護十字(プロテクションクロイ)」
二人が警戒しいているとその場を打ち砕く人物が現れた。
「なにをやっているんだ、お前たち。」
「なんだかたのしそーだねー。」
一同声のする方を向くとそこには揚羽と燕がいた。
「ん!君は確か今日面会する・・・・・」
「はい、直江大和と申します。以後お見知りおきを。」
「へー、大和君だったんだー。」
「ん!なんだ知り合いか?」
「まーねー。同じ学校の後輩だから。それよりここで話すのもなんだから中に入れないの?」
「それもそうだな。では直江君、入って来たまえ。」
「そうさせていただきます。」
揚羽に促され大和はビルの応接室に入った。
「さて、私に話とは何かな?まあ大体の事は燕から聞いているが。」
「ええ。実は川神大戦に私どものほうに参加していただきたく今日の面会を希望しました。」
「そうか・・・・・・・・私は構わないがお前はどうだ燕?」
「私もいいよ。モモちゃんと戦いたいし。それよりもさ、今日ライトニング君は一緒じゃないの?」
「ライトニング?」
燕の言葉に揚羽は気になった。
「ライトニングとは私が飼っているペットの名です。音速猿で向こうでは生き残ってきたつわものの一人です。」
「向こう?」
「HLです。」
その言葉を聞いて揚羽は驚きを隠せなかった。」
「ば、ばかな!あの異界と現世が交わる辺境の地!生き残れる確率は一日単位でも約20%と聞く!」
「ええ。ですが私はそこで生き残ってきました。三年、そこで生き残れたんです。多くの仲間のおかげで。」
その言葉を聞くと揚羽は納得した。
「話は変わるのですがよろしいですか?」
「なんだ?」
「九鬼財閥には軍事部門以外にも医療部門もあると聞きます。」
「ああ。」
「そこでお聞きしたいのですが―――――――――――失明した目を元に戻す技術はありますか?」
「ふむ・・・・・・・私も武器開発の面でその手のほうに携わったことはあるが現段階でもそれは難しいとされている。」
「そうですか・・・・・・」
「なにやら期待を裏切ってしまったようだな。すまない。」
「いえ、そちらが悔やむことなどありません。」
大和はそう言った。
「しかし何でそんなことを?」
「ええ・・・・・・・・・・実は知り合いの人の中に妹が失明をした人がいまして。」
「そうか・・・・・・・早く見つかることを祈っている。」
「ありがとうございます。」
「私も君の気持ちは痛いほど分かる。私の弟、英雄は昔野球選手を目指していた。しかし過去の事故で肘を壊してしまいその夢を絶たれたんだ。出来ることなら私は治してやりたいが・・・・・・・・現代医療をもってもそれは叶わない。」
「・・・・・・・・(やっぱりアレを言うべきか。でも・・・)」
「何か考え事かね?」
「え、ええ・・・・・・まあ。」
「まあ君が何を考えているか分からないが言いたくなったら言うといい。私はその時まで待とう。」
「ありがとうございます。」
そして時は過ぎ去ってゆき、
――――――――――決戦の日来る!