川上大戦の舞台となる丹沢では報道用のヘリが飛んでいた。
『皆さんこんにちは。今日、私は丹沢上空に来ております。なんと!今日ここ丹沢で戦国時代さながたらの“合戦”が川神学園の生徒によって再現されると聞いてと聞いてやってまいりました。競うことを推奨する川神学園ならではですね。ご覧下さい。生徒の目もギラギラとやる気に満ちています。一体どのような戦いを見せてくれるのでしょうか?』
カメラはF軍の方を撮影していた。そんなところに一人だけ、S軍に味方している百代がいた。
「おーっ!見ろ、大和。テレビ来てるぞテレビ。」
「ホントだね。なんだか予想外の大イベントになっちゃった。」
「まずいな。私はまた芸能界にスカウトされてしまうぞ・・・・・・悪いプロデューサーに手ごめられたらどうする、大和?」
「そんなことはナイだろうけどもし芸能界に行ったら借金返済がすぐに済みそうだね。」
「ひどいなお前!」
「そんなことよりS軍に味方している百代姉さんがこんなところになんでいんの?」
「細かいことを言うな。戦う前にお前たちの顔を見に着たんだよ。今日は・・・・・楽しませてくれるのだろ?」
百代の問いにワン子とキャップが真っ先に答えた。
「もちろんよ!やるからには負けないわお姉様!」
「敵に回ったことを後悔させてやっるぜ!」
「おーおー、言うなお前たち。しかし異性の言いのは結構だが戦力差は知っているのか?」
その言葉にクリスが答えた。
「敵軍は900、我らは450・・・・・たった二倍だ。跳ね返す!」
「二倍程度なら可能かもしれないな。でも、その計算は違うぞ、クリ。私ひとりで100万だ。100万対450、どう見ても圧殺だな。」
「姉さんがひとりで百万なら俺はそれ以上の数値かな?」
「言うな大和。ならば楽しそうだ。」
百代は風間ファミリーと大和たちの顔を見る。その顔に迷いは無く、覚悟が見えた。
「いい顔だ、お前たち。期待できそうで安心したぞ。その覚悟、本物か本番で見せてもらうぞ。」
百代は背中を向け去ろうとしたとき百代は立ち止まり大和の方を向いた。
「おっとそうだ。大和、葵から言伝だ。『できるだけ長く楽しませてください』だとさ。」
「っ!・・・・・・ふ~ん。じゃあこっちからも。『そっちの思い通りにさせないから覚悟しとけ。』って言っておいて。」
「わかった。わたしもそう願ってる。がんばれ、大和。」
そう言うと百代はその場から去って行った。
「やってやるぞ。」
S軍本陣では英雄がS軍全員に大声で問いかけていた。
「ヒーローである我が問おう!!主、いずれか有道なる。」
「間違いなくS組です。」
「将、いずれか有能なる。」
「S軍!」
「天地、いずれか得たる。」
「まずまず互角。」
「法令、いすれか行われる。」
「S軍だ!」
「兵衆、いずれか強き。」
「Sじゃ!数が違うわ!」
「賞罰、いずれか明らかとなる。」
「同じかな。」
英雄の問いに冬馬、小雪、準、マルギッテ、不死川、百代の順に答える。
「フフ、負ける要素が無いではないか。奴らは夢物語を描いている!庶民どもでも力を合わせれば支配者階級に勝ているとな。ありえぬ!!よいか、二度と空想を抱かぬよう戦力を持った我らの恐ろしさを見せ付けてやれ!」
英雄の言葉に本陣で歓声が湧いた。
報道ヘリの中に学園長はリーと一緒に乗っていた。学園町はメガホンを手にして生徒たちに語りかける。
「さて、双方、布陣は済んでおるかな?では、会戦のカウントダウンをするぞい!」
学園長はも一方の報道用ではない別のヘリを見る。
「10、9、8、7」
その瞬間二人がヘリから飛び降りた。それを百代、小雪、あずみ、マルギッテ、まゆっち、大和は察知する。
「5」
百代は口元が緩み笑みを浮かべた。
「4、3、2」
大和は息を大きく吸う。
「1・・・!」
大和の目が戦いの目に変わる。
「川神大戦、開戦じゃ!!!」
その瞬間双方の本陣が一斉に動き出した。
「フハハハ!行け、我がS軍よ!」
英雄は逃げも隠れもせず前戦に出ていた。その光景を茂みの中からモロとスグルが確認した。
「大和、敵正面、九鬼英雄確認!」
「予想通りだが大将自ら先鉾とはナメられているな。」
「わかっちゃいたが敵数が大きすぎる。」
「ワン子!聞こえてるな。敵をかく乱させろ!」
「うん!」
大和は通信機を通して皆に指示をする。
『はいこれ。』
『なんだこれ?』
『小型の携帯電話?』
『通信機。ちょっと頼んで用意してもらった。各部隊の隊長に渡しているからワン子たちにも渡しておくね。』
『なんかカッコイイな!』
『キャップ、くれぐれもこれは無くさないで。敵にこれが渡ったらこっちの情報が筒抜けだから。皆もいいね?』
大和はパトリックに無理を言って頼み通信機を提供してもらった。
「はあああああっ!」
ワン子は薙刀を手に敵の中を駆け、攻撃する。
『ワン子、お前は撒き餌役だ。敵をある程度かく乱したらゲンさんの部隊と一緒に後退。時が来たら前進を繰り返せ。なるべく本陣に穴を開けるんだ。』
『了解!』
「ほう・・・・・一子の動きが前より良くなっているのう。」
「大和君のおかげですかね?」
「リーよ。さすがにそれは・・・・・・・・あるかものう。」
学園長は顎鬚を撫で下ろした。
「でりゃぁっ!はぁ!一番槍、川神院・川神一子!!」
「おお、一子殿!」
「うれしそうにすんな。やられてんだよ。」
興奮する英雄に準がツッコむ。
ワン子は次々と敵を討ち取ってゆく。敵本陣の敵は300、対して70で挑むのは不利がある。
「くそ!一斉に攻撃するんだ!」
「囲め!」
S軍のほうから四人が囲んでくる。ここで少し説明をしよう。仮に一人に対し百人で挑むとする。だが百人同時が一斉に攻撃できるであろうか?否、不可能である。道攻めようにも最大四人でなければならない。
ワン子は薙刀をきりもみ回転して牽制すると後ろの敵を石突で突くとそのまま石突を前の敵に振った。
「隙あり!」
S軍から二人同時にワン子を挟むように攻めてくるがワン子は石突を地面に付けると薙刀を軸に一回転し二人を倒す。
「一子、やるようになったな。」
「コレも大和のおかげだからね!」
「そうか。全員一塊になれ!突破する!」
『応!!!』
ワン子を先頭に道が切り開いてゆく。
「おお・・・・見ろ!一子殿が先陣で!」
「だから敵だっての!簡単に突破されてんじゃねぇよ!」
「フン、これが王者の余裕である。追撃する!進軍せよ!」
大和は双眼鏡越しに戦場を見ていた。
「ゲンさんたちが退いてきたな。伏兵部隊、第一が出陣した後に一分ごとに第二、第三と出陣しろ。」
『『『了解!』』』
大和の指示の下伏兵部隊が行動を始める。
「大和、伏兵がいるってことは向こうも気づいているんじゃないのかな?」
「ん!モロの言う通り冬馬君は考えているだろうけど・・・・・こっちの第二の手は思いついてないと思うよ。輸送班、応答しろ。」
『はい。』
「作戦コード『BEAST』発令!直ちに作戦を開始!優先は敵本陣まで運ぶことだ。怪我をしないでくれ。」
『了解しました!』
大和の指示で輸送班は折に幽閉されているあるものを運んでいた。それの目はまさに獣であった。
同時刻、S軍本陣では笛の音が鳴り響いていた。
「合図!・伏兵か!何人来た?」
「右側面より10名!」
「フハハハ!物の数ではないわ!」
「伝令!今度は逆方向から10名!」
「蚊トンボだな。構わず追撃せよ!」
「この程度で終わるはずはねぇが・・・・」
余裕をかましている英雄に反して準は懸念していた。
「伝令!また森から・・・・!」
「伝令!今度は後方から・・・・!」
「何回くるんだ。また逆方向から!」
次から次へと来る敵に英雄は苛立つ。
「ええい忌々しい!惑わされるな、各個撃破せよ!」
『は・・・・はいっ』
S軍本陣の陣形は拡散し、総大将を護る守りは手薄になってきた。
「ゲンさん、今だよ!」
「わかった!退却中止!転進してぶつかるぞ!」
「待ッテマシタ―――――ッ!逃げるのは性に合わないのっ!!」
ゲンさんの指示の下攻撃に戻るF軍。同時に大和に伝令が入った。
『こちら輸送班、目標ポイント付近に接近。』
「よし!各自散開し指定の部隊と合流してくれ。」
『了解。』
「さて・・・・・・・・何人が合流できるか不安だな。」
一方F軍本陣はS軍を徐々に押していた。
「っ!逃げるのをやめたか。だが構わん、押しこむのだ!」
「し・・・しかし外からの伏兵が!」
(チッ!伏兵がいつくるかわかたねえから指揮に影響が出てる。)
準が懸念する。
「落ち着け!数は我らが上である!槍隊前へ!一度受け止めて押し返せ!」
英雄は冷静に指示を出す。
「お、さすが総大将。盛り返せる・・・・・かっ!?」
準が気を抜いた瞬間突如準の左から攻撃が来た。準は両膝を付きながら押される。
「ぐぉ・・・・!な、なんだ!?」
「クリスティアーネ・クリードリヒ推参。立ちはだかるものは刺し穿つ!道を開けろっ!」
クリスの指揮の下白馬隊が敵本陣に向け進軍する。
「ほう、すさまじい隊がいるではないか。」
「褒めている場合じゃねーのよ。」
感心する英雄に反して準は焦っていた。
「クリ!いいタイミングだ白馬隊!最初の正念場だ!気合を入れろてめぇら!」
『はいっ!』
S軍の指令部では冬馬が頭を抱えていた。
「やれやれ、やっぱりこうなりましたか。まったく英雄は・・・・・・・・」
冬間は溜息を吐く。
「まだ損害は軽微でありますが積み上げれば大きくなります。マルギッテさんと英雄のフォローに回るように全身指示を・・・・」
『わあああぁっ!』
「!?」
突如通信機に味方の悲鳴が聞こえて藤間は何事かと思った。
『なんだこいつ!』
『止まれっ!ぎゃああああ!』
「参謀!左の山頂から何か巨大な生物がこの司令部目指して降りてきます!」
「なんですって?」
冬馬が驚いた刹那であった。東の山からその謎の生物が正体を現した。
「オナカズイダァァァァァ―――!!!」
「!?」
それはF組ではクマちゃんと愛称のある熊飼であった。
「熊飼さん!?これが最初の奇策ですか大和君っ!」
クマさんは極限まで空腹になると凶暴化する。通称クマちゃんビーストモード!
「おい大和、クマちゃんがあの子に勝てる確率は?」
「はっきり言って1%もない。でも一時的にこちらの動きを悟られないためにしてもらってる。本人には了解を既に得てるしね。」
『大和!』
「モロ!どうした!」
「クマちゃんがやられて部隊が壊滅した。」
「くっ!一分も持たなかったか。致し方ない!」
『それと通信機越しに聞こえてきたんだけどマルギッテさんの部隊が本陣に合流するって!』
「やっば!急ぐがこっちが本陣に向かっていることは言うなよ。冬馬にはもっと驚かされて欲しいからね。」
大和は通信を切った。
「さて・・・・・・・・・どのタイミングで来る、姉さん。」